キス・キス みんなのレビュー
- ロアルド・ダール (著), 開高健 (訳)
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紙の本キス・キス
2006/02/10 13:27
映画『チャーリーとチョコレート工場』で初めてロアルド・ダールの名を知ったあなたが次に絶対手に取るべき本
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:稲葉芳明 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年の大ヒット映画のおかげで初めてロアルド・ダールという作家の存在を知った/初めて読んだ、という人も少なからずいるでしょう。しかし、筆者にとっては、ダールとはまず『あなたに似た人』や『キス・キス』という傑作短編集の書き手なのです。昨秋早川書房が創立60周年記念出版として<異色作家短編集>シリーズを復刊してくれましたが、その第一回配本がフレドリック・ブラウン『さあ、気ちがいになりなさい』と、この『キス・キス』でした。
この短編集に収録された作品は、<奇妙な味>の作品が多いですね。最初はごく普通の物語として始まるものの、途中からどんどん世界が捩れていき/歪んでいき、果ては読み手を不安定な宙ぶらりん状態で放り出す手腕は、ワン・アンド・オンリーなもの。「女主人」とか「ローヤルゼリー」、「ジョージイ・ポーギイ」はその典型ですね。
ブラックユーモア横溢の「天国への登り道」や「豚」のオチも、実に後をひきます。現実には充分ありうる話しで、結末も大体読めるんだけど、その語り口で有無を言わさず引っ張られるのが「牧師のたのしみ」とか「ビクスビイ夫人と大佐のコート」。「ほしぶどう作戦」は、そのオフビートのユーモア感覚が絶妙です。
昨年、「このミステリーがすごい!」を始めとしたミステリ・ベストテンでは短編集が軒並み上位にランクインしましたが、(新作ではないものの)この短編集にノミネート資格があったら、筆者は迷うことなくベストワンに推しますね。
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