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電子書籍

戦争と平和 みんなのレビュー

  • トルストイ著, 藤沼 貴訳
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みんなのレビュー9件

みんなの評価4.4

評価内訳

  • 星 5 (4件)
  • 星 4 (4件)
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  • 星 1 (0件)
9 件中 1 件~ 9 件を表示

紙の本戦争と平和 6

2006/11/22 11:54

「無数の人間の営みの総和が歴史をつくる」。歴史を、人間を感じる大作だが、「全部通して読まなくても良い」と著者は言ったそうである。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ナポレオン戦争を描いたトルストイの不朽の大作の新訳、全六巻の最終巻である。押し寄せた高波が去ってしまったかのように、疲弊したロシアの地にそれでも、静かな時間が訪れる。大きな歴史の流れから切り取られた、一つの戦争の物語。長い作品なのだが、歴史の中では一瞬でしかない時間、しかしその一瞬には多くの人の、さまざまな生きざまがあることを感じさせる、長くて短い、短くて長い物語である。

 本編全四部の後には、さらにエピローグの1,2があり、エピローグ1では12年後の登場人物の姿が、エピローグ2では著者の歴史論がまとめられている。12年後の、戦争前とあまり変わらないかのように見える彼らの毎日は、「戦争がないことが平和なのだ」と語っているようである。しかし世界情勢はまだ動いていて、その数年後に起きるデカブリスト事件を予感させる情景も挿入されている。デカブリスト事件は作者がこの作品を書く契機となったと言われている。その関連性を示すためにも、このエピローグは必要だったのだろう。

 「戦争と平和」という作品には、作者の歴史への想い、その中で生きる人間への想いが詰っている。それぞれの場面での情景や心理描写、著者の歴史や人生に対する考えなど、個別にとってもすばらしいものがあるのはもちろんであるが、それらがギュウギュウに詰めこまれてもまだ、微妙なバランスでまとまっている。完成した時に作者は41歳。熱も力もこめて書かれた作品であったと想像することは難しくない。 さまざまな場面での細かで鮮やかな描写を思い出すと、「無数の人間の営みの総和が歴史をつくる」というトルストイの歴史観がそこにあらためて実感されるのである。
 この新訳には、登場人物の名称を簡略化・統一して表記するなどの幾つかの試みがなされていた。最終巻でも、あとがき・解説をQ&Aの形にし、ミニ写真アルバムを載せるなどの工夫がある。解りやすく、楽しく、この作品だけでなく、トルストイの全体像を与えてくれるものになっていると思う。特に「戦争と平和」執筆当時の肖像の眼光の鋭さは、当時の著者の意欲の強さを伝えているようで、ここに載せるのにふさわしく感じられた。
 あとがきがわりのQ&Aで知ったのだが、トルストイはこの作品を「それぞれの部分に独立した価値があるから、全部を通読する必要はない」と言ったとか。新訳の力をかり、通読をしたのだが、そういう気楽な取りかかりかたもいいだろう。いろいろな読み方ができる、やはり大作である。

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紙の本戦争と平和 4

2006/07/17 09:21

物語の中盤、トルストイの歴史論の展開が始まる

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ナポレオン戦争を描いたトルストイの不朽の大作の新訳、第四巻は第三部の1,2篇を収録。前の第三巻に収められていた第二部の後半は戦闘場面もなく、どちらかと言えば穏やかに進められて行く部分であったが、この巻に入りいよいよフランス軍はモスクワに押し寄せ、慌てふためくロシアの人々やボロジノの戦いの様子が描かれる。
 物語りも半ばを過ぎたこの一巻は、ちょっと他の小説にはない特徴を現してくる。トルストイの「歴史論」である。物語の筋を進めるのでもない、歴史の展開の原因、人の意志といった事柄についての著者の考察は、第三部冒頭から始まってこの後も随所にはさまれている。著者の意見を人物に語らせたり描写で伝えるだけでは足りず、どうしても直接表に出て記さなければいられなかった作者の熱を感じるところである。しかしこのはさまれている著者の歴史論の部分から戦況の記述、登場人物の描写への移行は滑らかで、自然に融合している。トルストイの文筆家としての力はこんなところにも現れていると言ってよいだろう。登場人物の細かな心の描写、戦闘場面の詳細、ナポレオンやロシア皇帝の真にせまった言動や性格描写といった数多くのものが、「これらの一つ一つが集まって歴史となっている」という著者の論を証明しているようだ。
 トルストイの描写は、この巻でも、どの一つをとっても丁寧に書き込まれ、そこだけを取り出しても読みごたえがある。ボロジノの戦いの細かな描写は、トルストイが原文に入れていたという図面などもあり、この部分だけでも戦記物として興味深い。この時代のロシアの貴族、領主と領民の関係などを記録したような場面もあり、登場人物の新しい動きもある。ボロジノの戦場に入り込んだ、戦闘には素人のピエールの様子などは、「こんなのんびりした情景があったのか」と思わず笑いそうなほどである。
 トルストイはこの戦いを通じて、何を書きたかったのか。いよいよ著者が語り始め、ストーリーをこえて歴史を、人間が生きるということを読む者に考えさせていく。この先、どのように物語は、著者の考察は展開していくのか、と緊張が高まる一巻。

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紙の本戦争と平和 1

2014/03/26 23:27

ナポレオンがキター!

4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

ナポレオンが攻めて来ることははっきりしている。それはロシア人にとって世界の一大事のような気がするのだが、なんとなくのんびりしているように見えるのは、宮廷の人々に緊迫感が足りないということとも少し違うようだ。元々ロシア貴族はフランスびいき、むしろフランスかぶれとでも言うような愛着があるのがまず一つ。そしてロシアというのは年中トルコやらオーストリアやらとの戦争だの内乱だのを起こしていて、それがまた首都まで及ぶようなことは滅多に無いので、ナポレオンについても小競り合いの一つになるぐらいにしか想像が及ばないのだ。
その親フランス的な人々で、またナポレオンの革新性を賞賛するような人々でも、国王の命令ならなんの疑問もなしに戦地に向かう。まるでスポーツの試合のように。しかしそれが命をかけたスポーツであることは貴族達も重々分かってはいる、ただそれでも彼らは命よりは勇敢さや名誉を重んじようという意識が強い。
その一方で、ナポレオン軍は甘くない。はるばる遠征して来て、いくらかの譲歩で満足して帰還するつもりは無く、戦う機械のようにどこまでも進軍することを使命とした、近代戦争の貌を見せ始める。
この第1巻まででは、ロシア宮廷や貴族達の内幕と戦場の過酷さが対比されて描かれているようだが、本当に対比されるのは旧来の戦争の通念の中で、新しいそれの訪れた衝撃ではなかろうか。トルストイが見たクリミア戦争の戦場で発見した、砲弾が飛び交い、大軍勢がひしめき合う中で、個人の力では進むことも退くことも出来ないという恐怖の形がここにある。
もう一つ、この戦場という空間でその才能を発揮し始める青年貴族がいる。おそらく彼は宮廷内でこ狡く立ち回るようなことはできなかったろうし、敵との戦いより味方同士の権力闘争に明け暮れるような旧来の戦場でもすぐにその場を投げ出してしまいそうだ。ただ怒涛のようなナポレオン軍を押しとどめるために必要な才能として発見される。するとこれも近代の合理化社会の生んだ一つの生き様なのだろうか。それを青年の成長と呼ぶなら、産業革命に先駆けて戦争によって近代的合理主義が生まれたという、一つの悲劇の姿のことかもしれない。

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電子書籍戦争と平和 (一)

2016/12/24 12:57

軍隊と家族

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かつのそ - この投稿者のレビュー一覧を見る

この小説の主題は、ニコライの初陣の場面に端的に書かれています。軍隊では人は取り替え可能なたくさんある小さな歯車の1つに過ぎないが、家族にとってはかけがえのない命であると言う事です。

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紙の本戦争と平和 1

2006/05/10 15:00

圧巻の大作に新訳の工夫

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ナポレオン戦争を描いたトルストイの不朽の大作の新訳である。岩波文庫の旧版(米川正夫訳)も読みやすい訳であったが、こちらはこちらで好感が持てる。 しかし「なぜいま」、岩波は新版をだしたのだろう?
 ストーリーは後回しになるが、まず新版の工夫について:古典にはよくある「巻末の注釈」は旧版(米川訳)にもなく、文中に括弧で少しつけられていた程度であったが、この版ではコラムと言う形式で「ロシア人とフランス語」「ロシアの暦」など、この作品を読むのに知っておくとよいだろう事柄がまとめられている。フランス人と戦っているロシア人がフランス語を話す、というおかしな状況についてもコラムに指摘されているので、幾度か出てくるそれに関する本文の記述も理解しやすくなったのではないだろうか。コラムによってはその前後の文脈とあまり関係を感じないものもあったのが少し残念ではある。
 戦闘地域の地図や、巻末の年表なども、長い話を整理するには手助けになる。第一部第一篇1、と全編が数ページの章に分かれているのだが、旧版では各頁の小見出しには篇までしか表示されず、折角巻末に各章の要約があるのに、内容から遡って読み返したいとき捜すのに不便を感じていた。この版では章まで表示されているのもありがたい。しかし、巻末の要約はなくなり、年表となっているので、旧版での不満解消、というのとも違う結果なのだが。
 カバーはロシア映画「戦争と平和」からのスチール写真になっている。あまり写実的にナポレオンや兵士を掲げてしまうより、旧版の処理をかけたカバーの方が想像力をかきたてるようで、これは旧版の方が私的には好みなのだがどうであろうか。
 訳そのものについては、わかり易くしようとして行き過ぎたのでは、と思ったところもある。私的には「ヴェルヌーイ・ラーブ」という親しい人への呼びかけの言葉を原語に近いままに残して(忠実な奴隷)と括弧で説明するのなら、「草入り酒」に(ひたしざけ)とルビをつけるよりは同じように原語に近いままにして括弧で説明すればいいのに、と少々不統一さが気にはなった。しかしこのあたりは好みで意見がわかれるところであろう。
 全6巻の内、この第一巻は第一部の一篇と二篇を収録。「戦争と平和」のクライマックスはナポレオンのモスクワ侵攻だが、一篇はせまり来るナポレオンへの不安と動揺の中の貴族の生活を描く。いささか退屈に思える部分でもあるが、遺産相続のどたばたや、働かずとも良い貴族の若者の生活、淡い恋心などに著者の流石の筆力がにじみ出ている。
 二篇では戦場が舞台となりアウステルリッツの戦いへと繋がる戦闘が描かれる。戦闘が近付くにつれ「戦うことは恐ろしいが楽しい」という描写があちこちに出てきて、人間とは(あるいは男というものは?)戦闘を怖くも楽しくも思うものなのだろうかと考えさせる一方、負傷して逃げるニコライの「犬から逃れるウサギの気持ち」、「恐ろしさのあまり寒気が走った」気持ちも描かれている。 戦闘のさなかに身をおくような心理の描写はこの第一巻だけでも圧巻である。
 戦いの話はまだ序盤である。トルストイはこの先、戦争に対峙する人間の心理をどのように描いていくのだろうか。ちなみにトルストイ晩年の大作「文読む月日」には、「戦争というものは、最も低劣で罪深い連中が、権力と名誉を掌握するごとき人々の状態である。(2月9日)」とあるそんな言葉も念頭に置きつつ新版の工夫の力を借りてもう一度読んでみたくなった。

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紙の本戦争と平和 3

2006/06/14 11:43

巻末年表を使って何度も読み返す

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ナポレオン戦争を描いたトルストイの不朽の大作の新訳、第三巻は第二部の後半3,4,5篇を収める。フランスとの講和条約が結ばれ、表向きは友好関係が結ばれている時期である。物語としても平和な部分であろうか、登場人物たちの恋、結婚の話が展開する一巻である。
 若者たちはパーティなどで自由に好みの相手に近づくことはできるものの、いざ結婚となるとそれほど自由ではない。この巻のコラムにもなっているが、このころのロシア貴族たちは経済的に苦しく、多くの持参金をあてにできる相手との結婚を親がのぞむことも多かったからであろう。そういった制約もある中、「恋に恋する」ようなナターシャの若い心に影響し、影響される男たち。華やかな舞踏会や劇場の情景、田舎での狩や、クリスマスのお祭り騒ぎなどの情景が鮮やかに描かれる中に、登場人物たちの心の動きもきめ細やかに書き込まれている。
 この第三巻まで、巻末にはその巻までの年表がつけられている。登場人物の節目的な出来事と、関連するヨーロッパでの歴史的出来事の年表である。どのできごとあたりまでが第一部なのか、さらには親切に文庫の各巻がどこからはじまるのかが記されているので、これまでを振り返るのにも便利である。寛政の改革、歌麿死去などの日本の出来事もちょこっと入っていて、「そのころ日本は・・」と想像をつないでくれるのもちょっとしたおまけとして面白い。
 最終巻まで進めば、この年表だけであらすじを読んだ気になる・・・かもしれないが、現在進行形で進む心の変化、描写の味わいは、本文を読まないと伝わらない。何度も何度も読み返して味わうために、年表でその場所を探し出して再訪して読み返したい。

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紙の本戦争と平和 5

2006/09/11 11:41

歴史を動かしているのは誰か。著者の論も明確になってくる。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

ナポレオン戦争を描いたトルストイの不朽の大作の新訳、第五巻は第三部の3篇、第四部の1,2篇と原著の三、四部にまたがっているが、モスクワにフランス軍が侵攻し撤退を始めるまでの部分がこの巻に収められている。
第三部の冒頭あたりから顔をのぞかせてきた著者の「歴史論」は、著者自身も書き進むうちに考えがまとまっていったのではないだろうか、徐々に主張が明確に、読者にもわかりやすい書かれ方になってくる。住民がいなくなったモスクワの街はなぜ大火に見舞われてしまったのか。フランス軍はなぜ豊かなモスクワの街をこんなにもはやく荒廃させ、撤退を決めてしまったのか。「自分の街として管理し住む人がいなくなれば、小さな火も見逃されてしまう」「人の気のない豊かな街に疲れた兵隊が入れば、兵隊は砂に水がしみこむように広がってしまう」など、トルストイは「歴史は特定の人物が動かすものではなく、たくさんの小さな動きの総和で動かされている」という自論でその理由を説明していく。モスクワを撤退したロシア軍がまっすぐ東やペテルブルグに向ったりせず、南西の方向に向ったのも、兵士たちの豊かな方へ逃げたい思いがあったからだ、というのである。
戦争の動向、歴史への意見が明確に書かれ始めると、個別的な人間模様の部分、特に男女の恋の模様ははかない、時には愚かで時には哀れなものにみえてくる。その中では、これまでどちらかというと迷いの多い人物として描かれていたピエールが、モスクワの大火の中で捕虜となり、不自由な環境の中でかえって活き活きとした性格になっていくあたりが、著者の描く望ましい生き方を示すものとして力強く描かれている。不自由であるからこそ、それしかできることのないことをこなしていくことが、かえって悩みがなく、心の自由を与えるのだ、というのがこの作品の中での著者の主張の一つであろうか。
しかし、ピエールがここでであったプラトンのような「誰をも愛し、誰がいなくなっても悲しまない」生き方を誰もが望むだろうか。(私的にはそんな愛され方ではさみしい気がする。せめて一人二人でもいい、いなくなれば悲しむ人が欲しいと思うのだが。)その対極にあるのがナターシャであろう。彼女は感情の赴くまま、避難の荷造りを嫌がっていたと思うと熱心に自ら参加し、自分の心の弱さから婚約破棄したアンドレイに再会すれば、献身的にその死までを見取る。作者はこのどちらをも「あるがままの生き方」として肯定的に描いているように思える。若い頃に読んだときには、どちらの純粋さも著者同様に好ましく感じた記憶があるのだが、今は前者は余りにも「達観」、後者は余りにも「勝手」とも感じてしまう。読み手の年齢・経験で、評価はやはり変わってくるのだろう。書き手トルストイも、晩年は少し違う観点を持っていたかもしれない。
新訳、改版の大きな特徴になっているコラム、図面の挿入はこの巻にもある。当時の馬車と橇を図入りで紹介したコラム、「トルストイと老子」のコラムは物語の周辺を理解するのに役立った。モスクワの市街図、フランス軍撤退経路図(タルチノ戦図)は、あるのでついつい本文中の地名などを対照させてしまうのだが、市街図は長い地名が見づらくしていて要所がわかりづらい。タルチノ戦図は地名と将軍の名前が区別しにくかったり、この巻ではでてこないパルチザンの動きが書かれているなど、役に立ちそうで立たなかった。
物語は次の第6巻で終わる。「あの戦争はなんだったのか。」「歴史とはどうつくられていくのか」。トルストイはどのように締めくくってくれるのだろうか。

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紙の本戦争と平和 2

2006/05/20 16:04

人物の一人ひとりが丁寧に書き分けられていくので長さを感じさせない

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 トルストイの、ナポレオン戦争を描いた不朽の大作の新訳の第二巻。
 全6巻の内この第二巻には第一部の最後三篇と二部の一、二篇を収録。第一部三篇では、周囲の流れに押されて結婚を決めるピエール、皇帝に熱狂するニコライ、アウステルリッツの戦いで負傷し、捕虜となるアンドレイなど、登場人物の変遷がいくつか描かれる。ロシア軍側からみた戦闘の情景は臨場感があり、映画をみるようである。第二部に入ると、休暇で帰郷した兵士たちの日常、その中で変わっていく心境などが綴られる。フランスとの講和で「昨日の敵」と手を携えている皇帝や軍の人々などもニコライの眼を通して描かれていく。
 第二部に入り、「何のために生きるんだ、そして、おれは一体何物だ?」と悩むピエールの言葉や、帰郷した日に妻を亡くし、自らも戦場で死を覗き込んだことで「何が正しくて、なにが正しくないかーそれは人間には判断できない」「僕を信じさせるのはそんなものじゃなくて、生と死だ。」というアンドレイの言葉。トルストイの問い続けたことがこの物語でもこのあたりで言葉の形をとって現われてきた、というところだろうか。
 数人の登場人物の心の変化を丁寧に書き分け、書き込んであるところはまさに不朽の名作。それぞれに感情を移入し、「なぜそう思ってしまうのか」「どうなのだろうか」と共に心を揺らしてしまう。一人ひとりを丁寧に描いていくので、この物語はとても長いものになったのだろう。しかし、場面場面では少しも長さは感じさせない。
 新訳版の工夫については第一巻の書評にも書いたが、登場人物の名前を簡単な表記に統一したことで、10人余りの主要な登場人物の混乱は少なくなったことを感じた。原文での書き分けに込められたニュアンスはなくなるかもしれないが、ストーリーを追いやすくなったことは確かだと思う。また、この巻には人生に悩むピエールがフリーメーソンに入会するところの「コラム:フリーメーソン」やアンドレイの家に出入しマリアが世話をしているという流浪の宗教者「神の人」についてのコラムがあるが、これらは状況の理解を助ける、新しい工夫が活かされた部分だといえるだろう。  「ロシアの学校」や「ロシア人の食事」のコラムは、本文との繋がりがあまりみえなかったのが残念。「ロシア人の食事」の方は、訳者自身が垣間見えてくる面白さはあったのだが。

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紙の本戦争と平和 1

2011/09/25 11:25

引っかかる翻訳が多いのが気になります。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:南北 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 登場人物の多さとスケールの雄大さに圧倒されてしまいそうになる作品ですが、ベズーホフ家(ピエール)、ボルコンスキー家(アンドレイやマリア)、ロストフ家(ニコライやナターシャなど)、クラーギン家(イッポリトやアナトール、エレンなど)を中心に系図を作りながら読んでいけば、読みやすくなると思います。

 これまでも同じ岩波文庫の旧訳となった米川正夫氏をはじめとして、多くの方の翻訳で知られていますので、比較しながら読むのもおもしろいと思います。今回の岩波文庫の新訳は、当時の地図だけでなく、「ロシア人とフランス語」や「軍の組織と部隊の種類」などのコラムが各巻に入っているので、この小説がなぜ冒頭からフランス語で始まっているのかなど、小説を読む上で背景がよくわかります。古典文学などは特にこのようなコラムを入れてもらうと親しみが増しますので、今後、岩波書店だけではなく、各出版社ともこうした工夫を行っていただきたいと思います。

 この第1巻と第2巻の前半に収録されている第1部は、アウステルリッツ戦でのフランス軍とロシア-オーストリア連合軍の戦闘までを描いていますが、フランス語しかできない(またはロシア語は片言か話すだけで書けない)ロシア帝国の上流階級とロシア語しかわからない下層階級が、フランスと戦争するために団結して戦うことができるのかを考えながら、読んでいくとわかりやすくなります。いわばフランス語という敵国語を使いながら、ロシア的なものに目覚めていくことができるのか、そもそもロシア的なものは上流階級に残っているのかが、底流となっています。

 今回の新訳ですが、上記のような地図やコラムなどの他にはない工夫があるものの翻訳自体にはいくつか問題があります。もともと岩波文庫の翻訳はわかりにくいものが多く、山本夏彦の「私の岩波物語」にも「最も私が言いたいのは『国語の破壊者としての岩波』である。(中略)それは日本語とは似ても似つかぬ岩波用語で、それで教育された人があるから分かる人が生じるに至った怪しい言葉である。」とあるように読んでいる途中で何度も首をかしげるような翻訳に出会いました。

 1.今回の新訳も含めて未だに修正されていない誤訳がある。
  リーザ(ボルコンスキー公爵夫人)のかわいらしさを表現するために「上唇」を使っているのですが、「ほんの少し黒みがかったうぶ毛のはえている上唇」(31ページ)とあり、「上唇」に「うぶ毛」が生えていることになっています。原文のロシア語では「верхняя губка」となっていますが、ロシア語の「верхняя губка」は日本語の「上唇」と同じではありません。日本語で言うと「上唇」と「鼻の下」にあたる部分全体を指しています。「鼻の下」であれば、汗をかいたり、ひげが生えたり(女性でもうぶ毛ぐらいは生えたり)しますが、日本語の「上唇」にはひげが生えることはありません。この点は確認した限り、すべての訳者で間違えています。リーザのこの描写はこの後も何回も触れる点ですので、そのたびに違和感を感じます。

 2.特に会話で変な受け答えがある。
  アンドレイ公爵が妻のリーザをたしなめる箇所で「リーザ、お願いだからやめてください」(77ページ)は変です。アンドレイ公爵の家庭は「かかあ天下」ではありません。北御門二郎訳の「リーザ、よさないか」が妥当でしょう。

  また、アンドレイ公爵が父のニコライ・ボルコンスキー公爵に「『そんなことは僕に向かって言えないはずですよ、おとうさん』微笑して、息子は言った。」(286ページ)では、まるで父親にけんかを売っているか、反抗期の中学生のようです。しかも「微笑して」となると、前後が全くつながらなくなります。。北御門二郎訳では、「おっしゃるまでもないことです」となっています。

  「負傷した将校はどこに行った?」という問いに対して「おろしました、いかれちゃったんで」(490ページ)では、まるで将校がモノ扱いです。ここは北御門二郎訳の「亡くなられましたので」でしょう。

 3.その他
  「食事をして真っ赤になった二十二歳の非の打ちどころのない将軍」(495ページ)ですが、ロシア帝国でも22歳で将軍になれたとは思えません。北御門二郎訳では「食事のために顔を真っ赤にした、二十二年間手落ちなく勤めた将軍」となっています。
  日本でも昭和天皇の弟君であった秩父宮は37歳で大佐、その後、42歳で少将となられています。また、高松宮は終戦時に40歳で大佐でしたので、将軍にはなっていません。このことから考えても「22歳で将軍」というのはあり得ないのではないかと思います。

  「ラン指揮のフランス軍」(468ページ)とありますが、ジャン・ランヌ元帥のことですので、「ラン」ではなく、「ランヌ」とすべきところです(ロシア語では「ラン」なのかもしれませんが、フランス人ですので、フランス語に近い表記にすべきだと思います)。第2巻の11ページの地図にも「ランヌ」となっていて、地図と本文が一致していません。


 今回初めて翻訳した本であれば別ですが、過去に多くの方が翻訳されているのですから、それらの訳と照合したり、参考にしたりすることは必須です。上記以外にも疑問な箇所がありますが、増刷か改版するときに改めていただきたいと思います。個人的には、上記のコラムや地図を参考にしながら、北御門二郎訳を読むことをお勧めします。

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