幽 花腐し みんなのレビュー
- 松浦寿輝
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紙の本幽|花腐し
2017/06/24 10:04
間取りと文章の幸福な出逢い
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ree - この投稿者のレビュー一覧を見る
『幽』に間取りがいつも変わってしまう家がある。しかし、そこに棲まう主人公は驚かないし躊躇わない。慣れたという訳でもなさげで、するするするっ、と受け入れてしまっている。
小説の醍醐味は省略にある、とよく言われる。が、文章は油彩画の、あつく塗り重ねたような文体で、省略されたそれとはちがう趣だ。が、このあいまいな、主人公/間取り、が『幽』に不思議な余白や空隙を作り出している。そしてこれは松浦寿輝の文体のおかげでもある。
松浦寿輝の文章でなければ、この家の間取りは空中分解していたであろうし、そしてあの空間がなければ松浦寿輝の鮮烈で色彩的な文体は色褪せたものになっていただろう。
この幸福な、間取りと文章のめぐり合わせは読むべきものがある。
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