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電子書籍

愛のひだりがわ(新潮文庫) みんなのレビュー

  • 筒井康隆
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みんなのレビュー4件

みんなの評価4.0

評価内訳

  • 星 5 (2件)
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  • 星 1 (0件)
4 件中 1 件~ 4 件を表示

紙の本愛のひだりがわ

2007/08/30 00:02

小学6年生の少女を主人公にしたティーンエイジャー向け読み物と見せかけておいて……。児童文学の枠を借り、社会のあちこちに警告を発し、文学的実験も怠らない――筒井康隆、たゆまぬ文学の冒険。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 大きな扉がギイーッと開いて始まる少年ドラマシリーズ「時をかける少女」が面白くてたまらなかった。あのシリーズへの再放送リクエストは多いらしいけれども、もうフィルムが残されていないとか何とか……。ドラマと前後して親に買ってもらった新書サイズ『時をかける少女』(初版が40年前になるという)もさんざん読んだ。しかし、それがずっとあとになって本棚の奥から出てきたとき、「ああっ、これって筒井康隆原作だったのか」と吃驚したものだ。ジュヴナイルを読んでいた時代、作者や訳者、解説などにはまるで無頓着だったのだ。
 爾来、筒井康隆のジュヴナイルというと、イメージがどうも『時をかける少女』だけに固定されてしまっているのは困ったもので、ああいう小説ではないかと思って『愛のひだりがわ』を読んだら、あまりのジュヴナイル「らしくなさ」に今度は吃驚してしまった。しかし、「筒井康隆、やっぱり、すげっ!」とも思った。これほど読みやすい小説で、野心的な文学的たくらみを実行できるとは!
 この文庫カバーに「近未来の日本を舞台に、勇気と希望を失わずに生きる少女の成長を描く傑作ジュヴナイル」とあるが、この内容、おおよそのところはつかんでいても、厳密に言うと「近未来」と「ジュヴナイル」は違うだろう。
「近未来」という言葉、最近は数年先ではなく、「核爆発が起こって人類がいったん地下生活を経験したのち」まで覆うようになってしまった。その意味では「近未来」も正しかろうが、一般市民が自衛のためと称して拳銃をどんどんぶっ放す世の中になっている日本は決して近未来ではない。「並行世界」とした方が、作者の意図により一層沿う紹介になる気がする。
「愛」という名の少女が、母親に先立たれ、出奔して行方不明の父を探し出そうと旅に出る。『家なき子』的な児童文学スタンダード物語の枠を借りているわけだが、拳銃使用が日常的であるほど荒んだ日本社会という設定は、まだまだ虚構世界のものなのだ。てんでリアリティがないという意味で「虚構世界」と言いたいのではない。むしろ、筒井流の虚構の描き方に感心する。つまり、これが翻訳されて米国人たちが読んだならば、市民による発砲事件など十分起こり得ることで「並行世界」もへったくれもない。犯罪が増えてきたとはいえ、またまだ一定の治安が維持され、公安が機能している日本社会に生きる読者相手だからこそ、現実世界と極めてそっくりな「荒んだ日本社会」という設定が生きるのだ。そのあたりの際どい摺りかわし方が確信犯的でしびれる。
 ジュヴナイルも筒井流ジュヴナイルということならば分かるが、差別用語はさりげなく使うわ、激しいバイオレンスや過激な犯罪とまではいかなくともノワールめいた要素もあって、「ジュヴナイル向け」などという構えで書かれたものではない。「ジュヴナイルの領域にふさわしいテーマや物語をつくったのではなく、いま書くべきテーマにもっともふさわしいのがジュブナイルの領域と確信して書かれているという一面もあり、『愛のひだりがわ』はジュヴナイルのテイストを意識したきわめて戦略的な作品であると言えるのだ」という村松友視氏の指摘に深くうなずける。
 心理学への傾倒、実験的な手法ばかりの優先で、物語自体は破綻も構わずハチャメチャでちょいとついて行きにくくなったという時期の小説のように、表立った戦闘態勢にはない。だが、児童文学という隠れ蓑を使い、過去の世界の文学作品を匂わせながら、今の日本社会の底辺を覗かせるように書いている。エロティックな要素はないけれども、「少女の旅を借りて」ということでナボコフ『ロリータ』と二重写しになった。左手が不自由で、頼れる血縁がいなくなり、次々とお金を巻き上げられて行く「愛」は、日本の姿そのものにも映る。ナボコフがロリータの中に米国を描いたように、愛自身も愛が行き当たりばったりで出くわす人も場所も、どうしようもなく日本だ。
 アニメの影響で少女は「世界を救う人」として神聖化されたイメージも根強くなってしまったが、ここに書かれた少女は少女らしく、「さあ、どうしようか」と悩み考える。そして「ひだりがわ」にいる誰かと共に乗り越えて行こうとする。小さな自分の力の及ぶところで「さあ、どうしようか」と行動していくところが共感できる。

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紙の本愛のひだりがわ

2006/08/09 20:12

ここには『わたしのグランパ』で筒井がみせた明るさはありません。『家族百景』で超能力ゆえに、ある時から追われ始める少女の世界、いや半村良が『岬一郎の抵抗』で描いたものと同じ世界があります

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

《父親が失踪し、母をなくした少女。野良犬に腕を噛まれ、左腕が使えない少女は、母が遺した僅かなお金を母の友人だった英知に奪われ、学校では苛められながら暮らしている。そして父を求めて東京に旅立つ》ビルドゥングスロマン。
英知は妻の千代子と料理屋を経営しています。2人は、少女の母親が死ぬと、その金を奪い、「働けせてあげる」と恩着せがましく少女をこき使うのです。千代子は少女を学校にも行かせず、店の手伝いをさせては、少女に辛く当たります。その少女は、5歳のときにダンという犬に噛まれ、医師のいいかげんな治療で左腕が動かなくなっています。そうした彼女を千代子はあざ笑うのです。
少女の唯一の見方は、生まれつき青い髪の少年サトルです。彼は好意から「町の美少女」を探す雑誌に、少女のことを投稿してしまいますが、それが彼女を町にいられなくしてしまいます。少女が雑誌の表紙を飾ったことを嫉妬した同級生によるイジメはさらに激しくなり、彼女が受け取った礼金を狙う英知と、一人息子のヤマトの追求に、ついに少女は家出を決心するのです。
少女が目指すのは、自分たちを捨てた父が向かったであろう東京です。途中で待ち受けるのは、少女の美貌に目を付け、所持金を奪おうとする男たちです。
暴力が支配し、自警団が警察の役を果たす、行く先々の町。彼女を支えるのは、彼女の言葉を理解し、彼女を守るようになった犬と、サトルです。少女に旅をしようと申し出る老人が手渡した金は悲劇を呼び、さらに彼女は追われていきます。豪邸に住む美貌の少女 歌子、同棲する男に辱められながら必死に生きる詩人の志津恵、彼女の才能を見抜いたサトルの叔父の俊輔。彼女の全財産を奪った二人の男。
少女の名前は「愛」といいます。中学生の少女が、悪意に満ちた近未来、いやむしろ現在のといってもいい殺伐とした日本を旅しながら、人の心に棲む悪を見つめていきます。これは決して架空の話ではありません、そう思わせる説得力、そして反論を許さない現実が悲しい。
ここには『わたしのグランパ』で筒井がみせた明るさはありません。『家族百景』で超能力ゆえに、ある時から追われ始める少女の世界、いや半村良が『岬一郎の抵抗』で見せた世界と同じでしょう。タイトルから、勝手に「愛」の持つ表と裏の世界に対し、左側という新たな設定をした話かと思っていた私には、予想もつかない深い悲しみと、苦味をもった世界でした。
最後に彼女が再会した父親に語る宣言、そこに現代の人間の新しい生き方をみるのは私だけでしょうか。岩波書店からの単行本は入手し難くなりましたが、今度、新潮社から文庫版で再登場。夏、プチ家出をしたくなる少女のみなさん、その前にちょっとでいいから、この本を読んで、現実を見つめてください。そして、勇気をもって一歩を踏み出しましょう。
そう、家に残るのも勇気ある一歩です。

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紙の本愛のひだりがわ

2007/08/04 21:06

子供時代の終わり

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:アリオス - この投稿者のレビュー一覧を見る

近未来の無法地帯と化した日本が舞台の、少女の成長物語。
左腕が不自由な十二歳の少女・愛のひだりがわには、いつも彼女を守ろうとする誰かがいた。
それは、人間味たっぷり(?)の犬だったり、生まれつき空色の髪をした少年だったり。
十二歳の少女、愛の一人称ということもあり、漢字や難しい言葉の少ない平易な文章(字も大きめ)で、あっという間に読めました。
十代向けかと思っていましたが、最後の一文は、大人だからこそ、悲しく、切なく、寂しく響くものかもしれません。
誰にも必ず訪れる、子供時代の終わり。
愛には、それはある瞬間はっきりと確信できる形で訪れましたが、自分自身、それがいつのことだったか思い出せません。
けれど、確かに失ってしまったものならいくつも思い出せるのです。それが寂しくもあり、甘酸っぱくもあり・・・そんな読後感でした。

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紙の本愛のひだりがわ

2013/10/27 19:44

愛のひだりがわ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kito - この投稿者のレビュー一覧を見る

行方不明の父を探す旅に出た小学六年生の少女の成長を描いたジュブナイル。
小説の最初から最後までで3年ちょっとの月日が流れるので、そこそこの期間を描いた成長物語。(途中で一気に年月が飛びますが)
各章立ては、主人公の少女・愛の旅の転機となる人物を章題にして描いている。
第一章 デン 
第二章 ご隠居さん
第三章 悟
…のような感じ。
読みやすく、読み進めることには苦にならない。荒廃した近未来というやや暗めの舞台背景で、かつ、主人公もそれほど前向きではないのだけれど、暗さや悲壮感は不思議と少ない。

悟やお母さんの描き方には若干もやもやするところがある。
正直、ご隠居さんがあまり良い人に思えないのは個人的な思い込みなのだろうか。
一番違和感を感じたのは歌子さんであり、確かに生きる為にやむを得ないとは言え、ちょっと柔軟性良すぎないだろうか。変わりすぎじゃないだろうか。受け入れられるものなのだろうか?

ラスト、父親との結末は正直寂しいところがある。感動的なラストをどこか期待していたところに、この現実的で冷ためのラスト。父親に会いに行く道中でものすっごく寄り道している辺りからも愛の気持ちの変化が何となく分かってしまう。
成長するにつれ失っていくものがある。最後の最後でその象徴的なことが描かれる。愛の成長が頼もしくも思えるけれど、同時にやっぱり寂しさが残る。

あまりに唐突な締めに、読み終わった直後は「途中で終わってないか?」と思ったけれど、案外こういうあっさりした物語の締め方は上手いのかもしれない。

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