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紙の本

日本はアメリカの軍事力を必要とするし、その意味でアメリカに依存する構造はほぼ永遠に変わらない。その全ての基礎が日米安保条約であり、この条約による日本のギブが日本中に展開した米軍基地の提供である以上、日本は永遠にアメリカ様に基地を提供し続けることが日本国家安寧の一丁目一番地なのである。このことがわからない、わかりたくない人間には日本の政治を語る資格はない。

18人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る

冷戦崩壊後の日本を五百旗頭眞教授は「漂流国家」と見立てる。意味するところは、ベルリンの壁が崩壊し、長く続いた冷戦構造が音を立てて崩れていく中で、急激に生じた国際環境の変化という「激流に押し流され、危機が頻発し、それでいながら自らの根本的な戦略を立てがたい。変動という荒波に対して常に受け身に回り、自ら戦略を立てて進むことができない」。そういう状態を五百旗頭教授は「漂流」と表現している。

日本の漂流を端的にあらわしたのが湾岸戦争時における日本政府の右往左往ぶりで、あの時、日本はイラクのサダム・フセインという悪逆非道な独裁者が明白な侵略行為を隣国クウェートにしかけたにもかかわらず、それに対し、アメリカと共にすっくと立ちあがって、ガツンとフセインに一撃をくらわせて諌めることができなかった。終わりのない神学論争に明け暮れ、結局「カネだけ払ってものごとを解決」しようとした。その結果、日本は130億ドルもの戦費を負担したにも関わらず「血を流そうとしなかった」がゆえにクウェートからは感謝されもせず、深く傷ついた。当時も今も日本は石油の90%を中東に依存している。その中東で起きた一大事なのだから日本は国家安全保障上の危機と認識し、直ちに同盟国アメリカと共に出撃準備に入るべきだった。ところがそうはならなかった。「日本には平和憲法がある」「あれはアメリカの戦争だ。フセインやアラブの民衆を虐げる白人どものポチになる必要はない」「いま、歴史は大きく転換しようとしている。サダム率いるアラブの民衆がアングロサクソンの中東支配に終止符をうとうとしているのだ。日本は白人どもの列に加わることは無い」「戦争反対」。こういう愚にもつかないタワ言を、井上ひさし、大江健三郎ら「文学者」が「アピール」したりしていた。その本質はアメリカにおんぶにだっこのおっぱいちゅうちゅうぶら下がり健康法を永遠に続け、汚い汚れ仕事はアメリカに押し付けておけという甘ったれ根性にしか過ぎなかったのだが、当時も朝日新聞が先頭に立って湾岸戦争参加反対の大キャンペーンがはられたのだ。こうして日本は石油の90%が通過するホルムズ海峡からマラッカ海峡、南シナ海と続く長大なシーレーンを自前の軍艦で警備することを放棄し、それを全部忙しいアメリカ軍に押し付けた。インド洋上を遊弋するアメリカ海軍軍艦の乗組員たちはそばを途切れることなく通過する日本向けタンカーを横目で見つつ、愚にもつかない神学論争を立てにアメリカと共に戦おうとしない日本の態度を見て「やってられない」と思ったという。あるいは、戦場近辺で記者向けに説明に立ったアメリカの現地司令官に対し「日本人は1人当たり1万円もの戦費を負担したんだ。恥じることはないはずだ」と愚かにも喰ってかかったという。その時のアメリカ司令官の態度がしぶい。やおら胸のポケットから100ドル紙幣を取り出すと、「そうか。んならお前に100ドルやるから、今らか銃を担いで最前線に飛んで行け!」と愚かな日本の記者をどやし付けたという。

なぜ日本は、こういう情けない状況になったのか。その原因を教授は「その前の時代に成功し過ぎたから」という。確かに日本が1980年代、大成功をした。アメリカはもちろん世界中に自動車、半導体を集中豪雨的に輸出し巨額の貿易黒字を計上。日本の富はウナギ登りで、ついに一人当たりGDPでアメリカを凌駕するまでになった。問題は、この成功がたまたまであり、成功した当人の予想を遥かに超えたフロックであったことにある。どうして日本がこんなに大成功し豊かになったのか。それは石油ショックで石油価格が急騰する中で、燃費の良い高性能小型自動車を量産していたのが世界中で日本だけだったこと。日本に負けじと対抗モデルをアメリカの自動車メーカーが売り出すが、これが欠陥だらけで事故が頻発。しかも米自動車メーカーの経営者が己の非を認めずウソをついて誤魔化そうとしたのがばれてアメリカの消費者がアメリカの自動車メーカーに愛想を尽かすという想定外の事態が起きたこと。更に追い詰められたアメリカの自動車メーカーが日本車の対米輸出に数量制限を政治力を使って課したところ、日本車にプレミアムがつくようになり、本当にウソみたいにアメリカで日本の自動車メーカーが大儲けしたこと。こうした数々の偶然が日本の大成功につながって行くのだが、それを日本人は偶然と思わず、必然と考えた。「私たちの努力の賜物」「日本人の勤勉さと緻密さが成功の秘訣」「もうアメリカに学ぶことは無い」。もともと日本は国土の多くが敗戦で焼け野原となり、再び普通の国家になるには経済が余りにも疲弊していたので、こんな日本を復興するには軍備などにカネを使わず経済再建にすべてのエネルギーを集中すべきと考えた吉田茂は、国家の安全保障をアメリカに委ねるという国家主権の一部を放棄するかのような日米安保体制を選択した。結果として、この選択が大成功し、それが日本の奇跡の発展をもたらすわけだが、この道を選択した吉田は永遠にこの対米従属の道を続けるべきだなどとは思っていなかった。これはあくまで当時の日本が置かれた状況から出た「やむをえない選択」「方便」であり、日本の国力が回復したあかつきには、日本はアメリカから押し付けられた憲法を改正し、自前の軍隊を持ち、自らの安全保障に責任を持つ「普通の国」になるべきだと考えていた。こうした「吉田茂の精神」は伝統的国家主義者である鳩山一郎、岸信介はもちろん池田勇人までは共有されていた。彼らは国際社会における軍事力の重要性をわきまえており、外交で屈辱的な目にあわない為には十分な軍事力を保有することが不可欠であることを知りぬいていた。ところが佐藤栄作、田中角栄あたりから日本の政治家の認識は軽武装経済中心主義の吉田路線を「吉田ドクトリン」と位置付け不磨の大典化してしまう。日本は軍隊なんか持たなくていい。日本は国際紛争に関わる必要はない。危ないことは全部アメリカに押し付けておけばいい。こうした「大いなる勘違い」の矛盾がいっぺんに表面化したのが1990年に起きた湾岸戦争だと五百旗頭教授は言うのである。ネットウヨは五百旗頭教授を指してサヨクだという。しかし教授は非武装中立戦争放棄にしがみつきアメリカと一緒になって戦争することに頑なに反対する小沢一郎のような政治家を本書で諌めているのである。「戦後66年をさかのぼって改めて思うのは、吉田路線(軽武装経済専念)をドクトリン化してはいけないということです」「吉田路線は戦後の貧しい時代に対応するためにつくられた路線です。それにより戦後日本は発展を遂げましたが、その成功にだけとらわれていては、新しい時代の動きや激しく揺れ動く国際情勢にダイナミックに対応していくことはできません。吉田のように強い信念と大局観を持ってしかも柔軟に、新しい時代に対応していきたいものです」と教授は言っているのである。

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