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紙の本

どうして2.26事件と東京大空襲がワンセットに?出版サイドの都合を優先しすぎだろう。

10人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る

保坂正康の本は何冊か読んでいる。先の戦争について、この人ほど勉強し調査し続けている人もちょっと珍しいのではないか。この人の執念というか、情熱には敬意を表する。敬意は表するが、なんというか残念でならないのは、これほど調査し学習しているにもかかわらず、そこから出てくるプロダクツである彼の著作が、なんというか凡庸陳腐なのである。ひとつには、この人は思い込み、決めツケが余りにも多く、事実を積み上げて読者の共感を得つつそれまで周囲が気がつかなかった事実へと誘導し、「そうだよな。その通りだよな」と締めくくるデービッド・ハルバースタムのような手法とは正反対で、「な、瀬島龍三ってひでえ奴だろ」「東條英機の罪は深い」と先に断罪があって、彼が述べる「事実」は、なんか付け足しみたいに読めてしまうのだ。保坂が著した著作は大部なものが多いゆえ、延々と長編を読まされた挙句、「なんふだ、結局これだけかよ」と後味悪く読み終えるものが非常に多いのだ。本書も、残念ながら、この類であった。

本書はそもそもサンデー毎日に連載された保坂の「先の大戦の戦跡探訪記」をまとめたものである。週刊誌に連載された紀行文を集めたものゆえ、書き下ろしとはかんり違ったバラバラ感のある構成となるのは已むを得ない。しかし、しかしである。どうして2.26事件と東京大空襲がセットにされるのか。せっかく2.26事件を取り上げたのだったら、セットにすべきは5.15事件であるべきだ。いや、それ以外でも3月事件や10月事件もあってしかるべきだろう。こういうテロについてまとめるなら分かるのだが、2.26事件について中途半端に書いた記事のあと、やおら早乙女勝元を持ち上げての「東京大空襲」記事へとなだれ込む構成はどうしても納得がいかない。

2.26事件について保坂は盛んに「日本には2.26事件を美化し、昭和の忠臣蔵に仕立てようとする勢力がある」と指摘する。これには私も同意する。最近、特に映画会社の東映が東條英機や2.26事件を異様に美化する映画を連発しているが、こうした歴史を歪曲するかのごとき姿勢には私もかねがね疑問を持っている。2.26事件は、曲がりなりにも機能していた戦前の日本の民主主義を最終的に死に追いやったテロ事件である。如何なる理由があろうとも、こうしたテロが許されていいはずが無い。問題はどうしてこういうテロが起きたのか、その背景についての掘り下げだ。保坂は例によって軍部や官僚、いわゆる権力層を糾弾し、民衆という弱者の立場に立とうとする。そこには民衆は常に正しく、監視すべきは権力機構だという例の、あの視点がある。本当にそうか。民衆は常に正しいのか。昭和の道を誤らせたのは、権力層ではなくて、むしろ貧乏人たちであり民衆なのではないのか。昭和の金融恐慌と世界大恐慌は現在ではものすごい大事件だったように報じられているが、高級官僚や財閥企業に勤めるエリートサラリーマンは大した打撃を受けず、もっぱら打撃を受けたのは下層階級に限定されていた。その証拠に大恐慌の最中でも銀座や新橋の酒場は連日連夜大賑わいで、巷にハッピーな酔客が溢れていたことは永井荷風の「断腸亭日乗」を見れば容易に知ることが出来る。

それに当時の農村部のダメージを大きくした理由のひとつに絹の大暴落があったが、これは資本主義システムや大企業の搾取とは関係はなくアメリカで起きた技術革新の影響であったことも知っておく必要がある。日本の農村では副業として絹が盛んに生産され、これは主として米国や英国などへ輸出されていたのだが、大恐慌の最中、アメリカの総合化学メーカーデュポンが絹に代わる安価な化学繊維ナイロンの生産に成功し、これが日本製絹糸に取って代わったのである。日本は、いわば技術革新の波に乗り遅れたわけだ。

こうしてどん底に叩き落された貧農たちが何に活路をもとめたか。それが中国侵略だったのである。対外強硬派のメインエンジンは貧乏人たちであり、彼らは右翼らに徹底的に利用された。そして右翼が敵視したのが財閥であったのだ(この構図はなんだか今の「派遣労働者」を必要以上に被害者として持ち上げつつ、トヨタを初めとする大企業を極悪非道の冷酷者として敵視する今の風潮に二重写しになる)。つまり対外侵略を最も渇望し軍部の侵略行為を応援し囃し立てたのは、実は日本の貧乏な民衆でもあったのである。日本で生きていけない人たちは陸続と朝鮮半島や満州へと移住し、そこで中国人たちを徹底的に差別したし、それがまた日本への異様ともいえる反感を買う原因にもなった。石原莞爾は統帥権を干犯して陛下の軍隊を勝手に動かす暴挙を行ったが、この満州事変で景気は一変し日本は世界で最初に不況から脱出することに成功するが、その脱出を可能にしたのが中国侵略であり、それを大歓迎したのが日本の貧乏な民衆たちであったことも忘れてはならない。

東京大空襲を指揮したカーチス・ルメイに勲一等旭日大授章を与えたことには私も大いに疑問を持っているが、それを主導した源田実について、もう少し掘り下げて糾弾しても良かったのではないか。それに保坂は「東京大空襲は政府の責任だ」と、あろうことか日本政府に賠償を求めているトンマな連中を本書で応援しているが、その神経が信じられない。空襲を実行したアメリカ政府を訴えるというならわかるが、どうして日本政府に賠償を請求するのか。日本政府は日本の民衆から歓呼の声援を受けて戦争に突入して行ったのである。軍部のテロにも分厚い日本民衆の応援があったし、満州事変も中国侵略にも日本民衆の支持があった。その結果、アメリカの逆襲を受けて焼き殺されたのなら、それはそれで自業自得だろうと私は思うが、保坂がなぜ当時の政府でなく現政府に責任の一端を求めるのか不思議である。

あと、忘れてならないのは本土決戦を実行し首都ベルリンまで蹂躙され文字通り城下の誓いをさせられたドイツの戦死者が700万を超える一方、昭和天皇陛下の「ご聖断」で早期に終戦を迎えた日本の戦死者はその半分の350万前後であることも知っておいて損は無いだろう。ちなみにロシアの戦死者は1200万人を越えている。あんまり世界に向かって日本は被害者面できないことも、この際、知っておいたほうが良いだろう。

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