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電子書籍

銀の匙 みんなのレビュー

  • 中勘助 (作)
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みんなのレビュー4件

みんなの評価4.4

評価内訳

  • 星 5 (3件)
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  • 星 2 (1件)
  • 星 1 (0件)
4 件中 1 件~ 4 件を表示

紙の本銀の匙 改版

2009/04/18 21:04

永遠に古びない日本語の文章のみずみずしさ、美しさに、胸打たれました。

15人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 内気で、感受性が強く、よく涙をこぼす少年の眼差しに映る景色が、清冽で、澄んだ泉を彷彿させる記憶となって湧き上がり、文章として流れ出している味わい。みずみずしく、美しい日本語の品格が素晴らしく、しばしば、うっとりさせられました。たとえば、伯母さんにおぶさって出かけた先の普請場で、少年が胸をときめかせながら見つめる風景の描写の、生き生きとして見事なこと。次の文章など、なんとも言えず綺麗で、いいですねぇ。

<きれいに箒目(ほうきめ)のたった仕事場のあとを見まわると今までの賑やかさにひきかえしんしんとして夕靄(ゆうもや)がかかってくる。私は残り惜しく呼びいれられてまた明日の朝をまつ。そのように木香(きが)に酔ってなんとなく爽(さわやか)な気もちになりながら日に日に新しい住居(すまい)が出来てゆくのを不思議らしく眺めていた。> p.28

 あるいは、少年の私をかけがえなく愛してくれた伯母さんとの思い出を語る件りの懐かしさ。「四王天(しおうてん)か」「清正(きよまさ)か」と声かけ合い、大立ち回りをして遊ぶ場面をはじめ、本書の『前篇』での伯母さんと少年の、あたたかな血が通っているところ。思い出が、生き生きと立ち上がってくる描写の素晴らしさ。心にほっと明かりが灯る、格別の味わいがありました。
 少年がかなり大きくなった頃の『後篇』には、もう、伯母さんはほとんど出てきませんけれど、その最後のほうで、成長した少年が伯母さんと、久しぶりに再会するシーンがあります。ここが、とてもいいんですね。

<伯母さんは後でさわりはしないかと思うくらいくるくると働いて用事をかたづけたのち膝のつきあうほど間ぢかにちょこんと坐って、その小さな眼のなかに私の姿をしまってあの十万億土までも持ってゆこうとするかのようにじっと見つめながら四方(よも)やまの話をする。> p.190~191

 『前篇』での幼かった少年と伯母さんの姿が彷彿と立ち返ってきて、胸がいっぱいになってしまった。

 小川洋子の『心と響き合う読書案内』(PHP新書)で紹介されていたのを読んで、興味を誘われて手にとってみたのですが、これは本当によかったなあ。しみじみと心にしみてくる作品の調べに、ほとほと堪能させられた次第。明治四十四年から大正二年にかけて書かれた作品ですが、永遠に古びない文章のみずみずしさ、美しさに、胸打たれました。

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紙の本銀の匙 改版

2003/10/15 23:32

人は皆心に“銀の匙”をもっている

15人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:北祭 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 誰でも、ひとつくらいは幼い頃の想い出の品を手元に置いているのではないだろうか。引越しのどさくさで一切合切処分したとしても、想い出の品はせめて記憶に残っていないだろうか。

 主人公には大切にしているもの—銀の小匙—があった。おりおりこれを収めた小箱から取り出しては丁寧に磨きあけず眺めていた。やがてそれは幼き頃の記憶へとつながっていく—。
 病弱であった幼き頃に伯母から受けた深い愛情、大好きだった担任の先生、かわいいお譲さんとの初恋。想い出は鮮明である。それらが句読点の少ない例えるなら淀みのなく流れる水のように澄んだ文章(物語)で綴られている。

 驚きは、すべての想い出が子供の目線で語られることである。それは大人がとうに忘れてしまった目線。本書を読み進めると次第に古い記憶が呼び戻され、とてつもなく懐かしい感情に満たされていく—。人は皆心に“銀の匙”をもっている。それはいつでも“古い戸棚”の中にある。

 和辻哲郎の解説によれば、この作品を最初に高く評価したのは夏目漱石であったという。

—漱石はこの作品が子供の世界の描写として未曾有のものであること、またその描写がきれいで細かいこと、文章に非常な彫琢(ちょうたく)があるにかかわらず不思議なほど真実を傷つけていないこと、文章の響きがよいこと、などを指摘して賞賛した。—

 この解説をうけてはもはやここに継ぐべき言葉もない。

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紙の本銀の匙 改版

2016/06/30 23:39

ユーモアそして美しく清らかな精神

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る

作者中勘助の少年・青年時代の思い出を綴った自伝的小説。橋本武という国語教師が、この本のみを教材として用い中学三年間国語の授業を展開した話が有名であるが、なるほどこれは若い時期に精読しても決して無駄にはならない書である。
 特に幼い「私」が、育ての親である伯母に連れられ、ときにはいやいやながら、ときには目を丸くして邂逅した場所や人びとの様子を、冒険談のごとくに語る前編はおもしろい。大人社会の偽善や悪弊も鋭く描かれるが、それらもけっして深刻な批判ではなく、どちらかというと明るく笑い飛ばすような記述である。舞台は維新後の東京。主人公が生まれた神田と、引っ越し先の小石川と場所を移しながらそれらの地で暮らす人びとの風俗・人情も交えつつ、少年時代の思い出が綴られている。どれもほほえましく、ときにはぷっと吹き出してしまうような記述もある。たとえば少年の初恋相手お国さんとのやりとり。

 二人がさしむかいになったときにお国さんは子供同士がちかづきになるときの礼式にしたがって父の名母の名からこちらの生年月日までたずねた。そしてなにの歳だといったからおとなしく酉の歳だと答えたら
 「あたしも酉の歳だから仲よくしましょう」
といっていっしょに こけっこっこ こけっこっこ といいながら袂で羽ばたきをしてあるいた。・・・
 ある日のことまたお国さんと歳の話がでて こけっこっこ こけっこっこ といって羽ばたきをしてたらお峰ちゃんは
「あたし申の歳だから」
といってきゃっきゃっと二人をひっかいた。

 物語における最も魅力的な人物は、何といっても主人公の伯母である。虚弱で極度な人見知りだった少年時代の「私」をかばいつつ、世話を焼きつづける女の慈愛に満ちた献身ぶりは胸をうたれずにいられない。
 夫婦そろってお人よしであるために、人に騙され続け零落した士族の女、ひもじい思いをしているといって見世物の駝鳥にさえ憐みの涙を見せるこの仏性の女性は、本作の色調を決定づける美しく清らかな精神の象徴である。幼い甥子をかげにひなたに支え続け、最後は故郷の関西に戻り、ひっそりと余生を送っていた彼女は、彼女に会いにきた「私」を見て、大喜びをし、昔のように世話をやく。その再会からしばらくして彼女は亡くなる。一見みじめで寂しい一生にも思われるが、ただただ自分以外の人間の幸せのために生きたその人生は、それだけで一つの輝かしい光を放っている。
 私には、ひとりの美しい人物を描ききることが文学の、おそらくはただ一つの使命であるというひそかで勝手な信念があるが、そういう意味で本書は最も成功した文学作品の一つであると信ずる。

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紙の本銀の匙 改版

2013/08/24 02:21

うー・・・

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:D.F - この投稿者のレビュー一覧を見る

読みにくかった・・・

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