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おいしい隣人妻【たなぼた】 みんなのレビュー

  • 葉川慎司
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紙の本

紙の本おいしい隣人妻〈たなぼた〉

2016/07/10 15:55

奇をてらったかのような少しズラした構成は吉と出るか?

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る

スーパーでアルバイトする21歳の主人公が一目惚れする客の【ひとみ】とその娘で20歳の【沙也香】に加えて職場の先輩で人妻の【奈央】の3人を擁したヒロインとの官能描写はどれもすこぶるいやらしい。30代後半くらいで清楚な佇まいのひとみと40代前半と思しき奔放で妖艶な奈央という好対照な魅力が与えられており、やや都合の良い誘惑アプローチながら積極的な愛撫や言葉で主人公を昂らせていく熟女の良さがしっかり表現されていた。予想外な大胆さを見せたひとみのギャップも淫猥度が高い。そして、純粋なお嬢様風情が漂う沙也香が健気な生娘として主人公に「初めて」を捧げるアプローチもなかなか良好で、いきなり最初から交わるでもなく順を追って関係を深めながら結ばれるような丁寧さがあったと思う。

また、寄せられる愛情の板挟みから都合の良い方便を時に振り撒く主人公の言動には一時期のヘタレ主人公に通ずる優柔不断が感じられ、ヒロインからの積極さと併せてやや古風なテイストを感じる一面もあった。その意味では真っ当な誘惑作品と言えるかもしれない。

ただし、この作品には構成に妙なズレを感じる。主人公が一貫して想い続けるひとみの出番は少なく、官能的には最後の最後にあるだけ。この点を除けば奈央と沙也香の2人ヒロインでもいいくらいのストーリーであり、実際に2人でほぼ成立している。それほど奈央と沙也香の存在が作中を占めているのである。ついでに言えばひとみと沙也香の母娘丼はなく、代わりに奈央と主人公との関係を訝しんだ沙也香が半ば巻き込まれる形で性交指南を兼ねた3Pに発展している。この体験から開眼した沙也香が淫らな積極性を格段にアップさせるのは良いのだが、読み手としてはひとみの出番の少なさにややもすると肩透かしとなろう。

これはもしかたしたら敢えてのズラしであり、少々奇をてらった構成を試みたのかもしれないと考えることもできそうだが、であればひとみの官能的な登場の仕方は狙ったものと言うより狙い過ぎた結果、他の2人の存在感に霞んでしまったように思えてならない。あるいは2人を描いているうちにひとみの余地がなくなったのだろうか。

しかし、ひとみが主人公に向けた最後の台詞を本作の余韻としてではなく、そこから続きがあると夢想すれば纏まりが見えてくる。奈央や沙也香との関係を継続しながらひとみとの関係もこっそり始めていく、ひとみを主軸に据えた後編が仮にあるならば、そこで最後は母娘丼から全員集合で真の完結を見ることができると思うのだが、つまりはそんな後編を是非ともお願いしたくなる物足りなさがあったと言わねばならず、乞い願うひとみ成分なのである。

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