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電子書籍

山田風太郎明治小説全集 みんなのレビュー

  • 山田風太郎 (著)
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みんなのレビュー19件

みんなの評価4.3

評価内訳

  • 星 5 (9件)
  • 星 4 (10件)
  • 星 3 (0件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
19 件中 1 件~ 15 件を表示

面白さの底に流れる歴史へのアイロニー

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 明治初期の東京を舞台に、元同心の若者が新政府に組するのをよしとせず、やはり元奉行所のご隠居を知恵袋に新政府の警官相手に知恵比べをする。西郷隆盛、大久保利通はじめ明治を動かした人物たちだけでなく、夏目漱石や森鴎外までが登場し、西南戦争直前を舞台にどこまでが史実かわからないほど意外な同時代人を交錯させ、奇想天外な話が織り上げられる。一つ一つの事件は突飛なからくりを使ったり、知恵を絞ったり、の楽しい時代小説であるが、出てくる人物が人物だけに、壮大な物語、というか破天荒というか。山田風太郎さんの「明治もの」は全体にこの特徴があり、大変楽しめる。
 しかし、この作品はただ面白いだけではなく、ちょっぴり辛い、歴史への著者の視線もみえるのである。若い頃、忍法帳シリーズにはどきどきしたが、明治ものはいまひとつだったなあ、と思った記憶のある方、もう一度読んだら違う面白さがあるはず。なんとなく敬遠している、特に女性の方、読んでみたらちょっと違うはず。読んでみて損はないでしょう。
 山田風太郎といったらやはり忍法帳シリーズが有名なのであるが、この作者には「戦中派不戦日記」のように戦争体験から書かれた作品もある。推理小説、娯楽小説のように書かれた作品にも戦争観や歴史観を濃く書き込んだ作品もかなりあるのである。著者の「明治もの」と呼ばれる一群の作品の中にも、明治維新前後の変化を題材に、著者の歴史観、戦争観が強く現われた作品がある。この「警視庁草紙」もそういった作品の一つと言えるであろう。
 明治維新での体制の変動では、幕府側で戦っていたはずの人間がいつの間にか新政府の役人になっていたり、新政府を設立した側の薩摩藩が西南戦争として政府に対立するようになるなど、複雑な立場の変動があった。敗戦で極端に意見や態度を変える人びとを目の当たりにした著者の想いが、明治の人びとに投影されて描かれている。規模は異なるのかもしれないが人の心は同じようなことを繰り返すのか、という著者の哀れむような、自嘲するような声が聞こえる文章がところどころに見られるのである。先に挙げた「戦中派不戦日記」は1971年、この「警視庁草紙」は1973年が最初の出版である。その底に通じる色合いは同じなのだ。なぜ戦わなくてはならないかったのか、「国家」とはなんなのものか、などの思いを自らが体験した敗戦の記憶と重ね合わせて書かれたと想像するには難くない。
 楽しい、だけで読むことも出来るが、その奥に様々な思いを読み取ることもできる。良い作品とはこういうものなのだ、と思ってしまう作品である。

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筑摩書房さん、頑張って!お願い!!

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:MESSY - この投稿者のレビュー一覧を見る

ひょんなことから久しぶりに「エドの舞踏会」を読み返して改めて感動し、書評を書こうと思ったのですが・・・。絶版状態なんですね。で、本書の書評を投稿することにしました。
といっても、山田風太郎の明治小説が珠玉揃いなのは周知のことだし、本書について今更ぐたらぐたら褒め称える書評を書く必要もないでしょう。で、以下は明治小説集に関連していくつか気づいたことを。
1)風太郎は川路利良が好きなんだろうなあ:明治小説集には数多くの歴史上の人物が登場し、いろいろ活躍するのですが(本書の冒頭に神田の半七親分が出てくるのが、なかなか笑えます)、そのなかでも登場回数や役割の重要度では川路が一番だと思います。もちろん「日本のフーシェ」とまで呼ばれた男のことでもあり、風太郎の視線には厳しさがあるのですが、それでもなんとなく好意を抱いているような印象です
2)風太郎は軍人も好きなんだろうなあ:「エドの舞踏会」では山本権兵衛が、「ラスプーチンが来た!」では明石元二郎が狂言回しの役をつとめます。日本の近代を、というより歴史とそれを織りなす人間という存在を、冷徹なまでに突き放して見ていた風太郎は、日本の軍にきわめて厳しい視線を向けていました。にもかかわらず、近代日本を支えた優れた軍人に対しては後世の目で一方的に断罪することなく、一定の尊敬の念を抱いていたように思います。司馬遼太郎の小説が好きな人々に、複眼的な歴史観を養ってもらうための解毒剤として最適でしょう(司馬遼の歴史観が単眼というわけではなく、あくまで読者のことです)
3)復刊すべきでしょう:漫画「バジリスク」がヒットしたおかげもあるのでしょうが、忍法小説集は現在かなり容易に手に入ります。しかしながら、明治モノは困難です。近所の図書館にもほとんどありません。これは日本の文化の悲劇であす。次代を担う青少年の教育上も好ましい状況ではありません。個人的にも、手元にあるのは文春文庫と新潮文庫で既にかなりボロボロになっており、しかも全巻揃えたわけでもないので、筑摩さんには是非、復刊をお願いします

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虚実混交,奇想天外,まさしく山田風太郎的明治絵巻

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る

 舞台は明治6~10年の東京,元江戸南町奉行所同心・千羽兵四郎は芸者・お蝶のヒモに甘んじながら時節の変遷を苦々しい思いで見つめている。その視線の先にあるは,彼らに代わって首府の治安を担当するようになった警視庁薩摩閥。市中に起きる事件にかこつけ,兵四郎とその元上司・最後の南町奉行・駒井相模守,そして岡っ引き・冷や酒かん八は警視庁官憲をからかいはじめる。

 ……西郷隆盛,大久保利通,井上馨など明治政府の大立者を始め,夏目漱石,森鴎外,樋口一葉など実在の人物を要所要所に配しながら描く,虚実混交,奇想天外,まさしく山田風太郎的明治絵巻である。

 下巻巻末,和田忠彦の解説にあるように,吉川英治が黒岩涙香を評して言った「仔細に吟味すると支離滅裂だが,その不合理をちっとも感じさせない手腕を持っている」という言葉を,「そのまま吉川英治自身に当てはまる」と書いた風太郎翁の,まるでそれがブーメランのように自身に還ってくるような小説……。

 「おもしろうてやがてかなしき」。荒唐無稽を楽しみながら,いつの間にか失われたものへの愛惜に打たれる……わけなんだが,この明治小説全集が現在絶版状態であり,全巻揃えるとえらく高くつくのは(オレも頑張ったが現在1~4しか買えてない)いろんな意味で悲しいことである。

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「愛の典獄」といわれた男の物語。どろどろしているのにどこかさわやかでもある。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 明治の石狩、薩摩出身の青年看守有馬四郎助が主人公。極寒地の監獄に送られるのは刑期の長い凶悪犯や福島事件、加波山事件、秩父事件などの政治犯。維新の激動の暗い過去が、囚人だけでなく看守たちも巻き込んで様々な争いを繰り広げる。 登場人物の痛快な行動や、謎の人物の正体が徐々に分かってくる謎解きの面白さ、意外な人物が交錯する、作者の「明治もの」の面白さは、この話にもちりばめられている。
 陰惨などろどろした情景に陥いりそうな設定であり、実際にそういう場面も多いのだが、あまり暗くもならないのは、主人公がのっけからかなり無茶をやってみせる、どこか「坊ちゃん」のような明るい性格の青年であるからかもしれない。雪原を走る犬ぞり、アイヌの村。そんな幻想的な情景もある。日本初のキリスト教教誨師、原胤昭が登場し、聖書やキリスト教の奇跡といったテーマが話の底に流れていることもどこかさわやかな、救われたような味わいをつくりだしている。
 有馬四郎助は、関東大震災のとき一人も逃亡者も出さなかった刑務所の所長であったことで知られている実在の人物。「愛の典獄」とよばれる、敬虔なクリスチャンだったそうである。北海道で若い頃看守をしていたことも事実である。そのころ、この話のようなことがあったのかもしれない。。。
 大団円は「もっと現実的な解決方法をみせてくれればよいのに」と、問題解決法としては「デウス・エクス・マキーナ」のようで少々物足りないが、それも血なまぐささを弱めてくれてよかったとも言える。聖書を「耶蘇の妖術の本」と信じたかからかどうかはわからないが、牢屋生まれの男がどこか厩屋生まれの人物に重なってしまう。
 話の中盤は囚人たちの個別の事件が幾つか進み、血や泥や猥雑な場面もかなりある。あの手、この手の脱走の仕方、懲罰の仕方(時には読みづらいほど残酷なものもあるが)やこれらの場面は、ある意味作者の得意とするところでもあろう。こんな場面は読者により好き嫌いがあると思うが、それぞれの話が維新の様々な人間模様を切り出していて、こんな事件もあった、と思い出させてくれたり考えさせたりすることも事実である。
 ちくま文庫の明治小説全集を順番に読んでくると、「警視庁草紙」、「幻燈辻馬車」と初出も扱う年代も時系列ので並んでいる。まあ、都合上そうなった、と考えられないでもないのであるが、あそこで消えたあの人が、と作品を超えて思いがけなく繋がっているのを発見するのも楽しい。これもまた、山田風太郎の明治異次元ワールドの面白さである。
 下巻には5つの中篇が併録されている。こちらもなかなか味わいがある。

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「おもうしろうて、やがてかなしき」風太郎ワールド。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 戊辰戦争で妻を殺され、西南の役で息子を亡くした元会津藩士は、残された幼い孫娘を連れて辻馬車を営んでいる。危機に際して「父(てて)!」と幼い子が叫ぶと、血みどろの軍服姿の男が辻馬車から下りてくる・・・。
 他の「明治もの」と呼ばれる作品とも共通する、どこまでが史実なのか判然としないほど巧みに明治の有名人が交錯して登場する「山田風明治ワールド」。この作品ではそこに加え、主人公の妻や息子が幽霊で登場し、「幽界」も重なり合ってさらに複雑な異次元世界が描き出される。
 幽霊の登場で怪談の怖さもある作品であるが、この幽霊、たまになんともひょうきんなことを言ったりもする。この子も連れて行け、と言われて「それはだめだ、許容量を超える」と応える場面は笑えた。こんなところや、奇想天外な方法で人を隠したり、逃げ出したりと楽しませてくれる部分がある一方、主人公はじめ登場する人々の身の上などを通して描かれる、歴史の流れに翻弄されている一人ひとりの人間の姿は心に痛い。
 明治維新の激動の中の、教科書的にはあまり触れられない、負けた側の歴史。会津藩は幕府の命に従って京の警護に就き帝を守っていたはずが朝敵として敗者となる。新政府が新しい藩をおくと、未開の極寒地斗南藩へ遷らされる。西南の役がおきれば、今度は政府側として薩摩を攻撃に行く。実際にこのような体験をした会津人の書き残した「ある明治人の記録」という書があることもこの小説で知り、捜してしまった。つい、日本史を勉強しなおそうとしてしまう誘惑に駆られるのは風太郎ワールドの良い点なのか、どうなのか。
 明治政府のやり方を正そうとする自由党を、どちらかと言えば好ましいと思っている程度だった主人公は、はからずも彼らに手助けをしてしまう。それでも、壮士の一人が恋人を利用したときには「「あなたはきれいなことをやろうとしながら、汚い恋をしなさった」と怒り、「罪のない無縁の人を殺して何が自由の旗じゃ」と書く。「明治もの」の中でも「警視庁草紙」とこの「幻燈辻馬車」などは、娯楽要素と共に著者の戦争体験から来る歴史や生き方への意見が強く現れているようだ。
 本書中の言葉を借りれば、「人の世に情けはあるが、運命に容赦はない」。登場人物の数奇な運命や行動はお話としてはおもしろいが、実際にそんな人生があったかと想像すれば悲しい。
 「おもうしろうて、やがてかなしき」話である。

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山風の明治ものの中でも、これはとびっきりの面白さ!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 山田風太郎の明治ものの一冊。『ミステリ十二か月』の北村薫さんと有栖川有栖さんの対談の中で、有栖川さんが、>(p.257)と言ってらしたので、どれどれ、どんくらい面白いんかなと読んでみました。いやあ、面白かったわあ。さすが、ミステリ通のおふたりが強力に推薦するだけのことはあるあると、問答無用の面白さを堪能しました。
 以下、面白かったところを三点抜き出して述べてみます。

 まず、いくつかの話の中で使われる事件のトリック、それが面白かった。
 明治時代の初頭、新政府の警察機構の一環として出来た太政官弾正台の大巡察、川路利良(かわじ としよし)と香月経四郎(かづき けいしろう)のふたりが、同じ事件に対してそれぞれに推理し、解決しようとします。手下の邏卒を使いながら、両名が探偵合戦を繰り広げていく。そして事件の真相が解き明かされる場面では、異国はフランスの美女、エスメラルダが絡みます。事件で殺された被害者の魂を死の世界から召喚し、真相を告げる巫女の役割を担うのがエスメラルダという美女。香月を恋い慕って、フランスから日本に来た女性という設定になっています。
 それで、不可解な事件のトリックが実に印象的で、鮮やかなんですね。機械的なトリックを始め、犯人が仕掛けたからくりが見事に決まっていました。「怪談築地ホテル館」や「遠眼鏡足切絵図」でのトリックが、特に面白かったな。

 面白かった二点目は、歴史の教科書に出てくる著名な人物たちが実名で登場するところ。作者の遊び心と言ってもいいでしょうか。後年、名を残すことになる人物が、意外なところでひょいと出てきたり、子供として登場したりするシーンがね、面白かった。そういう歴史上の人物が意外な姿で出てくる場面では、「およっ」とか「へえーっ」とか、心の中で声を上げていました。確かに、明治初頭に東京で生きていた人たちだから、あんまり違和感がないんですよ。ひょっとしたら、そういうこともあったかもしれないって感じで。

 そして面白かった三点目は、連作短編集としての仕掛けの妙味を最後の章で堪能させられたことでした。「正義の政府はあり得るか」というラストの章で、それまで隠されていた切り札が目の前にさらされた時の驚き! それまで寝転んで読んでいたんですけどね、がばっと起き上がりそうになりました。鉄槌でがつんと一撃されたような気持ちって言ったらいいかな。鋭い告発にもなっているなあと思うと、何かもう呆然としてしまうよりほかありませんでした。

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日本ミステリ史に残る傑作

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:浅知 恵 - この投稿者のレビュー一覧を見る

明治2年、いまだ暗中模索をつづける政府の中、太政官弾正台(官吏の汚職を糾弾する機関)の大巡察・香月経四郎と川路利良は政府のあり方について議論する。弾正台はあくまで正義を貫き政府の最高機関となるべきだと主張する香月と、司法として政府を支え人民を守れば良いと考える川路。ふたりはある事情から数々の怪事件において推理合戦をくりひろげることになるのだが……。

山田風太郎の明治ものの中でも特に推理小説として評価の高い本書。連作形式をとっているが、最後の最後でなかなか壮大な仕掛けがあり、『妖異金瓶梅』と双壁をなす傑作といえるだろう(まあ、勘のいい人なら気づく仕掛けではあるが、テンションの保ち方が尋常ではない)。あちこちに顔を出す実在の人物(川路をはじめとして福沢諭吉、内村鑑三、西郷隆盛、大久保利通など)も楽しく、気軽に読めてしかもミステリの真髄に触れられる一級の娯楽作だ。ラストも秀逸。

読まないと損します。

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完全無欠のエンターテイメント

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:柿右衛門 - この投稿者のレビュー一覧を見る

面白い。
この小説を一言であらわすと、それで終ってしまう。
それほど、おもしろい。

 時は明治時代はじめ、太政官弾正官(役人の汚職を取り締まる役所)の川路と香月が江戸で起きる不可解な事件を解き明かしていく。
 川路と香月が独自の方法で謎に迫り、あと一歩わからないというところで香月が渡仏した際に出会った、フランス人巫女の手を借りて事件を謎とく。
 こんな調子でいくつかの事件が解明されていくのだが、読者はきっとなんとなくしっくりしないものをかんじるかもしれない。
 そんななか迎える最終章、この本に仕掛けられたトリックに唖然とするはず。山田風太郎見事である。

さて、彼の明治を舞台にした作品はいくつかある。これらは1冊より2冊。2冊より3冊。読めば読むほど面白くなっていく。
どの小説でもさまざまな登場人物がすれ違い、1冊にとどまらない活躍をみせる。
明治時代を生きた偉人たちが山田風太郎の手によっていきいき書かれているのを読むだけでも、価値ありである。

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切々と胸に染みてくる、山風の明治ものの名品

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る

キイクル、キイクルと車輪を鳴らして、明治維新後の東京の町を走る親子馬車。馬車の御者、干潟干兵衛(ひがた・かんべえ)、孫娘のお雛(おひな)と、このふたりに関わる人たちとの物語。明治初期の幻燈、廻り灯籠でも見るような物語。
行間の端々に、明治前半の時代の雰囲気が染み渡っています。そのしみじみとした調べに魅了されました。

お雛が銀鈴の如き声で、切迫した気持ちで呼ぶ時、少女の父親の幽霊があの世から召喚されてきます。その幽霊の父が馬車を走らせる時は、雪道に馬車の轍(わだち)が残らず、車輪の音さえ聞こえません。この場面の夢幻の趣が心に残ります。

話の根幹にあってテーマとして描かれていたのは、時代のうねりを感じながらも傍観すねしかなかった干兵衛の思い、それではなかったでしょうか。
会津藩のひとりとして、悲惨な目に遭った者が心に抱く虚無感。それ以上に、大事の前には人を殺すことさえあえて辞さない者たちへの憤怒。
話が後半に進んでいくほど、干兵衛の痛切な気持ちがひしひしと伝わってきて、胸を打つものがありました。

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明治化物草紙

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:muneyuki - この投稿者のレビュー一覧を見る

明治期の日本にラスプーチンが来る、
その間の「大津事件」、その周辺状況を描く、
という山田流if明治時代小説なのですが。
スーパーロボット大戦、もしくは平野耕太の『ドリフターズ』みたいな状況を思い浮かべてもらうと分かり易い。

登場するのはタイトルにもあるようにまず怪僧・ラスプーチン、
それから大津事件の主要人物達・ニコライ二世、児島惟謙、津田三蔵、
ほんで二葉亭四迷、乃木希典、内村鑑三、アントン・チェーホフ、ニコライ大教主、下田歌子(下田宇多子)、飯野吉三郎(稲城黄天)、川上操六
カメオ出演に川上音二郎、谷崎潤一郎、正岡子規、夏目漱石、森歐外、津田梅子、ベルツ、
ともうやり過ぎ感が漂うほど、明治の化け物どもが一堂に会している小説です。

で、これらをまとめて主人公となるのは明石元次郎。
ロシア革命を先導したとか何とか言われる、
実在した日本のスパイの大家である軍人。
まぁ広く知られるスパイが果たして名スパイなのかどうかはよく分かりませんが…。
天衣無縫・怪男児・快男児の彼の、明朗なヒーローっぷりは痛快。
とても合理的かつ理性的、でも既存のルールに縛られない、色々と無精で汚ない。
南方熊楠のイメージとダブらせながら読んでいました。

勿論、チェーホフとラスプーチンが出会ったという史実はありませんし、
ラスプーチンが日本に来た記録もありません。
しかし、山田風太郎の手にかかればもう、
同時代人ってだけで「関係性があるもの」として、
上記の人物達が全て一つの物語の登場人物としてまとめ上げられるのだから凄い。

ただ本当にカメオ出演の人達はちょびっとしか登場シーンが無い為、「あっ!この人知ってる!」という喜びを盛り上がらせる素材くらいに考えておいて下さい。
僕は夏目漱石と正岡子規の登場シーンで、
ほんの4、5行の描写ながらしっかりキャラクターを感じられてニヤっとしました。
どのキャラクターも非常に生き生きと描かれ、司馬遼太郎が日本人の竜馬観を決定してしまったように、色んな歴史上の人物達がこの小説によって読者に固定イメージを与えるかも。

大筋のストーリーとしては
軍人・明石と稲城黄天との、そして物語後半ではラスプーチンとの戦いとヒロイン・竜岡雪香とのロマンスが描かれます。
それだけであれば、如何にもな「伝奇小説」「時代小説」でしかないのですが、きちんと思想性が滲み出ている所が、ちゃんと「文学」しています。

例えばラストの描き方。
単なる伝奇小説であれば、明石がラスプーチンを倒して、雪香と明石が結ばれて良かったね!というハッピーエンドでも良さそうなモノを、この終わり方はまるでその後に続いて行く国勢、世界情勢を反映したかのよう。
化物共が横行し、くるくると日本や其れを取り巻く世界が急速に変化し、とてつもなく「面白い時代」であった筈の明治が、
何故その後の「暗い日本」へ続いて行くのか?
歴史観を踏まえると、ラストの描写も少し見方が違って見えるのではないでしょうか。

また、ヒロインの「聖女」としての描き方。
それは作者なりの女性への神秘性・強さに対する信仰の形であったり。「穢れ無き乙女」だからこそ、竜岡雪香はこうならなければならなかった、という結末にも思えます。

山田風太郎は忍法帖シリーズしか知らなくて、
エンターテイメント性の強い作家という印象が強かった。
勿論、この小説も有り得ぬ人物同士の邂逅、スーパーロボット大戦のようなそれぞれの人物に対するファンへのサービス的出演、
エンターテイメントバリバリです。
しかし、山田風太郎≒エログロという僕の勝手な山田観に、
この小説はセンチメンタルという属性を付加させてくれました。

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ホームズ・パロディ『黄色い下宿人』も収録

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:木野下 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 2001年7月に亡くなった、正真正銘の天才作家、山田風太郎が、シャーロック・ホームズのパロディが著していたことをご存知でしょうか。
 
 僕は、歴史小説が好き、伝奇的なものが好き、ミステリが好きでした。ですから、歴史的な事実と創作されたミステリを混淆して、登場人物たちが生き生きと活躍する山田風太郎の物語を読んだときには、これだと狂喜したものです。ずっと読みたいと思っていたのは、山田風太郎の作品なんだ、と。
 
 そして、いつの間にかシャーロキアンにもなっていた僕は、さらに『黄色い下宿人』という作品の存在を知って、小躍りさせてもらいました。この作品は、山田風太郎によるホームズ物語のパロディだからです。
  
 山田風太郎は、戦中を医学生として過していたそうです。なんとなく、医師であるドイルと重なってしまいます。医学を勉強していた作家たちというのは、どうしてこうも面白い作品を書く天才ばかりなんでしょうか。森鴎外は軍医でしたし、分野は異なりますが手塚治虫も医学生でした。興味深い符合です。
 
 エンターテイメント小説の大家、山田風太郎の作品は、いずれも傑作ばかりで駄作は何一つないと言われることがあります。そして、日本の本格ミステリ界に確固たる地位を築いた、偉大なミステリ作家でもあるということも重要です。本物の天才だったのです。
 
 これからも、ずっと読み継がれていかなくてはならない作家であると思います。
 

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娯楽と教養そしてエロ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:広海 - この投稿者のレビュー一覧を見る

おもしろい! この馬鹿馬鹿しさがたまらなくよい。
先が読めるし、話運びに無理があるような気もしないでも
ないけれど、そんなことを言い出す気にもなれないほど
おもしろい。それに登場人物がまっすぐで気持ちがいい。
そして、この物語はその主人公が成長してゆく話
かつ人を信じるということについての話でもある。
また明治の歴史的人物や事件も、嘘と本当がないまぜになって、
いかがわしくこの物語を彩っている。
娯楽と教養そして少しのエロがセットになったお得な一冊だ。

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明治時代に迷い込んだような気分を味わう

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:さらさばく - この投稿者のレビュー一覧を見る

日本で初めてのキリスト教教誨師となった原胤明の生涯を、本人の談話風に小説化したもの。

出獄人の保護をしながら絵草紙屋を始めた原は、次々と事件に巻き込まれますが、機知と勇気と十手の技で乗り切ります。
彼の侠気にふれた人びとの、有形無形の支えも大きい。

この絵草紙屋には、英和辞典の編纂をしたヘボン博士や、ジャーナリストの岸田吟香、日本画家の小林清親なども登場します。
いったいどこまでが史実でどこからが虚構なのか。
明治の世相を生きているような錯覚に陥りながら、読み終わりました。

下巻所収の「黄色い下宿人」では、ロンドン留学中の夏目漱石が、殺人事件の捜査でシャーロック・ホームズを驚かせる探偵ぶりを見せます。

大津事件に関連した「明治かげろう俥」も、読み応えあり。

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虚実が錯綜する「風太郎ワールド」に酔う

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投稿者:さらさばく - この投稿者のレビュー一覧を見る

日本初のキリスト教教誨師となった原胤明の生涯を、本人の談話風に小説化したもの。

風変わりなタイトルは、主人公の原胤明が江戸町奉行の八丁堀同心で、十手もちであったことによります。
その十手が、形を変えて十字架のようになる経緯に、当初はキリスト教に反発を覚えていた原が、洗礼を受けてクリスチャンになるまでの道のりが重なります。

明治維新後も人足寄せ場の見回り役をしていた原は、ある事件のために幼馴染の姉妹と出獄人保護に取り組むことになります。
江戸の町を知り尽くした元同心の存在が面白くない、明治新政府の役人との軋轢をものともせず、快男児・原の活躍が小気味よく描かれています。

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快男児明石元二郎ここにあり

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投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る

著者の明治ものの一作で、主人公は軍人の明石元二郎。この人は実在の人物で、日露戦争時にはヨーロッパで諜報活動に従事し、後に大将になり台湾総督を務めたほどの男。この明石元二郎の若き日の姿、ロシアの怪僧ラスプーチンや胡散臭い占い師との争いを、二葉亭四迷や内村鑑三、乃木希典将軍、チェーホフなどなど実在の人物とロシア皇太子襲撃事件や森有礼暗殺事件等実際にあった事件を上手に使い、得意の伝奇風の色彩を加えて描いています。
メインは書名にあるようにラスプーチンとの争いなのですが、登場は物語も半ばを過ぎたころ、それまでは政界にも顔のきくインチキ占い師と一人の女性を巡って争います。この稲城という占い師、仇役だけあって良く書けていて、傲岸不遜でいかにも憎らしく、それでいてどこか面白みのある男。明石と稲城の丁々発止のやりとりは読み応えがあり、どっちが勝つかは言わずもがな、スキッと胸のすく思いが楽しめます。その分割りを食って、肝心のラスプーチンとの争いはいまひとつ盛り上がりに欠ける感じ。終わり方も、明石の将来を暗示するような終わり方ではあるのですが、なんともあっけなかったのが残念ですね。

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