ひきこもる 小さな哲学者たちへ 生活人新書セレクション みんなのレビュー
- 小柳晴生 (著)
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2002/07/22 16:44
「豊かな時代」を甘く見てはいけない
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:17Caesun - この投稿者のレビュー一覧を見る
題名から“ひきこもり”が主題のように見えるが、そうではない。
「欠乏の時代」から「豊かな時代」への変化を平易な言葉で説明し、
新たな社会で生きるための知恵を検討する。カウンセラーだけあって、
言葉も易しく分かりやすい。
今も昔も、人は豊かな生活を夢見て生きているが、
「豊かな時代」=「楽に生きていける時代」という考えは幻想に過ぎないと指摘し、
豊かな時代=選択肢の多い時代に生きることの難しさを説く。
例えば、食生活。
現在は世界中の食材がスーパーで買える。それで食生活は豊かになったかといえば、
そうでもない。ジャンクフード漬けで生きている人も多い。
昔は、その日あるものを食べるしかなかった。夏なら毎日カツオ、秋なら
連日サンマ。一年経てばまた繰り返し。材料が限られているため、一度慣れてしまえば
調理に失敗する可能性は低いし、応用もしやすい。同じ物ばかりでは飽きやすいが、
それは世の中のせいであって自分の腕が悪いせいではない。
現代では全ての食材が季節に関係なく手に入る。こうなると毎食メニューを考え
なければならない。同じ物を出せば手抜きと言われる。おまけに、材料は全て手に
入るから、料理がまずければ腕が悪いということになる。レパートリーが少ないのも、
自分の勉強不足である。仮にそこそこ良いものを作っても、もっといい選択があった
かもしれないと悩む。初めての食材でも、調理法についての情報は手に入るので、
失敗しても言い訳できない。
——刺激に充ちているが、自分の力が常に問われる、大変な時代である。
こうなってくると、自分の実力の無さに嫌気がさしたり、毎日の選択に疲れたりして
調理に対する気力を失い、結果としてジャンクフードを食べて過ごす人が出てくる。
選択肢が多いということは、モノの洪水にさらされるということである。
上の世代が持っている「欠乏の時代」を生きる知恵は、いわば砂漠で生き抜く知恵である。
洪水の多い土地ではあまり役に立たない。
著者は身近な例をもって社会の変化を説明し、到来しつつある社会で生きる心構え
を説く。その語り口は穏やかながら、鋭い指摘で我々の常識を刷新していく。
著者本人が認めているように、的外れな仮説を立てている部分もあるように思えるが、
それでも多くの疑問に答を出し、時代の先端を明示してくれる内容である。
だからこそ早めに読んで欲しい一冊。
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