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電子書籍

末裔 みんなのレビュー

  • 絲山秋子 (著)
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みんなのレビュー3件

みんなの評価4.3

評価内訳

  • 星 5 (1件)
  • 星 4 (2件)
  • 星 3 (0件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本末裔

2011/12/27 19:24

女性陣がなんとも魅力的なお話です。教養へのあこがれ、っていうのも時代の反映かしら。でも、ある日家に帰ると扉の鍵穴が消えている、っていうのがいいです。シュール! って、いいのかな?

3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

題字がいいです。それがカバーのごわごわした和紙を思わせるような紙質にとっても良く合っていて、なんだか瓢箪型をしたBOXに収まった朱色の明朝体の字が場違いに思えるほどです。その素晴らしい文字も装幀家の仕事なら、たしかに菊地信義は偉いなあ、白い本だけじゃあなくてこんなに味のある装幀もしちゃうんだ、装幀界の巨匠っていうか大御所っていうのは確かだなあ、なんて思います。

この文字だけ見れば、日本か中国の古代を扱った小説、っていうことになりますし、それもいいなあ、なんて思いますが、そうはなりません。無論、過去に思いを馳せることになりますが、基本的には現代の小説です。初出誌は「群像」の2009年9月号~2010年8月号。本文と「末裔」参考文献リストからなります。帯の言葉は
      *
家族であることとは
いったい何なのか

父や伯父の持っていた教養、亡き妻との日々、
全ては豊かな家族の思い出。
      *
で、出版社の内容案内は
            *
家族であることとはいったい何なのか
父や伯父の持っていた教養、亡き妻との日々、全ては豊かな家族の思い出。

「お兄ちゃんのとこも子供いないでしょ。私も全然そんな気ないけど、このままだったら誰もいなくなっちゃうんだねえ」
「そうだな」
「じゃあ、ほんとに私がこの家の、最後の一人なんだ」
省三の脳裏に「末裔」という言葉がよぎった。――<本文より>

妻を亡くし、子供たちは家を出た。省三は、自らの系譜に思いを巡らせる。
            *
となっています。主人公は富井省三、定年間近の冴えない五十八歳の公務員です。四年前に妻の靖子を膵臓癌で亡くし、三年前に何かと反抗的だった娘の梢枝に家を出られて以来、親から受け継いだ一軒家に一人住まいをしています。かんたんな引き算ですが、55歳からの男の一人暮らし、っていうのは私の中では暗いです。これが自由業の男なら、そうでもないのでしょうし、公務員でもキャリアなら少しは明るい。

また、田舎の地方公務員ならば地元で酒飲んで酔っ払っていてもなんとかなる。でも、都会の区役所に勤めていて、自宅から通う、ってなると侘しい。ま、あくまでも私の中のイメージなんですけれど。無論、省三にも子供たちはいます。母親だっている。でも、同じ家で暮らしているわけではありません。

東洋英和を出た痴呆症の母は、施設に入所していいます。妻の靖子は、天国にいる。新宿の会社で働いている優しい長男の朔矢は、妻・香奈恵の尻に敷かれていて、実家には寄りつこうとしません。娘の梢枝は、三年前に「仕事と住むところが見つかりました」とメモを残して家を出て行ったきりです。

弟の義男は、アメリカに行ったきり。結婚も離婚も経験した姉は、開業医と結婚して子供も浪人の末、医学部に入っていますが、足利に暮してめったに上京はしません。身内はいるのに、構ってくれる人が誰もいない。これで省三が遊び人ででもあれば事情は違うのでしょうが、ただただいじけているだけの男にとっては、天涯孤独よりもたちが悪い。

そんなある日、家に帰って鍵を開けようとすると、なんと自宅の扉から鍵穴が消えている。これは予想外の展開です。江戸川乱歩いうところの発端の怪奇性以外の何物でもありません。これが、ガンバルマンかなにかであれば、扉を蹴破ってでも家に入るのでしょうが、無気力公務員はただただ引き下がる。頼みの綱は、新宿に勤める長男ですが、会って話を聞いてくれる、心配もしてくれる、でもそこまで。うちに来たらとは言ってくれません。

雨降る街中で途方に暮れる省三に声をかけてきたのが、自称占い師の青年・梶木川乙治です。健康という字に手足を生やしたような筋肉質の若者は、省三にビジネスホテルを紹介してくれます。宿泊することになったホテル・プレクサスのフロントには、松木さんという清潔な雰囲気の、愛嬌のある顔の女性がいて・・・

このあと、梶木川にいわれホテルをでて、鎌倉にある伯父の家に足を向けます。伯父は六人兄弟の一人で、一族の彼らの世代で最後まで生きていましたが、10年ほど前に脳梗塞で亡くなっています。教養があり、豊かに暮らしていた伯父のことを、今も省三は好きです。そして、その家に入り込むことができた省三は、その家がきちんと管理され、人が定期的に訪れていることに気づきます。そして、そこからの通勤が始まり・・・

とまあ、話の流れはそんなところですが、女性陣がいいです。まずは、ホテル・プレクサスのフロントの松木さん。そこだけに登場する女性ですが印象的で、映画でいえば友情出演の人気俳優的存在。それと、この人なくして伯父の幸福はなかった、といってもいい心優しく細かいところに気が回る伯母も、いいです。おおらかでいて、気配りができる。

でも、私にとっては、桜田ミミが一番です。彼女は省三が勤める役所の生活文化部の女性で、出勤は早いのですが、仕事時間までは食事や化粧などをするなどいかにも公務員的な割り切った勤務をします。傍から見ていると、住民感情を逆撫でする最悪の公務員ですが、省三が電話で欠勤などを伝えると、じつにしっかりした対応をします。おまけに、噂話などはしないというところがいい。

鍵穴が消えてしまった家はどうなるのか。鎌倉からの通勤生活は、定年間近の省三と息子、娘との関係はどうなっていくのか、乱歩のいうミステリーの定義、(1)発端の怪奇性は問題なくクリア、では(2)中盤の論理性は? (3)結末の意外性は? 『末裔』は、ミステリではないので、乱歩の定義にこだわる必要はありませんが、そういう目で読むのも一興でしょう。ともかく、発端から中盤が面白い。

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紙の本末裔

2011/03/09 09:21

日本のオヤジへの応援小説?

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る

定年直前の富井省三は3年前に妻を亡くし
息子はすでに独立し、娘は出ていき、完全な一人暮らし。
認知症の母親を見舞う以外に家族との接点はほとんどない、
孤独な、しかし日本の代表的なオヤジ像です。

そんな彼が唯一のよりどころとする自宅にも入れなくなります。
鍵穴がなくなってしまいます。

SF的な要素がところどころ挟み込まれる
この家族小説は、省三が自分の家系に思いを巡らし
末裔である自分を再認識するまでを描きます。

魅力的なのは、自宅から締め出された彼が
心豊かな人々と知り合うこと――。
彼らが実存しているのかはっきりとは描かれないのですが
それでも存在感があります。

亡き伯父のもので、今は無人の鎌倉の家がいい。
伯父や父の教養、家系への思考がスムーズに流れる、
たたずまいのよさ、侘びしさが漂ってきます。

家系をたどり、自分を再認識した彼が
「実用一点張りでもなく、成金みたいな車でもなく、もっと夢のある、夢のためだけに作られたような美しい車を買って」
というところにクラっとしました。

車は他のものに置き換えられます。
自分にとって自由を実現するもの。
そんな人生の再出発を小説は語りかけます。

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紙の本末裔

2011/05/04 18:54

絲山秋子の「末裔」は、不思議な魅力にあふれる物語。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 不思議な魅力にあふれた物語だ。絲山秋子の小説はそう感じるものが
多いのだがこの「末裔」は特に魅力的だ。まずは冒頭、主人公である省
三の自宅玄関の鍵穴が無くなってしまう。ここからもう絲山ワールドに
グイグイと引き込まれていく。自分の家に入れなくなり呆然とするこの
男、区役所に勤める公務員だが、妻を亡くし、自宅はいつの間にかゴミ
屋敷と化している。一周忌が過ぎ、娘も家を出た。行く宛もない省三は
街をうろつくうちに乙と名乗る見知らぬ男から声をかけられる。この乙
との出会い、それに続くエピソードも普通におもしろいのだが、これか
らあとが傑作だ。

 彼は昔よく行った鎌倉の伯父の家を訪ねる。それまでは公務員然とし
ていた男が、鎌倉に来てからは文学者を父に持つ風変わりな男へと変わ
っていく。空き家同然の伯父の家には「かって犬だった者」なんていう
ものが訪ねてきたり、疎遠だった娘と会ったり、不思議な夫婦との出会
いがあったりと、何だかおもしろい。ここで彼は過ぎ去りし日々に思い
を馳せる。伯父とのこと、父や叔父が持っていた教養について、死んだ
妻や親族との関係。さらには、自分自身の人生、家族の在り方にも思い
を巡らす。タイトルの「末裔」ともここでつながっていく。この物語が
帯に書かれたような「家族小説」なのかどうかは僕にはよく分からない。
ただこれを読むと、命の連なりとその末端にいる自分について考えざる
を得ない。あまりに心細いそのひとつの魂について。

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