キャプテンの責務 みんなのレビュー
- リチャード・フィリップス (著), 田口俊樹 (ほか訳)
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紙の本キャプテンの責務
2015/10/25 08:45
見習うべきは何か
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投稿者:okadata - この投稿者のレビュー一覧を見る
外務省のHPによると2003年以降の世界全体の海賊事案発生件数は200〜450件の間で推移しており、そのうちシージャックの発生は10〜20件程度だったのが2008年から2011年までは50件ほどのシージャックが発生した。この間増えたのはほぼソマリア沖、アデン湾のもので海賊事案全体の半数、そしてシージャックの8割ほどを占めていた。国際的な取り組みにより2012年以降は海賊の発生を抑えており、2014年の場合9月までの累計で事案が10件、シージャックは0となっている。現在海自の護衛官2隻が派遣され1隻はアデン湾を往復しての護衛を行い、もう1隻は割り当てられた海域の警戒活動を行っている。ほかにP−3C哨戒機も2機派遣されており不審な船舶の情報提供を行っておりこの活動は同海域における警戒活動の6割を占めている。
2009年3月30日リチャード・フィリップスは船長としてオマーン南岸の港町サラーラに停泊中のマースク・アラバマにキャプテンとして乗り込んだ。インド洋に面するサラーラからアデン湾の奥、紅海に入る手前のジブチを経由しそこからソマリアをぐるっと回ってケニアのモンバサまで3ヶ月間がリチャードの仕事場となる。この航路はいつも天気がよく、停泊する港も興味深い場所ばかりでお気に入りの航路だった。17トンの積み荷の内5tは国連世界食糧計画によるルワンダ、コンゴ、ウガンダ向けの支援物質で全てケニアのモンバサかタンザニアのダルエスサラームを経由して陸路で運ばれる。ソマリアの海賊は元漁師が貧困のために海賊化したと言う話もあるが2008年以降は成功率の高さに眼を付けた組織的な海賊が主流となっている。
学生時代はどちらかと言えば悪ガキでタクシーの運転手をしているときに一番チップの払いのいいのが船乗りだったと言うのがリチャードが船乗りになったきっかけだった。海事学校で規律を叩き込まれ、そしてリチャードは口うるさく手強いボスになった。ある甲板長がリチャードに最高の賛辞を贈ったことがある。「あんたは面倒くさい上司だけど、おれにはあんたが言うことが言われる前にわかるんだよ」
マースク・アラバマでのリチャードの最初の仕事はビールを求めて先を急ぐ船員を捕まえきちんと船の様子を聞いておくことだ。次いで乗船して初めの数時間船内を点検して回ると船中の扉と言う扉が開きっぱなしで侵入柵にも鍵がかかっていない。セキュリティが少し緩んでいた。4月2日リチャードは1等航海士のシェーンに「今日は抜き打ちで海賊対策訓練をやろう」と言った。たいていの航海士なら「ええっ、船長、それ、やらないといけませんか?」と言うところだがシェーンは違う「抜き打ち訓練ですか、いいですねえ」
5日にジブチについて6日に出航し海賊の影が見えたのがこの日だった。そして8日ついに海賊のボートにおいつかれ放水もむなしくはしごを用意した海賊4人が乗り込んできた。リチャードと二人の船員が人質になるが、シェーンや機関長のマイクは訓練通りに船内に隠れ船の機関と運行は渡さない。他の乗組員の捜索に行く中で一人の乗組員はうまく隠れ、続いて海賊のリーダーを逆に仲間が捕えた。そしてここからがリチャードの粘り強い戦いが始まりだった。ここからが物語のクライマックスだ。
キャプテンの責務とは何か?リチャードのモットーは「われわれはみな船のためにここにいる。われわれのために船があるわけではない。」だが実は続きがある。「ただ、船長は乗組員のためにここにいる」だからリチャードは仕事となったら面倒くさいと言われようととことんやる。おそらく見習うべきなのは海賊に襲われるまでのところなのだろう。
紙の本キャプテンの責務
2020/11/11 13:49
船長の孤独
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
乗組員を守るために自ら人質になった、リチャード・フィリップスの苦悩が伝わってきます。船上を舞台にしたひとり芝居のようでもあり、水面下で進行していく交渉もスリリングでした。
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