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生き屏風 みんなのレビュー

  • 田辺青蛙
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みんなのレビュー5件

みんなの評価4.3

評価内訳

  • 星 5 (2件)
  • 星 4 (3件)
  • 星 3 (0件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
7 件中 1 件~ 7 件を表示

紙の本生き屛風

2019/05/28 12:18

意外

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ナナカマド - この投稿者のレビュー一覧を見る

タイトルから、
生々しい屏風・・・例えば人体の一部が素材になっているような、
そういう屏風の出て来るグロめのホラーかと思っていたので、
読んでみて意外でした。
なんというか、
とぼけた感じで少しもの寂しい、
ほんわりとした怪談でした。

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紙の本生き屛風

2009/08/17 10:26

何がいいのか不明

5人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くろさきつかさ - この投稿者のレビュー一覧を見る

冒頭から設定の意味が不明。

文章としてはリズム感が悪く読みづらい。
簡単に依頼を承諾する点など淡々としていてつまらない。

その世界に入っていけなかった。

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紙の本生き屛風

2009/06/25 12:59

のんびり雪のように舞い降りたい・・・夏だけど(笑)

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

日本ホラー小説大賞受賞作というからどんな恐ろしい作品かと思えば、ホラーのホの字も無いなんとものどかな作風である。
作風、だけではない。文章だけでもない。
時代は江戸かそこらだろうか?流れる時間の緩やかさ、妖たちの悠々自適な生き方、人間たちののんびりした立ち振る舞いと彼らの間に交わされる愛嬌ある会話。そして時折私たちをひきつけて止まない素朴で魅力的な料理の数々・・・
『しゃばけ』シリーズのように笑いや事件があるわけでも、魅力溢れるキャラが登場するのでもない。夢のような桃源郷や地獄のような修羅場があるでもなし、また事件というほどのものもおきはしない。
しかしなんだろう、この暖かな心持とファンタジーを読んだ直後のような不思議さは。
そもそもしょっぱなからして主人公の妖鬼・皐月は馬の首を寝床にしている。しかも起きるたびに「寝床」と名づけたその馬の首を落とし、這い出てから再びくっつけるというなんとも恐ろしい血みどろの冒頭だ。
しかし次のページを読み終わるころにはそんな面持ちはどこへやら。寝床を確保するために人間の押し付けがましい依頼も引き受ける皐月はどうにも頼りない。鬼とは名ばかり、額についている角は小さく髪に隠れてしまうほどだし、人を喰うわけでも人を脅かす妖力をもつでもない。根無し草であっちをフラリこっちをフラリと旅をして、ひょいと届いた手紙に誘われるままこの地の県境にたどり着き、そのまま守り神の役目を引き継いだ・・・なんらいわれがあるわけでもこの土地に思い入れがあるでもない。すべて成り行き任せの気ままなお話なのである。

そう、3章を通じていえること。それは人間であれ妖であれ、誰もが成り行き任せ、行き当たりばったり、のんびりのほほんとした贅沢な時間をもっているということだ。そしてそんなかにも少しだけ切なかったりちょっとだけ悲しかったりやるせないエピソードもちらりと見える・・・。なんといとおしく優しい物語だろう。

まず表題作第一章「生き屏風」に登場する恐妻ともいえる奥方の幽霊は生前とかわらぬズボラな態度で堂々と居ついている。もと夫に邪険にされ、たたられても困るから同じ妖同士、皐月があてがわれたというだけの話なのだが、交わされていくうちに少しずつあらわになる皐月と奥方の身の上話。饒舌にさせる酒につまみ。
そうしたものが少し現実離れしていて、それでいてするりとしみこんでくる・・・なんとも面白おかしい語りなのだ。

第二章に登場する男は何にも執着が無く欲も無い、ただ女好きはたいそうなもので皐月の前任者(猫の姿をした得体の知れない妖である)に、ひと時雪にして欲しいと頼み込む。ゆらゆらフラフラと風任せに舞い降りる雪となった男はあちらの女かつての女の肌の上に降ってはしみこんでいく快感にまどろんでなんとも幸せそうである。

人も妖も、何があるわけでもないのっぺりした日常をのんびり緩やかに過ごしている。時折饗される食事や酒はなんともよだれの出そうなほど美味しそうに描かれる。

  「銀杏は大好物なので一番最後に、薄い皮を口の中で剥いでから、飴玉のようにして転がしながら噛んで食べる。白い飯には汁を注ぎ、ほぐした干し鰯を載せてからクチにいれる。酒をちろちろと舐めながら、長い朝食を終えて次郎はごろりと横になった。」 (本文より抜粋)

なんとも羨ましい限りではないか。思わずそうそう、それが美味しいんだよね!と膝を叩きたくなる嬉しさである。
彼らは私たちよりずっと寿命も短く不便な生活、つつましい生活をしていたに違いないが、私たちよりずっと優雅で悠久の空間と時間をもっているようにすら思えるのだ。

この世界では妖も幽霊も否定されない、そんな時代が確かにあったのかもしれない。
口の中に転がる銀杏一つに幸せをかみ締めてしまうくらい日々のささやかなことがささやかなままに幸せとして大事に転がされる時代。なんとなくうらやましくなるものだ。

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紙の本生き屛風

2008/12/10 02:49

モノノケ・セラピー

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:仙人掌きのこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 もしあなたが、心の中にひとつ隠れ里を持ちたいと願うなら、この「生き屏風」を読むと良いだろう。
 日本ホラー小説大賞短編賞という肩書きや、そのタイトルから、おどろおどろしいイメージを持つかもしれないが心配御無用。確かに、死霊や鬼の子は登場するが、怨恨・復讐・暴力などとは無縁で、ひなびた温泉宿でのんびりとくつろいだような気分を味わう事ができる。日本むかし話とムーミン谷、そしてアリスが巡った不思議の国を混成したような理想郷がここにある。

 それにしても主人公・皐月の人(鬼?)の良さは、読んでいて気の毒になるほどだ。初対面の相手からはまず容姿を褒められないし、村を災いから守っているのに尊敬もされていない。自慢のツノを見せれば「変わった色のこぶか、オデキにしか見えない」と貶され、片思いに悩む村娘からすら「頼りない」と罵倒される始末。それでも皐月は怒らない。
 これは徹底した平和主義者というよりも、経験不足からどう対処していいのか判らない子供の態度だろう。人より寿命が長いからといって、精神が成熟しているとは限らない。皐月はまだまだ子供なのだ。それは食べ物を前にした時にはっきりする。「食べなくても飢えて参ってしまう事はない」存在のはずなのに、好物の梅の実や酒・西瓜に心を奪われてしまう。それらを食する時の無邪気さは、本当にほほえましい。
 好物を喜び、人からの相談には不器用に、しかし真摯に向き合う皐月。読み進むにつれ、その素直さがどんどん好もしくなってくる。

 田辺青蛙氏の作品に初めて接したのは、ビーケーワン主催の第四回怪談大賞だった。佳作受賞作の『薫糖』(てのひら怪談ポプラ文庫)にも鬼が登場するが、なにより「水あめで髪を練る」という発想の奇抜さと「日本のどこかに本当にある習俗かもしれない」と思わせる説得力が印象的だった。
 その手腕は、「生き屏風」でもいかんなく発揮されていて、その代表的なものは「馬の首の中でねむる」と「雪に化身する」だろう。その強烈な、或いはつかみどころのないイメージを読者に追体験させ、しかも嫌な感じがしないという匙加減は見事だ。前者では血の匂いよりも胎内回帰の安心感を、後者では感傷的な心象風景ではなく若旦那の洒脱な遊び心を感じさせて、読後感が心地よい。

「生き屏風」「猫雪」「狐妖の宴」の連作の中で、時間軸を前後しながら浮かび上がってくる各キャラクターの物語。それらは思わぬ所でからみあっていて、何度も再読したくなる。そして、まだ語られていない空白の時間に思いをはせる。さいわい続編が予定されているそうで、その空隙を埋める事ができる日も近そうだ。それまで、しばし「布団」にくるまって待つ事にしよう。次回作へのさらなる期待を込めて、星をひとつ減らした。

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紙の本生き屛風

2008/11/09 12:57

「ここではないどこか」の物語

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:侘助 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 一冊の本を読み進めるうちに,いつまでもページが途切れなければ良いのにと思うことがある。それは幸福な読書体験である。作中の世界にどっぷりと浸り切り,現実への帰還を拒否したくなる。本書は久しぶりに私にそのような思いを抱かせてくれた。
 往古より「あやかし」は人によって「語られる」存在であった。ある時は史料に恠異として記載され,またある時は口碑として採話され,そしてまたある時は囲炉裏端における古老の語りや,怪談会の場で「あったること」として披露される。その何れにおいても「あやかし」そのものが言葉を発する訳ではなく,それは常に人の口を媒介として我々の側に立ち顕れる。
 しかしながら,本書では常に「語られる」存在であるはずのあやかしそのものが,自らあやかしを「語る」という逆転の位相が中核を成している。この逆転は実に小気味よく,読者を作品世界へと誘い,決して飽かせることがない。
 私が本書に没頭した別の要因の一つに,読み進めるうちに胸中に湧いた,言いようのない郷愁がある
 作中の世界はどこか明治・大正期の日本を思わせる。登場する村人の名前や,風俗描写から,舞台は恐らく古き良き時代の日本なのではないかと想像される。しかしその傍らで,道士が影響力を持ち,花精が現れるなど中国的な要素も見られる。またその一方で,「非生物」「呪術的」「策略家」「捜索」といった現代的な修辞も散見し,ひょっとするとこの世界は,今私のいる世界と地続きなのではないだろうかとも錯覚させられる。
 このような要素が巧みに組み合わされ精緻に描かれる世界は,知っているようで本当は知らない,それでいてどこか懐かしさを感じさせる「ここではないどこか」に他ならない。私の抱いた感情は,その身近なようで決して手の届くことのない異世界に対する憧憬であるのかもしれない。
 蛇足ながら,作中に登場する現代的修辞は作品の価値を貶めるものではないということを強調しておきたい。気になる向きは「四つ足・けもの」「まじもの・まじない」「策士」「山狩り」と置き換えて頂ければ事足りるであろう。先に挙げた表現は,現実と虚実の境界を淡いものとする意味で成功しており,決して作品の瑕疵となるものではない。
 ふと,本書は国立国会図書館に無事納本されたであろうかという問いが頭を擡げる。
 本書に収録された作品は,その何れもが時代の流れと共に被る風化とは無縁であるように思われる。もし百年後の未来に稀代のアンソロジストが現れ,過去の時代を振り返り,平成の怪談文芸の潮流を総括する一冊を編む時が来るとしたなら,本書に収録された決して色褪せることのない作品が,収録の栄に浴することは想像に難くない。ただ一つ残念なことは,私自身がこの眼でそれを見届けることが出来ないであろうことである。
 本書に冠せられた「ホラー」というレーベルに惑わされることなく,出来るだけ多くの人に手にとって欲しい一冊である。
 表紙を捲り,扉を開けば,異世界を巡る至福の体験が出来ること請け合いである。

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紙の本生き屛風

2008/11/06 14:24

煙管の煙が目に染みて

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:菊理媛 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 私は根っからホラーやオカルトは嫌いな性質で、子供だまし程度でも「お化け屋敷」などというものには近づきたくも無い人間である。真夏であっても、その類の映像は予告を目にすることさえも避けたし、ましてその手の本を好んで読もうと思った記憶もない。
 この『生き屏風』をなぜ手に取ったのかについては、自分のことながらよく分からないくらいで、読み終わった今考えても「なぜ?」と思ってしまう。しかしながら、読み終えた感想としては「粋」とか「洒脱」、あるいは「風流」という言葉さえ似つかわしい作品であり、「恐ろしい」という感覚はまったく感じなかった。
 帯に「ホラー小説」と書いてあるのだから、「恐ろしくなかった」などと書くと貶し言葉になってしまうのかもしれないが、「面白かった」と言って憚らないので、私なりの褒め言葉だと思っていただきたい。
 主役は妖鬼の娘。名は皐月と可愛らしが、父は人に育てられた鬼であり、母は花塊という妖とある。なんとなく父の姿は想像できるが、母の姿は皆目わからない。花の塊というからには美しいのか? とは思う。しかしながら、主人公の皐月は「へちゃむくれ」と屏風中の奥方に言われ、「狐妖と比べて綺麗じゃない」と菊の精に言われ、散々である。しかしながら、そう言われて怒るでもないあたり、かなり性格美人と見受けられるし、妖鬼といってもオデキのような角を前髪で隠せば、見た目には人と変わりない姿の娘のようである。とはいえ、人の一生とはかなり時間基準の違う生を送っているらしく、県境に住み着き、外部から入ってこようとする邪気や病を防いでいる彼女は、赤ん坊が長老と言われるころになっても、まだ変わらすそこに居るのだという。
 土地を守っているのだから、元来、悪い者ではないという認識にいたる。入り込もうとする邪気や病をすべてを祓えるわけではないけれど、力の及ぶ限り人の生活を守ってくれる者とあらば、守り神みたいなものではないかと思う。物語中、神と妖しの違いについてなども、私見程度だけれど書かれていて、なかなか興味深いものがあった。
 さて、日本ホラー小説大賞の短編賞を受賞したという「生き屏風」。皐月がいつものように生活しているところへ、近所の酒屋の小間使いがやってくる。その酒屋では、一昨年前に亡くなった奥方が夏場になると屏風の中に現れて我儘放題を言って家の者を困らせるので、人ならぬ皐月に彼女の相手をして欲しいという。あまり気が進まないながらも出かけてみると、口は良くないがなんとなく気の合いそうな奥方が、まっかな屏風の中にいて。。。
屏風中の奥方は、商家の妻女というよりは置屋の女将といった感じの粋な女性で、三味線を爪弾きながら小唄を口ずさんでいる婀娜っぽい姿が似合う女性が想像される。生きていたころは体が弱かったため外出もあまりしなかったという色白の肌と、半開きの赤い唇に寄せたガラスの煙管から漂う赤や紫の煙という描写が、えも言われぬ美しい絵を想像させてくれる。(もっともディズニーの『不思議の国のアリス』に出てくる幼虫の姿とも多少はダブらないこともないが)
 死んでなお、この世に居つき、残した者たちに我儘を言う奥方の、ちょっと捩れた愛情が見え隠れする。読み手には、この世に残した旦那に対する愛情が見えるのに、居着かれた旦那は迷惑なばかりのようで、邪魔をされていると思いこんだ手つき女には火をつけられそうになる。それを旦那が止めるのも、死んだ女房がかわいいからでなく、家が燃えては困るからであり、悪鬼となって祟られてはたまらないからという、心根で比べればどちらが妖怪か分からないような心情が語られる。
 なんとなく胸が痛くなるような展開だが、最後にほっとするような一文があることで、心が和んだ。
 恐ろしげだが、尋常ならぬ美しい妖の女。生きてはあるが、了見の狭い愚直な人の女。屏風の奥方や里外れに住むの狐妖の方が、旦那のお手つき女や、(狐妖の宴に出てくる)八つ当たり娘よりも、粋に婀娜っぽく、美しく描かれている。
 もっとも、生身の女たちの描かれ方も、生身ならば当たり前という程度のものではあるけれど。一人、「猫雪」に出てくるお妙さんが、生身の女の面目を躍如してくれているのが救いと思う。
 収録の作品どれをとっても、ホラーというには優しく、美しい情景の話に仕上がっている。ホラー嫌いの私としては、ちょっとしたカルチャーショックな作品だった。

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紙の本生き屛風

2008/10/25 23:30

田辺青蛙「生き屏風」を読んで

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:杉山あつし - この投稿者のレビュー一覧を見る

文芸評論家、東雅夫氏の推薦文にはどこか香具師の口上のようなものを感じる。虚空から薔薇をつかみだすような手品のような瞬間性の魅力とでもいうべきか。しかし、加齢とともに嗜好が変化し、そんな魅力的にすすめられる品々もこのごろはむなしく見送ることが、私は増えてきていた。
しかし、田辺青蛙氏の「生き屏風」における東雅夫氏の推薦にひさびさにのってみようという気になった。私が偏愛してやまない梨木香歩氏の「家守奇譚」との関連性が指摘されていたからだ。
「生き屏風」を読了し感じたのは、この作家にとって怪談という表現形式は必然的なものだということだった。つまり、狭間でいきることの苦悩をえがいた節のある表題作(作中の基本構図となる、死者と妖との対話という状況から窺えるだろう)には、おそらく、作家の表現者と生活者としての葛藤も仮託されているのではないだろうか。ゆえに「怪しい話」という側面から「怪談」という語彙を規定するのであれば、この作家において「怪談」は理想的な場といえる。
表題作をおおう「夕焼け」には、西洋的な黄昏の意味あいよりは、日本的な「逢魔ヶ時」的な日常と非日常の混在を促す時制としての採択としてみるのが妥当であろう。いずれにしても作中における「夕焼け」は現実世界の朧化を促している。
この連作集をよみおえて感じたのは、三橋一夫のまぼろし部落シリーズとの近似であった。人間と非日常的な場の住民たちが仲良く暮らす空間を描いた連作であるが、そうした理想郷的なものへの憧憬も田辺氏の作品集からは感じられる。
この作品集において私がもっとも評価するのは「猫雪」である。東雅夫氏も解説で絶賛しているが、作中に展開される作家の全方位的なまなざしを感じさせる雪の描写は秀逸だ。特に発想力に作者の力を感じる作品集である。

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