カルニヴィア みんなのレビュー
- ジョナサン・ホルト, 奥村章子
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紙の本カルニヴィア 3 密謀
2016/10/13 04:31
もしかしたら、ほんとの主役はヴェネツィアという街だったのかも。
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「あ、そういえば『カルニヴィア』の3作目出たんだよね・・・忘れてた」ということで取り組みました。
2作目を読んだのは一年以上前だったか・・・メインの登場人物はさすがに覚えていたのですが、その人物の背景(正確にはダニエーレが幼少時に誘拐され心身ともにひどいけがを負ったこと)をすっかり忘れていたという・・・。
でも今作でその謎にかなり迫っているので、忘れていたおかげでハラハラする気持ちが強まったと言えるでしょう。 何がさいわいするかわかりませんね。
ヴェネツィアの海岸で、喉を掻き切られ、舌を抜かれた男性の遺体が見つかる。 フリーメイソンの秘密の儀式に関係ありそう?、とカテリーナに捜査依頼が来る(誰が会員なのかわからないので、明らかに会員ではない人物として)。 ホリーはアメリカに一時帰国していたが、「もしかしたら自分の父は病気で死んだのではなく殺されたのではないか?」という疑惑を抱かせる書類を手に入れ、真相を調べるためにイタリアに戻ってくる。 そしてダニエーレは、自らが運営してきたSNS<カルニヴィア>から手を引こうと考えていた。
だが、絶対の匿名性と個人情報保護が売りの<カルニヴィア>を利用して、テロ攻撃が仕掛けられていると知ったダニエーレは対処を開始。 カテリーナとホリーのそれぞれの捜査・調査もいつしか同じラインに辿り着き、イタリアを利用するCIAの姿が浮かんできて・・・という話。
2作目からこの3作目までの間に時間が少し経過しているようで、三人を取り巻く環境にも多少の変化があり、三人ともしばらく会っていなかった感。
それでもカテリーナの“情熱のイタリア女”振りは健在でした(あー、でもそれって絶対に痛い目に遭うパターンだよ、と思っていたらその通りになってしまったので、恋とはどんな人間にも危機感を薄めさせる効果があるようです)。
最終的に、なにか含むものを持っているように見えていた人がやっぱりあやしかったとか、コンピュータ(というかインターネット)社会の危うさをつくイスラム原理主義者たちによるテロとか、構成要素としては特に新しいものはないのですよね。 ただ、友情をとるか法をとるか、みたいな葛藤があればもっと盛り上がったかもしれないけれど、そのへんは意外にドライというか、みなさん大人でした・・・。
3作を通じて三人はそれぞれ自分の進むべき道を認識するのだけれど、イタリアや欧州全体が抱える闇は結局そのまま、という。 なんだかすっきりしない幕切れだったけれど、現実に近いものを描こうとしたらそうなってしまうのかも。
ただ、三人はそれぞれの選択に後悔していない。
多分、それが重要。
紙の本カルニヴィア 2 誘拐
2016/10/09 05:31
連合国から見るイタリアの立場は日本に似ている?
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
引き続き、『カルニヴィア』三部作の2作目。
でも、最初に1作目が(早川書房としては)大々的に宣伝されたときに受けた印象は、もっとドロドロとしたサイコスリラー的なものだったけれど、実際はヨーロッパの歴史の闇の深さとか、そういうものだったとは。 権謀術数は、日本人の不得意とするところですなぁ、としみじみする。
今回はイタリア国内にアメリカ軍の基地をこれ以上拡大しない・させないという運動をするいさかか過激なグループが出てきます。 まるで、この国のようではないですか。
反対運動が巻き起こるイタリア駐留米軍基地の建設現場で年代物の人骨が発見される。 鑑定結果によれば、第二次大戦中に行方不明とされたパルチザンのものと判明。 一方、米軍士官の娘・ミアが誘拐され、犯人は基地建設反対を訴えながらオレンジ色のジャンプスーツを着せられたミアをグアンタナモ刑務所でおこなわれた“アメリカの法律では拷問と見なされない拷問”にかけ、ネット上で公開する。
前作で仲間意識が強まったイタリア憲兵隊のカテリーナとアメリカ軍人のホリーは、特殊なSNS“カルニヴィア”の創設者ダニエーレにまた協力を要請し、ミアの一刻も早い発見に努めようとするが・・・という話。
相変わらずリアル一辺倒ではなく、かなり荒唐無稽が入っています。 でも扱うテーマが重たいから、これくらいがいいバランスなのかも。 他者に心を閉ざしまくるダニエーレが、ホリーに出会ってからちょっとずつ変わっていこうとしていくのも微笑ましいポイント。 更に、カテリーナのイタリア女ぶりも自覚のない無神経な方向に広がっていて面白い。
正直なところ、「グアンタナモの件はまだ片付いていない」ということにびっくりする。
あれから何年たっているんですか!
けれどそれがヨーロッパとアメリカの関係や、共産主義と資本主義の対立(イタリアもかつては独裁国家だったわけで、その前は別々の国だった)、キリスト教圏とイスラム教圏の(日本人にはいささか理解が難しい)複雑で絡み合った問題に、読んでいて眩暈がするほど。 こういうとき、「日本が島国でよかった!」とか、「国境があるとはいえ所詮口約束で引いただけの線。 地つづきのところは大変」とか、中学校の歴史の時間に思ったことが今も頭をよぎる(勿論、日本には日本の大変さもあるのですが、ヨーロッパの血ぬられ具合に比べればまだましなんじゃないかと)。【2015年4月読了】
紙の本カルニヴィア 1 禁忌
2016/10/09 05:23
ハヤカワミステリ創刊60周年記念作品!
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ハヤカワミステリ創刊60周年記念作品」、と銘打たれて刊行されて以来、ずっと気になっていたのだけれど・・・三部作だというのに1しか出ていない(どのくらい待たされるのか不明)、しかもうちの本棚に並べにくいポケミスサイズでの刊行ということで、文庫化を待っていましたが・・・しばらく前に2が出たので、手を出してみました。
幾何学性を持ちつつ、なんとなくおどろおどろしさもある表紙。
ちなみに、新刊情報で書名だけ見たとき、『カルヴィニア』と読んでしまった私は、しばらく間違えて覚えてました。
舞台はイタリア・ヴェネツィア。 ある教会の石段で女性射殺体が発見された。
しかしその遺体は女性には許されない司祭の祭服を着ていて、腕には奇妙な模様のタトゥーが。 イタリア憲兵隊の大尉カテリーナは初めて携わる殺人事件として捜査に参加する。 一方、イタリア内の米軍基地に赴任した少尉のホリーは、旧ユーゴ内戦時の記録の公開を求める女性と面会。 しかし、資料を探している間にその女性が死んだと知って、ホリーは・・・。 特殊なソーシャル・ネットワーク・サービス“カルニヴィア”の創設者ダニエーレは、事件の鍵が“カルニヴィア”内にあると知り、カテリーナとホリーに協力しながら真実に迫る・・・という話。
まったくタイプの違うカテリーナ(典型的イタリア女性。 グラマー&セクシーで自己主張が激しい)とホリー(米軍内の女性軍人らしく自己抑制をしすぎるほどしてしまう)が初対面で相手にいい感情を持たなかったこと、しかし調査の過程で互いの知っていることをさらけ出して事件解決に臨もう、となったときに、自分にない面を相手が持っていることが尊敬の念に変わっていく感じが、すごく面白い。 男性と違って、大人の女は相手のいいところをすんなり認めて態度にも出すからね!
あとがきによれば本作は『ミレニアム』三部作に影響を受けているとのこと。 確かにリスベットのような強烈すぎるキャラクターはいないですが、<虐げられた女性たちの物語>を女性たちが解決に導く、という構図は確かに同じかも。
“内的狂乱”というのがひとつのキーワードで、ボスニア問題だけでなくルワンダ問題にも説明がつきそう。 とはいえ、キリスト教徒とイスラム教徒のようにまったく文化・慣習が違うからという理解不足による闘争ならまだ理解できなくもないが、同じ土地で隣人として生活していた相手に対して“民族浄化”という刀を何故振るえるのか、理解できない。 差異がないからこそ優越感を持つためか? 学校のいじめと同じ?
・・・むなしすぎる。
だけど、イタリアにもいくつもの米軍基地があると知って驚く(日本同様、国連規定の敵国だから?)。 イタリアには警察機構がいくつかあるということは知っていたけども(憲兵隊はそのひとつ)。
知らないことはいっぱいあるなぁ、と愕然とするのであった(2015年2月読了)。
紙の本カルニヴィア 3 密謀
2016/03/28 14:13
3部作、終わって残念
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投稿者:よしおくん - この投稿者のレビュー一覧を見る
やっぱり、この3部作は一級のエンターテイメントだと思う。イタリアにおける米軍の存在。さらには歴史的事件へのCIAの関与。日本だって他人事じゃないよなぁ。そういう意味でも面白かった。それにしても、本当にこれで終わり?ホリーやカテリーナ、ダニエーレに会えなくなるのはちょっと寂しいなぁ。ラストシーンだって、思わせぶりな感じもあるし、ダニエーレも真っ当になってきたし・・・
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