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電子書籍

海と毒薬 みんなのレビュー

  • 遠藤周作
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みんなのレビュー5件

みんなの評価4.2

評価内訳

  • 星 5 (2件)
  • 星 4 (1件)
  • 星 3 (2件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
5 件中 1 件~ 5 件を表示

紙の本海と毒薬 改版

2006/03/08 20:39

良心とは?神とは?医療とは?深く暗い題材がうねりただよう

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 戦争の末期、大学病院でおこったという白人捕虜の生体解剖事件を題材とし、良心とは?神とは?を問いかける。著者の初期長編であり、その後の著作に繋がるいくつかのテーマが含まれている作品である。
 事件の当時研究生だった主人公。彼は助からない患者をそれでもなんとかしようと努力を続ける医師でもあったが、死に行くものをどうすることもできない虚しさも感じている。その周囲では教室間の競争で手術をさせられ、その失敗も隠される患者もいる。そんな中で捕虜の解剖が「戦場での手術の基礎データ」のため、と計画される。
描かれた大学病院の教室間での競争は、どこか「白い巨塔」に通ずるものがある。しかし、事件に参加した医師自身は、逆らえない上司の命令に従ったというのとは少し違う思いを持っている。主人公は「断れば断れたのだ」がもうどうでもいい、と承諾してしまう。もう一人の研究生は、自分には良心がないのでは、と思い続けている。
戦時中という異常な状況のせいなのか、人間の持つなにかがそうさせてしまうのか。病院から臨める海が題名にも取り上げられているが、深く暗い題材がその海にうねりただよっているようである。「成果という大義名分」や「医の倫理」といった医療にも深く関係した問題提起を含むので、医学系の職業に携わる、あるいは携わろうとする人には、是非一度読んでもらいたい作品である。ちなみに著者は、自身が結核で何度も手術を受けるなど、患者としての経験の中から医療問題にも積極的に意見を述べている作家であったことも記しておきたい。
提起された問題があまりも深く暗いこと、複数の関係者の視点から描いた手記風の体裁をとっているので一つの中心が見えにくいことなどから、小説としては一つの結論にむかって凝縮していくことはなく、まとまりきっていないような感が残るかもしれない。 著者自身もこの題材をもう少しなんとかしたかったのではないだろうか、この作品のおよそ20年余り後に書かれた「悲しみの歌」では、この作品の主人公の医師が再び登場する。著者も年齢を重ね、人生の体験をさらに踏まえて書かれた「悲しみの歌」も、合わせて読むとよいと思う。

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紙の本海と毒薬 改版

2019/04/17 19:35

深いなあ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る

何十年も前に読みました。
再読しましたが、印象が全く違いました。
すごいです。

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紙の本海と毒薬 改版

2016/03/02 15:36

悪の凡庸さ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:つよし - この投稿者のレビュー一覧を見る

戦時中に行われた人体実験という重いテーマを、無駄のない引き締まった文体で描いている。人を生きたまま解剖し、死に至らしめるという猟奇的な行為に手を染めたのは、異常者の集団ではない。ヘドが出るほど卑近で、ありふれた医師、医学生、看護師たちである。ハンナアレントが指弾したアイヒマンの凡庸さに似て、保身や嫉妬、思考停止やニヒリズムといった我々にお馴染みの感情が大それた犯罪をならしめる。抗っても抗っても黒い海に引き込まれるというメタファーが象徴的だ。悪は我々のすぐそばに、ぽっかりと口を開けている。

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紙の本海と毒薬 改版

2010/06/29 15:10

日本人とは、なにか?

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:K・I - この投稿者のレビュー一覧を見る

終戦前に実際にあったアメリカ人捕虜に対する人体事件を題材にした小説。
テーマも雰囲気も全体的に重い。海の描写やイメージがところどころに出てくるのだが、
その海のイメージすら重い。
だからなのか、導入部では、一人称のわりととっつきやすい入り方になっている。
たしか他の遠藤周作作品もそうだったが、小説の始まりが入りやすいようになっているものがある。

解説も的を得た解説だと思う。
「日本人とは何か」それが遠藤周作をずっと捕らえて離さないテーマである、と。

僕は今回、この本を再読したのだが、ある程度時間が経てば再び、再読するだろう、と思う。

それだけの力の入った作品だし、評価されるべき作品だ、と思う。

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紙の本海と毒薬 改版

2015/09/28 18:43

平凡な人間が罪を犯す様が怖い。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:historian - この投稿者のレビュー一覧を見る

全体を通して暗く陰鬱な雰囲気が漂っている作品。取り立てて善とも悪とも言えない平凡な登場人物たちが、人の命が軽くなる異常な環境下にいると、空爆しにきた捕虜とはいえ人間を生きたまま解剖するというとんでもない悪事に手を出し、それでいて良心の呵責や罪悪感に苛まれることもない(心のどこかで感じてはいても)というストーリーは怖かった。同時に、それは今は普通に暮らしている我々にも起こりうることであるとも感じ、なおさら怖くなった。

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