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破裂(上) みんなのレビュー

  • 久坂部羊 (著)
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みんなのレビュー3件

みんなの評価4.2

評価内訳

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3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本

紙の本破裂 上

2005/05/22 17:27

新たな医療ミステリーの傑作

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:jis - この投稿者のレビュー一覧を見る

医療裁判の困難さは、原告が素人であり被告が玄人である事である。専門的な用語を理解するだけでも相当の時間と理解力が必要である。だが、そこに同じ医者が原告側につくとどうなるか。この物語は、医療裁判を横軸に、少子化・年金・安楽死など高齢化社会での問題を縦軸に、込み入った事件を挟みながら進行していく。
事の発端はこうだ。元新聞記者のジャーナリストが、医療問題をテーマにし「痛恨の症例」を取材する過程で、大学病院の麻酔医師江崎に突き当たる。自身も現在の医療のあり方に矛盾を感じていた江崎は、協力するようになる。そこに一つの許すべからざる事件が起こる。
僧帽弁置換術で手術した患者が5日後に急死した症例に、医療ミスだったという内部告発があった。患者の娘枝利子が裁判を考えるようになる。そこに江崎が協力を約束し、弁護士の露木とジャーナリストの松野の原告体制ができあがる。被告は大学病院のエリート助教授香村。
どんでん返しが待ちかまえている裁判と、この香村が開発したペプタイド療法を利用しようとする厚労省。その実質的導入企画者である佐久間が物語に参入してくる。このマキャベリー官僚の意図するところは、これからの超高齢化社会を是正するのにどのようにして、高齢者を満足に天国に導くか。副作用のあるペプタイド療法による「ぽっくり死」を夢想するまでになる。
もう既に高齢化社会なのに、われわれは殆ど気づかない。身近に介護する対象が出てきて急に落ち着かなくなるのだ。この物語は、現場を知り尽くした医者の作品であり、これからの医療や老人社会を俯瞰してくれる。一度でも親を介護したものなら、現在の医療制度の矛盾や不満に突き当たらないのは珍しいことである。普通の老人が、満足に畳の上で死ねるためには何が、どう必要か。
次の作品を心待ちにしている。

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紙の本

紙の本破裂 上

2007/10/22 20:42

弱肉強食or窮鼠猫を噛む。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

少子高齢化社会のこの日本で連日ニュースになっているのは年金問題と介護問題であり、いずれも社会・文明の名のもと不自然に進化した生態をもつ人間の宿命である。「若肉老食」と揶揄されるほど高齢化社会が進む日本で、年金や福祉のありようを政治に問質す世論は多いが誰も「高齢化社会をなくそう」というものはない。それは何故か?それは即ち寿命の短命化・・・本書の言を借りれば老人は「PPP=ピンピンポックリ」死ぬことを推奨される禁句だからである。
病院という、人間が生から死、揺りかごから墓場まで世話になるこの巨大な封建国家。医療ミスの隠蔽というありがちな幕開けにこの国民=医者たちが「人間」or「医者」として揺らぎ苦悩する様が如実に描かれ、その医者に過大な期待を無責任に押し着せるしかできない患者の弱さが訴えられる。さらに官僚(厚生労働省)からPPPの具現化による日本若返らせプロジェクトが目論まれ、国は個を全てを飲み込んでいく・・・
前半は一ジャーナリストの執筆資料集めと医療ミスの隠蔽の裁判という個人的な対決だが、いつの間にか国家的人口・年齢統制という巨大な流れに飲み込まれてる。同じ「心臓破裂」がテーマであるにもかかわらず、だ。

国民一個人の病院での不審死が国家に影響を及ぼすことは無いが、官僚一人、国の一声が発する声は全国民に影響を及ぼすのである。それが病院という終生お世話になる媒体を利用すればなおのこと。
また著者は正義感に燃えるジャーナリスト松野に何度と無く「普通の感覚」を問わせている。「医者は一人前になるまでに3度人を殺す」という言葉に憤りを感じ、医者も人間であることや量の実体などをいくら説明されてもそんな言い訳は認めない、人の死を冷静に受け止めている若き医者の失態を許せない、と憤るその感覚は普通なはずだ。そう松野はくり返す。そしてくり返されるたび「でも実際しょうがないんじゃないの?」と医者サイドに同調している自分にふと驚く。ああ、私はいつの間にか医者に過剰な期待すら出来ない感覚しか持ち合わせていない人間になっていたのか、と。

私の心臓はまだ破裂しない。おそらく安楽死などもこの日本では認められないだろう。しかし・・・。破裂はしなくとも思考はとっくに麻痺をきたしているのかもしれない。

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紙の本

紙の本破裂 上

2011/05/06 12:35

問題性か娯楽性か―考えさせられることと楽しむことのあいだ

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る

作者は現役ばりばりの医者らしい。それが読みようによっては暴露的な『廃用身』で衝撃デビューした。役に立たない身体の部分を切り取って捨てる、という「医療」を開発した医者をめぐる生々しい話である。老人医療が主に絡むし、タブーともいえる重い話題だから、一度読み出したものの息苦しくなって中断した。内容もさることながら、本気でそれが正しいと考えている「良心的な」医者の報告書、という現実と虚構の区別のつかない方法が強烈で、それも辛かった。つまりフィクションの体裁をとって入るが、真っ向から現実の問題を扱っているのである。
本書を読むに際して、宣伝のどんな殺し文句に惹かれたのかはもう記憶にない。ただ漠然と、より娯楽性が高いような印象はあったかもしれない。とはいえ、この作家だ。読んでいても恐ろしいのではないか、と恐る恐るだったが、いったん読み出すとやめられなくなって、ほとんど一気に読了した。
まだ経験の少ない作家の未熟さが見受けられないわけではない。視点の移動のバランスの悪さや、エピソードのつなぎ方、プロットにしてもモンスター「マキャベリ」がその老獪さにも関わらず、終わりはあっけないことなど。医学的知識なども、現場の知識経験に裏付けられた迫力があるが、しかしくどすぎはしないか。
しかし、この構想力、筆力には恐るべきものがある。素材は、今回も、医療ミスであり、また超高齢化社会と安楽死、というふうに重く生々しい問題なのだが、この両者を、エリートだが手術ミスの多い医者(つまり医療ミスの問題が出てくる)が、老人に活力を与えるものの危険な副作用を持つ新薬を開発する(だから老人問題が出てくる)、という設定でつないで、さらに裁判の戦いの魅力なども盛り込み、娯楽性豊かな物語をつむいでいく離れ業には驚かざるを得ない。
読み終わるのが深夜に及んだので、恐ろしい終わりが待っているのではないかと不安だったが、とりあえずその点はほっとした。そこにはある種の再生のドラマもある。恐れたようなどろどろしたことにならないのもよかった。娯楽性の高いのも救いだ。
だが、娯楽性を加味し、かつ一種のカタルシスを作り出してより読みやすく、つまりより売れるようになった分、問題の扱いが軽くなった感も否めない。
確かに、一方では、主人公らしき人物があったとしても、単純な善悪ではもちろんないわけで、だから主人公も苦しんだり、いろいろ無様な姿をさらしてもいるし、ジャーナリストのエゴも描かれている。いろんな立場、考え方が、それぞれ相対化されて、何が正しいかが決して単純な問題ではないことが示されているのは評価できる。また、モンスター的な登場人物の方法を責めるのは簡単だが、ではそれをどうするのだ、という問題は残る。この人物の考えに同調する人間は、老人のなかにもそれ以外の人間でも少なくないはずだ。いったいどう考えるべきなのか。
しかしこういう問題提起が残るにもかかわらず、やはりどこか問題が置き去りにされた感じは残る。ひとつには、それはプロットの問題で、読者としては、最初問題だったはずの医療ミスの問題が、それ自体はなんら深められずに安楽死の問題にすり換えられてしまった、という印象があるはずだ。
野心的なだけに問題はあるが、ドストエフスキーを愛読し、若いころは純文学を目指した、という作者には今後も期待できると思う。

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