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英語でよむ万葉集 みんなのレビュー

  • リービ英雄 (著)
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みんなのレビュー3件

みんなの評価4.8

評価内訳

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3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本英語でよむ万葉集

2005/01/11 14:28

英語と日本語どちらも声に出してよみたい

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:にんぎょ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 母国語が英語、そして日本語と中国語にも造詣の深いリービ英雄氏の万葉集の英訳に、その歌についての彼の鑑賞と、どう英語で訳して=詠んでいったか、がつけられている。
 新書版で、最初は持ち歩いていたのだが、どうしても読むときに声を出して読んでしまうので、家以外では読めない本だった。次は書き写しながら、またしみじみと味わいたい。
 著者の言葉についての深い知識と鋭いセンスはさすがで、枕詞の訳も「なるほど」と思うばかりだし、たとえば富士の歌に入ってくる“lofty”という単語は富士とセットに感じられて、それこそ、英語における枕詞のようだ。叙景詩のイメージの広がり方は英語に訳すことで改めてその大きさに感嘆する。詞書(ことばがき)の訳にも一つ一つ納得と発見がある。
 英語の単語の持つイメージともとの歌のイメージの呼応は、期待を裏切られることがない。
 万葉集の素晴らしさ、日本語の豊かさをを再確認させてくれる、とても読んで幸せになれる本だが、やはり万葉集を母国語として読める私自身の幸せを一番に感じてしまった。例えば、 「川かみの根白高萱(たかがや)。あやにあやに さ寝さ寝てこそ、言に出にしか」「垣(くへ)越しに麦食む子馬の はつはつに逢い見し子らし、あやに愛(かな)しも」「多摩川に晒す調布(てづくり) さらさらに、何ぞ、この子の、幾許(ここだ)愛(かな)しき」などの東歌のこのリズム・語感を、そのまま楽しめること。…というわけで、やっぱり翻訳の難しさも再認識させられることにもなった。

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紙の本英語でよむ万葉集

2015/09/29 22:05

英語で読む古代の詩情

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:タヌキネコ - この投稿者のレビュー一覧を見る

日本に生まれ私日本語を話していても、現代を生きる身にとっては、古代の人々の心象風景、喜怒哀楽というものには異国のようなへだたりと憧れを感じることがあります。
こうした豊かな詩情が残されていることは、とても幸せなことですが、英語を母語とする作者の感動を通すほうが、国語の授業で接した時よりも、みずみずしい気持ちがするのは、不思議です。「覚えるべき知識」という紋切型を通さないからでしょうか?

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紙の本英語でよむ万葉集

2006/06/20 14:48

翻訳の鏡に映すことで見えてくる言葉の世界、世界の言葉

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 英語で万葉集の和歌がどのように表現できるのか、といった興味や翻訳の勉強のつもりで読むとあまり面白くないかもしれません。この本に載っている万葉和歌の英語訳は著者が全米図書賞を受賞した名訳ではありますが、どんな名訳であっても原文から直接伝わる感動をそのままに残すことは難しい。原文を読める人にはどうしてもそう感じないわけにはいかないからです。この本の価値は、それでもあえて日本の本として、日本人に日本古典の名作の翻訳過程をみせてくれたところにあると思います。完全には訳せない中から見えてくる言葉のゆたかさ、独自性と普遍性。そんなものを考えさせてくれる本です。
 どんな言語で書かれてもおかしくないような、訳してしまえばどこの国の、いつの時代に書かれたものでも良いように思われる歌があります。著者はそんな普遍的な部分を「傑作は翻訳しやすい」と評します。そしてどんなに普遍的でも、訳しやすくても、その作者でなければ切り取ることのできなかった情景であるからこそ名作なのだと。芸術とは普遍的なものを独創的に表現するものなのだ、ということに改めて気付かせてくれる言葉です。
 他の言葉にするのが難しい作品もあります。単語の持つ優しさやおおらかさといった語感などは、古典の言葉を現代語に訳しただけでも失われてしまうのものです。ましてそれを他の言語にどうやって訳すことができるのか。著者は素直にその苦しみをもこの本の中で書き綴ってくれています。その苦しみの中に、どんなにしても置き換えられないもの、翻訳という作業でぶつからないと見えてこないものが見えてくるのです。あえてその過程を描いて見せてくれた著者に感謝したくなりました。
 著者の体験を含んだ和歌の解説の部分は質の良いエッセーにもなっています。異なる言語間の独自のもの、普遍のものを鋭く探り当て、示してくれたのは、この著者自身の言葉に表れた豊かな感性なのでしょう。本書に登場する和歌それぞれに添えられた著者の感想の素直さ、新鮮さは和歌の鑑賞の仕方としても心に残るものがあります。
 著者はまた、柳澤桂子さんの「生きて死ぬ智慧」(小学館 2004)に般若心経の英訳を載せていますが、万葉集をこのような感性で英語訳した著者が、どのように般若心経を捉え、言葉を置き換えていったのか、その過程も知りたくなりました。いつかどこかで書いて欲しいものです。
 この本を読むと、万葉集の言葉の素晴らしさにもう一度目を開かれます。それを原文で読める日本人である幸せ、と言ってしまうのは簡単ですが、それは他の国の素晴らしい作品でもみな同じ、ということも感じて欲しいと思います。それぞれの国の言葉が、それぞれに独自の美しさ、強さを持ちつつ、どの国にも共通する心を表現することができる力を持っている。世界中の名作をすべて原文で理解することは誰もかなわないでしょうけれど、翻訳という誰かの努力によって一部分だけでも触れ、少しでもその世界を分かちあうことができることを喜ばしく受け止めたいと思います。そして、翻訳しきれない世界がそのむこうに広がっている、ということも忘れないでいたいものです。
 書評もちょっと翻訳と似たところがあるかもしれませんね。評者に切り取られた世界の向こうに、紹介しきれない大きな大きな世界がある、というところでは。

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