反貧困-「すべり台社会」からの脱出 みんなのレビュー
- 湯浅誠著
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2009/03/14 19:23
『反貧困』の貧しい論理
15人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:祖師谷仁 - この投稿者のレビュー一覧を見る
絶賛ばかりの本だからあえて厳しめの書評を書いておきたい。たしかに第一章のある夫婦のリポートなどには迫力があり、いい加減に作られた本ではないことはよくわかる。ただ、湯浅氏はやっぱり法学部の人だ。彼は憲法や労働基準法、生活保護法を守らない社会を告発する。守れば社会は良くなると素朴に信じているのだ。NPOの活動をやって個別の案件に携わっている限りはそれが正しい戦法だろう。だが彼が為政者になったらどうか。この本をこれからのあるべき社会の構想として読むとかなりお粗末ではないか。
最低賃金を大幅に引き上げれば貧困層は救われるか。その分、企業は採用を抑制し、なるべく事業を海外に移して国内の労働需要はさらに減る。結果として失業者は増える。失業給付を充実させると、その分税金や保険料負担が増え、国民の不満はさらに高まる。制度変更が狙った意図とまったく異なった方向に物事が進むというのが経済学の知見である。本書にはこういう視点がない。湯浅氏は経済学を学んだことがまったくないのだろう。彼が善意であるだけに余計に始末が悪い。
湯浅氏は貧困層を連帯させて政府や企業に分配を増やせと要求する運動を進めているようだ。ただ労働分配率はもともと不況期には上昇する傾向があり、今回の不況でもそれは同じだ。そんなときに労働分配率を無理に増やせば景気回復への障害となる。貧困層が存在することは紛れもない事実(それはもちろん湯浅氏の言う通り自己責任ではない)で解決すべき問題であることも間違いない。ただ湯浅氏の示すような旧態依然の階級闘争で解決できる問題でないはずだ。
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