さよなら、あの日の動物たち みんなのレビュー
- 舟崎克彦 (文・絵)
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2001/09/14 18:05
生き物好きなら見逃せない作品
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岡埜謙一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
書店や図書館の棚を探してみると、動物との生活を題材にした動物エッセイや小説、私小説風の読み物は意外と数がある。しかし、世の中に生き物好きは掃いて捨てるほどいるというのに、それらの本はなぜかあまり売れないようで、ベストセラーやロングセラーになったものは極めて少ない。「ハラスのいた日々」(中野孝次、文芸春秋社)などはむしろ例外的なものだろう。ジャンルを問わず、映画やテレビドラマになると、それまであまり知られていなかった原作も一気に脚光を浴びるというのは世界的な現象なのだろうか。さて今回紹介する舟崎さんは25、6年前に、小学生時代一緒に暮らした生き物たち(大半は鳥)の思い出を綴った「雨の動物園」(偕成社・偕成社文庫)という動物エッセイを発表した。多くの生き物たちとの暮らしや家族のことがとても生き生きと描かれた秀作で、国際アンデルセン賞優良作品賞・サンケイ児童出版文化賞を受賞した。これは地味ながらいまだに版を重ねている(ただし現時点では版元品切れで、重版時期は未定とのこと)、生き物好きなら見逃せない作品だ。私も数年前に図書館の児童書コーナーで見つけ、以来、何回も借りては読み返している。今とは違い、舟崎さんの小学生時代の昭和20年代はまだいろいろな野鳥が街の小鳥屋で簡単に手に入ったらしい。鳥好きとしては何とも羨ましい話である。動物保護関係者からはクレームがつくかもしれないが、生き物の良さ、可愛さを本当に知るためには、やはり自分の手で育てなければだめだ。
「さよなら、あの日の動物たち」はその続編的なエッセイで、ほとんどは舟崎少年が大人になってからの生き物たちとの出来事が書かれている。大学に入って詩集を自費出版し、それが刷り上がった日に拾ってきた1匹のイシガメ。ある飼い主から舟崎さんがもらって、ついにはイギリスにもらわれていった数奇な運命の3本足の犬。やはり人からもらったものの、鳴き声のすさまじさにサボテン公園に引き取ってもらったオウムの「雪之丈」。なかでも秀逸なのがカラスの話だ。カラスの利口さや光り物を集める習性はよく知られている。しかし女性の着替えを覗くとは。舟崎さんはこの本の中で大の野鳥好きと語っているとおり、こちらも鳥の話が多い。犬や馬の話も出るには出るのだが、こと鳥の話になると途端に文章のトーンが変わってくるところが面白い。本人は意識していないのかもしれないが、観察がひときわ細かくなり、描写も緻密になっている。「三つ子の魂百まで」という諺そのままに、子ども時代の原体験としての鳥好きを大人になっても引きずっているのがよくわかる。ただ前作「雨の動物園」と比較してみると、こちらのほうが中身が濃いように感じる。ほとんどが作者の大好きな鳥の話で埋め尽くされているせいだろうか。
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