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電子書籍

血と骨 みんなのレビュー

  • 梁石日 (著)
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みんなのレビュー11件

みんなの評価4.4

評価内訳

  • 星 5 (6件)
  • 星 4 (3件)
  • 星 3 (0件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
11 件中 1 件~ 11 件を表示

紙の本

血と骨 下

紙の本血と骨 下

2010/09/24 22:52

900ページ超の暴力を前にたじろぐ長編小説

人中、人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る


 物語の端緒は1930年代。済州島から大阪へと渡り、蒲鉾工場で働く魁偉の金俊平は極道からも恐れられる猛悪な男だった。家族や親せき、複数の妾や在日同胞までを暴力によって支配し続けたこの男の壮絶な生涯を描く。上下巻合計で900ページ超の長編小説。

 感情のおもむくまま理屈の通らない乱暴狼藉を周囲にほとばしらせて生きる金俊平。
 梁石日の圧倒的な筆力が作り上げた怪人ですが、モデルにしたのは作者自身の父親とのこと。それで思い出すのは同じ作者が書いた回想録「修羅を生きる―「恨」をのりこえて」(講談社現代新書)です。こちらはまさに父親の実像を描いた書ですが、これを以前読んでいたとはいえ、「血と骨」の金俊平の破壊者ぶりにはなんとも言葉が出てこない衝撃を改めて受けました。

 また「夜を賭けて」で描かれた戦後混乱期の在日朝鮮人社会にはある種爽快なまでのバイタリティが感じられました。しかしそれはこの「血と骨」には微塵もありません。ひたすらなばかりの暴力に、金俊平の周囲の人間は逃げるでもなく支配され続ける。登場人物たち同様に、読む私もまた彼の前で立ちすくんで足が動かない思いを覚えたほどです。

 そしてその果てしなく続く暴力が生みだした最終生成物のなんと空虚で哀しいことか。
 金俊平の末路は、彼が長年月にわたって周囲に繰り出してきた暴力と同じくらいに、むなしいものです。
 そしてそれを自業自得の言葉で片づけるのはたやすいとはいえ、金俊平の息子・成漢の胸に残った、解消することのできないわだかまりを覗き見ると、なんともやりきれなくて仕方ありません。

 そんな思いを募らせるこの小説がなぜかくも魅力的なのか。
 人生のままならいさまをつきつけられるからなのか、それとも、親と子の切りたくとも切れない絆の悲痛で無情な姿を思い知らされるからなのか。
 胸を引き絞られる思いのする900ページでした。

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紙の本

血と骨 上

紙の本血と骨 上

2004/10/24 01:04

臓物と激辛キムチ好きにおすすめ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:CHIP - この投稿者のレビュー一覧を見る

何となく購入したものの、長い間積ん読状態になっていたこの本を、ビートたけし主演で映画化の話題に釣られてようやく手に取ってみた。読み始めたら止まらなくなり、三日かけて一気に貪るように読んだ。

この小説には、朝鮮半島の日本統治化時代、一旗あげる為日本に渡ってきた、金俊平という一人の朝鮮人男性の人生が余すところなく描かれている。著者の父親をモデルに描かれたという主人公は、並外れて強靭な肉体に、金以外、人間——家族でさえ——を一切信用しない、荒くれた精神を宿し、その生き様は率直に言って外道である。
相次ぐレイプに暴力シーンは、女性の視点からのみで見ると直視に耐えない。人は人に対してここまで残虐に、冷酷になれるものか。ひたすら続く残酷な描写に呆然としつつ、様々な出来事の狭間でふと垣間見せる人間的な翳りや弱さに、彼が心を棄てた単なる化け物ではないという真実に気付かされる。嫌悪とともに、この小説では細部についてまでは描かれていない金俊平という非情な男を造った過去を想像せずにはいられず、読み進むに従って強い痛みを強いられる。著者とこの著書にとっての血と骨がまさに金俊平その人であるのだと思う。

人に本を紹介する時簡潔に「面白かった」という言葉をよく使うが、この小説に関しては一言で感想をどう伝えたらいいものか戸惑ってしまう。普通の感覚や価値観を持った人にこの本は果たして「面白い小説」として受け入れられるだろうか。あまりの攻撃性に、途中でページを閉じてしまう可能性すら孕んだ危険な小説。普段から刺激物を好む私にとっても、かなりの辛口だった。韓国料理、特に豚の臓物や激辛キムチを好む人にはお勧めかもしれない。一癖も二癖もあるが、くせになる。

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紙の本

血と骨 下

紙の本血と骨 下

2004/07/11 07:10

暴力による恐怖は悲惨な末路を生み出す

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:13オミ - この投稿者のレビュー一覧を見る


 どこをどうとっても最高の小説である。しいて言えば、金俊平の唯一の親友、高信義がいつまでも貧乏であったというところが納得いかない。彼の社会性・思慮深さは作中でも英姫に匹敵するくらいであったはず。ただ、朝鮮人の開放という政治的な匂いが個人の豊かさよりも彼の中で優先されてしまったというところだろうか?

 ものすごい量のページ数だが一気に読ませる。金俊平の考える生きる意味はおのれの欲望に忠実になること。ただ一点だ。そのためには徹底的な暴力に訴えること。自分の感情を害する者に対しては親も子もない冷酷さ。ここまで自己完結した主人公だからこそ周りの人間が浮き上がってくる。

 唯一親友と呼べる高信義。金俊平は彼の言うことには耳を傾けるそぶりを見せる。さすがの金もブレーン的存在が必要だったのであろう。彼がいなければさすがの金俊平もすぐに死んでいただろう。

 本妻である英姫もすごい。ほとんど陵辱の末、いつのまにか金俊平の妻にさせられ、理不尽を通り越した暴力と搾取を金俊平から受けながらも人生を捨てない。子どもたちのために生活していくには現在の運命を甘んじて受け入れるというすさまじい人情がある。

 本書には繊細さのかけらもない。しいて挙げれば、娘の花子が現在の日本人を表しているかもしれない。それにしても金俊平は幸せ者である。孤独だとは言いながらも、その暴力を駆使して自分の欲望をほとんど達成させている。この欲望達成の背景にあったのは周囲に対する彼の暴力的な恐怖だけだったのであろうか?

 おそらく高も英姫も金俊平の暴力に嫌悪は抱いていたが、彼が悪事を自ら働かないという点に一縷の望みを抱いていたような気がする。金俊平は人に陥れられているといつも不安を感じているが、人を陥れようとは思わない。その一本気な性格と行動。何を考えているのかわからないと高も英姫も漏らしながら、その一線を彼は絶対に越えないと言う信頼があったのではないか。読んでいて金俊平に爽快感を私は感じたから。

 暴力で人を抑えた末路は金俊平にとって悲惨であった。妾や子どもにも見捨てられ最後は母国朝鮮で息を引き取る。彼のしてきたことに点としての意味はない。ただ、彼の血と骨だけは永遠に線となって継承されていく。これほどまでに人間を描いた作品は今後生まれないだろうと思った。

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紙の本

血と骨 上

紙の本血と骨 上

2002/04/13 01:17

差別の中で

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kenji - この投稿者のレビュー一覧を見る

 本書は在日朝鮮人の金俊平の生涯を綴った物語である。この俊平という男はあまりに強烈なキャラクターとして記述されるー酒乱で酒を飲んでは暴れて家族を平気で殴り、10数名のヤクザ相手に大立ち回りを演じ、家庭には一銭も生活費を入れない守銭奴ー。

 そして、物語は様々な差別の中進んでいく。

 主人公は腕のいい蒲鉾職人だが、それでも人種的差別で給料は日本人の半分である(さらに驚いたことに朝鮮でも済洲島出身というだけで差別されていたらしい)。また、儒教的男女差別のため俊平の娘は小学校もろくに通えない。さらに在日朝鮮人は日本政府から朝鮮名まで禁止される。さらに満州の一件もある。実際、本書を読み進めていくと、日本政府は本当に無茶苦茶なことを朝鮮人の方たちにしてきたなと同じ日本人として恥ずかしくなる。また、その事実をあまり認識していなかった自分が恥ずかしい。

 この金俊平は実在の父親をモデルにしているというが、上下巻を読み進めていく内に、自分には敗戦するまでアジア各国に好き放題してきた日本という国を擬人化したのものではないのだろうか? と思えてきた。

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紙の本

血と骨 上

紙の本血と骨 上

2001/06/20 22:03

メチャクチャさ加減が生半可じゃない。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:どしどし - この投稿者のレビュー一覧を見る

 主人公は、凶暴さが普通じゃなくてほとんど化け物ですが、それでいて、突き放した感じで書かれていておかしみさえ感じられてしまいます(これは、ぼくだけかもしれませんが)。この主人公を中心とした小さなエピソードが連なって話が進んでいき、大きな盛り上がりがあるというわけではないのですが、最後に到るまで飽きるということはありませんでした。

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紙の本

血と骨 下

紙の本血と骨 下

2001/05/18 10:40

ふつうの人のエゴが生み出した化け物

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ゲレゲレ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 主人公・金俊平はひどい人間である。酒を飲んで暴力をふるう。大金持ちになってもケチ。誰も信じようとしない。女は性の対象としては必要、子供も必要だが、絶対信用しない。気をゆるせる人はほとんどいない。型破りな行動と体力があり、極道さえも恐れる。
 ただ、常識的な見方をした場合、少しだけいいところもある。比較的きれい好き、自分で手と時間をかけて料理を作る…ゲテモノ料理だが食べてみるととてもおいしいものもある。ケチな反面、節約もする。服を着飾ったりして見栄をはることは一切しない。そして、徹底した個人主義を守るためならば極道とでも戦う意志と体力がある。
 多くの日本人たちは、金俊平とは逆の性格だろう。人と協調(するふりを)しているが実は迎合している。ちょっとお金があれば外見を整えて見栄を張りたがる。料理はインスタント化、料理に限らず自分ではなるべく手をかけずサボろうとする。
 金俊平という化け物は、そんな周囲のふつうの人たちのエゴが生み出した化身ではないか。そして、俊平が借金を取り立てる相手や見栄っ張りな極道に対して破天荒な暴力を容赦なくふるう時、一瞬だが快感を覚えた。体裁で改まったフリをしている世の中をぶっこわす快感だった。
 通読すると、いろいろな人の一生を短時間で見せらた気になる。苦労し耐えながら生きた俊平の本妻も病気が見つかった後はすぐに鬼籍の人に。超人俊平も時間の流れには逆らえない。人は何のために苦労して生きるのか、はかない気持ちになる。

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紙の本

血と骨 上

紙の本血と骨 上

2005/03/21 23:29

生き抜くということ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:更夜 - この投稿者のレビュー一覧を見る

時代、民族、性別、年齢…関係なくこの本の中の人々の生き抜こうという気迫、それが圧倒的な筆力で描かれています。
生き抜く方法、それが人様々であること、ひとりでは生き抜けないこと、しかし他人に流されていては生き抜けないこと。

また、家族というもののつながりの濃さと微妙さ…家族だから、身内だから…という「ひとこと」ですまされない、人間関係の濃淡もたたみかけるように読む者を圧倒します。

昭和の大衆の歴史でもあります。社会事件など初めて知ること、知っていることでも実際どういう受け止め方をされたのか…今の時代と比べてどうか?
そんなことを考えさせられる気迫の物語でした。

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紙の本

血と骨 上

紙の本血と骨 上

2004/10/13 18:12

持って行き場のない怒りの矛先はどこへ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:なかちん - この投稿者のレビュー一覧を見る

恐ろしいです。
激しい性描写もさることながら、
主人公となる男の一生がこんなにも
世の中に翻弄されてしまうのかと恐ろしさと
同時に哀れさをも感じさせてしまう小説です。

戦前・戦中・戦後の在日朝鮮人の置かれた
境遇を知るには十分といっていいほど重くのしかかる
内容です。

差別による貧困が原因なのか?
主人公の持って行き場のない怒りの矛先はどこへ向かうのか。


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紙の本

血と骨 上

紙の本血と骨 上

2001/05/07 05:23

理不尽さの中に生きている

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投稿者:ゲレゲレ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 餓死寸前になり汚い身なりをして浮浪する母娘を,自分は助けるだろうか。おにぎりのひとつも手渡しははしても,それ以上のことは私にはできない気がする。身勝手で暴力をふるう夫,耐える女,当然のように行われる朝鮮人に対する差別(小説の舞台は1920年代頃から),そして戦争。すべてが理不尽で胸が痛い! 帯には「人間のあらゆる欲望を体現した男」とあるけど,その男の話だけではありません。

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紙の本

血と骨 上

紙の本血と骨 上

2001/06/11 12:17

業深き男の凄絶な生と家族との確執・・・父親をモデルに描き山本周五郎賞を受賞した著者代表作の文庫本化。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:橋本光恵 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 今や“アジアの巨人”ともいわれるヤン・ソギルが98年に発表し、山本周五郎賞を受賞した傑作小説の文庫本化(上下巻)。上下巻それぞれが500ページにも及ぶ膨大なボリュームだが、その饒舌な筆致は、最後まで息をつかせぬ淀みのなさで、長さをまったく感じさせない。が、激しく濃密な小説だけに読むのにはエネルギーが必要だ。とにかく凄絶な小説なのである。その凄絶さとはすべて主人公、金俊平の人間像と、彼と家族との救いのない確執からくるものだ。184センチ、体重100キロ近い強靱な巨体。何者をも寄せつけない鋭い眼光、魁偉な風貌。ゲテモノ食いで人の3倍もの食欲、そして情欲。ベルトの後ろに桜の棍棒を挟みこみ、やくざの刃除けのために常に鉄の鎖を背中に巻き付け、喧嘩相手の耳を噛み切り飲み込んでしまう無頼漢・・・そんなフィクションそのもののような人間離れした金俊平という男を、金石範氏は“あとがき”で「伝説上の怪物ではなく、日本帝国の植民地支配の所産の破型的な象徴である」と述べ、さらに、その本来日本帝国に向けられるべきはずの復讐が、ここでは家族に向かい、家族が帝国の身代わりになっているとも加える。つまりこの『血と骨』は、日本帝国への激しい批判とも取れると結んでいるが、そうしたイデオロギーや民族問題を飛び越えて、純粋にこの小説が持つ独特のダイナミズムに、私は魅了されるのである。ヤン・ソギル作品が必ずや醸す、人間の生身の熱さ、哀しさに・・・。

 この金俊平という人物が、実はヤン・ソギルの実父がモデルになっているということに驚かされる。今60代半ばを迎えた著者だが、彼の波乱の半生までが垣間見られるー戦前から戦後にかけての大阪、出稼ぎ労働者として済州島から移住してきた朝鮮人たちが密集して暮らす地帯が舞台。蒲鉾職人をしながら無頼な生活を送る金俊平が、働き者の英姫と結婚し子供を持ち、やがて妻が調達した資金で蒲鉾工場の経営者となり巨万の富を得る・・・こう書くと豪傑の出世物語のようだが、この金俊平の場合は常軌を逸している。家族に愛情のカケラも見せず逆に大酒を飲んでは虐待を続け、家族と同じ屋根の下に妾を住まわせ、遂に逃げ出した妻子を執拗に追いかけ圧迫する。英姫が病いに苦しんでも一銭も与えず死に至らせ、老齢に達しても数人目の妾に次々に子供を産ませる・・・が、この鬼のような金俊平に感じる読後の印象は、並外れた自己の肉体と金銭しか拠所のなかった孤独な男の哀れ。英姫との子供で唯一生き残った息子成漢を遂には頼り、病床で弱った身体で助けを乞う老人金俊平には、過去の暴虐と非情に対しての懺悔の念すら感じられるのである。成漢はしかし、父を許すことはできずに去ってゆく・・・。

 成漢がヤン・ソギルのモデルなら、ヤンが60を過ぎてこの小説を書かずにはいられなかった気持ちがわかるような気がする。文中、「朝鮮の巫女の歌の中に、血は母より受け継ぎ、骨は父より受け継ぐという一節がある」とあるが、タイトルの由来だろう。父の骨を、彼もまた受け継いでいるのである。 (bk1ブックナビゲーター:橋本光恵/Asian Pops Mag.編集長 2001.06.10)

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紙の本

血と骨 下

紙の本血と骨 下

2001/06/11 12:17

業深き男の凄絶な生と家族との確執・・・父親をモデルに描き山本周五郎賞を受賞した著者代表作の文庫本化。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:橋本光恵 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 今や“アジアの巨人”ともいわれるヤン・ソギルが98年に発表し、山本周五郎賞を受賞した傑作小説の文庫本化(上下巻)。上下巻それぞれが500ページにも及ぶ膨大なボリュームだが、その饒舌な筆致は、最後まで息をつかせぬ淀みのなさで、長さをまったく感じさせない。が、激しく濃密な小説だけに読むのにはエネルギーが必要だ。とにかく凄絶な小説なのである。その凄絶さとはすべて主人公、金俊平の人間像と、彼と家族との救いのない確執からくるものだ。184センチ、体重100キロ近い強靱な巨体。何者をも寄せつけない鋭い眼光、魁偉な風貌。ゲテモノ食いで人の3倍もの食欲、そして情欲。ベルトの後ろに桜の棍棒を挟みこみ、やくざの刃除けのために常に鉄の鎖を背中に巻き付け、喧嘩相手の耳を噛み切り飲み込んでしまう無頼漢・・・そんなフィクションそのもののような人間離れした金俊平という男を、金石範氏は“あとがき”で「伝説上の怪物ではなく、日本帝国の植民地支配の所産の破型的な象徴である」と述べ、さらに、その本来日本帝国に向けられるべきはずの復讐が、ここでは家族に向かい、家族が帝国の身代わりになっているとも加える。つまりこの『血と骨』は、日本帝国への激しい批判とも取れると結んでいるが、そうしたイデオロギーや民族問題を飛び越えて、純粋にこの小説が持つ独特のダイナミズムに、私は魅了されるのである。ヤン・ソギル作品が必ずや醸す、人間の生身の熱さ、哀しさに・・・。

 この金俊平という人物が、実はヤン・ソギルの実父がモデルになっているということに驚かされる。今60代半ばを迎えた著者だが、彼の波乱の半生までが垣間見られるー戦前から戦後にかけての大阪、出稼ぎ労働者として済州島から移住してきた朝鮮人たちが密集して暮らす地帯が舞台。蒲鉾職人をしながら無頼な生活を送る金俊平が、働き者の英姫と結婚し子供を持ち、やがて妻が調達した資金で蒲鉾工場の経営者となり巨万の富を得る・・・こう書くと豪傑の出世物語のようだが、この金俊平の場合は常軌を逸している。家族に愛情のカケラも見せず逆に大酒を飲んでは虐待を続け、家族と同じ屋根の下に妾を住まわせ、遂に逃げ出した妻子を執拗に追いかけ圧迫する。英姫が病いに苦しんでも一銭も与えず死に至らせ、老齢に達しても数人目の妾に次々に子供を産ませる・・・が、この鬼のような金俊平に感じる読後の印象は、並外れた自己の肉体と金銭しか拠所のなかった孤独な男の哀れ。英姫との子供で唯一生き残った息子成漢を遂には頼り、病床で弱った身体で助けを乞う老人金俊平には、過去の暴虐と非情に対しての懺悔の念すら感じられるのである。成漢はしかし、父を許すことはできずに去ってゆく・・・。

 成漢がヤン・ソギルのモデルなら、ヤンが60を過ぎてこの小説を書かずにはいられなかった気持ちがわかるような気がする。文中、「朝鮮の巫女の歌の中に、血は母より受け継ぎ、骨は父より受け継ぐという一節がある」とあるが、タイトルの由来だろう。父の骨を、彼もまた受け継いでいるのである。 (bk1ブックナビゲーター:橋本光恵/Asian Pops Mag.編集長 2001.06.10)

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