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電子書籍

霧のなかの子 みんなのレビュー

  • トリイ・ヘイデン (著), 入江真佐子 (訳)
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紙の本

霧のなかの子 行き場を失った子どもたちの物語

「黄昏の子」・・・自分の存在を認めてもらえない淋しさ

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:りっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

 トリイの勤め先が変わった。「政策変更の結果、予算が削減されて仕事も減るだろうと予想して、わたしは教職を一時やめる決心をした」からだ。教育では安易な制度変更やケチケチはやめて欲しいなぁ。今回は「大都市の総合病院にある子どものための精神医学査定ユニット」で働いている。なので、ひとりひとりを丁寧に見られる代わりに、クラスの中の子ども同士の関係とかがないのが淋しく感じられる。
 一人目は、カサンドラ。父親がコカインを常習、家庭内暴力もあり、離婚。5歳の時にその父親に誘拐されたのだ。発見されるまでの間にどんなことがあったか、カサンドラは何も話さなかった。父親も薬で錯乱状態。情報が得られなかった。
 一年遅れで、補修を受けながら1年に入学。学習面ではまあまあの進歩を見せていたが、3年生になったカサンドラについて、担任が不安を感じるようになる。とくに悪意の嘘が多いこと、ひどくおしゃべりな時と突然誰にもしゃべらない時があること、「突然彼女の返事が話題からそれたり、挑発的になることもあるし、ほとんど筋がとおらなくなるようなことも多かった。「頭がおかしくなったのかという気がする」ほどこちらを不安にさせる言動だ、とベイカー先生はいった。そしてひじょうに不愉快だとも。ほかの子どもたちもすぐ不安になったり腹を立てたりして、カサンドラを避けるようになった。」
 それで、トリイのユニットで観察と査定のためしばらく入院ということになった。児童精神科医デイヴ・メノッティは、カサンドラのことを「どこかつじつまの合わない子」というふうに表現していた。「カサンドラの問題の原因は26ヶ月に及ぶ誘拐生活にあるとは思っていたが、私たちにはそれがいまの彼女がかかえている困難とどのようにつながり合っているのかわからなかった。」
 カサンドラとのセッションが始まる。人形遊びをさせれば、床に人形を叩きつける。「腹を立ててもいいのよ。でもその気持ちを行動に出してはだめ。それが物を傷つけるような場合はね。さあ、もうやめましょう」と彼女の動きを止めると、ぴたっと動きを止め、何もしゃべらなくなる。カサンドラに振り回されるトリイ。その場を、カサンドラとトリイのどちらが支配するかの戦いでもあった。「ここで起こることをすべて自分がコントロールできるんじゃなければ、ここに来るのが心配でしょうがないって感じているように思えるんだけど」そういうトリイに、担任や、病院職員から性的虐待を受けたと嘘をつくカサンドラ。虐待に敏感な時代なので、病院中がパニックに近い状態となり、カサンドラと二人っきりにならないように、手間と気を使うようになる。トリイは自分がうまくいっていないことをビデオで再認識する。カサンドラの変わり方があまりに速いので、トリイがうまく対応できないでいるのだ。
 二人目は、ドレイク。ドレイクの祖父がトリイの選択性無言症についての記事を読み、孫のドレイクもトリイに合わせれば治るだろうと手紙をよこしたのだ。だが、おかしなことに、その手紙にはまず、自分の家業(代々の銀行家)について書かれていた。さらに心配なことに、「ドレイクは完全に正常な子どもでただ治るのを待っているだけだということ、“治る”ためにはそうできる魔法を使う人物を探せばいいだけだということ、そしてお金さえかければどうにでもなると思っていることだった。」
 ドレイクの住んでいる町は、病院からだいぶ離れていた。はるばる訪ねた保育園でトリイは、「この子はこんなに愛嬌があって、夢中になっている。それにこんなに社交的なんだから、人と関係を結ぶのに言葉なんか必要ないのだ。」とも、「でも、どうして?シャベルということは自然で、生来のものだ。それをどうしてしないのか?これほど明らかに人とコミュニケーションをとりたがっているのに、ドレイクがじっと黙っていることのメリットは何なんだろうか、と」悩むのだった。両親の面談には、父親のウォルターではなく、祖父のミスター・スローンと母親が出席。母親は神経質な感じのする美人でイタリア人。英語はあまりうまくなかった。ミスター・スローンは病院で対応することに不満を言い、テーブルをパンと叩いて部屋から出て行ってしまった。母親からは、「ふつうにしゃべる」「9ヶ月から」最初の言葉は「キティ」(ふつうはDかBではじまる「ダーダ」か「バーバ」)「英語です」「父親には一度も話したことはありません」との情報を得る。
 3人目は、個人的に訪問するようになったゲルダ。ドイツ系移民。卒中でリハビリステーション・ユニットに入院していたが、近所とも子どもたちともかかわりが薄く、ここを退院しても今までのような独立した生活を再開する事ができるのか、関係者から危ぶまれていた。本人は自宅に住み続けたかったんだよね。トリイの読み聞かせとドレイクの影響で、「黄昏の子ども」と、続いて、「女の子だから」行きたいところにいけなかったことや欲しかったものがもらえなかったことなど、思い出話をしゃべるようになった。結局介護施設へ行くことが決定され、そこで2回目の発作を起こして亡くなってしまうんだ。なんだかなぁ。他人事ではないよ。
 今回もトリイは悪戦苦闘。すごく悩んで、手間も時間もかけている。でも彼女のいいところは、決して、決め付けないということだ。カサンドラの“困った場所”にあるひとつひとつをトリイの指に書いていく場面がほほえましい。その場の状況にとても柔軟に対処している。そして、決してあきらめずに、関わりを繰り返し、相手からの信頼を勝ち取ってゆく。それがすごいと思う。
 ゲルダの言った「黄昏の子」というのは、親に認められなかった子、親には見えていなかった子というような意味。父親に誘拐された時に、「お母さんがおまえは要らないって」と言われ、その父親がカサンドラの世話を任せた男が性的虐待をしたのだから、カサンドラからすれば、両親に見捨てられてたと思えただろう。怖い爺さんに、先天性の障害がある子を産んだら、離婚させられるという恐怖感で、子どもの障害を隠した母親。題名の「霧のなかの子」も、そういうことだ。ゲルダは、親だけでなく、子どもにも(事情はあるにせよ)理解されなかった。
 家庭内での殺人事件が多いが、見えているようで、見えていないのかもしれない。縛るつもりもなく、縛っていたり。仲がよいつもりで、憎まれていることに気づかなかったり。トリイのように、情もありながら、客観的に観察できるといいのだけれど・・・それと、ヴォネガットさんの言う“拡大家族”の存在があれば・・・
 エピローグで、その後の二人の報告があり、読者をほっとさせてくれる。

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