ソニー自叙伝 みんなのレビュー
- ソニー広報部 (著), ワック編集部 (編)
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紙の本ソニー自叙伝 普及版
2001/08/13 03:53
物語性に満ちた社史
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投稿者:菅野 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ソニーを象徴する製品といえばウォークマンであるが、その発想を破るオーディオ製品はいまだに生まれていない。ポータブルCDプレイヤーにしてもポータブルMDプレイヤーにしても、技術では上回ったものができたとしてもウォークマンの発想を超えるオーディオ製品は生まれていない。多くの人が、他社のものであっても同種の製品のことをウォークマンと呼んでいるのではないだろうか。
マイクロソフトの物語やガレージから始まったデル・コンピュータなど、ベンチャービジネスの起業の物語は読んでいてワクワクするし、読後はクンフー映画やヤクザ映画を観たあとのように自分が少し強くなったような昂揚感がある。英雄伝説や戦記物、冒険談を読んで感じるような昂揚感を社史に感じるというのも面白いことだ。小説のようにストーリーを楽しむことができた。
昨今の「つくる会」の教科書問題などもあるが、既に終わった戦争の正当性などを糊塗するよりも、町工場から始まったSONYが世界を伍して戦っていることの方が殺戮行為よりも誇れることだ。どうしてそんなことが分からない人がいるのだろうか。
面白いエピソードが幾つかある。
ポケッタブル発売の際に、セールスマンが着るワイシャツのポケットを標準サイズより大きくしたものをあつらえて強引にポケットサイズにするなんて、今となっては笑い話だ。
また、トリニトロン管の開発の際のエピソードも面白い。
「あれは、実用になりそうかね」
はっきり言って、実用になるかどうか分からなかった。しかし宮岡は答えた。
「かなりいけると思います」
実は宮岡には、どうしてもそう言わざるを得ない事情があった。その日は宮岡がチェロを担当している市民オーケストラの練習日だったのだ。早くしないと練習が始まってしまう。しかし相手は井深だ。できないとかわからないとか言いでもしたら、その説明をしつこくさせられ、放免してもらえそうにない。ここはとりあえずできますと言って、帰らせてもらうのが上策だろう。
あのトリニトロンの開発の陰にこんな微笑ましいエピソードがあることに親しみを感じた。
米国の時計会社がSONYのトランジスタラジオをSONYブランドではなく時計会社のブランドでOEM販売したいとの申し出に対してノーと言うくだりがある。
「誰がSONYなんか知っているんだ。わが社は五十年かかって、世界中で知られるようなブランドにしたんだ」
「その五十年前に、何人がお宅の名前を知っていたのでしょう? わが社は、五十年前のあなた方と同様に、第一歩を踏み出したところなんだ。五十年経ったら、あなたの会社と同じくらいにSONYを有名にしてみせる。だから、この話はノーサンキューだ」
この時計会社をこの本を読むまで俺は知らなかった。
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