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みんなのレビュー4件

みんなの評価4.6

評価内訳

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4 件中 1 件~ 4 件を表示

「情報なき国家の悲劇」

22人中、20人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:CAM - この投稿者のレビュー一覧を見る

 今年で日米開戦・真珠湾攻撃の日から67年になるが、最近の田母神論文問題化に見られるように、東京裁判史観は未だに根強いように思える。しかし、勝者の論理が全面的に正しいということはあり得ないということだけは、最低限でも確定的に言えることではないだろうか。

本書では、日米開戦の問題についても、情報戦という見地から、次のような叙述が見られる。

>結論的には日本陸軍は、昭和11年頃から昭和17年初頭まで、米国務省の外交暗号の一部を確実に解読または盗読し、国民政府(蒋介石政府)の外交暗号、武官用暗号はほぼ確実に解読または盗読していた。この事実の裏を返せば、日本が日米開戦に踏み切った原因の大きな一つに、米国暗号の解読、盗読という突っかい棒があったと判断される節がある。特に陸軍が開戦に積極的であったということからも(p.278)。

しかしながら、

>昭和17年初頭、すなわち開戦1ヶ月後には米国は暗号を全面的に改変し、爾後昭和20年8月まで米国暗号は日本の必死の研究追求にもかかわらず霧の中に隠れてしまった。これも裏を返せば、日本に米国の暗号をある程度盗らせておいて、開戦に誘い込んでから計画的に料理をしようとした疑いもなくはない。暗号一つを通じて見た情報の世界でも、米国が日本を子供扱いにしていた観がある。これを情報的に観察すれば、日本を開戦に追い込むための、米国の一大謀略があったと見るのもあながち間違ってはいない(p.279)。

 著者は、戦時中に米軍の教令(『米軍野外教令・上陸作戦』)を見て思いあたった事項として、第一は、米軍はガダルカナル島以来、一貫して忠実にこの教令に書かれてある通り作戦を実施している。第二は、この教令は何年頃書かれたかは明らかでないが、明瞭に太平洋の島々、特に日本の委任統治領の珊瑚礁のある島への上陸を想定して作られている、ということを指摘される(p.149)。 米国がいつ頃から太平洋で戦争することを考えていたかについては、著者は、大正10年ごろからと推定している。 その時期はちょうど、ワシントン会議で日米の海軍戦力が3対5と米国に押し切られた年と一致する     (p.151)。

 真珠湾攻撃というか、日米開戦については、いわゆる「ルーズベルト謀略説」があるが、これが立証されたわけではないし、今後もこれが明確に認められるような資料が出てくることは多分ないだろう。しかし、当時の英米の指導者チャーチル、ルーズベルトが、陰謀という段階までに踏み込んだとは言えないにしても、少なくとも内心的意思としては日本との開戦を望んでいたことは間違いないことであろう。例えば、著者は、次のように述べる。

>太平洋は守るに損で、攻めるに得な戦場であることを日本は知らなかった。だからルーズベルトが、日本が真珠湾を奇襲攻撃したとき喜んだのは、単に対日戦争の名分が出来たというだけではなく、太平洋で責める側に立てることだったに違いない(p.122)。

 また、著者は日系人強制収容についても、情報戦という観点から、次のように述べている。

>日本はハワイの真珠湾を奇襲攻撃して、数隻の戦艦を撃沈する戦術的勝利をあげて狂喜乱舞したが、それを口実に米国は日系人強制収容という真珠湾以上の大戦略的情報勝利を収めてしまった。日本人が歓声を上げたとき、米国はもっと大きな、しかも声を出さない歓声を上げていたことを銘記すべきである(p.97-8)。

もっとも、太平洋戦争は米国が計画的に仕掛けた戦争だとしても(p.90)、それによって開戦も戦争自体も正当化できるわけでもないだろう。 要するに、日本は米国の掌の上でいいように弄ばれていた、情報戦争の観点からみれば大人と子供の闘いであった、というのが実相ではなかろうか。

 それにもかかわらず、著者が懸念されているように、このような点についての反省と情報戦略の重要性についての認識がないままに、軍事上でも、経済戦争上でも、同じ失敗を繰り返しつつあるというのが我が国の現状ではないだろうか。 我が国が「情報なき国家の悲劇」(本書の副題)を繰り返さないためにも、一読されるべき価値ある書だと思う。


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情報を軽視する日本

14人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る

つい先日、8月6日に放送されたNHKスペシャル「原爆投下 活かされなかった極秘情報 」は、日本陸軍の諜報部隊が米軍の特殊任務機の存在を突き止めて上申していたにもかかわらず、陸軍上層部がその情報の重大性を見抜けなかったために、広島への原爆投下を防げなかったことを指摘するものだった。

コールサイン(発信元を識別するための呼出符号)の分析から、テニアン島を拠点に活動する謎のB-29部隊の動向を追い、原爆投下阻止まであと一歩の所まで辿り着いたのが、陸軍中央特種情報部と、大本営陸軍部第2部第6課米国班所属の参謀、堀栄三であった。

本書は、太平洋戦争時、卓越した情報分析能力によって米軍の作戦(上陸時期・上陸地点、上陸部隊の戦力など)を次々と正確に予測し、「マッカーサー参謀」と渾名された堀栄三(以下、著者)が、戦時中の大本営参謀~戦後の自衛隊統幕情報室長の時代を回顧しつつ、今なお情報戦略を持たずに国際政治の中で漂流している日本の現状に警鐘を鳴らしたものである。


著者は昭和18年10月1日付で陸軍第2部(情報部)第16課(ドイツ課)に着任したが、15日には第16課は第5課(ソ連課)に吸収されてしまう。さらに著者は11月には第6課(米英課)に移され、第6課長の杉田一次大佐の命令で米軍の戦法を研究することになる。逆に言えば、開戦から2年近く経っているのに、対戦国であるアメリカの戦法を研究していなかったことになる。著者の言葉を借りれば「野球の試合が中盤以後になって、相手の攻撃にてこずりだして、『さあ、データーを調べよう』というのと同じ」であり、しかも若干30歳の新米情報参謀が一から研究するというのだから、泥縄もいいところである。

しかし著者は、開戦以来の米軍の太平洋における島嶼部攻略の情報を詳細に解析し、米軍の作戦行動に一定の法則性(パターン)があることを発見した(いわゆる「飛び石作戦」の内実の解明)。そして、その戦法を戦例に基づいて5タイプに分類し(レンドバ型・タラワ型・グンビ型・タロキナ型・サイパン型)、米軍の艦砲射撃の威力、破壊効力、軍艦の所有弾量、上陸直前の砲爆撃の日数・程度・目標、米軍上陸部隊の上陸行程などを解説した『敵軍戦法早わかり』を作成した。

著者が米軍戦法への対策を提示したことが、ペリリューやフィリピンでの日本軍の奮戦に繋がったわけだが、自らの能力の限界を率直に認めているところもあり、単なる自慢話にはなっていない。「堀は」という三人称的語り口に象徴されるように、予断を排して情報を分析する情報参謀出身ならではの客観的な記述が印象的である。


著者の情報分析の手法が具体的に紹介されているのも興味深い。「情報戦」というと、一般的には暗号解読やスパイを連想しがちだが、当時の日本軍は米軍の暗号を解読できなかったし、スパイを送り込むこともできなかった。著者は秘密情報を盗み出そうとするのではなく、何の変哲もない公開情報に隠された意味を読み取ることに注力した。アメリカ国内のラジオ放送で発表される缶詰会社と製薬会社の株価の動きから、米軍の作戦開始時期を推測する(上陸作戦に備えて米軍が缶詰や薬品を発注するため、株価が上がる)というテクニックは著者の慧眼を示す好例だろう。暗号が解読できなくても、電信のコールサインと宛先、通信量の増減から米軍の作戦行動はある程度読み解けるというのだから、驚嘆するほかない。


しかし、著者の情報分析を、日本陸軍は十分に活用しなかった。象徴的なのが、台湾沖航空戦誤報事件だろう。大本営陸軍部(参謀本部)の作戦部作戦課は「台湾沖航空戦の戦果は信用できない」という著者の緊急電報を握りつぶし、現場からの過大な戦果報告を盲信して無謀な捷号作戦に突き進んでしまう。陸軍のエリート中のエリートたちによって構成される作戦課は、情報部の敵情判断を無視して、独りよがりな作戦を立て続け、作戦が失敗すると実行部隊に責任を転嫁した。外部からの意見を一切拒絶して机上の空論で現場を振り回した作戦課を、著者は「大本営の奥の院」と批判している。作戦と情報が全く隔離していたのだから、日本軍の作戦が支離滅裂だったのは当然だろう。日本軍のインテリジェンス軽視を具体的かつ的確に指摘し、本質的・構造的な問題点を炙り出す筆者の深い識見に舌を巻くと共に、敵も知らず己も知らずに空想的な作戦を立て続けた作戦参謀たちの無能ぶりには怒りを通り越して呆れかえる。

今回の福島原発事故でも、以前から津波の危険性が指摘されていたにもかかわらず何ら措置を講じず、事故発生後も緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を活用しないなど、日本の指導者たちの情報軽視は相変わらずである。ヒロシマ、ナガサキ、そしてフクシマ。日本はいつになったら「不都合な真実」に目を向けられるようになるのだろうか。

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今日でも色褪せない内容

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:小市民 - この投稿者のレビュー一覧を見る

「マッカーサー参謀」と称され、戦争末期にあって米軍の行動を読み切った堀栄三氏による手記。手記でありながら自身が「堀」と表記されており、違和感を覚えるかもしれないが、読み進めていくにつれその違和感は薄れ、むしろそこまで客観視できる堀氏の姿勢に驚かされる。
 前半は戦中の堀氏の参謀としての活動を中心に話が進むが、その中で「情報を軽視」する作戦課に対する怒りと諦めが交錯した想いが抑制された表現ではあるが出されている。それは堀氏が実際に現場指揮官である山下奉文と指揮官と参謀という文字通り生死を共にした関係にあり、山下の苦悩を間近に見たこと、戦前に東條と山下、両者の違いを感じたが故のことであろう。
 しかし、本書は前半の帝国陸軍参謀としての行動以上に、戦後、堀氏が再び情報の世界に戻って以降に重きを置いて読まれることをお勧めしたい。
 そこには帝国陸海軍における組織・人事の硬直性、情報軽視への反省が生かされていないこと、責任回避に走る上司への絶望が、やはり抑制されている表現ではあるが、堀氏の怒りと諦めが滲み出している。いや、過去の反省をしていない分、よりその感情が深いのかもしれない。
 だが、それは氏が属した自衛隊に限ったことではなく、どの組織でも大なり小なり起きている話であり、足元を固めずに衆目を集めるような「パフォーマンス」なる派手な行動に走った挙句、道を誤った結果、大きなダメージを受ける組織が多いことがそのことを如実に示している。
 情報に限らず、地道な日々の積み重ねを軽視する組織は早晩大きなダメージを受けるのは、規模の大小を問わない。
 堀氏がご存命ならそう仰るかもしれない。
 そうであれば、本書は所謂「戦記物」ではなく「ビジネス書」として考えても良いのではないだろうか。

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情報の大切さは今でも通用する

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:451 - この投稿者のレビュー一覧を見る

戦略のミスを戦術で挽回すること、情報のない状況での戦闘は不可能に近い。
これは今の日本にも十二分にあてはまる。
国家レベルに限らず、経営や仕事にも。

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