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電子書籍

人はなぜ「美しい」がわかるのか みんなのレビュー

  • 橋本治 (著)
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みんなのレビュー8件

みんなの評価4.3

評価内訳

  • 星 5 (3件)
  • 星 4 (2件)
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  • 星 1 (0件)
8 件中 1 件~ 8 件を表示

「美しい」が分かる人=「孤独」の意味を知る人

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:濱本 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書を手にした理由は、書名が私の興味を引いたからだ。本当の意味で「美しい」ことを「美しい」と素直に言える人は、案外少ないのでは無いか?私は、常々、そう思っている。本当の意味で「美しい」を分かる為には、「醜い」も知る必要がある。その為には、何事にも目を逸らさずに、事実を事実として受け止め、自分なりに消化した上での、自分の判断が必要で有るが、世にそれだけの事が出来る人は少ないと私は思っているのである。
書名だけで、手にした本書だが、読み進むに従って著者の面白い論理展開にのめり込んでしまった。まず、著者は、「美しい」=「合理的」と論を始める。しかし、この「合理的」の限界を指摘し、「美しい」=「恋」という論理展開を進める。合理的で無い事象にも「美しい」を与えるのである。そして結論として、「美しい」=「人間関係」という論に行きつく。従って、「人間関係」の不要な人には、「美しい」も不要であるのだ。
著者は、清少納言を「美の冒険者」と呼び、兼好法師を「美の傍観者」と呼ぶ。そして、「枕草子」を面白いといい、「徒然草」をつまらないと言う。「徒然草」は、世の美をつれづれなるままに綴ったのに対し、「枕草子」は、「春は曙」と自らの主張をぶつけるのである。「美」を傍観した者の文学と「美」に挑んだ者の文学とどちらが面白いか?は言うまでも無いという論拠を綴る。私も全く著者の意見に同感である。
最後に「孤独」というものに着目する。「孤独」とは、近代になって初めて現れた観念である。「孤独」とは、「個」が認められて初めて現れる概念である。しかし、前近代においては、「個」と言う概念は無い。それは、「家」であり、「村」であり、集団である。罰や罪は、その集団に対して行われ、集団から外れた「個」は、出家又は狂気として片付けられた。「個」という概念が確立した現代においては、「自立」が求められ、「自立」は、即ち、「孤独」へと通じる。私は、「孤独」を否定的には捕らえない。「孤独」=「自己満足」=「自らを由しとする」=「自由」と考える。前近代に無かった「自由」という概念は、「孤独」という概念と共に人間に認識されたと考える。
本当の「美しい」と知る人は、「孤独」であり、「自由」であると私は、思うのである。

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敗北宣言

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:鳥居くろーん - この投稿者のレビュー一覧を見る

≪もしかしたら「美しい」と感じることと、「敗北感」はどこかで関係があるのではないか?——私は唐突にそう思ったのです。≫

「はァ?」と、聞き返す。だがその時はすでに遅く、著者の気まぐれな一撃は既に私の脳天に決まっていた。……またやられた。
端正な文章が、なにか筋道だったようなものを感じさせて、「ああ、この順路を行けばいいんですね。」と、安心して先へ進ませる。すると突如、提灯オバケやら、ろくろっくびやらが横合いからグワッと。来る。

理屈じゃ、ない。そんなことは、最初からわかっていたはずなんだ。あの輝きが、あのきらめきが、どうにも気になって仕方がなくなって、それでそこを一歩も動けなくなってしまって、そしてそんな一瞬が、もうどんな説明も受け付けないぐらいにスゴイものだってことがわかってしまって、そう、そんなことは、もう既にわかりきるぐらいわかっていたはずだったんだ。

だのにね。

やっぱりよくわからないんだ。アレがどういうことなのかってことが。

そしてそんなもどかしい気持ちをどうにか形にしたくて、みんなにも知ってもらいたくて、彼は、こんなまわりくどいカタチをとったのかもしれない。


≪「美しい」とは、「合理的な出来上がり方をしているものを見たり聴いたりした時に生まれる感動」です。≫

と言ったかと思えば

≪「合理的な出来上がり方をしているものは美しい」とか、「美しいものは合理的な出来上がり方をしている」というのは、嘘です。≫

と言い出したり、

夕焼けを美しく感じた幼少時代の叙述が、まさに美しい文章で語られたかと思えば、「枕草子」と「徒然草」のテキスト解釈が始まったり、

「そんなこんなでどうなるんだこの話はっ」などと首をかしげていると

≪豊かな人間関係の欠落に気づくことが、人の美的感受性を育てる≫

と来たり。

でもそんな不意打ち・だまし討ちでも、しばらく手の上で転がしているうちに「あ、そうかもしれない」「ああ、そうなんだ」って、だんだん腑に落ちてくる。そう感じられる。そしていつしか視線を本からはずし、遠くの方に眼をやって、なにを考えていたかも忘れる頃になると、自然に彼の決めぜりふが訪れを告げるのだ。

≪これはこれでそういうもんだから、これでいい≫

ああ、そうだったな、そういうもんだったな、と。そういった過程が、「美しい」ことを感じ取る瞬間と微妙にオーバーラップして。だから、私は安心して再び歩みを進めることができる。


「ダメだからイイのだ」といってるような気もするし。そんなことを平然と言ってもいいのかとも思うし。だからこそ余計わけがわからないし。しかし、そんな感覚のもとに、彼の中に確かなものを認めてしまう。

だって、この本は、ほかならぬ著者自身の、「敗北宣言」なのだから。

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「美しい」と思う人

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者: - この投稿者のレビュー一覧を見る

 この本は橋本治が「美しい」ということを通じて、人の生き方を見直す。「美しい」が作者によって変幻自在の広がりを見せ、時には自分自身の小説を読者に語りかけ、清少納言と兼好法師を現代日本に登場させ、また学校教育のあり方を問う。
 私が読後に感じたのは「美しい」を読者に理解させる道具を用意して、「後は美しいって自分で感じなさい」という「素っ気なさ」と「愛情」が全体を通じていた。読後はやっぱり最後は自分自身で「美しい」って感じてみたいと思ってしまった。
 なんてわかりやすく、難しく、面白く、まとまりのある本なのだろうか。何度も読みたい本の1冊だ。

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電子書籍人はなぜ「美しい」がわかるのか

2016/02/02 11:18

タイトルに惹かれた

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:onew - この投稿者のレビュー一覧を見る

枕草子の作者(清少納言)と徒然草の作者(兼好法師)の「美」に対する捉え方の違いを考察してる部分が興味深かった。

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「美しい」と言ってみたい

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:矢野まひる - この投稿者のレビュー一覧を見る

 橋本治「人はなぜ“美しい”がわかるのか」(ちくま新書)を読む。

 “美しい”がわかるとかわからないとかいう発想はしたことがなかったけれど、どうして私は“美しい”という言葉を使いたがるのか、ということはずっと気になっていた。例えば玉三郎の娘道成寺を見て。例えばウェストサイド物語の冒頭を見て。例えば新年の川崎大師の人ごみの中に出かけて。例えば「少将滋幹の母」のラストシーンを読んで。

 そうしてうすぼんやりと気がつき始めていたこと。あくまで私のイメージなのだが、“かっこいい”という言葉は、自分の中にすでにあるものを引き出すようなイメージに出会ったとき使う言葉だという気がする。良し悪しではないが、価値観を同じくする者同士の間でだけ通じる言葉だ。

 一方、“美しい”という言葉は、自分にないもの、自分の価値観の外にあるものでかつ心地よいものに出会ったとき使う言葉なんじゃないだろうか。“美しい”って、絶対に手の届かない他者を意識させられてしまう、とても寂しい言葉なのだ。しょっちゅう会っている友達だって手の届かない他者だ。それがわからない人に“美しい”はわからない。価値観の違う者が集まれば、思ったことを全部何も考えずに口にしたりするラクチンさからは遠くなるかもしれないが、“美しい”に出会える確率はうんと高くなる気がする。

 とても寂しいけれど、寂しいから“美しい”がわかる。私は他者と出会いたいから、“美しい”という言葉を使う機会を捜しているんだな、と思った。

 うっすらと、そう思い始めていたところにこの本を読んで、すっきり明快になった感じ。橋本治の本は久しぶりに読みました。「徒然草」のくだり、傑作です。ただし冒頭ははいりにくい。

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なんていうか、らしくもない、って思うんですね。論のための論の虚しさをヒシヒシと感じます。こんな視点じゃぜったいに『ひらがな日本美術史』は書かれていませんよ

6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

橋本の『ひらがな日本美術史』は、随分楽しく読ませてもらいましたが、タイトルから私はこの本もその延長線上にあるものだろうと、まず思い込みました。でも、最初に断っておけば、それは全く違います。
カバーには
・・・・・自分にとって意味のあるものを見つけ出した時、「ある」と思う感情は「美しい」と一つになります。「ある」ということに意味があるのは、すなわち「人間関係の芽」です。「美しい」は、「人間関係に由来する感情」で、「人間関係の必要」を感じない人にとっては、「美しい」もまた不要になるのです・・・・・・
「人はなぜ、「美しい」ということがわかるのだろうか?自然を見て、人の立ち居振舞いを見て、それをなぜ「美しい」と感じるのだろうか?脳科学、発達心理学、美術史学など各種の学問的アプローチはさまざまに試みられるであろう。だがもっと単純に、人として生きる生活レベルから「審美学」に斬り込むことはできないだろうか?源氏物語はじめ多くの日本の古典文学に、また日本美術に造詣の深い、活字の鉄人による「美」をめぐる人生論。」
の二つの案内紹介があります。
読んだ感想は「わからない」です。正直、はっきりしません。例えば第一章。確かに世の中には「なにが美しいかわからない」と言う人がいます。橋本はそれを字義通り受け取り、論を立てますが、そのなかには「なにが美しいか、言葉にすることができない」という人も、「自分なりの考えはあるけれど、恥ずかしいからいいたくない」という人も、「一人一人で考えが違うようなことについて、意見をいいたくない」という人もいるはずです。
同じことが「美しい」が分かる人にも当て嵌まります。機能美という言葉に縛られ、でも実際にはそうでないものに心の安らぎを覚えている人、ほんとうはちょっと違うとは思っているけれど、人にわかりやすく話を纏めることの出来る人、最近の美術館でよく見かける「日曜美術館」での言葉を自分のものとしてかたることの出来る人、他人と違ったことを言いたい人。様々です。
それを無理矢理、「美しい」が分る人、分からない人、に括ってしまう荒技は、すこしも美しくありません。しかも、この一章のなかでも橋本の「美しい」ことの定義は様々に変化します。無論、橋本は自分の乱暴さ、矛盾を十分理解した上で、読者の「美しい」を問うわけですが、それが少しも楽しくありません。理屈のための理屈は、ただ会話を続けさせるためだけの言葉のやりとりが少しも楽しくないように、空しさをすら感じさせます。
「美しい」を「かっこいい」という言葉と関連つけることも、橋本の理屈は分った上で、でも違うと思う人は多いでしょう。
「美しいと思うと、お!となって思考停止、判断停止をする。理性、合理、意志、主体を好む人は、外からの力で判断停止になるのはいやだから、美しいと思う状態を排除することになる。」これも理屈ではありますが「美しい」はもっと柔軟で千変万化するものでしょう。
ま、こう書くと文句ばかりつけているようですが、感心するところもあります。例えば台風の時に見られる空の美しさ。ガラス越しに見る大雨の光景が大好きな私には、橋本のいうことがよく分ります。
夕焼けの美しさだって、分ります。和歌山で家族と見た日没の光景の美しさには「美しい」が確かにありました。それならなぜ「朝焼け」は美しくない?そんなことはありません。夕焼けの持つ暖色こそ少ないものの、モノトーンが静かに色づく様子は、それはそれは素敵なものです。
私には、橋本は自分の思いと違うことを書いている、と思えてなりません。一方で彼の体験の部分、理屈のない単なる意見の部分については諸手を上げて共感の意を表したいと思うのです。それにしても、こんな小難しい理論こそが人から会話を、素直な心を奪うのではないか、私はそう思います。

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軽やかで深く、そして、潔い

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る


 美しさではなく「美しい」、理解するや感じるではなくて「わかる」。書名でのこの微妙なこだわりが、「美しい」が分かる人(本書を読んで「なるほど」とうなずく読者)と「美しい」が分からない人(「なんのことだ?」と悩む読者)の二つのカテゴリーを一つに統合するという「めんどうくさいこと」を試みた、本書のすべてを語っている。

 美を感じることだったら、脳科学がいずれその構造を解明するかもしれない。だけどそれだと、なぜある人には「美しい」が分かり、別のある人には分からないかが分からない。理解力(分かることは分かる)だけあっても、類推能力(分からないことを分かる)がなければ、美は分からない。そもそも「美しい」という言葉は、美しいものに出合った瞬間の「あ……」とか「お……」というつぶやき(思考停止)の中から生まれるものであって、それは「美しさ」が含意する、すでに固定した対象の価値や美に関する知識のことではない。

 「美しい」とは「合理的な出来上がり方をしているものを見たり聴いたりした時に生まれる感動」である。それは「こちら」側の欲望の体系=必要(個人的な合理性)とは無縁である。合理性の基準は「あちら」側にある。だから「対象の美しさが合理的かどうかを判断するのには時間がかかる」。「美しい」は咄嗟に出る感銘の言葉で、「合理的」はそこに後からやって来る「他人の言葉」である。要するに、「美しい」は直接的にはなんの役にも立たない発見である。しかし「美しい」には重大な役割がある。それは「自分とは直接的に関わりのない他者」を発見することである。「“美しい”とは他者のありようを理解することだ」。

 以上が、橋本流美学の原論ともいえる第一章「「美しい」が分かる人、分からない人」のあらましで、以下、ここに出てきた「他者」と「時間」の二つのキーワードに即しながら、「美しい=合理的」テーゼ(「一つになった二つの異質」の典型)をめぐって論は進んでいく。

 ──と、思っていた。だけど、そこが橋本治。一筋縄ではいかない展開を経て、最後に著者は恐るべき言葉を吐く。《個人的には、「世界は美しさで満ち満ちているから、好き好んで死ぬ必要はない」と思う私は、それを広げて、「世界は美しさに満ち満ちているから、“美しいが分からない社会”が壊れたって、別に嘆く必要もない」と思います。それが、「美しい」を実感しうる人というものの、根源的な力なのだろうとしか、私には思えないのです。》

 結局、私には本書がよくわからない。ただ、橋本流美学は、軽やかで深く、そして、潔い。そのことだけは分かった、ような気がする。

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著者の文章がわからないタイプの人間にも「美しい」はわかると思いたい。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「読んだ」快感の伝えられない書評を書くのはどうか、と思ったのだが、そういう書評も参考にはなるかも、と書いてみた。

 「美しい」という感情があることは誰も否定しないであろう。しかし、なにを「美しい」とするのか、はあまりにも亡羊としすぎていて百人百様、一人の人間でも年齢により違ったりもする。この「美しい」について、この著者はどう切り込んでくれるのか。著者の作品はあまり好みの文章ではないのでこれまで多くは読んでいないのだが、先の書評に「読み進むに従って著者の面白い論理展開にのめり込んでしまった。」とあるのが興味を惹いた。ちょっと苦手な人だからこそ意外な切り口を教えてくれるかもしれない、と。

 たしかに予想外な論理(?)展開にぶつかる。まず「美しい=合理的」が出てきて、それがくずされ、時間の問題が。。。すんなりとは進まないのが著者の文章。柔らかい粘土を捏ね上げていくような、形が見えたかと思えばまたそれがくずされ、埋もれてはまた違う形が捏ね上げられていく、とでもいうのであろうか。明確な区切りが見えないうちに次に流れ込んでいく(と、私には感じられる)。読み進めばわかってくるか、と新書にしては随分時間をかけて頑張って読んだが、私の場合は最後までのめりこむことも、著者の言いたいことの理解にも到達できなかった。
 結論。やっぱり苦手な文章である。「わからなかった」というより「読めなかった」。

 多分、この著者の文章が「わかる(読める)」か「わからない(読めない)」かで評価がわかれるだろう。「理科系の頭と文科系の頭の違いか?」などという思いも頭をかすめる。「わかる」とはどういうことかでももう一度読み直してみようか、という違う読書欲が代償行為のように沸いてきたことが私的にはこの本を読んで得られたものであった。
 著者の文章がわからないタイプの人間にも「美しい」はわかると思いたい。

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