教育改革の幻想 みんなのレビュー
- 苅谷剛彦 (著)
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紙の本教育改革の幻想
2004/08/22 02:56
「ゆとり」,ゆとられ,ゆとられず
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の論旨は,これまでの教育改革の前提って幻想だ,ってこと。つまり,「詰め込み教育」で時間がなく,生徒たちの性格が歪になったとか,「ゆとり教育」による子供たちの自主性を重んじれば,「考える力」「生きる力」が養われるとかいうスローガンが,統計的に裏付けられないってことだ。
教育学素人の経済学部卒の私から見ると,教育関係業界では,統計的な裏付けもないまま,政府の改革やら研究者らの評価やらが行われてきたのかなぁという印象。もちろん,教育“社会学”者の著者は,それを「幻想」と呼んで,自説を統計的に裏付けている。(といっても,依拠する統計はしょぼいです。この事実自体が深刻な現実です。)
著者が明らかにしたことは,まず第一に,70年代まではたしかに大学(や高校)は「入学難」であったが,80年代以降,とりわけ90年代になってからは,少子化傾向が顕在化する一方で(需要の減退),大学が量産され(供給の増大),「入学難」なる問題は,改善された。第二に,激烈な(はずの)受験は,「入学難」の時代でさえ,必ずしも受験生たちの,たとえば睡眠時間の削減には結びついてはいなかった。第三に,「ゆとりの教育」は,学習離れを低学年・低学力層において引き起こした。第四に,当時の教育政策の最高責任者だった有馬(元文部大臣)が,所期の目的とは違うように実践されてしまったということ,第五に,現場で働く教員たちにまで通達できないまま,しかも実効的拘束力がないまま,政策が発動されたために,「ゆとり」ではなく放置・放任が教室を席巻したということが指摘されている。もちろん指摘はほかにもある。
本書に欠落しているのは,では,文部科学省の「ゆとり教育」政策で潤った産業分野がなかったのか?という問題意識だ。たとえば,塾・予備校はこれで販路を拡大したに違いない。教員どもは手抜き教育の口実を与えられたに違いない。低学年・低学力層は,テレビゲームのいいお客になったに違いない。政府政策は,大概が,関係諸団体を潤すように施行されている。国民の福祉を考えて施行されていると信じているとすれば,認識年齢は大学入学資格を満たしていない。彼らは新政策を打ち出して,たとえば新しい天下り先を創出する正当な根拠にしてしまう。
個人的見解を言わせてもらえば,なによりも教員の質(学力)の向上が優先されるべきだ。高三を担当していて大学入試問題が九割五分以上解けないようでは,教員の資格はない。昨今話題となっている教員免許の更新制も実効あらしめるべきだ。そもそも,どの大学でも何故に教育学部は偏差値が低いのだ? 教員養成を専門とする教育大学など,なぜに低偏差値大学が多いのだ? この事実をどう解釈すればいいのだ? 文部科学省をはじめとして,子供を馬鹿にしてはいけない。連中は未成熟な大人なのだ。後生畏るべし。アンファン・テリブル。
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