会計士パパから娘への手紙 みんなのレビュー
- 山田侑 (著)
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紙の本会計士パパから娘への手紙 わが子に残すお金より大切なこと
2009/12/08 22:45
お金をきっかけに考える、人としてのまっとうな生き方
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:木の葉燃朗 - この投稿者のレビュー一覧を見る
公認会計士である著者が、実際に娘に宛てて書いた手紙を元に書籍化したもの。ただし勘違いしてはいけないのは、この本は金儲けのテクニックを書いた本でもなければ、反対にお金を持つことを嫌う本でもないということ。
この本で書かれているのは、「尊くすばらしい面と醜く恐ろしい面という、二つの矛盾する性格を持っている」(p.3)、「”お金”という生き物の性質を理解し、それとどう付き合っていくべきか」(pp.2-3)ということ。この点について、分かりやすい言葉で、丁寧に、ユーモアも交えながら書かれている。
まず、この本で書かれているお金の持つ二つの側面について紹介しておく。ひとつは「物々交換に代わる手段として人間が考えた道具」(p.15)としてのお金。そしてもうひとつは、お金の「”ものさし”としての顔」(p.15)。もともとは道具(手段)であったお金は、「ものさしとしての顔を持ち、やがて一つの生き物として人間社会の中心的存在となり、やがては人間を支配し始めた」(p.16)。つまり、なにかを手に入れるための手段としてのお金、という役割を超えて、持っている金額の高低が人間や企業の価値を示すものとして独り歩きしてしまう。ここで著者が重要な点として挙げているのは、「何のためにお金をもうけるか」(p.18)。ということ。この考えがないと、「年収何百万円」、「売上高何億円」という数字だけを追い求めることになる。これがお金に支配されている状態なのである。この前提を元に、著者はお金に関する様々な場面について考え方を述べていく。具体的には、お金の貸借について、リスクを把握して生きることの重要性、などなど。
こうした部分も興味深いのだが、やはり一番印象に残るのは、お金に支配される生き方をしてはいけないという著者の思い。最後の手紙で、著者が娘にお金についての手紙を(そしてこの本を)書くきっかけになる出来事について書かれている。それは電車の中で、同じ職場に勤めているらしい男女の会話を聞いたことだという。女性が男性に「三十万円しか要らないっていうお客さんに、しっかり五十万円貸しました」(p.203)と言ったと。このふたりが消費者金融に務めているらしいことも、会話から分かったという。これを聞いて著者は「その女の子は、お金という生き物によって作られたシステムに従って、与えられた役割をこなしているに過ぎない」(p.205)、けれどもそれだけに、お金が「巧妙に世の中に入り込み、普通に生活をしている人間を支配し、それだけに簡単には退治できないモンスターになっている」(p.205)ことを思った。そこで、昔の日本人なら当たり前のように言い切った「『人生で一番大切なものはお金である』と答えることは、恥なことである」(p.206)という考えを、敢えて口に出そうと考えたという。
こうした本がなかなか出版の機会に恵まれず、逆に相変わらず金儲けの方法・テクニックを書いた本が刊行されているのは、多くの日本人がお金に支配された状態でいる方が、企業としては儲かるから、ということなのかもしれない。そのような状況の中で、この本を新装版として復刊した出版社を評価したいし、復刊をきっかけになるべく多くの人に読まれるようになって欲しいと思う。
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