サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

最大50%OFFクーポン(~8/27)

修正:新規会員30%OFFクーポン(~7/31)

電子書籍

ラブレス みんなのレビュー

  • 桜木紫乃 (著)
予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー3件

みんなの評価4.3

評価内訳

  • 星 5 (2件)
  • 星 4 (0件)
  • 星 3 (1件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本ラブレス

2011/11/06 23:39

時の流れに身をまかせた浮き草の人生、あまりに哀しい昭和女の一生………とお膳立ては古めかしいのだが。「しあわせ」の尺度をひくりがえしてみえてくる生きることの値打ちには、漂流する現代の精神に対する力強いメッセージが込めれれている。

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

「馬鹿にしたければ笑えばいい。あたしは、とっても『しあわせ』だった。風呂は週に一度だけ。電気も、ない。酒に溺れる父の暴力による支配。北海道、極貧の、愛のない家。昭和26年。百合江は、奉公先から逃げ出して旅の一座に飛び込む。『歌』が自分の人生を変えてくれると信じて。それが儚い夢であることを知りながら―。他人の価値観では決して計れない、ひとりの女の『幸福な生』。『愛』に裏切られ続けた百合江を支えたものは、何だったのか?」
裏切られ続けた女の一生、この飾り帯にある解説コピーは本著の全体像を端的に説明できています。
家出した少女が旅芸人一座の仲間となり、場末の演芸場、温泉旅館で酔客相手の歌手となる。請われれば旅館の一室でストリップだってやってのける。昭和という時代の風俗がたどられ、演歌を地で行く根なし宿なしの主人公が哀しくて、私は昭和の流行歌をいくつか口ずさんでいました。

水にただよう 浮草におなじさだめと 指をさす
言葉少なに 目をうるませて
俺をみつめて うなづくおまえ
きめた きめた おまえとみちづれに

冒頭、釧路市役所で働く清水小夜子が札幌の従姉妹・杉山理恵から電話で「母・百合江の様子が変だからみてきてくれと」と依頼される。小夜子は母親である清水里美(百合江の妹)を連れて、生活保護を受けている杉山百合江の町営住宅を訪ねる。清水里美は数年ぶりに姉・百合江と会うのだが、部屋には白髪の老人に見守られて、小さな位牌を片手にした百合江が老衰のために意識不明に陥っていた。
ラストを読み終えここに戻れば、登場人物たちそれぞれの抑制された情感がギュッと詰まった秀逸の「序章」だったことに気づかされます。
昭和10年に生まれた百合江の70歳過ぎまでの人生、昭和という時代を貧しく生きた「女の一生」が語られる。

疲弊した農村から職を求めて都市へ、大量の労働力が流れてきて、ようやく定職に就く、なんとか定住の地を得る。サラリーマン層が形成される。都市に流入した新世代が「定住、定職、親子の絆で結ばれた家庭」という「家族像の原型」を再構築していった。昭和をこういう時代としてとらえることができる。

ところで「人生において幸福とはなにか」と大衆小説やドラマが取り上げる時には、大概この家族像の原型を幸福の前提にしている。だから家族が崩壊すると不幸になると。私も含めて一般的にそういう見方が定着しているのではないでしょうか。ところが『ラブレス』はこの常識を覆してみせる斬新な試みがある。百合江の場合は家族の原型こそが不幸を招く元なのです。

物語は百合江中心だが、百合江を含め相互が劇的に干渉しあいつつ里美、理恵、小夜子らの生活姿勢がたくみに織り込まれ、起伏にとんだ絶妙のストーリー構成だ。4人の生活姿勢の違いは家族像の原型に対する距離感にある。「定住、定職で親子の絆で結ばれた家庭」に幸福を求めるのが常識人の里美であり、そんな価値尺度はもたずに漂泊を選択するのが百合江なのだ。
さらに百合江を巡る三人の男たちのこの距離感の相違を鮮明に描くことで、百合江とのかかわりにおいて三様の印象的ドラマを演出している。とにかく著者のストーリーテラーとしての構成力は驚くほど冴え渡っているのです。

牛馬のように働かされ、父親の暴力を無言のままで受け入れていた文盲の母親。豚小屋のような悪臭にまみれ、ごろ寝する粗野な弟たち。そこへ養女に出されていた妹の里美が引き取られ戻ってくる。嫌悪感をあらわにする理知的な美貌の妹の登場。
酒代の借金のかたに奉公に出され、そこの主人から陵辱された百合江、16歳。だが百合江はこの事実をゆすりの種にし、借金をチャラにして旅芸人一座の歌い手に身を投じるのであった。
百合江25歳で一座は解散。その後一座の女形だったギター引きの滝本宗太郎と二人、地方の演芸場、温泉宿、都会の裏通りとその日暮らしの流れ旅が続く。
宗太郎という人物、生活力のない、だらしないまったく魅力の感じられない男である。どうしてこんな奴とベタベタしているのかと腹が立ってくるのは、わたくし男目線でしょう。籍を入れないまま「綾子」が生まれる。
妹・里美のおせっかいで、役場勤めの高城春一と結婚するのが28~29歳。二人の間(?)に理恵が生まれ、百合江は始めて「家庭生活の原型」を体験するのだが、決定的な絶望だけが残る結果となる。ここで彼と彼の母親から凄まじい暴力と苛めを加えられるのだ。男性の作家ではとうてい描けないような母性そのものをズタズタにする二重三重の破壊行為に、男の私は読んでいて戦慄を覚えました。
三人目の男は旅行会社に勤務する石黒。春一と結婚、温泉旅館に仲居として働く百合江を支え、お互いに惹かれ関係を持つ仲だが、結婚はしないで別れる。石黒は百合江の理解者であるがために、彼女は漂泊の人であり結婚という形に幸福を求める女性ではないことを知っているからだ。

余談だが、私はあの「フーテンの寅さん」を思い浮かべたのです。おいちゃん・おばちゃんの団子屋とさくらの家庭、幸せな暮らしを見て寅さんは立ち尽くしています。そして寅さんはあれだけ女性たちに惚れられながらなぜ結婚しなかったのだろうか。特にドサ回りの三流歌手・リリーとは結婚してもよかったと思った時期がありました。本著はその理由をはっきりさせてくれました。結婚したら壊れる愛だった。流浪のままでいるからこそ、お互いがなくてはならない存在であって、愛を確信し続けられる二人だったのです。

平易な文体に情感があふれる。登場人物のそれぞれの個性が際立つ。何よりも構成が絶妙である。愛とはなにか、結婚とはなにか、幸福とはなにか。家族とはなにか。これまでの価値尺度を完璧にひっくり返して問い直したところの新鮮さは衝撃的でした。

さすらう日々の過酷さは古くからある上出来の人情話風で涙に目がくもったが、よくよく焦点をあわせれば、その背後から見えてくるこの女性像にまた別な涙が零れ落ちました。私の涙腺はいくつあるのだろうか。

絶妙な語り口に乗せられて 百合江の生き様に寄せた思いを長々と述べてきましたが、百合江の歳に手が届きそうな私だからでしょうか、実はまったく異質な感動を受けているのです。私の心を激しく揺さぶったのは百合江の人生の有り様ではない。その死に際にあったことです。なんだかんだと理屈をつけてもこれは不幸な人生だったのだ。にもかかわらず死に際の彼女の内心には俗人にはおよびもつかない気高さがありました。
いくつものかくされた謎がラストで読者の前に氷解する。文脈では必ずしも百合江がこれら「事実」を知っていたかは明らかではない。でも私には彼女はそこにあった「真実」のすべてを感じ取っていたのだと思われるのです。そのうえで、この世に未練も悔恨も残さず、沈黙のままに、ただ自分の人生が充実したものだったことを確信して去っていく。彼女を知る人たちの胸に忘れがたい存在感をとどめながら。そこには単なる気高さというよりも、宗教的雰囲気をおびた清浄さが立ち昇っている。
そして、漂泊の人生ではない普通の人生であっても、この死に様には惹かれるところがある。



このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本ラブレス

2011/11/28 12:28

昔々のお話じゃない。古臭くてでも新しい、本当に強いのはまさしく女性だと思わせるお話。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:チヒロ - この投稿者のレビュー一覧を見る

主人公は、夕張から標茶の開拓村へ両親と移り住んだ百合江と、彼女の妹で、10歳まで夕張で知り合いに預けられた里実の姉妹。
極貧のため、夢を捨てた百合江は、
途中から標茶に連れてこられた妹の絶望を気遣いながらも、
自由を求めて旅芸人一座についていく。
しかし、幸せも不幸も長くは続かない。
流転に次ぐ流転。
心によりどころは無く、考えるは今日か明日のことだけ。
それでも前向きに生きて行けたのは、たった一人の娘との生活。
百合江が求めた幸福はほんとにささやかなものだった。

厳しい北海道の自然に負けないくらい過酷な人生に目が離せずほとんど一気読み。

登場する男たちの力のなさに腹が立ち、ある時は失望させられるが、
百合江と里実姉妹のタイプの違った強さに驚き、共感し、圧倒される。
特に少女時代の開拓村と、短い結婚生活の頃の暮らしは衝撃的。

最期が近づいた年老いた百合江と、それを見舞う里実と彼女らの娘たちの現在が交錯してつづられている。

桜木さんという人を今までまったく知らなかったけど、この人すごい。
他の作品も読んでみたい。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本ラブレス

2012/10/08 20:38

昭和むんむん

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:わかめ - この投稿者のレビュー一覧を見る

派手な表紙から、もっと衝撃的なラブロマンスを想像していましたが、昭和のにおいむんむんの女一代記。北海道が舞台なので寒々しくももの哀しい。黄色というよりは雪原の白のイメージかなぁ。女四人の名前がまぎらわしいのが難ですが、ぐいぐいぐいっと引き込まれる力作でした。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

3 件中 1 件~ 3 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。