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電子書籍

償い みんなのレビュー

  • 矢口敦子
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みんなのレビュー4件

みんなの評価4.4

評価内訳

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4 件中 1 件~ 4 件を表示

紙の本

償い

紙の本償い

2008/10/30 16:20

心の泣き声

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:タール - この投稿者のレビュー一覧を見る

「伊達ちゃん」という通称でホームレス生活を送る、名前も過去も捨てた「男」はかつて大学病院の脳外科医として熾烈な出世レースの中にいた日高英介だった。勤務中だった日曜日、妻から子供の様子がおかしいという電話を受けたのに手を打たず、結果、3歳の子供は病死。その後、妻もまた自殺をはかって命を落とす。出世コースからもはずされた日高は、絶望から日高英介という名も医師という肩書も家もすべてを捨てて、コンビニのゴミ袋から期限切れの弁当を漁る生活をするようになったのだった。

 冒頭、日高という固有名詞を捨て、「男」という普通名詞として生きる彼の、なりふり構わずゴミを漁り酒を求める姿が哀れで、大きな悲しみを背負ってしまった彼の心の痛みが伝わる。そうでいなければ生きていられないというギリギリの苦悩が切ない。
 そんな日高の苦悩に呼応するように現れるのが、15歳の少年、草薙真人だ。彼を支配する心の空洞とも言うような底の見えない暗さが正体を隠し、その謎が、続けざまに起こる殺人事件に翻弄される日高をさらに追い詰めていく。かつて日高は、偶然にも幼い真人の命を救ったのだった。
――自分が救った命のせいで、罪もない人々の命が失われたのではないか。自分がしたことはなんだったのか。
 
 日高と真人。この二人の、絶望に支配された孤独と苦悩が呼び合う様子には、胸をつかまれる思いがする。小さな体に精いっぱいの思いを抱えて持て余し、大切なものをとりこぼしてしまった小さな生き物が、似たような思いでいるものと道端でふと出会い、互いに伸ばした触角で感じ合うような、ささやかで切ない空気に心が打たれる。
 「人の心の泣き声が聞こえる」という真人の耳に響いたのは、日高をはじめ、犠牲者や容疑者、刑事やホームレスたちの、ささやかなしあわせを求めようとして得られない切実な痛みを伴う苦悩の涙であり、それはまた、真人自身が流したくても流せない涙そのものでもある。読んでいる間、常に涙声の連鎖が終始聞こえてくるような物哀しさを感じる。

 「少年犯罪」「ホームレス」「連続殺人」というキーワードから想像できるミステリー色は確かにあるし、謎解きや犯人探しの面白さもあると思うけれど、描かれているものの中心は、家族という単位の中でどうにもならないやるせなさや絶望、その底辺に存在するはずの温かみだ。だからこそ痛いけれど、矢口敦子はそんな痛みを放置しきらず追いこまずに感動をもたらした。ミステリーというよりも、ドラマ的なストーリーを楽しめた一冊だった。

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紙の本

償い

紙の本償い

2008/08/19 12:36

だから私は生きていける

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

私は女流作家を卑下するつもりはないのだが、矢口敦子という作家は非常に女流作家らしい作家だ。
全体的に言って、情緒・主観などと理性・客観の比率において男性のそれよりも女性のほうが前者に重きを置きすぎる傾向がある。
恋愛小説ならともかく、ミステリにおいて欠点ともいえる。キャラクターの情緒に左右され、ミステリが主観と感情の中で溺れてしまう物語はリアルであること、つまり起こりうるという臨場感を殺してしまうからだ。
しかし本書におけるこの「女流作家らしさ」は必要不可欠というしかない。テーマである人間の業、生への執着は感情も主観も偏りもなくしては語れないのだ。

まずこれは己の罪に押しつぶされ厭世的日々を決め込みホームレスとなった元医者である男が、通報者となったことから刑事と親しくなり、その町の連続事件について探偵をする羽目になるという物語。
事件を追う中、悲しみの心を聞取れるという厭世的な少年と出会うが、彼は13年前男が偶然命を救った少年だった。彼と接っするうちに男は己の罪に苛まれる。わが子を見殺しに妻を自殺に追いやった過去を後悔する日々、過信から医療ミスを起こした罪の意識、そして連続事件を追ううちもうひとつ彼を苦しめる後悔が生まれることになる。男が唯一、人間としてこの世に踏みとどまるに値する行いと信じてきた出来事、その13年前に命を救った少年が、今次々と「悲しい人」を殺しているのではないかと言う疑惑である。
男の唯一の善行は、人殺しの元凶となる悪行だったのか?

罪と、後悔と、悲しみと苦しみばかりがどこにも満ちている。男も、少年も、被害者たちも刑事すらも、ヒトは社会動物、人間として存在し続ける限り何がしかの業を背負っている。そんな世界で、生きるということとは必ずしも幸福とは結びつかず、あまりに大きな絶望を味わったとき人は生存そのものを放棄する弱い生き物だ。
だから犯人は悲しみを断ち切るために、悲しい彼らを死によって救いだした。そのつもりだった。同時に己の生存そのものすら罪であり悪と死の元凶であるということを自覚しつつも、あまりに優しくおろかな犯人が私には痛ましかった。

己の過去に後悔し、己の現在に絶望し、己の存在そのものに幻滅しながら、それでも彼らはこの世に踏みとどまっている。
人間はどれほど死を乞い、いかに生を憎んでも、生きることに執着してしまう生き物である。悲しく浅ましいほどのこの執着はしかし同時に力強く、償い、許し、人を生かす力ともなるのだと私は信じる。

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紙の本

償い

紙の本償い

2004/07/16 15:48

感動のラストの爽快感!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:luke - この投稿者のレビュー一覧を見る

心に傷を負い生きるすべを無くした元脳外科医はホームレスとなり東京近郊の街へとたどり着きます。かって学生の頃に幼児誘拐を未然に防いだその地で連続殺人事件が起こっています。再会したかっての被害者であった幼児は中学生になっていました。・・・・こんな背景で物語は進行していくのです。

 人は一人では生きて行かれないし、生きていくという事は他人と関わりを持つということです。関わりは意識、無意識に関わらず無限の方向がそこにあり、良くも悪くもその結果に責任を持つなんて不可能であり、それを罪と問うことなど誰も出来ない筈です。我々の前にはいつも選択しなければならない道がいくつもあり、選択しては前に進んで行くしかないわけです。どんな基準でそれを選んでいくか、どの道が正しいのか、誰にもわからない。道標の先にあるのは彷徨。彷徨の先にあるのは道標。

 誰もが抱えている心の罪と罰。それでも生きていかなければ、だからこそ生きていかなければと深くて重い命題を抱えてミステリアスな連続殺人事件は起こります。最近のミステリーにも幾度と無く取り上げられている被害者の人権問題や心の傷と併せて読み応え十分、ミステリーたっぷりの「償い」は感動のラストまで飽きることなく引きずり込んでくれました。女性作家の場合だと男性の描き方にしっくり来ないところが間々あるものですが、そんな違和感もなく登場人物は生きた台詞で魅了します。重量級の題材を投げかけられつつも、ラストの感動と爽快感はまさに感動ものです。

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紙の本

償い

紙の本償い

2004/04/23 23:21

ホームレスの元医者と不思議な少年の物語

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ぶんこ虫 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 医者からホームレスになった男と、家族や周囲に不幸が続く少年。ふたりが出会って、巻き込まれていくのは、連続殺人や無理心中や自殺やホームレスへの集団暴行といった、毎日ニュースに出てくるような事件の詰め合わせだが、この物語は単純な犯人探しや謎解きのお話ではない。家族を失い、医療ミスの責任を取らされてホームレスになった元医師と、他人の心の悲鳴が聞こえてしまう特異な能力ゆえに、深い知性と闇のような絶望にとりつかれている15歳の少年の、邂逅とふれあいと救済の物語なのだ。
 最後まで、一気に読める。物語のラスト、ようやく前向きに歩き出そうとする主人公の姿に、しみじみとした感動を覚えた。

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