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電子書籍

十字軍物語 みんなのレビュー

  • 塩野七生, 塩野七生 (著), ギュスターヴ・ドレ (絵)
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みんなのレビュー23件

みんなの評価4.4

評価内訳

  • 星 5 (17件)
  • 星 4 (5件)
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  • 星 1 (0件)
23 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本十字軍物語 1

2010/10/30 15:04

ある国の現状が思い起こされる

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 塩野七生待望の最新作のテーマは十字軍。中世ヨーロッパの主人公である騎士が、聖都イェルサレムをイスラムの支配からキリスト教徒の手に取り戻すべく、結成された軍隊の物語である。
 この第1巻では、教皇ウルバヌス2世によるクレルモン宗教会議の召集から、西ヨーロッパ各地の諸侯による第1回十字軍のイェルサレム攻略までの過程が描かれる。互いの利害や野心から反目しあう諸侯たちは、最初から足並みも揃わない状態であったが、それでも共通の目的のために重要な場面では一致団結をしてイスラム教徒を次々と打ち負かし、出発から3年後の1099年、ついに聖地奪還を果たす。
 律儀で温厚な性格から、騎士たちの間で自然と総大将と目されてゆくドイツ人諸侯ゴドフロア。その弟で知略に長けたボードワン。宗教的情熱よりも領土獲得に野望を燃やすクールなイタリアの伊達男ボエモンドとその甥でやはり知略に長けた若武者タンクレディ。諸侯としての地位・資力・兵力では他の諸侯を圧倒しながらも、人望がなく、やることなすこと喜劇的な失敗に終わる南フランス出身のサン・ジル。それぞれ個性的で魅力的なキャラクターが甲冑に身を固め、あり余るパワーを傾けてイスラム教徒を次々とけちらしていくさまは、男のロマンにあふれ、さながら『三国志』でも読むようである。
 だが、『三国志』において、漢王室の再興を義とみるかぎりにおいて、劉備や孔明が正義の味方、曹操が悪役となるのと同様、十字軍の騎士たちも、中世のキリスト教の立場から見て、正義の味方となるにすぎない。十字軍の決定自体、教皇がカトリック教会の権威向上のために選んだ手段であったし、また実際にはキリスト教徒への迫害もなく、それなりに治安も守られていた小アジア、パレスティナへ十字軍を送り出すことは、現地住民にとって迷惑以外のなにものでもなかったろう。十字軍が、目的地までの途上、さまざまな略奪、破壊行為を行っただけでなく、聖都陥落の際、都市の片隅に隠れていた女子供までも皆殺しにした事実は決して無視できない歴史の真実である。塩野は皮肉まじりのコメントを加えている。
 「(殺戮の翌日は)聖墳墓教会の中で、感謝の祈りを捧げることだけで終わった。異教徒と見れば見境なく殺したと同じ人が、その日は祭壇の前に泣きながらひざまずいていた。」
 第1回十字軍成功の要因は、役者ぞろいの従軍諸侯の活躍もあったが、それ以上にイスラム側の防衛体制の脆弱さが大きかったようである。しかし、イスラム教徒もいつまでも手をこまねいて見ていたわけではない。名将サラディンもやがて大きな敵として彼らの前に立ちふさがることになる。このあと刊行予定の2、3巻ではそんな十字軍没落の道のりが描かれるだろうが、本書の終わりでも、イスラム側の逆襲の様子はうかがえる。
 自分と対立する巨大な勢力圏にいきなり飛び込んで行って、小さな一画にせよそこで強引に国を作れば、その後それを維持してゆくことがいかに困難かは容易に想像がつく。本書を読んで、十字軍と同じ場所に、ほぼ同じ理由と方法で建てられた現代のある国家のことを思わずにいられなかった。原住民や周辺の民族に顧慮することなく、自らの民族国家を強引に建設したことは、何十年にも及ぶ戦争と流血の事態を生み、現在もその国では紛争が絶えない。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教―三つの宗教の聖地イェルサレムは、今もなお自らの神を絶対と信じる者たちが戦いをくりひろげる場所であるといえるのかもしれない。

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紙の本十字軍物語 2

2011/05/29 13:48

これぞ騎士道精神!

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 第一次十字軍により聖地に建てたイェルサレム王国は、恒常的な兵力不足のもと、周囲のイスラム勢力から、いかに王国を守るかという問題に直面する。『十字軍物語』第2巻では、守勢に入った十字軍国家が奮闘しつつも、結局はイスラム教徒に敗れ、サラディンのアイユーブ朝によりイェルサレムを奪われる1187年までの様子が描かれる。
 本書には数々の魅力的な人物が登場するが、中でも印象的なのが、イスラム側の英雄サラディン、そしてイェルサレム王国を最後まで守ったキリスト教徒の武将バリアーノ・イベリンである。敵同士の彼らが交わした一連のやりとりは、人間の偉大さ、魂の気高さというものが宗教とは関係がないこと、またそのような者同士は宗教や信条の違いを乗り越えて理解しあえるということの証しである。
 イェルサレムがサラディン軍に囲まれた時、ティロスという都市にいたイベリンは、敵将であるサラディンに手紙を書き、自分の妻と子どもを連れ出すために、イェルサレムまでの往復の通行許可を与えてほしいと頼む。驚いたことに、サラディンはこのあつかましい要求に許可をあたえる。かつて自らが敗北を喫した戦いで、勇猛果敢に戦ったこの武将に対する敬意の表れと、作者の塩野は想像するが、彼らの仰天のやりとりはその後も続く。
 イェルサレムに入り、恐怖におののいている市民を見たイベリンは、彼らを残して去ることができなくなった。しかし、妻子を連れてすぐに当地を去るというサラディンとの男の約束を破るわけにはいかない。そこで、ふたたびサラディンに手紙を書き、自分だけ残ってここで戦うことを許可してくれるよう頼む。サラディンは、それを認めただけでなく、イベリンの妻子を無事送り届けることまで実行する。
 その後、城砦でイスラム軍と戦い続けたイベリンであるが、いよいよ陥落が免れないという段階になって彼は、サラディンとの和平会談を要求し、サラディンも応じる。イベリンは、開城には応じるが、その条件として現在彼らが保有している資金のすべてと引き換えに城内のキリスト教徒をみな逃がしてほしいと懇願する。さらに、それでも足りない分については、イベリン個人の財産をすべてつぎ込んでもかまわないと言った。私財をなげうってでも同胞を助けようという魂のけだかさに打たれたサラディンは、イベリンとの和平に応じ、イェルサレムの無血開城は成立した。サラディンは、キリスト教徒には手出しをさせなかったという。
 これら一連の逸話には、宗教はちがえど同じ武人として互いに認め合い信義を守ろうとする男たちの姿がある。無用な血を流さず、平和裏にイェルサレムが開城されたのも、サラディンとイベリンのけだかい精神のおかげであった。塩野は、サラディンがイベリンのイェルサレム駐留を認めた記述の後にこう記している。
 ―サラディンは、このように紳士的に振舞ったおかげで、容易に陥ちるはずだったイェルサレムが容易には陥ちなくなってしまうのである。とはいえ、中世という時代の「文化」である騎士道精神は、宗教のちがいには関係なく発揮されることもあった、ということを示している。―
 人は中世を暗黒時代と呼ぶ。しかし、この中世という時代こそが、名誉を重んじ、恥を嫌う騎士道精神を生んだ。それは日本の武士道についても同様であるが、イスラム文化もしかり。民族、宗教、文化を超えた騎士道精神に人間の普遍的価値をかいま見てはっとさせられた、そんな一冊であった。

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紙の本十字軍物語 2

2011/03/25 19:55

塩野七生はやっぱりすごい

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:グリーンドルフィン - この投稿者のレビュー一覧を見る

あの大作『ローマ人の物語』のあとどうするんだろうと思っていましたが(笑)、やっぱり塩野七生はすごいですね。キリスト教圏とイスラム教圏の今日に至る対立の根の深さがこのシリーズを読みとよくわかります。今回はイスラムの勝ち。ですが、だんだん目的を超えて、戦いのための戦いにはまっていく様子が何だかこわい。そして戦いの陰で損得勘定をする奴ら。現在の国際情勢のことを考えながら読むと面白さ倍増です。

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紙の本十字軍物語 3

2011/12/25 14:45

クリスマスに思う、宗教的寛容について

5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 『十字軍物語』完結篇の本巻では、英国王リチャード1世に率いられた第三次十字軍による聖都奪還から描かれる。
 リチャードの果敢な戦いぶりには敵方のイスラム教徒さえも舌を巻き、彼らはこの勇猛な王を「獅子心王」と名づけた。かつてその武勇と知略とでイェルサレムを陥落させたアユーブ朝のスルタン、サラディンもほとほと手を焼き、ついにイェルサレムにおけるキリスト教巡礼者の安全を保証することで講和にもちこむ。その後、サラディンの弟アラディールによって二人の結んだ協定は更新されつづけ、四半世紀ものあいだ巡礼者の安全は守られた。
 巡礼者の安全を確保するのが目的の十字軍であるから、これは大きな前進にはちがいなかった。しかし、イスラム教徒と講和を結ぶこと自体が許せないヨーロッパのキリスト教徒、ことにローマ法王のインノケンティウス3世は、イェルサレムの奪還に固執し、第四次十字軍が送りだされる。だがこれは、法王の意図に反して、ビザンティン帝国を滅ぼし、ラテン帝国を建てただけで終わる。やはり宗教的憎悪にかたまった法王代理ペラーヨに率いられた第五次十字軍も失敗に終わる。
 そして第六次十字軍を率いたのが、ドイツ皇帝フリードリッヒであった。シチリア王でもあった彼は、イスラム教徒の行きかう環境で育ち、アラビア語も自由にあやつる、他宗教に対する理解と寛容とを兼ね備えた人物であった。同時に彼は大規模な船団と大量の武器をもって相手を威圧する術も心得ていた。対するイスラムのスルタン、アル・カミールはアラディールの息子で、少年時代リチャードとの講和に父と同席し、リチャードから騎士に叙され、剣をもらったという思い出をもっていた。そんな宗教的偏見とは無関係の二人は互いに通ずるものがあったのか、両者は一戦も交えることなく、イェルサレムをキリスト教徒側に渡すことで講和を成立させる。その後ふたたび15年の平和が訪れる。
 ところが、血を流さずに講和をしたことで、今回もローマ教会の怒りを買う。彼らは、イェルサレムがふたたびイスラム教徒に占拠されたのを機に、第七次十字軍を派遣する。率いるはフランス王ルイ9世。しかし彼は大敗北を喫し、「二万五千はいたと思われる軍勢の中で、帰国できたのは5千人から多く見ても七千。八千が改宗したりしてイスラム社会に溶解し、おそらくは1万以上が殺されたり病死した」。ローマ教会は、自身の無能により膨大な数のキリスト教徒を死に追いやったこの王を、聖人の列に加えた。
 その11年後、キリスト教徒最後の砦アッコンがマメルーク朝によって陥落する。そこから逃れフランスにわたった聖堂騎士団をまっていた運命も悲惨であった。十字軍とのかかわりを嫌う王フィリップ4世が騎士団の罪をでっち上げ、彼らを宗教裁判にかけたのだ。多くは拷問で命を落とし、団長も最後は火あぶりにあって死ぬ。
 本書においては、一方で中世キリスト教会の不寛容さが、それに対して、もう一方では現地で剣を交えるキリスト教徒とイスラム教徒のあいだに生まれた、宗教をこえた尊敬と思いやりが、あざやかな対比をもって語られている。結局、聖地に平和をもたらしたのは、戦う者同士が到達した寛容の心であり、宗教に関係なく経済的利益を求める現地人の人間としての自然な欲求であった。
 教養の意味についても考えさせられる。サラディンとその一族、あるいはリチャードやフリードリッヒは生まれが高貴なこともあり、高い教養を備えていた。塩野も述べているように、教養は彼らの宗教的寛容を育むのに寄与した。奴隷上がりのマメルーク朝の指導者は無教養ゆえの不寛容さでキリスト教徒を殺戮した。一方、ローマ法王のような知識をきわめた者でさえ不寛容となりうる。無知は確かに人を不寛容へと導くが、教養も使い方によっては同じ結果をもたらすものなのだろう。

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紙の本十字軍物語 2

2012/01/07 18:06

そうですか、テンプル騎士団の絵なんですね、龍さんの評に感謝ではあります。でも、絵の意味は分かっても、この安っぽさは何でしょう。CG? 油絵だったら絶対にこんなに嘘っぽくならないはずで、選んだ人のセンスを疑うなあ、それに描くならやっぱりサラディンでしょう、やっぱ・・・

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

ええ、我ながら評をまとめるのが遅いなあと呆れます。だって、今、次の『十字軍物語〈3〉』を読み始めていて、あ、もしかすると3巻目が一番好みかも、特に獅子心王リチャードなんて、私的にはカイサルよりも好きなんだなあ、この本のおかげでやっと父ヘンリーとリチャード、そしてフランス王フィリップとの関係も分かったし、なんて思っている最中なんですから。

でも順番があるから、まずはサラディンのこれまた颯爽としてところから入っていかなけりゃ、と2巻の紹介になるわけです。でも、正直、このカバーの絵がなんであるのか分かっていません。なんていうか嘘っぽい。ちょっと見にはレベルの低いCG、塩野の本らしくないなあって思いますが、本文を読むと、どうも塩野が選んだような節もある。でも、これはないでしょう、ハリウッド映画のヒトコマの方がまだ説得力があるんじゃないか、そんな風に思ってしまいます。本には
             *
装画 ルカ・タルラッツィ
装幀 新潮社装幀室
地図製作 綜合精図研究所
作図 畠山モグ、峰村勝子、Stephen C. Spiteri

カバー表 (C)Luca Tarlazzi
   裏 作者不詳 大英博物館蔵(ロンドン/イギリス)(C)AKG-images
             *
となっていますが、Luca Tarlazzi、一体何者なんでしょうか。ネットで調べればいいんでしょうが、その気にもならない・・・

で、この本について出版社のHPでは
             *
若き癩王vsイスラムの英雄――。聖地の命運をかけた全面対決の行方は?
            
十一世紀末、第一次十字軍の奮闘によりイェルサレムに打ち立てられた十字軍国家。しかしイスラム側の有能な領主たちの猛反撃を前に、キリスト教勢力は苦境に。最後の希望を一身に集めた若き癩王ボードワン四世は、テンプル騎士団と聖ヨハネ騎士団の力を借りて総力を結集。ジハードを唱えるイスラムの英雄サラディンとの全面対決を迎えた――。
             *
とあります。時代をはっきり書けば、第二巻は1118年、イェルサレム王ボードワン一世の死から、1188年、サラディンによるイスラム軍勢の解散までのほぼ一世紀のイェルサレムとその周辺の状況を、十字軍とイスラムの両方の側から描きます。前半はテンプル騎士団と聖ヨハネ騎士団、修道僧ベルナールの訴えによって起された第二次十字軍。後半はサラディンの登場と、彼の率いる軍団によるイェルサレム奪還を描く、といっていいでしょう。このイェルサレム奪還劇に対する塩野の見方、それは冒頭にある次の言葉で代表されます。
             *
 人材とは、なぜかある時期に、一方にだけ集中して輩出してくるものであるらしい。だが、この現象もしばらくすると止まり、今度は別の一方のほうに集中して輩出してくる。
 これより始まる第二巻は、キリスト教側に輩出した男たちを描いた第一巻に次いで、イスラム側に輩出してくる男たちを中心に物語る巻になる。なぜ双方とも同時期に人材は輩出しないのか、という疑問に明快に答えてくれた哲学者も歴史家もいない。人間は人間の限界を知るべきという神々の配慮か、それとも歴史の不条理なのか……。
             *
ここだけ読むと、じゃあ中国の三国時代は何よ、劉邦には曹操が、ヒトラーにはチャーチルがいたじゃない、とか、いろいろ思うんですが、逆に王朝交代のことを考えれば、今までの王朝に人材がいなくなり、新しい王朝がそれを凌ぐわけで、塩野のいうことももっともだ、ということになります。

また、塩野のいう聖堂騎士団と病院騎士団の性格分けもわかりやすい。私は両者をいっしょくたに考えていましたが、前者が低い身分のフランス人からなり、イスラム教徒の殺戮だけを目的にしているのに対し、後者はさまざまな国の身分の高いものたちからなり、基本はあくまで病院であり、時にイスラム教徒と闘うということで、この違いが、「鎖を解かれた犬」に登場するキリスト教側の、単なる狂犬、まさにハイエナとしか言いようのない極悪人ルノー・ド・シャティヨンが出自も含めて聖堂騎士団と共闘を生むことになります。

それと、多分、塩野が日本人であるが故でしょう、キリスト教徒たちの、特に十字軍を率いることになる王たちの心に本当の宗教心があったのか、と再三疑うあたりは、世に言う権威を鵜のみにしない私には、痛快としかいいようのないものです。そしてこの本で圧巻と言えるのは後半、サラディン、登場以降です。イスラム原理派の過激というよりは、独善的な行動に辟易している私ですが、この人のことを読むと宗派、民族に関係なく英雄は凄いなとただただ感心します。

テロリストと化した感のある原理派は好きではありませんが、案外イスラム好きな私は、昔読んだ豊田穣の『艦隊、山越え』を思い出しました。私は、てっきりサラディンのことを書いたものだと思い込んでいましたが、ちょっと調べると、あれは15世紀後半、メフメット二世のコンスタンテイノープルの陥落にかかわる話だったことが判明。記憶力の衰えに愕然としながら、それでも、時代は下るものの、読んで損しないことは請け合います。お時間があれば、お読みください。

最後は目次紹介。

第一章 守りの時代
  十字軍の第二世代  聖堂騎士団の誕生
  聖ヨハネ騎士団の変貌  ボードワン二世  十字軍側の女たち
  フランスから来たイェルサレム王  城塞

第二章 イスラムの反撃始まる
  エデッサ陥落  修道僧ベルナール  第二次十字軍  聖地への道
  ダマスカスへ  撤退  その深刻な影響  ヌラディンの登場
  十字軍国家の実態  大地震  ビザンチン式外交
  海軍力=制海権  十字軍と十字軍の間の歳月  宗教十字軍
  「聖堂騎士団」  「病院騎士団」
  十字軍の城塞  中世の経済人たち  海軍力
  居留地  商館  穏健なイスラム教徒
 
第三章 サラディン、登場
  スンニ派とシーア派  ファティマ朝の滅亡
  新十字軍の企てとその挫折  若きサラディン
  癩王ボードワン  イスラム世界統一への長き道
  若き癩王の終わりなき戦い  「ハッシッシを吸う男たち」
  「鎖を解かれた犬」

第四章 「聖戦」(ジハード)の年
  「ハッティンの戦闘」  勝者と敗者  バリアーノ・イベリン
  イェルサレムの攻防  男の対決
  イェルサレム、再びイスラムの手に

  図版出展一覧

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紙の本十字軍物語 3

2012/01/29 18:03

理性で考えられるリーダー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る

シリーズ最終巻。

最終巻では、第3字十字軍から第8字十字軍までが描かれています。第3次では獅子心王リチャードが、第6次では神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒが、そして第7.8次ではフランス王ルイがそれぞれ軍を率いていきます。

第1.2次では領主クラスが主役でしたが、この巻では歴史上、個人名もよく知られている王たちが聖地奪還を目指して動きます。

ただ、それぞれの目的は異なります。単に「キリスト教の聖地を奪還するため」というわけではありません。あるいは、法王との関係の中で、あるいは経済的な理由から、もちろん宗教的な理由から動いた王もいます。

印象的なのは、フリードリッヒ。聖地を交渉の末、奪還したものの、法王側は「血を流さない奪還はあり得ない」として、2度も破門されてしまった件。

当時の価値観が宗教主体であったということは理解できますが、世俗の王としては、それだけでは統治できないのも事実。”法王とうまく渡りをつけながら”目的を果たすこと様子が、語られています。

最終的には、キリスト教側はパレスチナでの領地を失うわけですが、十字軍のもうひとりの主役である「宗教騎士団」の敗戦後の動きも読んでいて面白い部分です。

組織が構成されるには、その目的が存在しなければなりません。宗教騎士団はいくつか存在していましたが、「聖地奪還」という目的がなくなってしまった敗戦後は、同時にその存在理由も消滅してしまいます。

宗教と政治、そして経済的な理由から、複雑な経緯を経て現在のパレスチナの状況まで至ったわけですが、宗教上の理由が大きくなると、他の要因は後回しにされ戦争状態になるようです。これはキリスト教側もイスラム側も同じことが言え、その両陣営の状況によっても、問題が複雑になる時期もあるということ。

理性で考えられるリーダー、しかも周りの様々な障害物を自分の有利な方向に変えつつ、事態を自分の計画通りに進められる能力が求められるのは、今も昔も変わらないはずです。

龍.

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紙の本十字軍物語 2

2011/07/17 22:10

表紙の絵が目を引きます。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る

表紙の絵が目を引きます。

描かれているのは、聖堂(テンプル)騎士団。いかつい装備と赤の十字がひときわ印象的です。

十字軍物語の2は、十字軍がイェルサレム奪還を果たし、十字軍国家を樹立した後から物語が始まります。なんでもそうですが、一度手に入れたものは永遠にそのままであることはありません。十字軍国家は、イスラム勢力の反撃に防戦一方となります。

防戦の中で、その存在感を表したのが表紙にも出ている聖堂騎士団。そして、聖ヨハネ騎士団。これら宗教騎士団は、世俗の領主の権力構造の中には取り込まれず、宗教的な理由からだけで防衛の役割を担います。

イスラムにヌラディン、サラディンと有能な指導者が立て続けに登場したのに対し、十字軍側にそういった英雄は生まれてきません。著者は、それを歴史上よくおきることとして描いていきます。

その中で第2次十字軍の失敗、イスラムの聖戦(ジハード)と続き、この巻の最後ではイェルサレム陥落まで話が進んで行きます。

本書は、軍事と政治の面からの描写が多いのは当たり前ですが、騎士道精神や登場人物の性格にまで言及しているため、人間臭い歴史の物語として読むことができます。

本書の中で一番興味深かったのは、キリスト教側、イスラム教側どちらの立場の人にも、お互いの立場を理解できる人が存在していたということです。それが指導層や一般人にも存在していることが書かれています。

ひとりひとりの人間はお互いを尊重する思想を持っているのは今も昔も変わらないということを確認できたと同時に、ひとりひとりがどう考えようとも戦争は起きてしまうということも理解できました。

次は第3次十字軍から話が始まります。

龍.

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紙の本十字軍物語 1

2011/03/20 21:35

「神がそれを望んでおられる!」の言葉から始まった戦争。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る

「神がそれを望んでおられる!」の言葉から始まった戦争。

現代のバレスチナ問題の原点ともいえる戦争を塩野さんが独特の切り口で語っていきます。

全4巻のうちの第1巻ということで、本書の内容は「第一回十字軍」いわゆる「騎士の十字軍」の結成、ビザンチン帝国皇帝との交渉、小アジア、シリアそしてイェルサレム解放と一気に話が進んで行きます。

第一回十字軍の主役は騎士。ヨーロッパ各地に所領をもっている騎士たちが、信仰心を頼りに最終的には十字軍国家を形成するに至ります。

戦争描写、政治的駆け引き、人物の心理と性格については、塩野さんらしい表現で描かれます。様々な資料から個々の騎士の性格まで描くことができるのは、職人技。

歴史の教科書に出てくる十字軍の記述は、単に無駄な戦争というイメージしか起こりませんが、本書を読むとそれが一変します。

ヨーロッパ側としては政治的な背景があったにせよ、一義的には信仰心をよりどころとしてことがなされています。一方、イスラム側は、宗教的な理由でなされた戦争ということに気がつかないまま、戦争をしているということがよくわかります。

第一回十字軍は苦難の末、イェルサレムを解放しそこに国家を樹立することに成功しますが、ここからさらに苦難の道が続いていることが予想されます。

戦争は政治の一手法とはいえ、最初のきっかけは信仰心であり、そのあとに領土欲も付いてくる。

人間の心の様子が戦争を通して浮き彫りになってきます。

龍.

http://ameblo.jp/12484/



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十字軍の起源

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:デンジャーメロン - この投稿者のレビュー一覧を見る

今ひとつ馴染みのなかった十字軍まわりの人物、出来事が塩野節でわかりやすく把握できた、秀逸な著作。あいかわらず安定の語り口は安心して読めます。
やはり地中海が世界の中心だったんですねえ・・・

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十字軍とは

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ねむこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

最終的にイスラム側の勝利で終わった十字軍。
異教徒の「血」をもってあがなう聖地とは、結局神の代理人である法王が求めただけで、現実に戦いにかり出される王や諸侯にとっては命も、領土問題も含む大問題で、最初からかみ合っていない気がします。
中身の話はそこまでで、読ませる力を持つこの作者。(適宜、地図などありがたいです)
ローマ人の物語より、テンポよく読み進められました。あのお年でまだ進化中?

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戦う男

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投稿者:ねむこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

第三次十字軍で実質最大の功労者リチャード獅子心王。
未知の場所で戦うために、きちんと準備を整え、考え尽くした戦術と自ら先頭に立って戦うことすら!
(故国で足を引っ張る人間さえいなければ、この後どうなったんだろう?)
また、戦う相手がサラディンであったのもよかったのかな?お互い堂々と戦った後の講和。
いいじゃんって思いません?
たとえ聖職者は気に入らずとも、聖地巡礼に支障はなくなったんだしって、俗世の人間なら思うんじゃない?

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十字軍って・・・

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投稿者:ねむこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

「神がそう望まれる」から始まった十字軍だけど、ならば何故「聖地」を守る第一次十字軍への支援の手が届かなかったのかがよくわかる一冊です。
なんと言っても、第二次十字軍のていたらく。
パフォーマンスだけで、イスラム側へ「弱さ」を見せてしまったのは最悪。

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中身が濃い

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投稿者:ねったいぎょ - この投稿者のレビュー一覧を見る

十字軍というのは、学校の世界史の授業でさらりと触れられるので名前は知っていますが、具体的にどういう軍隊なのかは知りませんでした。名前だけ知っていても意味はなく、この本を読んで楽しみながら勉強すると身になります。
 この本に限らず、塩野さんの著作は内容が濃くて素晴らしいと思います。それにしても、これだけのことをよく調べたなと感心します。

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初期の十字軍

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投稿者:ねむこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

十字軍と言うと、リチャード獅子心王とか、有名どころしか思い浮かばなかったけれど、第一次の十字軍はそんな華やかなものではなかったにもかかわらず、着実な足場がためをした人々を詳しく知ることができます。早く続きを読まなきゃって感じ。

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紙の本十字軍物語 3

2015/08/30 16:58

教訓が詰まった日本人必読の書

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投稿者:historian - この投稿者のレビュー一覧を見る

サラディンを破り譲歩を強いた戦上手の英王リチャード1世、交渉によってイェルサレムを奪回した神聖ローマ皇帝フリードリッヒ2世、比類無いほど高潔で敬虔だったが戦争には負けてばかりいた仏王ルイ9世。彼らの奮闘も空しく、1291年最後の拠点・アッコンが陥落し、200年に及ぶ十字軍は終わりを告げた・・・
この作品には定説を覆す新説が載っているわけではなく、丁寧に十字軍の歴史と登場人物たちの生き様を描いている。それ故にかえって、現代の政治や外交にも通じる教訓があふれていると言えるだろう。歴史に学ぶことが少なく、外国の文化や宗教に疎い我々日本人としては必読の書と言える。

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