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ハードボイルド/ハードラック みんなのレビュー

  • 吉本ばなな (著)
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紙の本

紙の本ハードボイルド/ハードラック

2002/05/28 09:13

切なさ満点

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あき - この投稿者のレビュー一覧を見る

ハードボイルドと、ハードラックという二作品が収められています。
まずは、ハードボイルドから…。

千鶴は、主人公の女性に恋愛感情を抱いており、また、主人公は、ただ、宿が欲しくて彼女の気持ちに応えるフリをして同棲していた。ある日、部屋を出ることを決めた主人公だが、その当日は千鶴ともなんだか分かれがたく、二人でドライブに出かける。ところが千鶴は「あなたが出ていくところを見たくない」と、ドライブ途中の車から、山奥にも関わらず降りてしまう。それからしばらく時間が経過し、千鶴とも連絡をとっていない主人公だが、ある日、一人旅で寄った宿で奇妙な夜を過ごす事となり…。

相変わらず、切なさ満点。もう、心に染み入ること染み入ること…。吉本ばななの作品って、際立って劇的なストーリーではないけれど、印象にはしっかりと残りませんか? 「これは女性にしか書けないだろう」という心情を、本当に絶妙に書ける作家だと思うんですよ。今回読んだこの話も、主人公が千鶴に別れ際に言われた「ハードボイルドに生きてね」という言葉を思い返していく様子が「この感覚、分かるな〜」と、感情移入していき、今こうして感想を書いていても、その感覚が蘇ってきます。
ああ、上手に感想を書けない自分がもどかしい…。

また、もう一作の「ハードラック」は、事故にあい、脳死の状態で人工的に心臓を動かしている姉と、その婚約者の兄に心ひかれていく妹の話です。姉は意識を戻すことは二度となく、あとは家族が、いつ覚悟を決めて、姉の心臓を止めるのか…という決断をするのみという、ズシンとした重い内容の話でした。
ハードボイルドよりも、こちらのハードラックの方が、私の心に強く残りました。誰も、自分のかけがえのない人の「命」はここまでだと決めたいわけがない。でも、それを決めなければならない時があるのかもしれない…。苦しくて哀しい話でした。

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