青列車の秘密 みんなのレビュー
- アガサ・クリスティー (著), 青木久恵 (訳)
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紙の本青列車の秘密
2004/07/27 13:04
なぜ、そんなに早く、事件関係者を「ブルー・トレイン」から降ろしてしまったの?
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
『スタイルズ荘の怪事件』『ゴルフ場殺人事件』『アクロイド殺し』『ビッグ4』に続く、ポアロものの第5長編である。
原題 The Mystery of the Blue Train 1928年の作品。
寝台列車「ブルー・トレイン」で起きた殺人事件と、「火の心臓」と呼ばれるルビー盗難とをからめた話。ミステリの器の中に、スパイ・スリラーっぽい話が盛り込まれている。初読ということもあり、期待して読んでいったのだけれど……。いい出来栄えの作品とは思えなかった。
作品のどこに出来の悪さを感じたのか、考えを整理してみるつもりで箇条書きにしてみた。
○登場人物の性格が平板である。性格描写としての踏み込みが足りない。ぶっちゃけて言えば、キャラクターの魅力が薄い。
○殺人現場の「ブルー・トレイン」から登場人物たちが早々と降りてしまうため、列車内という舞台設定が生きていない。
○スパイ・スリラーの冒険的要素が、話をかえって散漫なものにしてしまった印象を受ける。どっちつかずというか、中途半端というか、作品のキレを鈍くしてしまった感あり。
○そして、これが一番気になったのだが、最後に事件の真相と犯人が明かされる件りに説得力がなかった。犯人に行き着く推理は、かなり都合が良すぎるのではないかと思った。推理に無理があるということではなく、正解に至る道すじそれ自体の魅力が乏しかった。
逆に面白いと思ったこと、評価できると思ったことは、次の二点。
○舞台のひとつとして、セント・メアリ・ミード村が出てきたこと。ミス・マープルが登場する最初の作品『牧師館の殺人』(1930)以前に、セント・メアリ・ミード村が出てくると知って、ちょっとびっくり。※ただし、本書のセント・メアリ・ミード村はケント州に設定されているが、ミス・マープルの住む同名の村は、ロンドンの西南部に位置しているとのこと。(芳野昌之『アガサ・クリスティーの誘惑』早川書房より)
○新訳の青木久惠さんの訳文が、とても読みやすかった。この前の田村隆一氏の訳は未読。しかし、このクリスティー文庫刊行にあたって、新訳になっている作品があるかと思えば、旧訳のままだったりするのはなんでなんだろ? 割合としては、旧訳のままの方が多いようだが。個人的な希望を言わせてもらうと、すべて新訳で読みたかった。
本書の解説は、北上次郎氏。
> と書いているが、同感。クリスティー初期の冒険スリラー的性格を持つ作品で面白かったものとして、私なら、『秘密機関』に続いて『おしどり探偵』(連作短編集 1929)と『茶色の服の男』(1924)を選びたい。
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