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電子書籍

深川駕籠 みんなのレビュー

  • 山本一力 (著)
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みんなのレビュー9件

みんなの評価4.1

評価内訳

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9 件中 1 件~ 9 件を表示

紙の本深川駕籠 時代小説

2010/11/17 13:38

江戸シティマラソン、泳げ新太郎、走れ尚平

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

なにこの、映画「トランスポーター」+東京シティマラソン(トライアスロン?アクアスロン?)+箱根駅伝+『走れメロス』(太宰治著)みたいな話は。

主要登場人物が、現代のスポーツみたいなことをするたんびに、笑ってしまう。

> 素肌に茶縦縞の木綿一枚、……(中略)……その縞木綿を尻端折りにして、さらにたすきがけだ。帯には足袋が一足挟まっている。……(中略)……手足をぶらぶらと振り、目一杯の伸びをくれてから、首をぐるぐる回した。身体をほぐし、気合を充たしたところで山門を出た。

これは纏持ちの源次が、入谷の鬼子母神から飛び出す場面である。鳶の親分の辰蔵が、深川の駕籠舁きの新太郎と尚平に、約束の刻限までにお客を送り届けることができれば十両の祝儀を出すが、できなければ髷を切らせる、との賭けをした。源次は見届け人として、駕籠舁きたちの後から出発する。行き先は雑司が谷の鬼子母神、距離は約12km、男一人を乗せて二人が担ぐ駕籠は正午を過ぎて出発、到着予定時刻は午後2時。

駕籠舁きたちは出発する前に、棒で地面に図を書いて延々と走行手順を協議し、お客をいらいらさせる。しかしこれこそプロの証しであると、辰蔵親分は見抜き、源次に、油断するな、と忠告する。

駕籠舁きたちの、一見、のんきなようすは、読んでいても、いらいらするやら、おかしいやら。そして、やっと、打ち合わせが終ると、びゅん!とばかりに、出発する。道のりは、山あり谷あり、上り坂下り坂、雪に、人の波、山門の石段、そして、千住の駕籠舁きによる妨害。そのうえ、ゴール寸前に、火事まで起こる。元は臥煙だった新太郎と、纏持ちの源次は、消火にすっとんでいき、尚平も協力。お客の立場は……もうすぐ刻限の鐘が鳴るよ……

まあ、この話で、新太郎と尚平のふたりと、源次や辰蔵親分とが、知り合いになり、以前からもめていた千住の駕籠舁きとは、更に激しく鎬を削る間柄になるわけだが。

いちいち、賭けにしなくてもよさそうなものだが、新太郎と尚平とは、なぜか、そういうめぐりあわせらしい。ある時は駕籠を担いで、ある時は新太郎ひとりで、またある時は尚平ひとりで。またあるときは猪牙舟と競争で、駕籠がこわれそうになるくらい重い力士を乗せて。またあるときは、元は力士だった尚平が相撲を取ることも。

年末、新太郎、源次、飛脚の勘助、千住の駕籠舁きの寅が、大江戸シティマラソン(トライアスロン?アクアスロン?)に出場することになる。松平定信の寛政の改革が始まってすっかり不景気になってしまった街を盛り上げるため、深川の肝煎りたちと辰蔵親分と今戸の芳三郎親分とが主催して、単勝札連勝札を売り出すのだ。当日は、あの損料屋の喜八郎(この年はまだ天明七年なので江戸屋の秀弥とは知り合っていない)が、大型の餅つきの道具を運び込んできて、札を買う列にも並ぶ。

警備には辰蔵と芳三郎の子分たちが当たる。この、大江戸シティマラソン(トライアスロン?アクアスロン?)の手配りがまた、いかにも現代の競技大会みたいでおもしろい。選手たちは色違いの鉢巻を結び、折り返し地点で走りながら復路の鉢巻を受取らなければならない。走路の要所要所には立会人がいて、順番を見届ける。競技は、走り、大川に飛び込んでの泳ぎ、そしてまた、走り、である。スタート地点で、飛脚の勘助の幼い息子が、「ちゃんが一番だからねええ!」と大応援。駕籠舁きの新太郎は息杖を持ち、勘助は挟み箱を持って、いつものように拍子を取って走る。そうしないと走りにくいらしい。大店の並ぶ尾張町大路には人の波あり、テレビもインターネットもないこの時代、誰もシティマラソンのことなんか知らず、ただ、走る男たちの姿に唖然とするのみ。橋は太鼓橋で急な上りと下りあり、大工とすれ違い様に道具箱が落ち、揉めそうになる。

寒中での水泳は危険が伴う。それを口実に、奉行所同心が手下に命じて妨害行為を仕掛けてくる。役人がお役目を笠に着て嫌がらせをするのはやくざ以上にやっかいだ。

シティマラソン(トライアスロン?アクアスロン?)は大盛り上がりで大成功、あの損料屋の喜八郎は単勝札が大当たりでほくほく、相場を読むのがうまいだけじゃなかったのか。

この小説の見所の一つは、競走しているときに選手たちが眼にする景色である。品川の海と砂浜に並ぶ干し網、真ん丸な朝陽……。新太郎たちと一緒に視ることができるのが楽しい。

年が明けてから、シティマラソンの妨害を妨害された、奉行所同心が、仕返しに来る。新太郎が無実の罪で連行され、尚平は、冤罪を晴らすためにまた、賭けをするはめに。今度の走路は、もろに、箱根駅伝の花の2区である。まさに、走れメロスである。ふたりの間には、美しく優しく賢いおゆきさんをめぐって恋の競争もあったけど、男の友情は何よりも強かった。

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紙の本お神酒徳利 時代小説

2010/11/17 18:27

できる駕籠舁きも、ひとりではデキない

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

ときには、路傍で苦しんでいる臨月の女性を茶店に運び、産婆をおぶって連れてくる。
ときには、火事の現場へ飛んで行き、火消しを手伝う。

新太郎と尚平はできる駕籠舁きだ。現代だったら、救命救急士や消防士のような仕事についていたかもしれない。

駕籠舁きは脚の速いのが自慢である。飛脚と勝負してもなかなか決着が付かない。そのために、前の年の師走に、深川の肝煎りたちと鳶の辰蔵親分と今戸の芳三郎親分とが勝札を売り出して江戸シティマラソン(トライアスロン?アクアスロン?)をおこなったほどである。

それなのに、新太郎と尚平は、毎月十五日、家主の木兵衛と銭函を駕籠に乗せて、深川から入谷まで、「歩いて」行かなければならない。入谷にも木兵衛の持つ長屋があって、無愛想な差配人がいるのだ。木兵衛は新太郎と尚平の身元引受人だし、実家を勘当された新太郎も、在所の村から追放された尚平も、木兵衛の御蔭で仕事と住まいを得たので、頭が上がらない。別に、駕籠に乗せていくだけならば構わないのだ。ただ、ずっと歩き通して行け、と言われるから、嫌なのだ。駕籠舁きが、「はあん、ほう、はあん、ほう」と拍子良く声をかけながら走っていかないと、町の人々が指差して笑うのだ。こどもなんかがいたずらするのだ。だけど、木兵衛さんには逆らえない、ふたり。

木兵衛は因業でけちんぼで愛人を囲っていて……と新太郎たちは思っていたが、ある行き倒れの親子との出会いから、木兵衛には実は意外な一面があることがわかる。銭函の中身の使い道も。それから、さくらちゃんというかわいい娘とも知り合えた。そしてさらに、今戸の芳三郎親分が警備を請け負っている材木商が、悪党どもに狙われていることに気づくことにもつながった。

いまいち、新太郎と尚平には、悪党どもの企みの全貌がつかめなかったが、そこは芳三郎親分、知恵があり、また、「空見」という、現代の気象予報士のような人物の助けも借りて、万全の態勢を整えて悪党どもを待ち受ける。新太郎と尚平も一緒になって、悪党たちと闘う。

人情に篤く、友情の絆の強い、新太郎と尚平。一時は、美しく優しく賢いおゆきさんへの恋のライヴァルともなったが、尚平と彼女とが相思相愛だと知ってから、新太郎は、ふたりをくっつけるために「怒り断ち」をしたり、いろいろと奮闘努力をしてきた。でも、おゆきいわく、新太郎と尚平とは「お神酒徳利」で、どちらか一方だけでは、女とデキることもできないのだ。

おゆきが誘拐され、それを助けるために尚平と新太郎は奔走し、今戸の芳三郎の力を借りる。無事におゆきが帰って来て、今度こそ尚平とくっつくと思いきや、ふたりはますます、新太郎をそばから離さない。

いささか極端な気もするが、こういう友情というか、同志愛というか、同僚愛というか、それもありかな、と思う。

新太郎が、尚平とおゆきをくっつけようとすればするほど、善意は空回りするようだ。こうなったら、作戦の方向を変えるんだ。新太郎がさくらちゃんとくっつけば、尚平も安心しておゆきとくっつくぞ、きっと。

そうだ、ついでに、損料屋の喜三郎と江戸屋の秀弥もくっついて、三組一緒に合同結婚式、なんてどうでしょうか。作者へ、お願いします……

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紙の本深川駕籠 時代小説

2018/12/18 12:01

疾走感がすごい

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:rilla - この投稿者のレビュー一覧を見る

解説内にもある通り、駕籠舁きを主人公に設定している珍しい小説。
『深川駕籠』というパッケージに入るとわかり易いのだが、第一作『菱あられ』の始まりは何が起こるか分からない緊張感をはらんでいる。

これからの方は是非、駕籠のことは一旦忘れて物語を追ってください。
連作短編なので前後を読んでいなくても十分楽しめます。


ここから、多少ネタバレあり。

『菱あられ』では、シリーズ第一作なのになんの説明もなく駕籠の話に入っていき、説明がない中でぐいぐいと、駕籠が主題であることからも圧倒的な疾走感が爽快です。
主人公の心情表現を省いた潔さもすごい。
著者の好きなシリーズということですが、温めていたものを満を持しての会心作なのではないかと思います。

もちろん、二作目以降で駕籠舁きふたりの背景が書かれていく訳で、登場人物の心情が描かれるにつれて話が重たくなってくることもありますが、それはまだ先のお話。
とりあえずは、江戸っ子の気風で日頃の憂さを晴らしましょう。

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紙の本お神酒徳利 時代小説

2009/02/28 21:32

いいなあっ!

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る

読み終わった瞬間思わず声が出てしまう。「いいなぁっ!」。何とも、心を揺さぶってくれる。なんとも僕の日本人のココロを、揺さぶってくれる。・・・面白いなぁ。山本先生の本を読むたびに、自分の住む町深川が、どんどんどんどん、好きになる。本作品もまさにそんな感じ。そんな感じの、本当に素敵な作品が、本作なんである。
前作「深川駕籠」に続く第二弾の本作。変わらず主人公は駕篭かきの二人、新太郎と尚平である。駕篭かきだからこその視点で、江戸の街と風俗を感じさせてくれる。お互いを「相方」と呼んで信じあう二人。だからこそ、のジレンマもあったりする。そこに今回は焦点をあてている。お互いがお互いを必要としている。でも、一生の伴侶にはなりえない。心に決めた女がいても、相方を思えば祝言は挙げられない。そういう相方を、また心苦しく思う相方がいて・・・。そんな折り、その女がかどわかし(誘拐)にあってしまうのだ。静かに怒りを募らせる二人。それでも物語は決して上ずらない。ぐっと丹田に力を込めて怒りを腹に貯めて、犯人を追い詰めていくのだ。ちゃっちゃかした今の世の中に、「事が甚大であればあるほど、落ち着いて大人であれよ」と訴えかけているようだ。
毎度新しい切れ味を見せてくれる山本作品。3つの短編が、まさか最後に見事に絡むとは。最近読んだ本の中では、一番「そうきましたか!」感が強かった。しかも清く美しく粋であって「情けは人の為ならず」なんである。ああーー面白い!!

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紙の本深川駕籠 時代小説

2006/04/23 08:46

バディ。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る

山本作品の魅力は、いきいきとした時代描写にあると思う。文化・風俗から、「心意気」なんていう目に見えないものまでとても自然に描き出し、読み手を心行くまで堪能させてくれる。
山本作品の舞台は江戸時代。そうパリパリの武家社会を、時には高級料亭の女将の視線、また時には損料屋という当時の便利屋の視点から等など、色々な視点から楽しませてくれる。今回はなんと、「駕籠屋」だ。小説・ドラマを問わず、「駕籠屋」の視線から描かれた物語というのは、存在したのだろうか・・・。とにかく、当時の社会層の底辺近くに位置しながらも、武家社会に無くてはならない存在だった、駕籠屋の視線から描かれた短編集が本作品である。
駕籠屋だからこその視線で描かれた本作品、今まで以上に物語にそして当時の文化に溶け込む事が出来る。単純バカだからこそ可愛い、男の意地と愛嬌。本当の「粋」とか「カッコ良さ」ってのは身分でも身なりでもないのだ、という事。そして美しい江戸の街と人々の様子。それらを、胸すく物語七編から満喫する事が出来る。
さらには山本ファンには溜まらないコラボも。江戸屋の秀弥や損料屋の喜八郎、そして達磨の・・・。こういったちょっとしたファンサービスも忘れない山本氏だからこそ、読み手が本当に楽しめる作品を生み出す事が出来るのだろう。
最後に本作品の言葉からご紹介。お笑いブームの昨今、「相方」という言葉を良く聞く。これは、二人で一つの駕籠を運ぶ駕籠屋から来ているのだ。二人の息と調子がピタリと合った時、駕籠は最も速やかに揺れもなく進む。そう、二人はバディなのだ。二人の肩で運ぶ駕籠、「相肩」である。日本語っていいなぁ、と改めて感じる事が出来るのもまた、山本作品の魅力である。

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紙の本お神酒徳利 時代小説

2010/09/30 20:11

相肩を気遣い合う新太郎と尚平の強固な結びつきを描く、深川駕籠シリーズ第二弾。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る

深川の駕籠舁き・新太郎と尚平の粋と矜持と人情と、二人の周囲で起こる事件を描いたミステリー風の作品。
新太郎と尚平のプライドをかけて競う賭けに焦点が当てられていた前作「深川駕籠」とうって変わって、今作品では恐喝、拐かし事件が中心のミステリー風の作品となっている。
収録されているのは全3話。

●勘当された実家の隣町に火事が起き、実家を守るため、その鎮火に奔走する新太郎を描いた【紅蓮退治】
●今戸の渡世人・芳三郎が材木の見張りを請け負う材木問屋丸木屋への恐喝事件をミステリータッチで描き、新太郎と尚平の家主であり親代わりである木兵衛の意外な素顔を描く【紺すがり】
●尚平とおゆきのなかなか進展しない関係と、おゆきの拐かし事件を描いた【お神酒徳利】

実は、前作品もそうだったのだが、新太郎と尚平の周囲に起きた事件の解決には、直接二人が関わっていない。
事件そのものが今戸の渡世人・芳三郎に関わりあることもあり、解決には二人の知己となった芳三郎が中心となってあたり、二人はそのサポート役をしている。
そのため、芳三郎の男っぷりに主人公の二人が喰われてしまっている雰囲気があり、主人公の活躍を期待していた人には物足りなく感じるかも知れない。

その一方で、相方を気遣い合う二人の強固な結びつきや、困っている人をみんなで助け合う人情、己の事に責任を持つ矜持を濃厚に描いており、爽やかな気持ちにさせてくれる。

人によっては、「深川駕籠」と「お神酒徳利」で描かれている物語の違いに、シリーズものの連続性が失われたと感じるかもしれない。
しかし、一本の棒を互いの肩で支え合う『相肩』、新太郎と尚平の結びつきの強さをモチーフとして、二つの味で楽しませてくれると考えれば、紛れもないシリーズもの。
その男っぷりに目立ち気味の芳三郎も、ひとたび新太郎と尚平の強固な結びつきに目を向ければ、たちまち影が薄くなってしまうだろう。

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紙の本深川駕籠 時代小説

2010/09/26 18:38

足の速さに自信を持つ駕籠舁きが、プライドをかけて競う賭けを中心に描いた時代小説。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る

人は、ちょっとした意地の張り合いから争いに発展することがある。
それが矜持の強い江戸っ子であればなおさらで、己のプライドを守るべく、相手に負けまいとする。

この作品では、足の速さに自信を持つ駕籠舁き新太郎と尚平の二人が、己のプライドをかけて競う賭けを中心に描いた時代小説。
ただの口論から、メンツを立てるための賭け、運を天に任せる賭けまで、さまざまな経緯で到る賭け。
当然すんなりと賭けが進むわけもなく、邪魔が入ったり、問題が起こったり、さまざまな困難が起こる。
それを乗り越えてもたらされる決着が爽快な作品となっている。

本書のクライマックスは何と言っても、前後編として描かれている『うらじろ』と『紅白餅』の年末寒中トライアスロン。
これまでの主要な人物を総動員した物語は、一番速い者を決めるに相応しい盛り上がりを見せ、途中で入る邪魔などを乗り越えてゴールする緊迫感がたまらない。

【菱あられ】
鳶頭の辰蔵とのちょっとした口論から、髷を賭けて客を運ぶことになった新太郎と尚平。
入谷から雑司ヶ谷鬼子母神までの三里(約十二キロ)を、八ツ(午後二時)までに着かなければいけない。
道順の確認をする二人に九ツ(正午)の鐘が鳴り、八ツまであと一刻(二時間)を告げた。

【ありの足音】
同じ木兵衛店に住む正之助は、毎年十六日に筑波山で松茸を採り、深川猿江町の下妻藩下屋敷まで届けている。
今年は馴染みに飛脚が病のため新太郎と尚平に頼みたいという。
往復四日で六十里(約二百四十キロ)を駆けなければならず、渋った新太郎だったが、家主であり親代わりである木兵衛からプライドを刺激され、仕事を引き受けた。

【今戸のお軽】
今戸の渡世人芳三郎は、娘と札差の跡取りとの結婚を破談にした。
札差がメンツを立てるために提案した四千両の賭け。その内容は猪牙舟と駕籠の競争、そして相撲である。
偶然芳三郎の娘と関わり合った新太郎と尚平は、芳三郎側としてその賭けにでることとなった。

【開かずの壷】
木兵衛が後見となり、ある御家人の屋敷へ奉公にあがっていた順吉が、女中と逃げた。
その女中は、代々伝わる百五十年ものの盆栽を落としていたのだが、後見の木兵衛に百両を吹っかけてきた。
百俵取りの御家人にしては、立派な屋敷に住み、三日ごとに海苔を十帖、かつお節を三本仕入れると聞き込んだ新太郎は、博奕の匂いを嗅ぎ、先日の四千両の賭けからつき合いが始まった今戸の芳三郎の元へ向かった。

【うらじろ、紅白(めおと)餅】
年の瀬の押し迫る中、新太郎は、同じ店に住む飛脚の勘助と、どちらの足が速いかで揉め、決着をつけることになった。
それを聞いた鳶頭の辰蔵は、ライバルである駕籠舁き千住の寅を加える提案をすると、雑司ヶ谷鬼子母神までの賭けを見届けるために一緒に走った鳶の源次も勝負したいと言い出した。
かくして富岡八幡宮~高輪大木戸の行き帰り三里、帰り道の大川は泳ぎで渡るという、寒中トライアスロンの火ぶたが切って落とされた。

【みやこ颪(おろし)】
年末の寒中トライアスロンに関わる一件で煮え湯を飲まされた、南町奉行同心大野の恨みは消えていなかった。
年が明けると、新太郎は、大野の仕掛けた盗みの罠にはまり、木兵衛とともに番屋へ連れて行かれる。
その罠の片棒を担ぐ元博奕打ちの豊吉は、今戸の芳三郎に脅され、尚平が朝六ツ半(午前七時)に出て、四ツ(午前十時)までに江ノ島参道一ノ鳥居に着けば、全てを話すという賭けを申し出た。

本書は、『開かずの壷』のミステリー調の物語を除き、全体的に新太郎と尚平の賭けに挑む姿がとても印象に残る。
必要以上に描かない登場人物の経歴も、賭けを芯にした物語を浮かび上がらせる要因の一つだろう。
登場人物の年齢を想像させる描写も少なく、特に主人公二人の姿がぼんやりとした印象だったが、読者が好きなように想像すればいい事に気づくと、たちまち深川駕籠の世界が鮮明に現れてきた。

このように登場人物に関する描写は、比較的あっさりとしているものの、ことのほかツキを大切にする江戸市民の粋や、困っている人を何を置いても助ける人情など、山本一力の世界は健在。
全体的にさっぱりとしつつ暖かい印象を残す、エンターテインメント性の高い作品である。

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紙の本お神酒徳利 時代小説

2018/12/19 23:14

駕籠舁きのオフ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:rilla - この投稿者のレビュー一覧を見る

駕籠を担いでいない 訳ではないですが、シリーズ第1巻と比較すると駕籠から離れた印象があります。
登場人物が、こう、揃いも揃って曲者?!って…面白過ぎる。

最初の疾走感からすると、叙述が丁寧になっていて抒情的に感じられます。
何がどうした、という目に見える展開が好きな方には少しだけ物足りないかもしれません。

駕籠舁きの二人に強烈な魅力があるので、もっとドーンと構えて書いて欲しかったかな、という気はします。
それでもお薦めです。

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紙の本深川駕籠 時代小説

2007/10/09 10:18

江戸時代最高

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:つきこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

義理・人情、そしてプライド大好き。本書に溢れる江戸の職人気質が心地いい。

水谷豊と寺脇康文の刑事ドラマを持ち出すでもなく、相棒は意外な組み合わせの方がいい。時代ものには欠かせない存在の駕籠引きですが、駕籠は一人では背負えません。二人必要です。というわけで”男の友情”的に読むのもよし、江戸の人情物として読むのもよし。知られざる職業ものとして読むのもよし。と色々な美味しさが詰まった一冊でした。

駕籠引きの驚異的な能力を知らしめる「菱あられ」から始まる全7編からなる連作短編集。大団円を飾る駆け較べに、昭和の香り漂う昔、町内の花形イベントであった町対抗ご近所さん運動会やソフトボール大会を思い出し、ほのぼのとしました。パン屋のおじさん実は昔のインターハイ選手など意外な一面が明らかになったり、熱くなるためにはやっぱりトトカルチョでしょと賭けてみたり。庶民暮らしの機微を丁寧に描き、江戸時代最高!と思わず膝を打ちたくなります。勧善懲悪なので悪ははびこらず、安心して読めます。

が、所詮小さな世界です。この一冊で完結かもしれないけれど、続編もありかもしれない。ささやかな幸せは満喫したので次回は是非大きな世界で活躍する彼らを見たい。なら山本一力読むんじゃないとか言われるかもしれませんが、もっと大暴れするのも似合う主人公達だと思うんですよね。そんな欲張りな感想も出るほど駕籠引きの主人公達が魅力的でした。

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