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国をつくるという仕事 みんなのレビュー

  • 西水美恵子(著)
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みんなのレビュー3件

みんなの評価4.0

評価内訳

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3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本国をつくるという仕事

2009/08/03 22:33

真のリーダーシップとは何かを教えてくれる本

15人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:サトケン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 元世界銀行南アジア担当副総裁が書いた、貧困撲滅のための戦いの現場体験を描いた回想集。
 「思い出の国、忘れ得ぬ人々」というタイトルで、雑誌『選択』に連載されているときから愛読していた。こうやって単行本としてまとめられ一書となったことは喜びに堪えない。ぜひ多くの人に読んでほしい。

 世銀副総裁の回想といっても、功成り名遂げた人の回想録とはまったく性格を異にする。

 世界銀行のミッションは「貧困なき世界をつくること」、このミッション実現のため、各種のプロジェクトへの融資をつうじて、当該国の民衆の自立のために必要な支援を行うのがその仕事である。加盟国の国民すべてが株主であり、また受益者でもある。
 金融機関として、市場から安く調達した資金を、金融市場が効率的に機能しない発展途上国で、低利の長期融資を実行する。
 著者が責任者としてカバーした担当地域は南アジア、すなわちインド、パキスタン、スリランカ、バングラデシュ、モルディブ、アフガニスタン、ネパール、ブータン、その多くが第二次大戦後、独立を勝ち得た"若い"国々である。

 「国づくり」の中で置いてきぼりにされたのが国民、その中でも大多数を占める貧困層である。貧困問題の解決を行わない限り、ほんとうの「国づくり」からはほど遠い。なぜなら、貧困は人間から希望を奪い、国民としての参加意欲を削いでしまうからだ。
 一部の特権階級が潤うだけでは、国全体としてのチカラが生まれてこない。貧困を撲滅するために行われてきた国際援助が、本来の意図に反して政治家の汚職、腐敗の温床となってきたこともまた事実である。

 世銀は援助機関ではなく、あくまでも金融機関であり、貸し倒れリスクを最小にしなければならない義務がある以上、融資を実行するに当たっては、さまざまなリスク、とくに長期的なカントリーリスクに対する厳しい目も必要とする。
 著者は、マスコミの評価、その国の政治家の説明は決して鵜呑みにせず、自ら農村やスラムに足を踏み入れ、ホームステイし民衆と語らい、貧困問題とその解決策が、かならず「現場」にあることを、つねに確認してきた人である。

 「国をつくるという仕事」は、あくまでも草の根の国民の立場に身をおき、私利私欲を離れた立場から一般民衆のために奉仕するよきリーダー、よき統治(ガバナンス)があってこそ実現する。
 よきリーダーの補佐役を行うのが世銀であり、また著者自身の役割であると認識、問題を直視したうえで、ときには政治家を叱咤し、民衆のリーダーの熱い思いと行動に何度も涙してきた。経済学博士である著者自身が、経済学でいう "Cool head but warm heart" (アタマはクールでココロは暖かい)人なのだ。

 草の根の民間人であれ、一国の最高指導者であれ、よきリーダーの特質とは言行一致していること、あくまでも一般の民衆のために奉仕することを念頭においている人のことだ。
 本書を読んでいて何よりも強く印象に残るのが、ブータンの前国王ジグミ・シンゲ・ワンチュク雷龍王4世である。あるべき理想のリーダー像を示して素晴らしいの一語に尽きる。
 しかしながら、著者はブータンの抱える最大の政治問題である、ネパール系ブータン人難民についても多くのページを割いて言及している。けっしてブータン礼賛には終わらせないところに著者のバランス感覚をみる。

 そしてまた著者は、現場で得てきた貴重な経験を、自らが属する世銀の組織にフィードバックし、ビジョンを共有し、ミッションを組織の隅々にまで浸透させるための「組織文化改革」をやり抜いた。できればこの点をもっと詳述してほしかったとも思う。

 本書は、発展途上国や南アジアに関心をもつ人にも、貧困問題に関心のある人にも、ビジネスパーソンにも、社会起業家にも、ぜひ読むことを薦めたい。
 あるべきリーダシップや、あるべき組織のありかたを考える際に、必ず大きなヒントを与えてくれるはずである。
 

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紙の本国をつくるという仕事

2009/11/12 18:29

りんご1個たす、バナナ1本は、いくつ?

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

 著者は元世界銀行の南アジア地域副総裁であり、在職中に出会った数々のリーダーたちとの思い出の断片が綴られている。元々連載されていたものなので、1編1編は比較的短い。インドのマンホハン・シン氏とパキスタンのパルヴェーズ・ムシャラフ氏に始まって、ブータンのジグメ・シンゲ・ワンチュク雷竜王四世に終わる。
 こう書くと、世界銀行副総裁という肩書きもあり、各国の元首級の人々しか登場しないように思われるかも知れない。しかし、本書の真骨頂はそこにはない。本当の主役は、世界銀行の株主たる各国の国民一人一人だし、そこから生まれいずる地域のリーダーたちである。

 本書のキーワードは「草の根」だろう。著者は在任中、初訪問国では貧しい村に寄宿し、労働して、現場で何が求められているのかを肌で体感してきたという。世界銀行には、現地で求められているものを探らず中央が机上で考えたものを押し付ける、という様な批判もあったかと思う。著者はその事実を受け止め、援助を、いかに現地の人が求めるものに留めるか、に腐心していたようだ。その悩みも正直に書かれていて好感が持てる。
 援助を現地の人が求めるものに留めると書いたが、これはかなり重要なことの様だ。援助が行き過ぎれば自助努力の精神が薄れ、本当の発展のためにならない。不正もはびこる。だが、往々にして援助をする側は、援助をすることによる政治的効果を考慮して、必要とされない、しかしマスコミ的に目立つ援助に余分な力を注ぎ込んでしまうものらしい。援助とは誰のためのものなのか、ということは肝に銘じておくべきことだろう。

 貧困から抜け出すためのリーダーシップとは、誰かから与えられるものではなく、貧困グループ全体において貧困から抜け出すための意識の底上げがなされたときに、湧き上がるようにして生まれてくるものなのだと知った。何かを求めるのではなく、自分たちが何をするのか。皆がそう考えるようになって初めて、貧困から抜け出すことができる。
 しかし一方で、その様な希望の光が生まれ様もない、漆黒の闇が存在することも知った。それがスラムだ。自分が生まれ育った場所から抜け出すことが、貧困から抜け出す唯一の方法。そんな悲しい場所はこれ以上作りたくないと思う。

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紙の本国をつくるという仕事

2010/01/10 02:12

現場の人、行動の人

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る

 アメリカのプリストン大学の助教授として経済学を教えていた著者は、サバティカル(研究休暇)の1年を、世銀の研究所で過ごすことにした。世銀の開発五ヶ年計画調査団に同行してエジプトの首都カイロへ飛んだ。ある日、ふと思い立って、1人でスラム街に赴いた。そこで1人の少女の死に立ち会う。死因は下痢からくる脱水症状であった。安全な飲み水と衛生教育さえあれば、彼女の死は防げた。

「帰途の機上では一睡もできず、自分が受けた教育は何のためだったのか、何をするために経済学を学んだのかと、悩んだ。ワシントンに近づき、機体が着陸体勢に入っても、鬱々としたままだった。が、車輪がドシンと音を立てて滑走路に接した瞬間、目の奥に火花が散った。結論が、脳に映った写真のように、はっきり見えた。学窓に別れを告げ、貧困と戦う世銀に残ると決めた」


 以来、著者は23年にわたって「貧困のない世界を作る」ため、世銀で働いてきた。本書はその奮闘の記録である。世銀の仕事は途上国に対する開発資金の融資であるが、闇雲に金を貸すだけでは真の援助にはならない。途上国は政権が腐敗していることが多く、慎重に融資先を選ばなければ汚職政治家が私腹を肥やすだけで終わってしまう。世銀は単なる金貸しであってはならず、融資を梃子として被援助国の中から真のリーダーを育成し、政治を改革しなければならないのだ。まさに「国をつくるという仕事」なのである。


 著者は大学で育った研究者だが、決して数字だけに頼らない。政府の公式発表を信じることなく、お仕着せの視察コースを回って事足れりとするのでもなく、貧村や貧民街に自ら足を運び、民家に泊まって草の根の民の話に真剣に耳を傾ける。民衆の暮らしを見ずに私利私欲に走る権力者たちには容赦せず、独裁者の脅しにも屈することなく冷然と「融資停止」を言い渡す。


 彼女の物怖じすることない直言ぶりは、惚れ惚れするほどだ。以下に数例掲げる。


1999年、パキスタンのシャリフ首相に対して。
「人様の大切な金を貸す銀行家として進言する。たとえ首相でも、口約束だけで融資はできない。行動で政治意志を示してほしい。貴国の勇士たちが練り上げた銀行改革案は見事。我が国日本に煎じて飲ませたいほどだ。しかし、トップリーダーの一族が債務不履行ファミリーである限り、銀行界の立て直しは不可能であると判断する。恐れ多くも人の上に立つ指導者は、身辺を清め、民の模範となるべく努力すべし」


「我が国に貧しい民はいない」と嘯くブータンの大臣に対して。
「国民の大半は、車道から徒歩で半日以上の距離に住む。車窓から見えるのは貴国ではない。自分の足で歩いて見てきてください」


インド南部のカルナタカ州に出張した際、知事公邸で歓待を受け、山海の美味を次から次へと勧められても水だけを飲む著者を案じ、「口にあわないのか」と知事に尋ねられたとき、
「閣下はクリシュナ河上流域の草の根を歩かれたことがおありか」
「いや、まだだ」
「それではお分かりにならないだろう。なぜ美味な物が口に入らないのか」



 だが徹底した現場主義を取る著者は、民草の心の叫びは謙虚に受け止める。

インドで某NGOから世銀の対応を非難された時の言葉。
「あなたは正直な人だ。お叱りは痛かったけれど、礼を言う。あなたの協力がこの訪問に欠かせないから我慢して、心にもないお世辞を言うのではない。誤解や誤報はあるが、言い訳もしない。世銀が真実国民のためになる仕事をしてきたのなら、こんな目に遭わないはずだと信じる」




 著者は腐敗した権力者を厳しく糾弾する一方で、上は一国の宰相から、下は貧村の共済組合の代表者に至るまで、優れたリーダーには賞賛を惜しまず、また全力で支援する。昨年の総選挙で圧勝したインドのシン首相や「国民総幸福量」で有名なブータンのジグミ・シンゲ・ワンチュク雷龍王4世は日本でも評判が良いが、ともすると「軍事独裁政権」の色眼鏡で見られがちなパキスタンのムシャラフ前大統領の実像を本書で垣間見ることができたのは貴重な収穫であった。優れた指導者を得たインド・ブータン・パキスタンでの改革の進捗ぶりを目の当たりにすると、日本はとても南アジア諸国を「開発途上国」と笑ってはいられない。


「ムシャラフ将軍のどこが気に入ったと聞かれたことがある。自分に正直で民を煽り騙さない人だと答えた。彼との時間を思い出すたび、政治家になぜああいう人が出にくいのだろうと憂う」



 最後に著者の金言をいくつか紹介する。

「政治家や官僚は、民衆の悩みや苦しみを肌で感じることが不得意だ。どん底の生活にあえぐ貧民のことなど、数字と頭でとらえていればましなほうだろう。先進国でも途上国でも違いはなく、我が国でも例外ではない」

「緊急時の援助活動は目立つ。顔が見え、カネが集まり、名声や昇進欲をくすぐる。緊急時だからこそよりいっそう協調すべき公私援助機関が競争に奔る。事態を口実に草の根を無視し、民の意を汲まない活動が起きる。被援助国の人々がすべきことまにまで、援助機関の人間が立ち入る」

「貧困解消と地域開発は切っても切れず、良いリーダーと住民の強い団結があってこそ持続する。どんなに貧しくても、農民には村のために働くという団結精神がある。そのために動くリーダーも農民の中から必ず出る。だから指導者教育が貧村の発展を大飛躍させる」


「国づくりは人づくり。その人づくりの要は、人間誰にでもあるリーダーシップ精神を引き出し、開花することに尽きると思う。未来の社長や首相を発掘せよなどというのではない。育児や家事に勤しんでも、家庭の外に出てどのような職に就いても、リーダーの仕事には夢と情熱と信念がある。頭とハートがつながっているから、為すことが光る。心に訴えるものがあるから、まわりの人々にやる気と勇気をもたらす」



 まさに現場の人、行動の人に相応しい、含蓄に富んだ言葉である。

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