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電子書籍

縮尻鏡三郎 みんなのレビュー

  • 佐藤雅美
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みんなのレビュー11件

みんなの評価4.5

評価内訳

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紙の本縮尻鏡三郎 上

2009/12/01 19:25

ユニークなキャラクターたちが生き生きと動き回るホームドラマ的雰囲気の時代小説

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る

「縮尻鏡三郎」シリーズ第一弾。

佐藤雅美氏が描く特徴的なキャラクター「物書同心居眠り紋蔵」に続く、縮尻鏡三郎が活躍するホームドラマ的雰囲気が漂う時代小説。

勘定所の留役にまで昇進していた拝郷鏡三郎は、とある訳により失職して『縮尻御家人』となった。
鏡三郎が縮尻御家人になった理由には、かつての上司・三枝能登守と老中首座・水野出羽守が関わっており、鏡三郎は三枝能登守が探してきた給金五十両というまあまあの待遇で大番屋の元締めに落ち着いた。

大番屋は小伝馬町の牢へ送る前の下調べをする仮牢兼調所。運営は町方の役人だったが、鏡三郎はそこの長である元締めになった。
鏡三郎の仕事は、仮牢への入出数の確認と、恐ろしい小伝馬の牢へ連れて行かれる前になんとか手心を加えて欲しいと、頭を下げに来る親兄弟や店の主人などの頼みを聞くこと。

鏡三郎は元勘定書留役だけあって大抵のことは解決し、さらには幸運に助けられて解決する問題数知れず。
なんだかんだと頼りにされて、かつて問題を解決してやった者の紹介で頼ってきた者、定町廻りや臨時廻りなどから受ける相談事、かつての上司・三枝能登守の依頼事など、さまざまな相談事の解決に鏡三郎が活躍することで物語は展開していく。

本作品の雰囲気は、全体的に鏡三郎を取り巻く人間関係によってほのぼのとしたものを漂わせながらも、鏡三郎が町方に近い大番屋の元締めということもあって、物語は町方からかつての上司つながりで幕府内の問題まで、幅広い問題が描かれているので読んでいて飽きさせない。
また佐藤雅美氏の小説でよく見られる掛け合いのようなテンポのいい会話も魅力的。


「縮尻鏡三郎」はシリーズものだが、本作品上下巻で十分まとまりのある完結を迎えている。

収録されている各話は独立しているものの、大きな流れが各話を貫く連作短編タイプ。
一話目の『春の浜風』では、鏡三郎の現在の状況や仕事ぶり、人物像、鏡三郎を取り巻く環境などを描いた、さわり的な話。
二話目の『思案投げ首』で、ここで扱われている『長崎会所五冊物』という長崎会所がまとめた貿易収支明細が、本作品の大きな流れを作り出しており、関連して鏡三郎が縮尻御家人になった顛末も描かれている重要な話。

以降、鏡三郎の元に持ち込まれたさまざまな問題を解決していく話になるのだが、問題を解決するだけの物語でなく、娘・知穂、地借りをしている津田織部、引合茶屋・矢車屋のおりん、三枝能登守、水野出羽守、北の臨時廻り・梶川三郎兵衛、果ては将軍まで、個性的なキャラクターが登場し、鏡三郎との人間関係が描かれており、賑やかで暖かさを感じさせる。

下巻の最終話では、二話目『思案投げ首』の大きな流れに決着が着くという構成になっているので、読み終えると長編を読み終えたようにスッキリする。

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紙の本浜町河岸の生き神様

2011/08/01 18:28

過ぐる歳月が落とした陰を感じる話

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

すっかり、北の臨時廻り同心梶川三郎兵衛と刀法指南の羽鳥誠十郎と仲良く三人で飲み歩くことが習慣になった縮尻鏡三郎。それでおりんには怒られ、娘の知穂はますます手習い塾の師匠として貫録をつけるとともに、婿の三九郎がまたも不始末をしでかしたと怒っている。この父と娘とは深層心理でつながっていると読者の私は睨んでいる。腕組みをする癖も同じだ。

拝郷鏡三郎が縮尻御家人になる原因となった、大坂の無尽の事件が、前作『首を斬られにきたの御番所』所収の『いまどき流行らぬ忠義の臣』で山野越前守によってむしかえされたが、今作『浜町河岸の生き神様』でもまた、『お構い者の行く末』で、偶然、事件の関係者が出現してむしかえされる。

縮尻鏡三郎が羽鳥誠十郎の家に呼ばれて御馳走になっているところに、誠十郎の乳兄弟で竹馬の友という男が訪ねてくる。彼、市場孫次郎は、誠十郎よりも十もふけた老人に見える。市場孫次郎は、あの大坂の事件の関係者の縁者で、連座して江戸から追放されていたが、御赦によって戻ってきたのだった。彼には、妻と娘を斬殺したのではないかという疑いがかけられている。その疑いをはらんだまま、三人は、一応、和やかに、会食を終えた。

それから数日後、ある家に押し込みが入り、主人一家が殺された。この事件も市場孫次郎が犯人ではないか……と羽鳥誠十郎と縮尻鏡三郎とは話し合う。

苦労と、修羅の歳月が、孫次郎の外見を暗い陰のあるものに変えていた。

同じようなことが、縮尻鏡三郎の友人の花房菊次郎の身の上にも起こっていた。鏡三郎とは、少年時代、たがいにグループのヘッドとなってタイマンをはった。ちょっと、居眠り紋蔵と人宿八官屋の捨吉との少年時代を思わせる。その後、多くの大名旗本御家人の例にもれず、貧乏に苦しんでいた花房菊次郎は、女犯の僧侶を脅すなど、さまざまな悪事に手を染め、悪党どもの間でひとかどの顔になった。元々、
>「町内の鳶頭(かしら)のような貫録の、苦み走った男」
で、今も、
>「仕事師(鳶)の親方にしてもおかしくない、たいした貫録の、目鼻立ちのはっきりしたお方で、ああいうお顔をしておられるお武家様はそうはおられません」
と、梶川三郎兵衛が言うほどで(同心にしては言葉遣いが町人みたいだが)、
かっこいい~!
と、私などは思うのだが。

>「貧乏御家人が貧乏しながら生きつづけてなにが面白いというのだ。獄門でも磔でも端っから承知の上よ」
>一点を見つめていうその顔には悪の限りをつくしてきた者にしか見られない覚悟があった。

市場孫次郎や花房菊次郎の姿は、一歩違えばそうなっていたという、羽鳥誠十郎や縮尻鏡三郎の似姿か影のように思える。

蝋燭屋の勘右衛門の話は、「一杯のかけそば」の十五年後、とでも言えようか。かつての「一杯のかけそば」を恩に着せてつきまとってくる茂兵衛をまくために、蝋燭屋の一同が勘右衛門を旅に出したら、不慮の死を遂げてしまった。内儀が番頭と再婚して店を続けていると、死んだはずの勘右衛門が帰ってきて、大騒動。そこへまた、「一杯のかけそば」の恩人茂兵衛がやってくる。勘右衛門はもともと幾ら恩を返しても返し足りないと思っており、茂兵衛も恩に着せたつもりはなかった。このふたりは、光と影か、それとも、光と光……?

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紙の本当たるも八卦の墨色占い

2011/07/06 15:54

江戸社会の生活臭が好き

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る

 今か今かと、出版を楽しみにしている時代小説・縮尻鏡三郎シリーズ。本書はその第五弾。全八話。
 作品に漂う江戸社会の生活臭と、軽妙な語り口が魅力で、もはや中毒となっている。

 その江戸の社会生活の中から生じる人の情も魅力的で、例えば、当時、十両盗むと死罪と決められていたが、十両で人の命が絶たれるのは忍びない、盗まれた方も人の死に関わってしまうので寝覚めが悪い、という理由で、盗まれた金を九両三分二朱として届け出たり、奉行所もそのように届け出るよう強要していたとか、使用人がお店から金品を盗んでも、使用人を突き出すのはお店の恥とされているとか、そういったもの。
 社会の営みを描いて、そこに生きる人々の姿を浮かび上がらせる、そんな印象で、池波正太郎や藤沢周平には感じられなかった、江戸社会の生活臭が濃厚に感じられるのが魅力なのである。

 主人公は大番屋の元締め拝郷鏡三郎。元御家人で御留役だったことから何かと周囲から頼りにされて、相談事が持ち込まれるのだが、彼にも色々と悩みはある。
 目下の悩み事は娘・知穂のこと。婿の三九郎と離縁してから良い話はない。以前に剣の吉凶を占う剣相見は、鏡三郎の佩刀を見て、身内が不縁になる刀だと言った。吉剣を持ってきても高値をふっかけるから眉唾物だと疑うものの、確かに娘は独り身のまま。そして偶然にも剣難の相の脇差しを持つ男が刺殺された。
 今回、剣相見が持ってきた刀は四十両。品が良く、腰に帯びていると娘にも縁談が持ち上がりそうな気がする。以前の出来事も心に引っかかっている。鏡三郎は、年収に匹敵するこの刀を、清水の舞台から飛び降りるつもりで買うのだった。【吉剣粟田口康光がとりもつ縁】

 しかし実際のところ、剣の吉凶を占う『剣相見』などいたのか、話を盛り上げるための著者の創作ではないのか、と思って調べてみると、なんと鎌倉時代から剣相の占いはあったらしい。日本人の占い好きは年季が入っているのだ。
 第二話の表題作【当たるも八卦の墨色占い】は、その占い好きを材にした作品。墨の濃淡の使い分けで占う墨色占いで、色が深いから慎まねば身を誤ることになると言われた、娘たつの顛末を描いている。
 きっとこれらの作品のように、江戸時代には占いを飯の種にする者と、占いの吉凶に振り回される者がいたんだろうなぁ、そう思うと、江戸社会の生々しい生活臭が漂ってきた気がした。

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紙の本捨てる神より拾う鬼

2011/01/16 19:15

格言的タイトルと、そこへつながる物語の妙が魅力の時代小説。縮尻鏡三郎シリーズ第四弾。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る

 幕閣の政争に巻き込まれ、御家人から大番屋の元締めに落ち着いた拝郷鏡三郎。
 大番屋は、小伝馬町の牢へ送る前の下調べをする仮牢兼調所である。
 大番屋の長である元締め仕事は、仮牢への入出数の確認と、恐ろしい小伝馬の牢へ連れて行かれる前になんとか手心を加えて欲しいと、頭を下げに来る親兄弟や店の主人などの頼みを聞くこと。
 そんな仕事柄、なんだかんだと頼りにされて、鏡三郎の元には、今日も様々な依頼が持ち込まれる。

 本書は縮尻鏡三郎シリーズの第四弾。
 物語の始まりは、鏡三郎の元に持ち込まれる依頼を起点に話が展開していくものから、飲み仲間の世間話から広がっていくもの、娘知穂と婿三九郎のごたごたなど、さまざま。
 しかしその構成は、まったく結びつかないような二つの話が、最終的に一つとなり、各話の格言のような特徴あるタイトルへと結びつくというスタイルで共通しており、読者を楽しませてくれる。

 その特徴的なタイトルが並べられた本書には、八話収録されている。
●娘知穂の一言が、困り果てた状況に新たな展開を生む、第一話【知穂の一言】
●世の不思議を思い知らされる因縁話が、さらに因縁を生む、第二話【陰徳あれば陽報あり】
●鬼の所行をはたらく不良旗本に端を発した騒動を描く、第三話【捨てる神より拾う鬼】
●剣の吉凶を占う剣相見の回りで起こった剣難の奇譚、第四話【剣相見助左衛門 剣難の見立て】
●娘知穂が持ち込んだ、友人で寄席の三味線弾きおふくの哀歌を描く、第五話【届いておくれ涙の爪弾き】
●老若男女にかぎらず、子供でさえも小さな物語を持つと言うことを材にした、第六話【母は獄門、祖母は遠島】
●ことさら善人ぶったことから足がついてしまった悪人の不運、第七話【過ぎたるは猶及ばざるが如し】
●日本初の算術所『塵劫記(じんこうき)』が思わぬ事件解決につながる、第八話【絹と盗人の数を知ること】

 本書の面白味が減ってしまうので、これ以上内容に触れないが、それでも要約した内容とタイトルからも興味のそそられる話が多い。
 そんな物語の面白さの他にも、厳しい境遇におかれる子供や、婿と離縁して春の訪れる気配もない娘知穂などを描きながらも、カラッとした暖かさが心地よかったり、遺言書の取り扱い方や、日本初の算術所『塵劫記』を材にするなどの日常社会を描いて、江戸の世界を身近に感じさせるなど、たくさんの魅力に満ちた一冊である。

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紙の本当たるも八卦の墨色占い

2011/08/04 14:44

吉剣でも断ち切れない父と娘のコンプレクス

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

江戸時代、数は少なくとも置時計や懐中時計を持っている人がいて、懐中時計は根付時計、印籠時計ともいい、時計師という職業もあった。高級なものは、刀でもそうだが、美術工芸品で、そんな高級品をめぐって、縮尻鏡三郎の知り合いの時計師が、詐欺の被害に遭いかける。相談を受けた鏡三郎にもどうにもできそうになかったが、ひょんな偶然からみごと解決、詐欺の裏をかくことができたのは、おもしろかった。

この印籠時計や、また高級な刀の盗品をめぐって、地方の豪農豪商といった人々の経済力、実力がうかがえる話が展開する。

手習い塾時習堂の男座の師匠神山逍遥軒も女座の師匠知穂も、手習いを教えるだけでなく、こどもたちの暮らしを守るために、奔走するのをいとわない。

その年頃にありがちな好奇心でついいかがわしい見世物小屋を覗いてしまった少年とその母親を、異様なまでにねちねちといじめて罵倒した与力は、実は昔、母親の方とわけありだった。ひどい公私混同、職権乱用のせいで、噂が広まり、少年はいたたまれなくなって家出してしまった。

凍てつく冬の夜、縮尻鏡三郎も加わって皆で少年を探す。ついでに鏡三郎は久しぶりにおりんと並んで歩くことができた。

知穂にいい結婚相手が現れないかと常に気になっている鏡三郎。そんな心につけこむように、またも剣相見の助左衛門が大番屋にやってきて、とうとう、「吉剣」を買わされてしまった。ところがそれは盗品だった。

盗品を買ったことがわかったら、持ち主に返さなければならない。でも、返してしまったら、また知穂が縁遠くなるのでは?と鏡三郎は逡巡する。

この盗品の刀をめぐって一度は逮捕されたがやがて釈放された山村屋新三郎は、豪農豪商の息子だ。わけあって江戸に出て底の抜けたような浪費生活をして、五千両の土地をすっかり手放してしまったが、それでも実家はびくともしない。彼は困った人を見ると助けずにはいられない優しい人で、引き取って育てている女の子は知穂の教え子である。そして、今度の事件で初めて娘の師匠に会って、恋に落ちてしまった。叱ってくれる女性が好きになるタイプかも。

さっそく、「吉剣」の効果が現れたのかと驚く縮尻鏡三郎。しかし……。

>端から受けつけないと思っていた。(略)ひょっとして、新三郎が大金持ちということにぐらついたか。(略)偉そうなことばかりいっていたが、知穂も世間のどこにでもいるそんな女だったのか。

せっかく知穂がその気になったのに、なんだよ、親父さん、そんな文句ばっかり言ってたら、せっかくつかんだ縁がまた逃げて行くぞ!

やはりこの父娘は深層心理で強いエレクトラコンプレックスのもとにつながっているのだ。えせカウンセラーの私は確信する。

山村屋新三郎もまた、三九郎と同じように、同じ失敗を繰り返す懲りないところがあり、さっそく、知穂に大目玉をくらう。でも、三九郎もほんとうはばかでもないしいい男だったように、新三郎も、ばかでもないし、いい男だった。いろいろあったけど、今度こそ、知穂は幸せな結婚ができ……そうだ……ったんだけど……。最後の最後に、どうしてこうなったんだ。まさか、これもエレクトラコンプレックスのなせるわざなのか?

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紙の本捨てる神より拾う鬼

2011/08/04 11:09

知穂先生!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

なんで、三枝能登守は、知穂と三九郎が結婚したときすぐに、就職の世話をしなかったんだ? そうすれば、ふたりは離婚せずにすんだかもしれないのに。

三九郎が何度も「押し込め」になるから、とうとう、知穂は拝郷家の株を三九郎に譲って家を出て手習い塾時習堂の女座の師匠として暮らしていくことにしちゃったじゃないか。

縮尻鏡三郎は、知穂が、時習堂の男座の師匠橘川秀之進にほれているから三九郎とわかれたんだと思っているけど。鏡三郎の最大の縮尻は、おりんと結婚するために知穂と三九郎とを無理矢理くっつけたという罪悪感を無意識の深層に抱えていることに違いない!と、今回もえせカウンセラー的に読んでみる。

もっとも、作品中には、剣相見の助左衛門という人物が出てきて、縮尻鏡三郎が「凶剣」を持っている限り、知穂は不縁だという。占いもカウンセリングみたいなもんやが、「吉剣」を売りつけるのはいただけまへんで。

知穂と離婚した後、三枝能登守の世話で就職した三九郎は、意外や有能さを発揮し、再婚までしてしまった。しかもそのことを、橘川秀之進の結婚式の場で知穂に言う、縮尻鏡三郎。ばかばかばか!

でも、知穂は、手習い塾の師匠としては有能で良心的である。手習い子の家庭にはどうしたって貧富の差があるのだが、貧しい家庭の子も肩身の狭い思いをせずに塾の花見の行事を楽しめるように工夫する。一部の父兄は、たくさんお金をかけて派手な祭りのような花見をする塾に子供を移してしまうが。

うーん、有能で良識的なひとりの教師が世の中に出るために、彼女の離婚は必要だったのかなあ。うーん。

橘川秀之進が嫁の実家、つまり遠い西国に行くことになる。そこで後任に知穂が選んだのは、神山逍遥軒という、学識人柄は申し分ないが、縮尻鏡三郎よりも十歳も上の、老人といってもいい人。

>「もっと若い、先々、おまえが一緒になってもいいというお人はおられぬのか?」
>(略)
>「なにを馬鹿げたことをいっておられるのです。(略)」
>「(略)このまま独り者で終わってしまうぞ」
>「そんな話をしにきたのではありません」

ぴしっと知穂が縮尻鏡三郎を叱るのは当然だ。手習い子たちのためにも真剣な話をしているというのに、この親父は。

この話のときはまだ、天保の改革の数年前。この時分でも、娘浄瑠璃や人形浄瑠璃が禁止され、三九郎はそれに関係して押し込めという罰を受けたのだった。

一方で、将軍徳川家斉の実家の一ツ橋家が勢力を張り、それが、時習堂のライバル(?)の塾の派手な花見の行事でたいへんな騒動を起こし、悲劇をもたらす。『届いておくれ涙の爪弾き』、土壇の場で首を落とされた巳之助の魂が天に昇って行くときも、しばらく中空に残って聴いていたに違いない……。

その後、『母は獄門、祖母は遠島』という複雑で残酷な運命に見舞われ、縮尻鏡三郎もおりんもどう声をかけていいのかわからないでいる少女せんを、知穂が引き取る。せんも知穂を信頼したようである。教師としての知穂の良さは、おとなも子供も認めているのだ。ただ、おとなしい嫁にはなれそうもないが。

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紙の本首を斬られにきたの御番所

2011/07/31 10:12

父離れ、娘離れは一筋縄では行かない

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

最初に野布袋の丸を握った土左衛門の話が出てくるので、知ってる人は、「これは幸田露伴の『幻談』だ」と思うだろう。露伴の小説では土左衛門の正体はわからないが、縮尻鏡三郎は南町奉行所の定廻り同心黒田幸兵衛や北の臨時廻り同心梶川三郎兵衛や岡っ引きの勘八たちとのチームワークで土左衛門の正体を突き止める。そして背後にあった事件の真相も。

「せんみつ」が真相解明の鍵となったのだが、「せんみつ」という言葉を、私は、テレビ朝日の刑事ドラマ「相棒」で覚えていたので、それがこの小説にも出てきたのがうれしいやら、たのしいやら。

梶川三郎兵衛と、北の御番所に「首を斬られにきた」羽鳥誠十郎が、縮尻鏡三郎の飲み仲間になった。そこに娘知穂の婿の三九郎も加わって、三枝能登守から御裾分けされた料理切手で八百善の料理を食べきれないほど食べたうえ、たくさんのおみやげの料理と、御釣りに二十両まで渡されてしまった。後でこの料理切手は間違えて贈られたものだったことがわかるのだが。

ところで娘婿の三九郎、人が良過ぎ脇が甘過ぎで次から次へとトラブルに巻き込まれ、あわや御扶持召し放ちの危機に。知穂はもう三九郎を見放して手習い塾の師匠を始め、その才能を認められて時習堂という大きな塾の女座の師匠にヘッドハンティングされ、生き生きと働いている。三九郎が小伝馬町の揚り屋に入れられても、着替えを下男に届けさせるだけで心配もしない。

縮尻鏡三郎は、時習堂の男座の師匠の鞠川秀之進が白皙長身で博識だと知るや、たちまち心配と妄想のとりこになり、知穂と秀之進がくちづけを交わす夢まで見てしまう。

うーん。そりゃあまあ、三九郎は、ふっくらしていて動きも鈍くなまえも野暮ったく、同性として友達としてはいいやつだが異性にもてるとは縮尻鏡三郎にも思えず、知穂だってもともと三九郎を気のおけない友達とは思っていても恋人とは思っていなかったのを、鏡三郎が抑えつけるようにして結婚させた、という経緯があるからね……。

間違えて贈られた料理切手がきっかけになって、今をときめく老中山野越前守が瀟洒な庭のある屋敷で縮尻鏡三郎と対面する。山野越前守はハンサムで頭が切れて、こすっからいところがない。それはいいのだが、鏡三郎の縮尻の原因になった大坂出張の話をむしかえしてくる。山野越前守が大坂城代だったときに、実弟が城主になっている越後のさる藩が起こした問題だったからだ。なまえといい、弟のことといい、山野越前守のモデルは水野越前守に違いない。

山野越前守は話の終わりに、事と次第によっては鏡三郎とその元上司の三枝能登守とを倒すつもりでいたことを打ち明ける。そして、鏡三郎がおりんと暮らしていることも調べ上げてあることを、粋なはからいでさらっとわからせる。油断も隙もない。佐藤雅美描く山野越前守は、いかにも水野越前守はこういう人だっただろうというイメージに合っている。

縮尻鏡三郎は、知穂がいつまでも父上と一緒に暮らしていたいと言っていたのに、自分がおりんと再婚するために婿をとらせてしまった、すまない、と思っているのかな。鏡三郎がおりんにあれこれ言いわけをして赤提灯やももんじ屋などに行くのも、知穂が仕事が忙しいからと帰りに一膳飯屋に寄って三九郎を放ったらかしにするのも、父娘とも意識していないが、深層心理ではつながっているんじゃないかしら。

つい、えせカウンセラー的な読み方をしてしまった。

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紙の本縮尻鏡三郎 下

2011/07/29 13:07

またも縮尻……でも楽しい?

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

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縮尻御家人拝郷鏡三郎の隣人で大家の「世間知らずで、ぐうたらで、ものぐさ」な旗本津田織部は、織田信長の一族一門の末裔だという。天保三年(1832年)に織田の一族一門が集まって総見寺で信長の二百五十回忌の法要を営んだという史実に、津田織部の長男鴻之介の結婚の話をうまくつなげている。

一族一門の総意により、織田信長の生前から二百数十年間、反逆者として仲間外れにされてきた子孫と津田鴻之介とが結婚して怨念を解消することになる。

同じ頃、引合茶屋矢車屋のおりんの妹にして縮尻鏡三郎の娘知穂の友達のさよもお見合いをする。

でもほんとうは、津田鴻之介とおさよとは相思相愛なのだ。それぞれの結婚が切ない恋の終わりになる……かと思ったら!?

織田一族一門の二百七十数年間の怨念は想像を絶してすさまじかった。それにおさよのお見合いの相手も最低だった。この二つには何の関係もないが。

おさよと鴻之介、おりんと鏡三郎、それに、津田家の次男三九郎とお知穂も?この三組のカップルがめでたくゴールインするかどうかが気になるところ。

津田家の用人の渡辺卓蔵がくわせもので鏡三郎一家を借地から追い出そうとし、やがて津田の一族あげての騒動を起こす。

大名も旗本も貧乏な家が多くて、結婚も養子縁組も持参金は幾らとあからさまに口にし、その意地汚さ情けなさ、はしたなさ。そんなだから、遣手の家老や用人を取り立てて、家政家計を改善する家もあるのだが、辣腕の家老が他の家臣に恨まれて騒動が起こったり、悪徳用人に財産をむしりとられたりすることもある。

幕府もそれは同じだ。縮尻鏡三郎が、ようよう、津田家との騒動などを解決したら、長崎会所の多額の損金の調査出張を命じられてしまった。長崎会所の問題には、将軍家斉の妻の実家の薩摩藩島津家や、遣手の老中だった水野出羽守などもからんでいて、これまで、調査が先延ばしされていたのだ。

そして長崎で、拝郷鏡三郎は、ああ……!

ちょ、ちょっと、縮尻鏡三郎さん!美しく魅力的な女性にうつつを抜かしていていいんですか!おりんさんのことは!?またしくじりますよ!

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紙の本縮尻鏡三郎 上

2011/07/29 12:04

縮尻もまた楽し……?

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

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「縮尻」と書いて「しくじり」と読むのがおもしろい。

あの居眠り紋蔵は奉行所の同心で、身分は足軽、「卒」だった。与力は「士」だが、どちらも不浄役人と呼ばれ、奉行所以外の御役につくことはできない。そのかわり、跡取りを15歳ぐらいから見習いにして、実質的に世襲を維持した。跡取り以外は養子の口を探さなければならない。それは旗本御家人も同じ。だから養子の場合は、身分の移動があった。

鏡三郎は旗本榊原家から御家人拝郷家へ養子になり、刻苦勉励して、評定所留役になった。末は勘定奉行にだってなれるかもしれなかった。ところが御役御免の憂き目に遭って縮尻御家人となってしまった。今は、大番屋の元締である。「不浄役人」とどう違う?もっとも、同心たちから敬語を使われているし、評定所の元の同僚と会ったときには両敬で話しているけれど。

居眠り紋蔵には、出世の道が閉ざされた境遇でマイホームパパであることに命をかけているようなところがあり、妻一筋で、どんなに不利不運に見舞われようとも養子を実子と同様に育て上げようとする姿勢が魅力だった。

縮尻鏡三郎は、出世コースに乗っているときはそれを楽しんでいたが、そこから突き落とされてもまた、はぐれてこその面白味を味わっているように見える。

豊富な知識と経験と、そして、なぜか備わっているらしい「ツキ」を頼りにされて、公事宿の主人や同心たちや、引合茶屋矢車屋のおりんや、そもそも縮尻の原因となった元上役の三枝能登守などから、相談事や厄介事を持ち込まれる。

縮尻鏡三郎は、妻を早くに亡くして、年頃の娘知穂と暮らしている。鏡三郎の縁談を知穂がこわしてしまうのがおもしろい。それが結果的に鏡三郎とおりんとの恋を進展させてしまって、いつまでも父との二人暮らしを続けたい知穂にとっては皮肉な結果に……。

おりんは男勝りだが優しい女性でもある。猪牙舟を漕いで浜町河岸の鏡三郎の家まで来るなんて、すてき!

隣人で大家の「世間知らずで、ぐうたらで、ものぐさ」な旗本津田織部とその家族との付き合い、ドタバタもおもしろい。

この小説も他の多くの佐藤雅美作品と同様、大御所時代の物語で、老中水野出羽守や将軍徳川家斉が登場する。このお偉方が問題なのだ。三枝能登守経由で拝郷鏡三郎に押し付けてくる仕事が。以前は、大坂への出張がきっかけで縮尻になった。今度は、長崎に出張させられそうだ。縮尻御家人が更にしくじったらどうなるんだろう……?

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紙の本首を斬られにきたの御番所

2009/12/02 19:43

脇の甘い婿・三九郎が妻を苛立たせ、鏡三郎の頭を悩ませる

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「縮尻鏡三郎」シリーズ第二弾。

各話の物語は独立しているが、時間の流れがつながっている連作短編小説。
前作「縮尻鏡三郎」では、鏡三郎の『長崎会所五冊物』の解読を発端として、長崎貿易収支減少の原因を探り出してきた鏡三が、地借りしている津田織部の次男・三九郎を娘・知穂の婿に迎えたあと、自身は隠居して引合茶屋・矢車屋のおりんと所帯を持ち、大番屋の元締めに戻ったところまでを描いていた。

「縮尻鏡三郎」はシリーズものだから、鏡三郎を取り巻く状況はこの続きから始まる。
「首を斬られにきたの御番所」は前作のように、長崎貿易収支減少の探索とその解決による完結という明確な流れはないものの、娘夫婦の不仲が鏡三郎の心配の種であり、この問題が本作品を貫く大きな流れだと思う。


もともと知穂は三九郎のことを『ぼんくら』呼ばわりしており、所帯を持ってからも亭主の事を『三九郎』と呼び捨てにする。
三九郎は過去の鏡三郎がしたように、習い事や顔を知ってもらうための挨拶回りなどの就職活動はほとんどせず、鏡三郎の大番屋に顔を出したり、道場に通うだけであり、しかも粗忽者。
本作中の『舞う桜』では、そんな三九郎の粗忽ぶりが描かれており、知穂との仲はますます悪くなるばかり。
知穂は自分が稼がねばと手習塾を始めていたが、大手手習い塾の女座を任されることになってから、元々そこの手習い塾を開き男座を担当している男前で博識の菊川秀之進と知り合い始めると生き生きとしだした。

最終話『春を呼び込むか、百日の押込』で、三九郎はまたまた事件に巻き込まれることになり、知穂は『あんなぼんくらとはいつまでも一緒にいても仕方がない』といい、鏡三郎に三九郎と別れて一人で暮らすと言う。

この最終話は、三九郎を巻き込んだ事件の解明が中心で、それに加えて大きな流れである鏡三郎の心配事に、希望の光を射す状況を描いている。
読む前には一見意味不明な『春を呼び込むか、百日の押込』というタイトルは、読み終えてそういうことかと納得させられる。


第一弾「縮尻鏡三郎」もそうだったが、一つの話の中にまったく違う出来事が描かれ、それが話が進むにつれて一つのことに結びついていく様子は読んでいて気持ちよく、特に『いまどき流行らぬ忠義の臣』は、二つの出来事と鏡三郎が縮尻御家人となった大阪無尽調査の件と絡めてあり、とても爽快だった。

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紙の本浜町河岸の生き神様

2009/12/05 19:18

ひょんな事から解明される八つの問題が魅力の作品

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る

「縮尻鏡三郎」シリーズ第三弾。

「もう、やだ」読み出すといきなり娘・知穂の怒りが目に飛び込んでくる。脇が甘い婿・三九郎がまたやらかしたのだ。
前作「首を斬られにきたの御番所」のラストで、百日の押し込めになった三九郎を甲斐甲斐しく世話をし、夫婦仲はひとまず安心と思っていたので、ページをめくると飛び込んでくる知穂の憤まんが、何事が起こったのかと気を引き付ける。

そういう出だしの「浜町河岸の生き神様 - 縮尻鏡三郎 -」には、第一弾「縮尻鏡三郎」、第二弾「首を斬られにきたの御番所」にあった一冊を貫く大きな物語がなく、全八話すべて独立した物語のみなので(時間的にはつながっているので過去の話は出てくる)、これまでの作品より楽しみが少し減った印象を受けた。

『破鍋に綴蓋』
脇が甘い婿・三九郎の安請け合いによって怒り心頭の娘・知穂。
鏡三郎は知穂に『安請け合いの断り』を押しつけられ、別件の揉め事解決依頼が鏡三郎を『安請け合い断り』との板挟みにする。
困り果てた鏡三郎の取った行動と結末、そしてその原因となった三九郎の行く末は……。

『さりとはの分別者』
老舗蕎麦屋の普請を請け負った大工の平右衛門。
材木の二十両を後払いにしてもらい、請負証文と着手金を待たずに材木の加工に着手した。
ところが蕎麦屋の主が亡くなり、若旦那は普請の変改はするつもりはないと言ってくれたものの、いざ普請の段階になると金がないと取り合ってくれない。
若旦那の心変わりと見る鏡三郎の元にやってきた相談内容とは。

『お構い者の行く末』
羽鳥誠十郎宅で鏡三郎が馳走になっていると、縮尻御家人となった事件に関わりのある市場藤四郎の息子・孫次郎が現れた。
お構い者だったが御赦されて江戸に戻ってきたと言う孫次郎は、お構い者になっているとき、妻子が殺され、彼が妻子を殺したのではないかと疑われていた。
そして孫四郎が消えた夜、呉服屋越後屋に賊が押し入り、主人夫婦と娘を斬殺、三百両を盗むという事件が起きた。

『思い立ったが吉日』
過去の恩を目当てに何度も金をせびりに来るうどん屋茂兵衛。恩にどこまでも報いようとする蝋燭屋勘右衛門。
怒り心頭の妻に頭を冷やしてこいと言われて勘右衛門は旅にでた。
しかし恩をもって恩に報いたのがきっかけの旅先で、それが徒となって勘右衛門を襲った。
ちなみに本書表紙のイラストはこの物語の一部を描いたもの。

『似た者どうしの放蕩の血』
須藤四郎左衛門は父・周庵が死ぬと馬脚を現し放蕩を繰り返した。
それに輪をかけた放蕩者の息子・幸之助は、放蕩の末、家財道具を売り払い、借家住まいで細々と暮らしていた。
そこへ蔵書三万冊、売り払えば千五百両にもなる祖父・周庵の『数寄屋橋文庫』が、書肆(ほんや)に出回っているという話を聞いた。
四郎左衛門は、蔵書は誰にも売っていないはず、盗まれたものだから返せと書肆に嫌がらせを始めた……

『踏み留まった心中者の魂魄』
三ツ俣という洲に心中者の死骸が引っかかった。
お構いなしとされていた川流れの死体であったが、何日も引っかかっている上、身ぐるみを剥がれて丸裸になったことで、物見高い江戸っ子が雲霞のように集まりだした。
いつまでも見せ物になるのは具合が悪いと心中者が埋葬されたあと、鏡三郎の元に妾がいなくなったという話が舞い込んできた。

『浜町河岸の生き神様』
福々しく鎌倉の大仏が立ち上がったような雰囲気の武家と銭両替屋の手代が、喧嘩して番屋へ送られてきた。
『切金裁許』を利用した武家の踏み倒しが原因なのだが、その武家は他に二口も同じ手口を使っていた奉行所の名物男だった。
すったもんだの末、福々しい武家が思い立った金策とは。

『御家人花房菊次郎の覚悟』
『相対替え』を希望する御家人の屋敷で籠脱け詐欺(かごぬけさぎ)が行われた。
その犯人とおぼしき人物は、鏡三郎の幼い頃からの知り合いで不良御家人の花房菊次郎らしい。
菊次郎が定期的に現れる茶屋で、籠脱け詐欺の犯人を見た奥方の面通しに、鏡三郎も一役買ったのだが。


各物語は、あらぬ所から湧いてきたよう話が問題の解決につながっていく展開がほとんどなので、一話で二度おいしく、二つの話が合わさって三度おいしい作品群に仕上がっている。

ところで佐藤雅美氏の小説は漢字が多い。嫌がらせかと思うほどに漢字が固まっている部分もある。
しかし本屋でパラパラとめくり漢字が多いからといって、買うのを止めないで欲しい。
特に「居眠り紋蔵」シリーズ、「縮尻鏡三郎」シリーズは、漢字の多さから受ける堅さなく、ほのぼのとした雰囲気が漂う時代小説なのだから。

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