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電子書籍

ことばと思考 みんなのレビュー

  • 今井むつみ著
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みんなのレビュー4件

みんなの評価4.3

評価内訳

  • 星 5 (3件)
  • 星 4 (1件)
  • 星 3 (0件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
4 件中 1 件~ 4 件を表示

紙の本ことばと思考

2011/04/01 22:05

言語学の書に定評のある岩波新書の中でも出色の一冊

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る


 <異なる言語の話者の間では世界の認識の仕方も異なる>という「ウォーフの仮説」が果たして正しいのか否かについて、興味深い実験の数々によって検証された研究成果を紹介する書です。

 抜群に面白い一冊です。岩波新書は限られた紙数で言語学を取り上げるのが実にうまい、というのが私の過去30年近い経験知ですが、この本はその私の見方を全く裏切らない、知的好奇心を十二分に満たしてくれる書です。

 前・後・左・右という言葉で相対的に位置関係を把握する言語話者(日本語話者や英語話者など)と、東・西・南・北という言葉で絶対的枠組みで空間を把握する言語話者(メキシコ先住民のトトナック族など)とでは、位置関係の把握がやはり異なることを検証する実験。
 幼児が一定の年齢に達して母語を獲得し始めると同時にその母語に大きく影響された形でしか対象に興味を示さなくなることを示す実験。
 こうした実験のひとつひとつによって、人間は何を「同じ」と考え、何を「異なる」とみなすのか、それが話者の言語によって大きく左右される様子が紹介されていきます。

 このようにして、「ウォーフの仮説」が一定程度正しいということを著者は示していきます。しかしそのとき読者の胸中には、にわかに絶望的な疑問が湧いてくることでしょう。
 世界の見方が異なる外国語の話者とわれわれとでは、結局のところ相互理解を望むことはできないのか、と。

 著者はそうは考えません。
 「外国語に習熟することは、別の意味で、認識を変えるといってよい。(中略)外国語を勉強し、習熟すると、自分たちが当たり前だと思っていた世界の切り分けが、実は当たり前ではなく、まったく別の分け方もできるのだ、ということがわかってくる。この「気づき」は、それ自体が思考の変容といってよい。」(222~223頁)

 言語をみつめることで世界に対する視野がどんどん拡大していく。「気づき」という言葉を「悟り」と置き換えても良いような気がします。そしてこの「悟り」に達したとき、私たちは何倍も幸せに生きられる。
 そんな高揚した気分にさせてくれる本です。

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紙の本ことばと思考

2011/05/31 16:33

実際に検証してみることの大切さを再認識。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 第一章のタイトル「言語は世界を切り分ける」は常々なにかを考えるときに感じていたことである。第二章タイトル「言語が異なれば、認識も異なるか」も、そこから派生する疑問としてこれも常々もっていた疑問である。そんなわけなので、身近にあったこれらを著者はどう扱ってくれるのかととても期待して読んだ。
 著者は心理学系の研究者。発達心理学も含めた心理学の実験でこれらの疑問を検証していく。あいまいなまま通っていることでもきちんと時間をかけて実証することの大事さを実感した、なかなか誠実な書き方の一冊であった。「異なる」と結論されるものの基礎に存在する普遍性を探る試みも行っていて先の広がりも感じられる。

 概念的に「きっとそうだろう」と思っていることを、心理学者はどんな実験をして証明しようとするのか。過程も詳しく書かれていてなかなか面白かった。なるほど、と思う実験もある。やっぱりね、という結果もある。結局はよくわからないのだろう、という部分もある。
 終章「言語と思考 その関わり方の解明へ」では「異なる言語どうしでも分かり合えるのか」ということが議論される。「異なる」ものの基礎にも普遍性があると考える著者は「言語の普遍性を探る」という一章(第三章)をたててまず議論しているのだが、結論は「違いはあっても理解は可能である」に向かう。大事なことは「ちがい、ずれ、多様性の存在を意識すること」。終章でのこの言葉は、しっかりした実験検討の結果が、ある程度想像できる「あたりまえ」のところに落ちた、というところである。

 しかし、思い込みや自分の身近なところにだけ通用する「あたりまえ」があまりにも多いのが現実の世の中である。しっかりした結果の裏打ちを受けたことで、なにか「あたりまえ」の深みが増したように感じた。
 「なんとなく」の知識や情報が、かえって不安を駆り立てたりおかしな行動を引き起こしたりする。昨今それを身にしみて感じさせることが多かっただけに、本書のような「きっとそうなるだろう」ことでも実際に確認することの大切さを改めて感じた次第である。
 
 このようにして、面倒でもひとつひとつ「確認」をつみあげることで、「通じない」ことも少しずつ「通じる」に近づけていくことができるかもしれない。
 言語学を紹介する新書としても素晴らしいが、いろいろな考えを広げてくれるという意味でも高い評価をしたい一冊であった。

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紙の本ことばと思考

2011/01/01 11:49

まさに新書

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:まるきんくらぶ - この投稿者のレビュー一覧を見る

違う言語を使っている人どうしでは、見えているものは異なっているのか、という問いはとても興味深い。その問いに対して、特別に知識を持っていない人にでも読めるように書かれた文章で、まさに新書らしい新書と言えると思う。しかも、その問いへのアプローチは、今現在の実験結果をとりいれて書かれているため、とても刺激的であるし、説得力がある。この本を読んでいる時間はとても楽しかった。

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紙の本ことばと思考

2011/08/12 14:57

言語の習得が思考におよぼす影響

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Genpyon - この投稿者のレビュー一覧を見る

思考とはことばの操作であり、私たちは、ことばを通して世界を見たり理解したりする。本著は、ことばに関するこうした一般論を、いろいろな言語から取り出した実例に、さまざまな心理学的実験の結果を対比させることで、より具体的な形として私たちに示してくれる。

本著では、このような「異なる言語間での異なる認識」の例を多く示して事足れりとせず、さらに、言語を習得しつつある子どもの思考を確かめる実験の結果をもあわせて示すことにより、言語の習得が思考におよぼす影響をくっきりと示しており、いろいろと興味を引かれる事例が多い。

たとえば、この世の中には、前後左右という相対的位置関係を示す単語がない言語があるそうで、位置関係を示す場合は、東西南北という絶対的位置関係でしめすらしい。そのような言語の話者は、デッドレコニングと呼ばれる方向推定能力(鳩が巣に戻ることができるのと同等の能力らしい)に優れている一方で、鏡像の関係にある画の識別は不得手、ということが実験で確かめられたという。そして、実験によれば、前後左右といった相対的位置関係を示す語を学ぶ前の子どもは、絶対的位置関係の言語話者と同じような認識的特徴を示すらしい。

非常に興味深い話ではないだろうか。ここから、では、前後左右を学ぶ前の子どもにはデッドレコニング能力があるのか、とか、文字を学ぶ子どもがある段階で鏡文字を書いてしまう傾向とも関係があるのか、などもっともっと突っ込んでほしいのだが、まだそこまで研究が進んでいないのか、あるいは新書の文量の限界なのか、そういう意味で、読み終わったときに、食い足りない感じが少し残っているのが残念だ。

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