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電子書籍

天冥の標 みんなのレビュー

  • 小川 一水
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みんなのレビュー20件

みんなの評価4.4

評価内訳

  • 星 5 (15件)
  • 星 4 (4件)
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20 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

天冥の標 1上 メニー・メニー・シープ 上

与えられた条件の中で、人々は懸命に生き抜こうとする

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

 拡散時代を迎えた地球人類は、数多くの移民船を他の恒星系に向かって送り出した。多くの植民船は無事に植民星に到着し、そのテクノロジーを生かして繁栄し再び植民船を送り出すようになる。
 しかし、植民星メニー・メニー・シープに到着したシェパード号は、到着時のトラブルによりその能力を十全に生かすことができず、移民の技術レベルは20世紀のレベルまで落ち込んでしまう。現在西暦2803年。資源の少ない星で生活する人々は、施政者のある発案により、さらなる困難に陥ろうとしていた。

 最近は近未来のSFが多かったように思うが、今回は人類が銀河系全域を生活圏にしようかという時代。ただし、舞台となる惑星はあまり現代と変わらない。登場人物として、海の一統という改造された人類や、恋人たちと呼ばれるアンドロイド群、先住種である石工と呼ばれる昆虫様の生物などが出てくるが、彼らの行動は現代の状況に結びつかなくもない。
 わずか5千平方キロメートルの植民領域の中で、わずかなリソースの配分を巡って対立する人々。そこから飛び出して新天地を目指そうとする人々。闘って体制を変えようとする人々。そして、何をしたら良いか分からず戸惑う人々。様々な立場の人がいるが、ただ一つ明らかなことは、黙っていて助けてくれる存在はどこにもなく、問題は自分たちで解決しなければならないということだ。ただ、解決するとは言っても、立場により目指すべき場所は異なり、切り捨てられる範囲も異なるということがより深い問題であり、結局は放置するというのが安易な解決に陥りがちなのだが。

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紙の本

天冥の標 4 機械じかけの子息たち

行為の果てにあるもの

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

 救世軍連絡会議議長グレア・アイザワの義弟キリアン・クルメーロ・ロブレスは、とある理由によりたどり着いた小惑星で、アウローラ・P・アルメンドロスという少女に出会う。彼女と彼女の姉ゲルトルッドは、無条件の好意をキリアンに示してくるのだが、彼女たちの一族の名前は恋人たち(ラバーズ)といった。

 ある理由でキリアンの好意を得たいアウローラたちは、彼が冥王斑であるゆえに押し殺していた性欲を開放させ、彼の望むままの行為に応え続ける。なぜなら彼らは、人間へ性愛の奉仕をすることを喜びとして生み出された存在だからだ。
 そしていつか、混爾(マージ)と呼ばれる性愛の極地に至ることを目指し、自分たちを増やし存在し続けている。それは、機械的に融合して同一化する不宥順(フュージョン)とはまた違う、個性が他者の存在を自分と同一視して受け入れるような感覚だ。

 そんな彼らのハニカムに存在する不協和音である聖少女警察、そして外部からの、道徳と倫理という名を借りた敵の襲来。その果てにラバーズはどこへとたどり着くのか?

 2巻の冥王斑、3巻のアウレーリア一統、そして今巻の恋人たちと、1巻の仕掛けが徐々に明らかになってきた。
 そして今巻の内容だが、ラバーズが主役であることもあり、とてもエロい。彼らの存在理由から予想がつくようにセックスをしまくるわけだが、ゲストの性的嗜好を満足させるため、彼らが無意識で求めるようなシチュエーションを実現し、そこでたっぷりと行為にふけるわけだ。ある意味では究極のイメクラみたいなものかもしれない。
 しかしただそれだけで終わるというわけではない。性愛の究極の形とは何かをその中で求め続けるのだ。そこでは常識的には考えられないような交感のかたちもある。そしてなぜラバーズがそうあるように創られたのかも考えられる。まあ、何か真剣にまじめに一所懸命なのだ。

 そんなわけで、シリーズの枠からはみ出してはいないので問題ないとは思うのだが、以前の短編についても然り、どこか意地になっているようなところも感じなくもなかったりする。

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紙の本

天冥の標 2 救世群

紙の本天冥の標 2 救世群

2010/03/06 13:18

要素の付加による形質の変化

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

 時間は巻き戻り、西暦2010年代の日本に舞台は移る。国立感染症研究所に所属する感染症専門医の児玉圭伍と矢来華奈子は、アウトブレイク発生の報を受け、パラオに向かう。到着した島で初めに見たものは、浜辺に転々と転がる人の死体だった。
 多数の犠牲者を出しながらも、一次感染者の特定と檜沢千茅と一名の回復者という結果を残し、封じ込めは成功したかに見えたが、その淡い期待は破れ、世界的大流行につながっていく。

 冥王斑と名づけられた感染症は、その圧倒的な感染力と致死率もさることながら、回復者の体内に残るウイルスが感染力を失わないということに大きな特徴があった。つまり、回復しても一般社会に戻ることが出来ないのである。
 この事実は、未感染者と回復者との間に亀裂を生じさせる原因となっていく。

 奇数巻と偶数巻で時代を行ったり来たりしていくのだろうか?1巻で登場した謎の用語たちの来歴が、近未来のパンデミックを取り巻く出来事から明らかになる。
 治療をする医師の現場と、感染症の封じ込めという政治的立場、未感染者と感染者、そして回復者という様々な立場から、一つの事件が語られる。マイナスをプラスに変えようという人間の変わらぬ営みが作り変えていこうとしている世界とは?
 こちらのお話もまだ先が長いようです。

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紙の本

天冥の標 1上 メニー・メニー・シープ 上

全く予測不可能な展開です。登場するものたちを理解するだけでも一苦労なのに、話の先が読めません。これは楽しみです。あとは、前の話を忘れないうちに次の巻が出てくれること。でも、全10巻て、結構長丁場かも・・・

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

SF本としてはありがちなカバー画なんですが、色合いも含めて嫌いではありません。ただし、この絵のスケール感からいって、文庫ではすこし窮屈かな、なんて思います。で、今あらためて見て気付いたんですが、この本てきっと、上下で一巻て勘定するんだと思うんです。カバー後の文のお終いに全10巻の新シリーズ、って書いてありますけれど、多分、10冊ということではないんだろうなあ、って思いました。

で、なんでこんなこと書いてるかっていうと、実は今回の上下巻、これで第一部って考えられるのに、カバー画が繋がってないんです。上下左右とっかえひっえいしてみたものの、色合いと雰囲気は同じなのに別の絵。もしかして上巻のものはセナーセー市の様子で、下巻は地中の植民船? なんて思いもするんですが、どちらにも空があるので違うんでしょう。Cover Illustrationの富安健一郎には意図があってこういう絵にしたんでしょうが、私には意味不明。

Cover Designの岩郷重力+Y.Sも、これで良しとしたんでしょうが、でもやはり上下巻通じて一つの絵となるようにするか、もしくは小鷹信光の言うラップアラウンド形式にしてカバー全面を使ったものにすべきだったんじゃあないか、なんて思います。ちなみに、文庫でのラップアラウンド型のカバーって、昔、東京創元社の推理小説全集にあったくらいで、特に早川文庫には例がないはず。ここらでいっちょうやっても面白かったのでは?

閑話休題。お話の内容ですが、今回も環境配慮、省エネスタイルで本のカバーの文章を利用させてもらいます。

まず、上巻のカバー後の文は

西暦2803年、植民星メニー・メニ
ー・シープは入植300周年を迎え
ようとしていた。しかし臨時総督
のユレイン三世は、地中深くに眠
る植民船シェパード号の発電炉不
調を理由に、植民地全域に配電制
限などの弾圧を加えつつあった。
そんな状況下、セナーセー市の医
師カドムは、“海の一統”のアク
リラから緊急の要請を受ける。街
に謎の疫病が蔓延しているという
のだが……小川一水が満を持して
放つ全10巻の新シリーズ開幕篇。

続いて、下巻は

謎の疫病の感染源は、出自不明の
怪物イサリだった。太古から伝わ
る抗ウイルス薬で感染を食い止め
たカドムだったが、臨時総督府に
イサリを奪われてしまう。一方、
首都オリゲネスの議員エランカも
また、ユレイン三世の圧政に疑問
を抱いていた。彼女は自由人の集
団《恋人たち》と知りあうが、ユ
レイン三世はその大規模な弾圧を
開始する。新天地を求めて航海に
出た《海の一統》のアクリラは、
驚愕すべき光景を目にするが……

です。これ以上説明はしませんが、予想外の展開をします。え、どうして? なんでみんな? なんて私は思いました。ここまでやるかない、って。甘い展開をするかな、って思ったんです。たとえば、カドムとイサリ、あるいはエランカとラゴスの関係。最近のミステリ系の作家たちだったら、甘々の男女関係を宙ぶらりんにさせてシリーズをだらだら読ませる、読者もそれを嬉々として受け入れるみたいな構図があるんですが、SF系の、しかも本格的な作品を目指す作家は違う。

私が現在もっとも注目する小川だけのことはあります。しかもです、小川は下巻のお終いについている「一巻のためのあとがき」で、
              *
 はい、いかがでしたでしょうか。天冥の標、第一巻。
「ちょ、おいィ!?」と叫んでいただけましたか。これはそういう本です。
 いただけなかったら申し訳ありません。二巻頭、三巻頭、またその先では、きっと叫んでいただけると思うので、それまでお待ちください。
              *
とまあ、読者の期待をいやがおうでも煽ってくれます。繰り返しますが、私などはこの巻だけで「え、ウソ!!」なんて言ってしまいましたから、二巻頭、三巻頭、またその先では、きっと卒倒しちゃうんじゃないかな、なんて思います。ちなみに、なんで「二巻、三巻」ではなくて「二巻頭、三巻頭」と「頭」がつくのでしょうか。もしかしてそこには大変な仕掛けが・・・

さて、次に自分の至らなさを書いてしまいましょう。実はこのお話には、通常の人間以外に、《石工》《呪詛者》といった人ならざる者たちが登場します。その姿かたちが頭の中で実体化しないのです。どうしても擬人化してしまうのですが、どうも文章からは昆虫のようなものらしい。イリサの美しさなんて、どう読んでも野生の美少女なんですが、細かく読むとそうではないらしい。

ま、山田正紀の『イリュミナシオン』のように、作者の側に読者に伝えようという気持ちがないような、分からんやつは愚か者だ、みたいな突き放したようなところが小川にはないので、助かるのですが、でもあまりの異質さにこちらのイメージが追いつかない部分があります。ごめんなさい、です。できれば編集者さん、巻頭の登場人物案内のところで、どのような姿をしているかも補ってもらうと助かるんですが・・・

というわけで、まさに乞うご期待の幕開けでした。そうか、ユレイン三世の圧政って・・・

以下、データ的なもの。まずは目次で、上巻は

第一章 石模様の怪物
第二章 警邏艦の襲撃
第三章 恋人たち
第四章 衝突
第五章 昏き過去より

下巻は

第六章 欠けゆく夏
第七章 混迷と彷徨
第八章 臨界の一撃
第九章 史乗の底より
 一巻のためのあとがき

です。最後は主な登場人物。植民地メニー・メニー・シープの人々、って本には書いてありますが、人外のものも混じってます、はい。

セアキ・カドム:セナーセー市の医師。主人公かと思っていたら、さにあらず。もうこれだけでも意外です。

セアキ・サリエ:カドムの母で、息子のことを心配する美しく、気高い女性です。

アクリラ・アウレーリア:《海の一統》の航海長。

キャスラン・アウレーリア:《海の一統》の艦長。アクリラの父。

ユレイン・クリューゲル三世:第21代植民地臨時総督。臨時、っていうところがミソです。孤独な独裁者で、極めて横暴です。

ライサ・ザリーチェ:軍事警察総監でサディスト。30代の美女で、肉体派。映画にしたら、もっともエロい存在で、杉本彩を思ってもらえばいいでしょう。

エランカ・キドゥルー:植民地議会議員。正義派の無垢な美少女を思ってもらえばいいです。世の中のありかた、政治のありかたに疑問を抱き、己の理想に向かってまっしぐら。自民党の議員には絶対にいないタイプです。

ラゴス:《恋人たち》のリーダー。ちなみに、《恋人たち》というのはアンドロイドで、セックス奴隷というか、吉原の花魁みたいなもの。もちろん、政府公認です。彼の存在は、けっこう重要です。

イサリ:《呪詛者》。石模様の怪物として登場します。私は小型のエイリアンだと思って読んでいたんですが、実は・・・

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紙の本

天冥の標 1下 メニー・メニー・シープ 下

謎がいっぱい、というか、何が謎なのかもまだよく分からない

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

 セナーセー市がついに臨時総督に叛旗を翻すも、軍警の圧倒的物量の前に敗北してしまう。地下に潜って革命活動を続けるアクリラ、カドム、エランカは、ラゴスやイサリの助けを借り、その他の市を巻き込みつつ、軍警の内部分裂、そして臨時総督の捕縛を目指すのだが。
 …という感じで、人間が争う感じで話が進んでいくなあ、と思っていると最後に話はとんでもない方に向かう。本を読むにしても、自分が人間だという前提からはなかなか脱却できないものだと痛感した。描写の割合とかを考慮に入れれば、単なる脇役で終わるはずはないんだよね。

 情報の断片は無数にあるとしても、それを再構築しストーリーを作るのは個人であり、そのストーリーは個人の常識の幅に依存せざるを得ない。例えば、遺跡を掘り返して何か人工物が出て来たとして、それが何に使うものかを推測するのは考古学者である。そして、その推論がある程度確からしいと考えられるのは、それを利用したのが自分たちと同じ種族であり、同様の思考形式を持つという前提があるからだと思う。どんぶりの様な土器が出てくれば何か水ものを入れたのだろうと想像するのが人間で、それ自体が食糧だったとは考えもしないだろう。
 全10巻の予定で、2巻も3巻も話はあさっての方に飛ぶらしいので、全くどういう物語になるのかは分かりません。

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紙の本

天冥の標 2 救世群

紙の本天冥の標 2 救世群

2010/09/21 20:42

予想外の展開です、っていうかこれって何よ、前の巻とどうつながる? っていう感じ。で、この少女が大人に恋する、っていうのが好きなんです、わたし・・・

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

現在、私がもっとも注目しているSF作家が小川一水です。私としては小川描くところの女性に共感を覚えるのですが、男性作家と知って驚いたばかり。で、その小川が自信を持っておくるのが全10巻になるという「天冥の標」シリーズです。その小川は第一巻『天冥の標』の下巻お終いについている「一巻のためのあとがき」で、
              *
 はい、いかがでしたでしょうか。天冥の標、第一巻。
「ちょ、おいィ!?」と叫んでいただけましたか。これはそういう本です。
 いただけなかったら申し訳ありません。二巻頭、三巻頭、またその先では、きっと叫んでいただけると思うので、それまでお待ちください。
              *
とまあ、読者の期待をいやがおうでも煽ってくれたわけです。あえて「二巻頭」と断る点が立派というか、大変だなと思います。今回はその「二巻」なわけですから、以前の小川の発言を知る物は「頭」で叫ぶことになるのだろうか、なんて思いながら読むわけです。ちなみに、鳥頭の私はこの評を書くまでは過去の経緯をさらりと水に流して、というか忘れて読み始めて、でもやっぱり「おお」と呟いてしまいました。

要するに、前回と全く話が繋がっていない(ように見える)。セナーセー市の医師セアキ・カドムも、第21代植民地臨時総督ユレイン・クリューゲル三世も、軍事警察総監でサディスト、30代の美女ライサ・ザリーチェも、《石工》の小隊長クレヴも、美少女植民地議会議員エランカ・キドゥルーも、《恋人たち》のリーダーのラゴスも、《呪詛者》のイサリも出てきません。だいいち、時代が西暦2803年から201X年と800年も遡っています。しかも登場する多くが日本人。

え、なに、これ? でも、「叫び」ではなく「呟き」で終わったのは、すでに島田荘司の全12巻になるといわれている Classical Fantasy Within の第一部と二部、二部と三部の間でこれに似た状況に出会っているからです。しかも、です。前回は話の流れを読むのに苦労しましたが、今回は嘘のように快調に読み進むことができます。理由は単純、ついこの間まで日本でも騒いでいたパンデミックが話の核にあるからです。意味合いは違いますが宮崎県の口蹄疫騒動を思ってもらってもいい。カバー後ろには

西暦201X年、謎の疫病発生との報
に、国立感染症研究所の児玉圭伍
と矢来華奈子は、ミクロネシアの
島国パラオへと向かう。そこで二
人が目にしたのは、肌が赤く爛
れ、目の周りに黒斑をもつリゾー
ト客たちの無残な姿だった。圭伍
らの懸命な治療にもかかわらず
次々に息絶えていく罹患者たち。
感染源も不明なまま、事態は世界
的なパンデミックへと拡大、人類
の運命を大きく変えていく――す
べての発端を描くシリーズ第2巻

とあります。一気に読み終わることができる作品なので、内容紹介はここで止めて登場人物を少し詳しく紹介しましょう。まず児玉圭伍です。国立感染症研究所。使命感に燃える31歳の独身の医師で、考え方もしっかりしていて、職業柄女性にもてます。同僚で恋人だった華奈子と分かれて以来、多くの女性と関係を持ちますが、殆どが遊びで、今も華奈子のことが気になり、自分の行動にどこか後ろめたさを感じています。

圭伍の元カノ・矢来華奈子も国立感染症研究所で働いています。31歳という自分の年齢を意識し、魅力があるうちに楽しもうとする恋多き美女ですが、仕事にかける情熱は圭伍に劣りません。性格は開けっぴろげで、言いたいことは隠さず、怒れば相手が男でも殴ってしまう気の強さがあり、そのせいで圭伍との恋愛は長続きしませんでしたが、仕事の上では互いに信頼しあって一緒に仕事を続けています。

圭伍・華奈子の上司にあたるのが国立感染症研究所社会防疫部長の柊武雄です。権力志向が強く、駆け引きが上手で人を将棋の駒のように扱います。当然、根は優しい、ということは全くなく、自分で責任を取らないように立ち回り、部下たちを利用してなんら痛痒を感じません。よく役所の奥のほうに座ってなにかやっている役人や、国会などで答弁していた官僚のような冷血漢です。

パラオにいた人間でいえば、まず檜沢千芽の名を一番にあげなければならないでしょう。大手証券会社社員の父・英継40歳と母・光穂39歳の娘で17歳、当然、美少女です。そのせいで、学校でも大勢の仲間から信頼を寄せられますがが、その性格の素直さや美貌に嫉妬する人間もいます。家族で出かけたリゾートで罹患し、両親は死亡、本人も死線をさまようことになります。

もう一人が、モントリオールのハイスクールの学生フェオドール・フィルマンです。祖父セレスタン・フェルマンが資産家だからというだけではないのでしょうが、育ちの良さを体現するように初々しく、おおらかな性格のお坊ちゃんです。しかも頭がよく、自分の立場をよくわきまえ、それでいてチャレンジ精神も好奇心も旺盛で行動力があります。あまりに出来すぎていて、かえって魅力が感じられなくなるのが不思議なくらい。フェオドールもですが、病気が蔓延するリゾートで発見された黒人ジョブも重要な役割を果たします。

檜沢千芽について、彼女に嫉妬する人間もいる、と書きましたが、嫉妬というより憎んでいるのが紀ノ川青葉です。千芽と中学・高校と同じ学校に進みましたが、中学生のとき千芽と対立し、その後も関係は修復していません。彼女はパラオではなく、日本国内にいましたが、のちに重要な役割を果たすことになります。

最後はデータ篇。多分、このシリーズ全ての Cover Illustration を担当することになるのが富安健一郎、Cover Design は岩郷重力+Y.S です。目次を写せば

 序章
第一章 南海の邂逅
第二章 冥王班
 断章二
第三章 ネクター
第四章 エンクロージャー
 終章

となります。本を読み終わった長女は、矢来華奈子のことが気に入らなかったそうです。性に奔放な美しいキャリア・ウーマンというのが嫌いで、むしろ檜沢千芽の若さ溢れる情熱のほうに共感を覚えるそうです。私は好きですね、この小説における男と女の関係。何を言いたいのか、直接、本を読んで確かめてください。あなたは華奈子派? それとも千芽派? もしかして青葉のファンだったりして・・・

ちなみに、評を書きながら、あれ、どこかで似たような話を読んだような気が、と思ってチェックしたら井上夢人の新作『魔法使いの弟子たち』がそうでした。似て非なる話ではありますが、ともに読む価値十分のエンタメです。

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紙の本

天冥の標 3 アウレーリア一統

紙の本天冥の標 3 アウレーリア一統

2010/07/10 20:19

同じ亜種でありながらも違う境遇

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

 2巻の出来事から約300年後のこと。
 小惑星帯に成立した国家の一つであるノイジーラント大主教国の主教の一人であり、強襲砲艦エスレル艦長でもあるサー・アダムス・アウレーリアは、海賊討伐任務の捜査の一環として救世群の居留地である小惑星に向かう。
 抑圧され、資源もない小惑星まで追いやられた救世群連絡会議のメンバーたち、特に議長のグレア・アイザワは、冥王斑患者達を阻害した人々を恨んでいた。その恨みを晴らすために、かつて滅びた小惑星国家が発見したという、凄まじいエネルギーを持つ木星遺跡ドロテア・ワットの資料を入手したのだが、その情報を海賊に横取りされ、アダムスがその追跡を行うことになった。

 日本特定患者群連絡医師団の瀬秋樹野とそのAIフェオドールを同伴させ、海賊艦ナインテイルの調査を行っていたアダムスたちは、その過程で強烈な反撃を受け多大な被害を受ける。この闘争の行方はどこにたどりつくのか?

 1巻と2巻の人間関係の流れがおおよそ明らかになり、全体の見通しがだいぶ良くなってきたように思う。
 生まれながらにして迫害される立場である救世群と、<酸素いらず>という改造人間ながら武装艦を駆り海賊を駆逐する治安機構であるアウレーリア一統を対比軸とすることで、300年経っても強まるばかりの恨みの構造と、それを変えることのできない政治体制みたいなものが描き出される。

 読んでいる時、何となく「導きの星」を思い出した。

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電子書籍

天冥の標IX PART2

電子書籍天冥の標IX PART2

2016/11/05 10:52

数々のシーンに感無量

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:やきとり - この投稿者のレビュー一覧を見る

世界の真の姿を知ったカドム達一行は、苦難の旅の末メニーメニーシープへの帰還を果す。咀嚼者との戦闘状態にある新政府エランカ大統領との会見で彼等は自分達の置かれた状況と本当に戦うべき敵を語るのだが、、、。海の一統、カルミアン、救世群、恋人たち、地球軍。ヒトとヒトでない人々は「真実」という驚愕の苦い事実を前に恩讐を越えて一つになることはできるのか!

本巻の見どころは用意された数々の謎(伏線)を主人公達が知り得た時、どう向き合い対処して行くのかがそれぞれの立場で克明に描かれている点にある。ある者はその事実に慟哭し、またある者は沈黙する、そしてまたある者は世界を正しく認識し前へと進み出す。巻数を重ねて来たシリーズ物だからこそ出せるシーンの連続にやっとここまで来たよと感無量になってしまった。

また最後に用意された新たな展開に本シリーズのテーマの一つである、番い殖えて行くという生物としての本能と進化が見て取れる。最終巻の予告題名「青葉よ、豊かなれ」もそれっぽいしなぁ。まあ、どちらにしても七年という歳月をかけて紡がれてきた物語りも残すところあと1巻(複数巻)。残念ながら刊行予定は来年2017年ではなく18年とのコト。楽しみに待っております。

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紙の本

天冥の標 2 救世群

紙の本天冥の標 2 救世群

2016/10/18 04:40

表紙のモチーフは野戦病院? これ一作でもパンデミック小説として十分楽しめるけれど、一作目を読んだ方がキーワードに盛り上がる!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る

一作目『メニー・メニー・シープ』のあと、結局すぐに読んでしまいました・・・。
時代は一気に遡って西暦201X年、舞台は現代の地球。 国立感染症研究所所属の医師である児玉圭伍と矢来華奈子は、謎の疫病が発生したとの知らせにパラオへと出発。
二人の目の前に横たわるのは、肌が赤く爛れた上に目のまわりに黒斑が出た、世界各国からのリゾート客たちの無残な姿。 大半が死体となっていたが、わずかに息がある人々も二人や少し遅れて駆けつけてきたWHOの医師たちの懸命な治療にもかかわらず次々に死んでいく。 何が感染源なのか? 勿論治療法もわからないまま、この疾病は世界各地でパンデミックを引き起こす・・・。

シリーズに関係なく、これ一冊単独で“疫病パンデミックもの”としても読めるのでSFが苦手な方にもお薦め。 川端裕人『エピデミック』との比較も一興。 しかし『メニー・メニー・シープ』を先に読んでいれば出てくる言葉に「あ、あれだ!」と気づくことができるからより面白い。 ここから宇宙叙事詩が始まるというか、人類の大きな変換点なのだと思うとほんとに何がきっかけになるかわからないものです。 この疾病は通称“冥王斑”と名づけられるが・・・そこもタイトルにかかってますか?

もし、現代の日本で致死率の高い伝染病がアウトブレイクしたら・・・という仮定のリアルな提示になっていることも結構おそろしい。 何年か前にあったSARSや新型インフルエンザのときの騒ぎどころの話じゃないことは想像に難くないよ・・・(マスクをしている人・していない人との違い、咳き込んでいる人への殺意のような視線など、あの排他的な空気ははっきり覚えている)。

そんな中でも私は、冥王斑のキャリアとなってしまった(感染してからくも回復したが、ウィルスが体内から消えないので隔離されてしまう)女子高生・千茅と、学校でのお互いの印象は最悪だったのに、結果的に彼女といちばんの友人になる青葉との友情に泣いてしまった(女の友情に弱い私)。 青葉は感染していないので、二人の気持ちだけではどうにもならない事態が発生するんだろうなぁという予感もまた涙を誘う(実際、その通りになったし)。

あぁ、ここで人類という種の欠陥があらわになって、いろいろ変遷を辿るのだろうに、また『メニー・メニー・シープ』で同じような問題に突き当たるのか・・・と、未来を先に見ているのに、過去にも同じものを見る。
それってなんだか、人類が滅亡することよりも絶望的な感じがする。
そして早速、第三部にも手をつけてしまいました・・・次の舞台は西暦2310年ですよ。
やはり登場人物には感情移入してはいけないらしい(2014年1月読了)。

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紙の本

天冥の標 1下 メニー・メニー・シープ 下

小川一水のライフワーク、スタート!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る

どこまで読んだんだっけ、と上巻をぱらぱらめくるだけのつもりだったが、しっかり読んでしまったよ・・・<ライフワーク>と帯に書かれると期待は高まるのだが、同時に「いつ終わるんだろ、そもそも終わるんだろうか」という不安も同時に。 これは田中芳樹と栗本薫の後遺症です。
そんなわけである程度続きが出てから読もうかなと思い、ため込んでおりましたが・・・思いのほか順調に続きが出ているんですよ!
だからもう手をつけてもいいかなぁ、と手に取ったらもう引き返せない。

物語の舞台は西暦2803年、植民星メニー・メニー・シープ。
今年で入植300周年となるが、臨時総督のユレイン三世は、地中深くに眠る植民船シェパード号の発電炉不調を理由に植民地全域に配電制限などの弾圧をし、住民たちは反感を強めていた。 そんな折、東の端セナーセー市に住む医師カドムは、<海の一統>である親友のアクリラから緊急の呼び出しを受ける。 ある地域で謎の疫病が蔓延しているというのだが・・・というのが話の冒頭。

そもそも何故移民船シェパード号がこの地に来ることになったのか、地球からどれくらい離れているのかなどについては一切不明。 まぁそれは続巻で過去が描かれることになるようだからいいのですが、そういうことを差し引いても、読んでて何度も「うひゃーっ!!」ってなりました。
これはなんなの、今度も登場人物にあまり感情移入してはいけないってこと?
メニー・メニー・シープの政治体制はどことなく同じ作者の「復活の地」を思い出させるものがあって懐かしかった。 単純な悪役や正義のヒーローが登場しないのもよい。

だがしかし、「ここで終わるかー!」というところで終わる。
作者あとがきにも、
<「ちょ、おいィ!?」と叫んでいただけましたか。 これはそういう本です。>
とあって、はい、出た言葉は違うけど叫びましたとも・・・。

ちなみにこの本を買ったのは2009年9月、発売してすぐです。 いくらある程度続きが出るまでためておこう、と思っていたとはいえ、すごく出遅れ感が・・・リアルタイムで読んでいた方が新刊が出るたびドキドキ・ワクワクできたんだろうか?!
耐えられなくて、引き続き「天冥の標2 救世群」を読んでしまっている・・・(2013年12月読了)。

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紙の本

天冥の標 9PART1 ヒトであるヒトとないヒトと PART1

伏線の回収が見事

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投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る

小惑星ごと移動しており、追っ手もいる上、向かう先も交戦中。内部も外部も緊急事態。これだけお膳立てされれば盛り上がらないほうがおかしい。この著者だから回収忘れやアンチクライマックスはないだろうが、これだけの大長編、きっちり終わらせて欲しい。次巻に期待。

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紙の本

天冥の標 8PART2 ジャイアント・アーク PART2

希望が垣間見える

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投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る

part1とはうってかわってすごく面白い。ピンチの組織をみんなのチカラで立て直させる話は小川一水の真骨頂。状況は絶望的だが、希望が垣間見えるのが物語を読み進める原動力になっている。続きも楽しみ。

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電子書籍

天冥の標 VIII ジァイアント・アークPART2

とうとう既刊分読破してしまいました

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投稿者:白髪雀 - この投稿者のレビュー一覧を見る

とうとう最新刊に追いついてしまいました。どの巻でレビューすれば良いか不明です。
全10巻の予定と聞いており8巻まで読むうちに9巻が出るのではと期待しておりましたが、まだ何時出すのかというアナウンスもないままに既刊は読了です。過去の発刊ペースなら5月ぐらいに9巻が出るはずなのに。

メニーメニーシープという太陽系外植民地での出来事で始まった第1巻。希望に満ちてハッピーエンドで終わるのかと思いきや、いきなり“咀嚼者”の登場で、主人公をはじめ大方の登場人物が死亡ないしは行方不明で終わった第1巻。
2803年が舞台であった物語は第2巻で2015年に巻き戻る。第1巻とのつながりが掴めないまま、冥王斑という凶悪な伝染病のパンデミック(世界敵規模での流行)を描く。
巻を進めるとともに見えてくる、天冥の標の世界観。物語の舞台は太陽系だが描かれる事件は全宇宙を巻き込み太陽系誕生以前から続いている抗争である。なにやら平井和正の幻魔大戦を髣髴とさせる。
第1巻を構成する登場人物(種族)も巻が進む毎に登場してくる。

第8巻では舞台、時代は第1巻に戻る第7巻までの構成を踏まえ、もうひとつの(もうふたつのか?)メニーメニーシープが語られる。

長い長い物語ではありが、毎巻ごとに新たなアイデア、展開が盛り込まれ飽きることがないのである。

久しぶりに新刊を待つことになってしまった。

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紙の本

天冥の標 6PART1 宿怨 PART1

歪んでいく歴史

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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

西暦2499年、地球産遺伝子のプールとなっている人工宇宙島群スカイシー3にやってきたイサリ・ヤヒロは、準惑星セレスからスカウトの活動でやってきたアイネイア・セアキに救助される。イサリはおそらく生涯ただ一度の外遊で「星のりんご」を一口食べてみただけだったのだが、正統な方法で自由に動くことが出来ない彼女は、一行から勝手に抜け出し、迷子になって凍死寸前の状況に陥ってしまったのだ。
 その理由とは、彼女が救世軍連絡会議議長の娘、つまり冥王斑のキャリアであるということ。タレットという、レーザー照射による落屑の殺菌を行う装置を装備してはいたものの、直接接触すれば感染してしまう。イサリ・ヤヒロはそんな状態で外を出歩いていたにも拘わらず、アイネイア・セアキはそんな彼女を助け、彼女のために「星のりんご」のある場所まで、三日をかけて案内してくれたのだ。

 だが、彼女が受けた善意は、彼女の居場所である救世軍では秘匿されなければならない。救世軍は、非染者に対する敵意を糧に、自分たちのコミュニティをまとめ、苦しい生活を生き抜いていたのだから。次期議長候補であるイサリは、それを無視することは出来ない。
 一方、セアキの母であるジェズベル・グレンチャカ・メテオールは、ロイズ非分極保険者団参加のマツダ・ヒューマノイド・デバイシズの筆頭執行責任者であり、そんな救世軍内部で起こっている破壊活動の兆候を察知する立場にあったのだ。

 その心の赴くままに外宇宙を目指すアウレーリア一統や、冥王斑となった《酸素いらず》の一派、先鋭化していく救世軍連絡会議と、それを支える、列聖された檜沢千茅の改ざんされた言行録など、これまで読者に提示されてきた事実が歴史と成り、それが未来を紡いでいく様が示される。
 巻末に既刊の用語集が収録されており、これまでの経緯を想起する参考となるだろう。

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紙の本

天冥の標 5 羊と猿と百掬の銀河

現在の出来事は過去に起因する

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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

西暦2349年、ドロテア・ワットの事件から約半世紀が過ぎた小惑星パラスの地下で、タケカズ・バンダイは娘のザリーカと二人で、農業を営んでいた。貧しく、苦労の連続で、都市の人間からはバカにされる仕事。しかしそれを選んだことに後悔はない。そんなある日、タックは、地球から来た学者のアニー・ロングイヤーを紹介される。彼女を居候させて欲しいというのだ。彼にはその要請を断れない理由があった。
 一方、その六千万年も昔、ある銀河のある惑星の原始サンゴ虫の上に、とある意識が誕生した。初めそれは茫洋としたものだったが、次第に様々なことを学び、自らをノルルスカインと名乗る様になる。そして様々な出会いを経て、自らを知り、希望を持ち、やがて絶望することになる。そこから物語は始まるのだ。

 どんどんと全体像が明らかにされていっている訳だが、ちょっとだけ、レンズマン・シリーズ「三惑星連合」を思い出した。文章力ではこちらが遥かに上だが、設定の構成がちょっとだけ似ている。
 24世紀の出来事と、六千万年前からその時点につながる出来事を、交互に並行的に語っていく構成となっており、終盤に進むにつれて様々な要素がつながっていくことが分かる。そのつながりは、既刊の要素とのつながりでもあるし、今巻で描かれた要素とのつながりでもある。

 そうして全体の伏線を回収しながらも、厳しい環境の中でありながら、希望を失わず、ひたむきに自分の仕事に打ち込み続ける男と、そういう世界から逃げ出したいと感じている少女という、時代を問わず繰り返されてきたであろう光景を併せて描いているところが良い。

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