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股旅フットボール みんなのレビュー

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紙の本

股旅フットボール 地域リーグから見たJリーグ「百年構想」の光と影

混沌として、それゆえ情熱にあふれた日本のアマチュアサッカーの今

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:木の葉燃朗 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 日本各地でサッカーの地域リーグを取材したノンフィクション。
 まず、「地域リーグ」とはなにか、ということを書いておく。日本のサッカーリーグは、プロリーグとしてJリーグ(J1・J2)、その下にアマチュアの全国リーグJFLがある。その下、J1から数えて4部に相当するのが、全国を9つの地域に分けた地域リーグである。

 では、著者はなぜ4部リーグを取材したのか。まず「その国のフットボール文化は、下部リーグにこそ現れるのではないか--」(p.11)という仮説を確かめたかったという。著者はヨーロッパ各国の3部・4部のリーグを見て、国ごとの差がなくなりつつあるトップリーグに比べ、より強くその国らしさを感じた。そこで、日本もそうではないのかという考えが、取材を始めたきっかけだったという。
 しかし取材を続ける中で、地域リーグを戦うクラブチームが、試合でもそれ以外の部分でも激動の時代に活動していることが分かってきた。
 例えば、地域リーグからJFLへ、そしてJ2へ、理論上は、2シーズンでクラブがJリーグへ昇格できる。そのため、自分たちの街からJリーグのチームをという活動は、活発に行われている。しかし現実はそれほどうまくいかない。なぜなら、実は地域リーグからJFLへという「わが国における4部から3部への昇格は、J2からJ1、あるいはJFLからJ2への昇格と比べて、はるかに過酷で、時に理不尽」(p.13)な戦いだから。
 また、日本各地にスポーツクラブ・施設をつくるというJリーグの「百年構想」に則ってJリーグクラブを目指すのか、あるいはアマチュアとして地道な活動をしていくのか。この選択も悩ましい。クラブチームが大きくなることにはコストやリスクも伴う。中には、Jリーグを目指す途中で消滅してしまうクラブも存在する。
 しかし、そうしたアマチュアリーグの状況が紹介されることは少ない。そこで「身近であるがゆえに気付かなかった『百年構想』の光と影を、可能な限り描き出すつもり」(p.15)で書かれたのがこの本。

 登場するチームは、Jリーグを時々見るくらいの人には、聞いたことのない名前ばかりかもしれない。私も、いくつかのチームの名前を聞いたことはあったが、どのようなチームなのかはほとんど知らなかった。
 しかし、そのくらいの認識の私が読んでも、この本は非常に面白かった。印象的だったことのひとつは、自分の生まれ故郷のクラブチームに強い愛着を持つ人たちの思い。彼らが、素直にうらやましいと思う。もちろん、現在Jリーグで戦うチームを応援するサポーターも素晴らしい。でも、生まれ育った街のチームをJリーグに昇格させるため、困難な道に挑み、奔走する人たちの情熱もまた、素晴らしいと思う。
 そしてもうひとつ、(皮肉なことに)「過酷で、時に理不尽」な地域リーグからJFLへの昇格のルールが生むドラマが心に残る。JFLへの昇格を決める大会は、毎年11月から12月に行われる「全国地域リーグ決勝大会」(以下、「地域決勝」)。この大会が、JFLへの(ということはJリーグへの)登竜門となる大会なのだが、大会の運営方法にかつてのアマチュアの大会の名残があり、それが参加したチームに悲喜こもごもを起こす。

 それはどんな大会なのか、毎年少しずつルールが変わるので、この本で紹介されている第30回(2006年)、第31回(2007年)の地域決勝を例に紹介する。
 地域決勝へ出場できるのは、各地域リーグの優勝チーム。それから、前年の地域決勝でベスト4に残った地域リーグの2位のチーム。更に、各地域リーグの代表によるトーナメント戦「全国社会人サッカー選手権大会」(全社)の優勝チーム(他にもこれ以外のチームが例外的に参加できる場合もあるが、説明が複雑になるので割愛)。したがって、地域のレベルによっては、強豪チームが地域決勝にすら進めないことがある。10月に行われる全社は、地域リーグで出場権を獲得できなかったチームが地域決勝へ出場する最後のチャンスだが、この大会も、参加32チームが5日間連続でトーナメントを戦う「国内のあらゆるカテゴリーの中で最も過酷なトーナメント戦」(P.239)なのである。
 このように、地域決勝は所属する地域リーグによっては参加するだけで大変な大会なのだが、この大会を勝ち抜くのは更に困難である。
 参加チームは4組に分かれて1次リーグを戦い、各組1位が決勝リーグを戦う。しかし、毎年の参加チーム数が流動的で、この4組のチーム数が同じにならない。そのため1次リーグの試合数が異なり、また決勝リーグが3日続けての連戦になるなど、過密日程の中で行われる。
 もうひとつ。地域決勝で何位になればJFLに昇格できるのか。これは「JFL次第」なのである。JFLからJリーグに昇格するチームの数や、JFL内でのクラブの撤退や合併によって変わってくる。
 このように複雑で、勝ち抜くのが困難な大会ゆえに、贔屓のチームがない立場から見ると、非常にドラマティックな大会になる。もちろん、チームのサポーター、関係者、なにより選手や監督にとっては、ものすごいプレッシャーのかかる試合だろう。2007年の大会は、決勝リーグの最終戦まで順位が入れ替わり、JFLの結果も相まって、得失点差で昇格するチームが決まった。この様子は、読んでいてこの大会を観戦してみたかった、という気持ちになった。

 この本を読み終えて、もうひとつ思ったこと。それは、この本に記録された約2年半は、日本のアマチュアサッカーリーグの過渡期の姿を描いた、貴重な記録になるだろうということ。おそらく、現在の地域リーグ・JFL・Jリーグ間の昇格・降格システムは、近い将来変わっていくだろう。それだけ、Jリーグへの参入を目指すチームにも、Jリーグは目指さずに地域に根ざしたクラブ、アマチュアとしての存続を考えているチームにも、問題の多いシステムだと思う。例えば、JFLで活動するだけの資金がない(全国リーグになると、遠征の費用ひとつを取っても地域リーグとは比較にならない)など、JFLではなく地域リーグで活動することにメリットがあるチームもあるだろう。そうしたチームはどうやって活動していくべきなのか。また、現在は一定数までJ2のチーム数を増やす計画があるため、J2リーグからJFLへの降格がない。チームの経営状況によっては、これも必ずしも望ましくない。
 こうした状況は、少しずつだが変わっていくだろう。しかし、Jリーグを目指す熱気が各地で沸騰し、その流れに乗ってチームもリーグの形式も変わっていく間の、混沌とした時期として、ここ数年、そして何年か先までの地域リーグは記憶されるべきだと思う。その時期の地域リーグに光を当てたこの本も、後々まで読まれるべきだと思う。

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