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電子書籍

翻訳夜話 みんなのレビュー

  • 村上春樹, 柴田元幸
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みんなのレビュー27件

みんなの評価4.1

評価内訳

27 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本翻訳夜話

2011/11/02 17:57

翻訳にとどまらず言語や言葉に対する深い洞察が。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 いやぁ〜、おもしろかった、村上春樹と柴田元幸の『翻訳夜話』。も
ちろん皆さんご存知でしょうが、村上春樹はレイモンド・カーヴァーや
ジョン・アーヴィングなどの翻訳家としても有名。柴田さんは特にポー
ル・オースターの翻訳家として高い評価を受けている人だ。そして、こ
の本、翻訳の話ではあるのだが、そこにとどまらずに「言語」や「言葉」
などさらに広がりのある話になっていて読み応えがある。

 例えば、村上さんのこんな言葉。「ビートとうねりがない文章って、
人はなかなか読まないんですよ。いくら綺麗な言葉を綺麗に並べてみて
も、ビートとうねりがないと、文章がうまく呼吸しないから、かなり読
みづらいです」。さらに、柴田さんのこんな言葉、「(翻訳の勉強とし
て)日本語を磨きましょうという言い方をよく目にするんですけど、ど
うも何か違和感があるんですね、僕は。何でなのかなあ、所詮自分の使
える日本語しか上手く文章にはのらないということを痛感するんです」。
本当にそうですよね。それにしてもこの二人、翻訳が好きで好きでたま
らないらしい。村上さんは小説で疲れた心をリハビリする、癒しの意味
もあるようなのだが…。

 内容的には村上×柴田の対談、翻訳学校の生徒たちとのやり取り、若
い翻訳者たちとのフォーラム(何と参加者に岸本佐知子がいる!)の3
部構成。若者たちの質問に2人が非常にていねいに応えているのが印象
的だ。間に2人が同じ短篇を訳すという趣向でカーヴァーの「収集」、
オースターの「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」の各々の訳
文が掲載されている。どう違うか?…う〜む。この比較の話も結構深く
ていい。言葉を使う仕事をしている人、読書好きな人にもぜひ読んでも
らいたい一冊だ。 

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紙の本翻訳夜話

2000/11/24 04:52

幸福な競演

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:mau - この投稿者のレビュー一覧を見る

 クリスマスプレゼントを一ヶ月前にいただいたような、そんな喜びに浸りつつ、じんわりと読んだ。

 アメリカ現代文学の翻訳者として絶対に外せない二人が、思い入れたっぷりに語る翻訳テクニック。オースターとカーヴァーの競訳に若手翻訳家を交えての解釈論議までついて、こんな贅沢な企画、年を越す前に何か罰が当たるんじゃないだろうか。

 本書全体に溢れる二人の翻訳への、そして文学への愛情。物語が好きで好きでたまらないからこそ、忙しい最中にもついちょこちょこっと訳してしまう。そんな想いに乗せられて、こちらまでわくわくと嬉しくなってくる。彼らに愛され、訳された作品は、本当に幸せだ。

 私個人は柴田氏のファンだが、本書全体としては創作と翻訳の違いを丁寧に解説していることもあって、村上氏の発言に印象深いものが多かった。文学の好きな、全ての人に読んでほしい。

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紙の本翻訳夜話

2004/07/23 01:06

翻訳家をめざしてなくても、村上春樹小説のファンなら満足できる一冊

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ミケ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 私は村上春樹の小説が好きで、実はこの本も数年前から手元にあった。
でも小説じゃないから、すぐに読む気になれず、そうこうしているうちに
存在を忘れてしまっていた。
 何か読むものないかな〜と、本棚を物色していて「あ、こんな本があったのを
忘れていたわ。」と思って読み始めたのだけれど、これが面白い。
今まで、村上春樹の小説は読んできたけれど、翻訳の方はほとんど読んでいない。
レイモンド・カーヴァーも1,2冊本棚にあるけれど読んでいない。
村上氏が翻訳した絵本『急行「北極号」』『魔法のホウキ』『西風号の遭難』や
山本容子さんの銅版画のカポーティの『あるクリスマス』『クリスマスの思い出』
『おじいさんの思い出』は大好きな本たちだ。しかし、どれも子どもの本屋で
見つけて買ったもので、いわゆる大人を対象とした一般小説の翻訳物は、どうも
違和感があって今まで読めなかった。
 この「翻訳夜話」を読んでみると、う〜ん、これは彼が翻訳したものも読んでみたいゾ、
と思ってしまう。夕方、この本を読み終わって夕刊を開いたら、タイムリーにも
<「社会の手触りを」を描く 『レイモンド・カーヴァー全集』完結>
という見出しが大きく出ているではないか。村上春樹氏の写真つきで、大きく
取り上げられていて柴田元幸氏のコメントまでついている。
ますます、彼の翻訳物も読んでみようという気になってきた。
 
 この本の中に、柴田元幸氏と村上春樹氏が同じテキストを翻訳しているものが載っていて
とても興味深かった。もうこれは完全に好みの問題だと思うけれど、私はやはり村上氏の
訳のほうに惹きつけられる。本書の中で、訳者が違うことによって作品から受けるイメージが
違ってしまうということについて、それは音楽と同じで、たとえばベートーベンの曲を
いろいろな指揮者や演奏者が演奏して、その中で自分の肌に合う解釈を選ぶということが
できるといいと書いてあったけれど、なるほどそういうことかと腑に落ちた。
 実は「ライ麦畑でつかまえて」も、村上訳はまだ読んでいない。学生の頃読んだものと
イメージが違ったら、なんだかうろたえてしまいそうな気がして。でも音楽と同じだと
言われたら気が楽になった。今度「キャッチャー・イン・ザ・ライ」も読んでみよう。

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紙の本翻訳夜話

2001/11/13 11:32

どちらのファンにもたまらない一冊

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:呑如来 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 東大教養学部での、バベル外語学院での、そして既に活躍している6人の翻訳家との3つのフォーラムは、創作秘話とも呼べるものでとても読みごたえがあり、小説読みの人もそうだが、翻訳家を目指す人にとっても意義深い本に仕上がっている。
 何より素敵なのは柴田氏と村上氏によるカーヴァ—とオースターの訳し合いで、柴田元幸訳のカーヴァーや村上春樹訳のオースターを読む喜びはどんなミステリを読むよりも大きいものがあった。

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紙の本翻訳夜話

2001/08/17 12:01

翻訳の原点

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Mihi - この投稿者のレビュー一覧を見る

 英語を使った仕事をしたいと思った人がまず最初に思いつくのが、翻訳ではないだろうか。私もそうだった。通訳などしゃべることが必要な仕事に比べて、翻訳なら辞書などを駆使し、時間の制約がなければどうにかしてできる。根性でどうにかなると思ってしまうのだ。だがそれは裏を返せば、「誰でもできるのではないのだろうか」「翻訳することに何か意味があるのだろうか」という思いにもなる。これが私の翻訳に対する長年の「愛憎」だった。
 この本は、私のこの混沌とした思いに光を与えてくれた。誰でも皆、同じようなことを思っているのだ。それでも「翻訳は愛だ」といって翻訳に励む。「訳したい」ただそれだけの思いで。
 「英語を使いたいから翻訳したい」のか。そうではないはずだ。「英語を訳したいから翻訳する」のではないのか。その出発点を忘れてしまうところであった。それを再び気づかせてくれたこの本に感謝したい。

見習い翻訳家

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紙の本翻訳夜話

2001/04/23 14:20

翻訳の2つの形

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ダメ太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 現在の文学界で最も売れる作家であり、翻訳もかなりの量をこなす村上春樹と、有名な翻訳家といえばこの人の名が必ず挙がるであろう柴田元幸が各々の翻訳観を語る、とても興味深い一冊である。翻訳理論に関する本は数多く出版されているが、このように著名な2人が翻訳の実践について語るというようなものは珍しい。一方の村上は本職が小説家であるからいわば彼一流の翻訳をしており、他方の柴田は大学で翻訳を教えるくらいであるから、基本に忠実な翻訳をする。そのように方向性が全く逆である2人であるから、実践における考え方の違いが顕著にあらわれてくるのだが、結論としては意見の一致を見ることもあって、翻訳というものの奥の深さを感じたりもする。
 2人が同じテキストを訳して、それを比較するという試みもなされている。それを見る限り、やはり2人の翻訳は根本的に違うものであるという印象を受けるが、翻訳には正解というものはなく、クラシック音楽が指揮者によってその印象を変えるように、翻訳というものも訳者によって異なるものであっていいという両者の一致した見解に対しては、そのとおりだと感じた。
 翻訳書をよく読む人、翻訳に興味のある人、翻訳家を目指す人、実際に翻訳家として活躍している人、そのような人々すべてに読んでもらいたい一冊だ。

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紙の本翻訳夜話

2000/11/12 23:36

村上訳のライ麦畑〜は読みたいなぁ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:katokt - この投稿者のレビュー一覧を見る

二人のてだれの翻訳者による翻訳の本。翻訳について動機、訳し方のテクニックなど非常に率直に語られていると思う。同じ作品を2人が訳しているものも収録されていて興味深い。中にライ麦畑〜には別訳があってもいいって話がでてくるけど、やっぱり

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紙の本翻訳夜話

2007/06/12 23:31

日本一ハッピーな翻訳家に、翻訳とは癒しなりと教わった

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:mikan - この投稿者のレビュー一覧を見る

まず私個人のことを書いてしまうと、翻訳家になりたいと思ったことはないし、最近では小説もほとんど読みません。実は村上春樹の翻訳小説も読んだことはありません。それでも偶然この本を手にとってみたら、とてもおもしろかった。そして癒されました。

「テキストの文章の響きに耳を澄ませれば、訳文のあり方というのは自然に決まってくるものだと、僕は考えています」「誰かと何かと、確実に結びついているという。そしてその結びつき方はときとして「かけがえがない」ものであるわけです」

…そう、こういうのが読みたかったのよ!他人の言葉への目配りなく自意識だけが並ぶ文や、身の丈に合わない仰々しい言葉ばかりの文に疲れを感じる今日このごろ。他人の言葉を好きになって、自分の中の感覚とすりあわせながら聞きとろうとしている人、他者の言葉をこつこつと置き換えていくことが癒しだと感じる人の言葉は、理屈ぬきに読んで嬉しいものでした。

そういった翻訳の根っこの話とは別に、実際のテクニックの話も面白かった。「僕」と訳すか「俺」と訳すか?ダジャレの翻訳はどう処理するか?etc.。英文和訳に無縁に生きてきた私にはかなり意外なトピックでした。

さて、この本は、翻訳学校の生徒さんや若手翻訳者たちとの質疑応答などでできているのですが、読み終えてみると、実際に翻訳で頑張っている人たちは村上春樹のようにハッピーに翻訳するだけではなかなか済まんのだろうな…というのも感想です。

村上春樹はプロとして自分の文体やリズムを持っているし、自分の文に合う作家も自分でわかる、好きな作家を好きなペースで訳せば発行してもらえて読者がついて、お金も入る(自前のエッセイ・短編よりずっと安いとのことですが)、そして何より、翻訳で得たものを本業・小説に活かすことができる…翻訳で食べていこうとする普通の人には絶対にありえない環境なわけで…。ただ、そんな生活レベルの話を脇に置いてみると、翻訳の仕事の核の部分には、他人の言葉に無心で取り組むハッピーさがあるんだな、というのは初めて知りました。これは、他のお仕事にはなかなかないかもしれません。

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紙の本サリンジャー戦記 翻訳夜話 2

2003/08/21 00:07

深い「読み」の記録

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:深爪 - この投稿者のレビュー一覧を見る

村上さんとしては渾身の「訳者解説」が、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の巻末に掲載できなかったのがよほど残念だったのでしょう。それもあってか、その幻の解説を軸にして、早くも関連本が出ました。「翻訳夜話」の体裁を借りてはいますが、優秀な「キャッチャー」のサブテキストだと思います。って、当たり前ですかね。訳した本人が書いていらっしゃるんですし。
その「幻の解説」は、親切丁寧な種類のもので、これが巻末に付されていたならば、読後感もまた違ったものになっていたことだろうな、と思いました。

ホールデンがたびたび映画をけなしていたり、宗教を訊かれることを気にしていたことの理由とか、ひとつひとつのことにふーん、なるほどと思わせる経緯があったり(まあそんなことは些細なことなんですけど)、サリンジャーの人物像や時代背景などが明らかになってくるにつれ、作品の持つ意味合いが格段に深いものになること請け合いです。

サリンジャーがその極端な隠遁生活に陥るに至った経緯もある程度明らかになります。悲惨な戦争体験とか、父親の存在とか、その他いろいろなことがあってのことなのでしょうけど、作品が自分自身よりはるかに大きな存在になってしまったってことは、やはりとんでもなく怖いことなのでしょう。

そういえば、マイク・チャップマンの事件とかもありました。ってことも思い出させられました。そもそも小説ってそういう怖さを内包しうるものなんですよね。

でも本書を読んでいちばん感じたことは、まあ翻訳するんだから当然なんでしょうけど、村上・柴田の両氏ともに、テキストに対してもの凄く深い「読み」が施されているっていうことで、深く読むってことは、自分の知識やら人生観やら経験やらをすべて呼び起こして読むんだってことをいまさらながら認識したわけです。「翻訳」はその延長線上にあるものでしょう。

うんざりするくらい情報過多な世の中で、さらにここBK1に投稿などしたりしていると競争意識も高揚してしまって、「あれも読まなきゃこれも読まなきゃ」で、まるで消費的な読書になってしまっている自分に気づきます。たくさん読むことも必要だけど、ひとつの作品を深く読むことのほうが大切ではないか、もっと時間をかけて読まなければ、人間の「深み」を追求するための読書でなければ、すっかりそういう気持ちにさせられてしまいました。

日頃から、読み終わって、うーんもう一回読みたいな、って思う本はあっても、なかなか再読に至らないのが悲しい現状です。もう一回読みたいっていう気持ちは、もうちょっと大事にしてやらなくては。

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電子書籍翻訳夜話

2018/09/29 09:18

良かったです

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:晴耕雨読なわたし - この投稿者のレビュー一覧を見る

翻訳本は訳者でほんとうに大きく違いますよね
オースター最近は読んでなかったけれど十代の頃したしんでました。
好きなお二人の諸本でした。

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紙の本サリンジャー戦記 翻訳夜話 2

2016/08/29 18:55

翻訳するにあたってのすごく深い内訳話のようなものが聞けた

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る

「キャッチャー・イン・ザ・ライ」は、以前読んだがはっきり言ってあまり良く覚えていない。今回この対談を読んで村上春樹氏の、サリンジャー(特に「キャッチャー・イン・ザ・ライ」)についての愛が感じられた。この対談では、「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を翻訳するにあたってのすごく深い内訳話のようなものが聞けた。ここまでさらけ出していいのかとさえ思ったほどだ。もう一度読み直してもいいかなと思った。

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紙の本サリンジャー戦記 翻訳夜話 2

2003/08/09 21:41

いくつかのややこしい現実的な問題

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「本書には訳者の解説が加えられる予定でしたが、原著者の要請により、また契約の条項に基づき、それが不可能になりました。残念ですが、ご理解いただければ幸甚です。 著者」
 村上春樹訳「キャッチャー・イン・ザ・レイ」の最後のページにさりげなく付けられた二行の文章の全文である。おそらくこういう文章がなければ特にどういうこともないだろうが、たった二行の文章があることで、一体何があったのだろうかと考えてしまう。野崎孝訳の「ライ麦畑でつかまえて」には訳者による解説がついていた。なのにどうして村上訳にはつかないのか。村上訳が気にいらなかったのか、同じ文学者という立場の村上による訳を気にしたのか。色々と下種(げす)は勘繰るものである。

 そのあたりの事情は、この新書のまえがきにあたる村上春樹の「ライ麦畑の翻訳者たち」に詳しい。村上春樹流にいえば、「やれやれ」というところだろう。その幻の解説がこの新書に収録されている。サリンジャーという作家の経歴とか「キャッチャー」が生み出した多くの波紋が丁寧に書かれた上等な訳者解説である。つまり、この新書で村上春樹訳「キャッチャー・イン・ザ・レイ」が初めて完結するのだ。

 村上春樹の解説と野崎孝のそれ(私が持っているのは白水社の《Uブックス》で一九八四年に書かれたもの)とは違いは、原作者サリンジャーの経歴の詳細さだろう。村上解説には「我が父サリンジャー」など野崎が解説を書いてから出版された資料がテクストとして採用されているが、野崎にはほとんど情報がなかったようである。しかも、野崎が解説を書いてから二十年が経って、作品「キャッチャー」は色褪せないものの作者サリンジャーがどういう人物なのかほとんどの人が忘れているともいえる。村上はこの作品を古典と位置づけ、そのあたりの情報が重要であると判断したようだ。

 二人の解説の相違で面白いのが、ジョン・レノン狙撃事件の犯人チャップマンの扱いだろう。彼は事件を起こした際に「キャッチャー」本を所有していたことで有名だが、野崎にとって「新聞記事を読んだ記憶もある」程度の記述にすぎない。その点、ビートルズ世代の村上にとってはもっとこだわりがある。もっともそれは単に世代の相違だけかもしれないが、村上は野崎訳を肯定しつつも「時代に応じて」翻訳があってもいいとしているから、今後村上訳を読んだ若い人による新しい「キャッチャー」が登場するかもしれない。

 もし、できるなら村上訳の「キャッチャー」とこの新書をセットして販売すればいいのにと思うが、きっといくつかのややこしい現実的な問題があるのだろうな。やれやれ。

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紙の本サリンジャー戦記 翻訳夜話 2

2003/08/02 11:14

インチキなタイトルと柴田元幸の「芸」

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る

 このタイトルは「騙し」である。これを見れば誰もがあの「翻訳夜話」の続編だと思うはずだ。ところが内容は似ても似つかない。
 「翻訳夜話」は翻訳の楽しさ・面白さを教えてくれる本だった。僕が「ライ麦畑」の原文/野崎訳/村上訳の全てを読んでみたのは、「翻訳夜話」でカーヴァーの原文と村上訳、柴田訳を比べる、そしてオースターの原文と村上訳、柴田訳を比べるという体験をしたから、そしてその面白さに嵌ってしまったからにほかならない。
 ところがこの「翻訳夜話2」の場合は、そのタイトルに反してサリンジャーの「作品」を語ることが主になっており、「翻訳」のほうは決して中心に据えられていない。翻訳を語る上で必然的に作品を語っているには違いないが、読者としてのフラットな感想ではなく訳者が高い地位から解説しているという印象を与えてしまっているのである。
 作家が作品を語るのは往々にして悪趣味である。訳者が作品を語りすぎるのも同様である。この本の場合、特に序盤が辛い。翻訳を語っているようで作品を分析しすぎている感じがする。

 とは言うものの、この本によって僕が村上春樹に対して抱いていた2つの疑問が解けた。
 村上が cool as a cucumber という慣用句を「キュウリのようにクール」と訳す(翻訳だけでなく自作の小説中にも出てくる)のはクリーシェとしての存在感を活かすためだということ。そして、「ライ麦畑」の中で数多く登場する you という単語をほとんどそのまま「君」と訳しているのは外国語の言語的様式性を重んじるからであって、ホールデンの言う you に聞き手としての仮定の対象を感じているからだということである。
 僕としてはいずれも牽強付会な感じがする。
 訳者としてクリーシェとしての存在感を活かしたいというのは解る。しかし、読者がその存在感を感じ取るためには cool as a cucumber という英語を事前に知っている必要があるのである。この慣用句を知らない人が日本語の文を読んでいていきなりキュウリに出くわしたら首を傾げるだけではないだろうか?
 そして、you のほうだが、これをいちいち訳出するのもどうかと思う。英語の you は日本語の「君」よりも遥かに利用範囲が広いのである。日本人が英作文すると必ず they や we を使ってしまうかなりの局面でアメリカ人はよく you を使ってくる。日本語としての滑らかさを考えれば主語は省略したほうが良い場合も多いのではないか?
 ただ、これを読んで少なくとも村上がうっかり訳してしまったのではないということが納得できたのは収穫である。

 という風に、この本には確かに翻訳について考えさせてくれる部分も少なくないし、語りすぎとは言え語られている作品論も非常に興味深い。特に僕のようなサリンジャーのファンであり村上のファンであり柴田のファンでもあるような人間には、気に入らない点もあるが読んでみると残念ながら面白い。そういう人は仕方がないから読みなさい、と言うしかないか? ただ、村上が語る作品論は影響力が強すぎて読者の身に染みついてしまうのではないかという不安がある。ひとつの読み解き方が固定してしまうのはそれこそ村上の本意にもとることなのである。そのことを肝に銘じて読んでほしい。

 最後に Call me Holden という章で柴田元幸の「芸」を見せてもらった。今までは翻訳の「技術者」という印象が強かったのだが(「技術者」というのは文字通り「技術を持った人」という意味であって、「機械的なことしかできない人」という意味ではない)、こんな「芸」ができるとは驚いた。いやいや楽しませてもらいました。

by yama-a 賢い言葉のWeb

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紙の本サリンジャー戦記 翻訳夜話 2

2003/07/28 17:10

サリンジャーの“イノセンス”をめぐって。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:奈伊里 - この投稿者のレビュー一覧を見る

たくさんのかつての読者がホールデンに再会し、たくさんの新しい読者がホールデンと(野崎訳から40年を経て)出会うことになった、村上春樹氏新訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」。
この本の末尾には、「本書には訳者の解説が加えられる予定でしたが、原著者の要請により、また契約の条項に基づき、それが不可能になりました。残念ですが、ご理解いただければ幸甚です」という村上氏のことばが添えられている。

その幻の解説文が、本書で読める。出版直前に、サリンジャーのエージェントから待ったのかかった、その掲載。訳者の解説・あとがきとしては、例を見ない長さであり、とても力の入ったサリンジャー紹介になっている。村上氏は無念だったろうし、読者としても、是非新訳版に加えられていてほしかった。
でも、その幻の訳者解説を読むことで、逆にわたしたちは、サリンジャーがなぜそうも頑なにならなければいけなかったかを知ることになる。

ホールデンのごとく自分探しをして青春を送った後、悲惨な戦争体験をしたサリンジャー。
その後神経を病みながら、彼が執筆の足場にしたのは、戦争体験ではなく、イノセントな16歳の目から見た世界だった。
そして、色濃く自らを投影したホールデンという少年が生み出される。
多くの読者を獲得しながら、そのあと作家として成熟への道を辿らなかったのは、戦争体験や離婚など様々な現実から神経衰弱になった彼が、他者に“イノセント”なるものを求め、裏切られ、世界と直接繋がることをあきらめてしまったからだと分かってくる。
彼は、「キャッチャー」でホールデンが回転木馬に乗るフィービーに見た“イノセンス”を、実人生でも見続けようとしたのだ。もちろん、そんなことは叶わない。そして現在、彼は隠遁生活の中で、出版しない著作を今も書き続けているらしい。

本書では、名コンビの柴田元幸氏を聞き手に、村上氏が「キャッチャー」の翻訳といかに取り組んだかが語られる。

50年前のニューヨークで生きていたことばを、現代日本のどんなことばで置き換えるかという問題。
ホールデンが語りかけるYOUという存在をどう解釈し、どう訳出するかという問題。(「海辺のカフカ」を書き終えた直後訳業に入った村上氏が、カラスと呼ばれる少年をふまえて語っているのも面白い。)
ホールデンや、アントリーニ先生、フィービー、DBといった人物たちに、サリンジャー自身が如何に投影されているかという解釈の問題。

それらの問題に取り組む村上氏の指針になっていたのが、サリンジャーの“イノセンス”であったと、わたしには読み取れる。
その上で、彼はこう語る。
「僕は『キャッチャー』という小説が今でも若い人々に読み継がれ、評価されているのは、それがイノセンスを礼賛しているからじゃないと思うんです。そうではなくて、ホールデンという少年の生き方や、考え方や、ものの見方が、そういう時代的な価値観のシフトを超えて、優れて真摯であり、切実であり、リアルであるからじゃないかな。……ホールデンは特殊であることによって、読者のいろんな事情を吸い上げていくんです。それがホールデンという人物の機能なんです。イノセンスへの傾倒というのは、その機能のひとつに過ぎません」。
このあたりは、翻訳者としての村上氏と、作家としての村上氏が、対談しているようでもある。

「翻訳夜話」としては、一巻目とまったく違う様相を本書は見せる。
まさに、「戦記」だ。人間サリンジャーの。翻訳家村上春樹の。
そしてそれを、名翻訳家柴田元幸氏のキャラクターが、どんな読者でも入っていきやすい世界に、変換してくれている。柴田氏の案内人としての存在が実に効いているのだ。

「キャッチャー」の読後すぐにこの本が読めてよかったと思う読者は、わたしだけではないだろう。「キャッチャー」既読の方にも未読の方にも、お薦めします。

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紙の本翻訳夜話

2003/02/11 19:54

翻訳家を目指す人あるいは春樹&柴田ファン

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投稿者:りゅう - この投稿者のレビュー一覧を見る

 翻訳の細かい話にはついていけないところがあるが、その他の部分つまり具体的には東大教養部の学生との話とかは面白いと思う。小説家としての姿勢と翻訳家としての姿勢云々などは、なるほどなあと素人なりに思うのである。
 村上春樹あるいは柴田元幸ファンにとっては、いわば生の声を聞くことができるわけで、それだけでもうれしい一冊であろう。
 そして、近刊のサリンジャーの「ライ麦……」を楽しみにさせる一冊でもある。

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