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電子書籍

アイの物語 みんなのレビュー

  • 著者:山本 弘
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みんなのレビュー3件

みんなの評価4.3

評価内訳

  • 星 5 (2件)
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  • 星 1 (0件)
3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本アイの物語

2012/02/06 08:19

人は愚かだけれど、想像力という最大の武器をもっている

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:道楽猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る

遠い未来。そこではすでに人類は衰退し、地上は人類が生み出したアンドロイドたち機械に支配されている。
わずかに残った人々は住む場所を追われ、自分たちを駆逐したアンドロイドから身を隠しつつ各地で細々と暮らしていた。
そんな中、アンドロイドの「アイビス」は、自らが捕らえた「語り部」と呼ばれる一人の少年に、まだ人類がその栄華を極めていた時代にヒトの手によって創り出された古い物語(当時のSF)を語って聞かせる。
そう、これはアンドロイドの語る"千夜一夜物語"。
―― そうして少年は、アイビスによって人類の歴史についての驚愕の真実に辿り着くこととなった。

SFは苦手だと言う人が多い。何故だろう。
つらつら考えるに、それは「本格SF」と銘打たれているものには"理屈っぽく小難しい"ものが多く、その敷居の高さが読む人を選んでいるのだろうと思う。
確かに「オールタイムベスト」をざっとながめると、そういうものが多いのは事実である。
私自身、完全に文系人間なので、わけわからん理論をだらだらと説明されてもアタマに「?」がずらっと並ぶだけでちっとも理解できないし、だからきっとそういう小説を書く作家からすれば、私なんぞはまったく無用のオチコボレ読者なのだろうけど、この頃はもうすっかり開き直っていて、わけわからん部分は適当に解釈して(意外と卑近な喩え話に置き換えるとわかった気になれるものだ)、理屈よりもストーリー自体に目を向けるようにしている。そうすると、本当に面白いお話ぞろいなのだ。
だから、難しいからという理由だけで敬遠しているなら、それは実にもったいないことだと思うのだ。

で、そういう方には、日本の作家であれば、私は山本弘をオススメする(海外ならばソウヤー)。
山本弘は、SFの敷居をうんと低くしてくれる。この人の書くSFでは、小難しい理論もできるだけわかりやすく説明してくれているし、物語もエンタメ性に富んで飽きさせない工夫が凝らされている。
長縄をうんとゆっくり回して「さぁ、お入んなさい」といざなってくれるのだ。
実にわくわくする。SFって本来、ワクワクハラハラドキドキする夢物語のはずなのだ。
しかも、この「アイの物語」には、ひとつの物語として独立した作中作が7本も入っている。お得感満載ですよ、そこの奥さん!(誰?)

さて、この物語に登場するアンドロイド「アイビス」の「アイ」は「I(私)」であり「AI(人工知能)」であり、もちろん「愛」である。
そしてもうひとつ。忘れちゃならない
「虚数」の「i」。

ヒトを遥かに凌駕した知能を持つAIのアイビスが、何故繰り返し、"ただの人間"にヒトの創った物語を読み聞かせるのか。その意図は何か。

物語は所詮バーチャルだと世の人々は言う。
そんなニセモノの世界にばかり固執せずに現実に目を向けるべきなのだと。
そういう主張をする人は、私がそこで得た感動や、流した涙もまた、ニセモノだと言うのだろうか。

物心ついた頃から私は本を読むことが好きで好きで大好きで、暇さえあれば頭までどっぷり本の世界に入り込んだ。そこで繰り広げられる物語に酔い、本の中で私は実に色々なところに旅をした。様々な立場の人々の暮らしを知り、目を開かされてきた。
物語の世界では、自由に宇宙にも行けるし、銀河鉄道にさえ乗ることができるのだ。
(小学生の頃、私は本当にジョバンニやカムパネルラと一緒に銀河鉄道に乗ったと今でも思っている。)

スポーツの世界でも、イメージトレーニングが大切だとよく言われる。
頭の中で手順を繰り返し繰り返しなぞり、「出来る自分」をイメージすると、実際に行動に移した時にもイメージ通りに上手くいくことが多い。これは多くの人が経験していることだろう。

そう、まさに、その想像力こそが人が持つ最大の力なのだ。

作中作の一つ「詩音が来た日」の中で、アンドロイドの詩音は言う。
「すべてのヒトは認知症なのです。」
ヒトは物事を正しく認識することができない。すべての物事は脳の中でバイアスがかかり、まっすぐ認知することはない。見たいものしか見ない。聞きたい声しか受け容れない。だからいつまでも争いをやめることができないのだと。
世界の現状に目を向ければ、残念ながらその通りだと言わざるを得ない。

それでも、と私は思う。
ヒトの想像力は、宇宙ステーションを作り出し、ロケットを月へ飛ばした。
アンドロイドは、論理的思考により物事を「推理」することはできるが、「想像」することは出来ない。
「SFは死んだ」と言われる今こそが、最も想像力の必要な時代ではないのか。
理解できないものは、大いなる想像力をもってただ許容すればいい。


アイたちアンドロイドの言葉を借りれば

私たちはお互いのことを「茶碗の中ほども」理解できないけれど(3+5i)
愛があればすべてOK(3+10i)

これで完璧。

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紙の本アイの物語

2019/07/16 14:29

新鮮なビジョン

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ぷりしら - この投稿者のレビュー一覧を見る

ばらばらの時期に独立して書かれた短編を
こんな風に長編の中に有機的に組み込んだ構成に唸らされる。
人VSマシンの対立構図や、
マシンが完全に人と同化(=人間にとって一方的に都合がいい存在のマシン)した物語が多い中
著者の提示する人とマシンの関係の新しさ。
SFが余り得意でない人達にも読み易く受け入れられる作品だと思う。

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電子書籍アイの物語

2019/05/26 17:47

あの頃、想像されていた「人工知能」

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あられ - この投稿者のレビュー一覧を見る

「アイ」は「AI」で、2010年代後半に「エーアイ」というカタカナ語が一般に広く浸透する前の本です。

7編の短編小説を、それぞれの間に挟んだインターミッションでひとつの大きな物語として綴り、さらにプロローグとエピローグを置いて、一冊の本としてパッケージしています。

初版がハードカバーで平成18年(2006年)に出ています。収録されている7編のうち2編は書き下ろし、ほか5編は1997年、99年、2003年、04年、05年に発表されたもの。

つまり2019年の今、この本を読むことは、かなり近い近過去においてやや遠い近未来を描いていた作品群を読むということにほかなりません。「人工知能」が「SFの世界に出てくるもの」だった時代はもう過去になっていますが、実際には、現実世界で(おそらく投資を呼び込むために)イメージだけで語られている「人工知能」像のほうが、この小説で描かれている「人工知能」よりよほどSFじみています。

そういう点、ある意味で足元を見直せる本かもしれませんね。

最後に、好みの問題かもしれませんが一応……。日本のSFがとっつきづらいのは、理屈云々ではなく、独特の「男目線」の臭みがあるせいだと思うのですが、この本も例外ではありません。本題以前に、「ぼーっとしている男子の世話を焼き、テキパキと指導する、可愛い(自分のタイプの)女の子ロボット」「男子の成長を促す女子」というプロトタイプの連続は、読むのが苦痛でした。(ハインラインにせよディックにせよ、翻訳もののSFではこんな苦痛は感じたことがないと思うのですが、それは私があまりたくさんSFを読んでいないせいかもしれません。)

あと、これも好みですが、情報量のわりに言葉数が多すぎて、読むのに時間がかかりました。人工知能はこういう文章をどう読むのだろうという感想を抱いています。

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