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水の音楽――オンディーヌとメリザンド みんなのレビュー

  • 青柳いづみこ (著)
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みんなのレビュー3件

みんなの評価4.0

評価内訳

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2 件中 1 件~ 2 件を表示

水への畏怖と音楽の接点

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投稿者:しょいかごねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

表紙の絵はラファエロ前派の画家ウォーターハウスのもの。何人かの裸の女の人が水の中から岸辺の男性を誘惑している。あ、きれいな絵だな、と思ってよく見た途端、すっと背筋に冷たいものが走る。これは…この女性は魔物なのだ。
本書はまず、ラヴェルの「夜のガスパール」の第一曲「オンディーヌ」を妖艶に弾いたほうが良いのか、清楚で高踏的に弾いてはいけないのか、という疑念から始まる。この問題を発端に、水、水の妖精、「宿命の女」などの概念のルーツを、ギリシャから19世紀に至るまでの神話、民間伝承、文学、絵画、そしてもちろん音楽といった、広い分野に模索していき、登場するさまざまなイメージや女性像を一つ一つ解きほぐしていく。たくさんのカテゴリーがだんだんと集約されて、「オンディーヌ」と、「メリザンド」の対極にフォーカスしていく様子は、あたかもミステリーを読んでいるかのようである。
そしてジグゾーパズルの最後のピースは、ちょっと意外なところから現れる。そして結局、この一連の論考は、作者のピアニストとしての経験と鋭い感性の賜物なんだな、と気がつく。
水に対して我々が感じるいろいろなもの、民間伝承で用いられるイメージは、世界各国かなり似通っているらしい。水とは、異界との境界。そして水それ自身の持つ不可思議な魅力や畏怖の念。こういったものを音楽の観点から論じた本として非常に面白かったし、得るものもたくさんあった。なにより、ちょっとした曲でも、その背景にこれだけのヨーロッパ芸術の歴史と伝統を抱えていると言うことを、まざまざと見せ付けられた気がした。
民話や小説の解説はかなり丁寧でわかりやすいのだが、音楽の描写は非常に感覚的で(音楽なんだから仕方ないんだけれど)、音楽にあまり親しみがないと理解しづらいかな、という気もする。本書と同時に、作者の演奏による同名の「水の音楽」というCDが発売になっているという話で、本書に登場する曲が多く演奏されているので、これは是非聞いてみようと思う。

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美しい誘惑の書

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投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 青柳いづみこの指先が紡ぎだす文章は美しい。北欧神話の海の女神ラーンのように「網をはり」、人魚伝説のルーツとなったセイレーンのように「ひきずりこむ」その言葉は、水の精をめぐる物語世界やドラマへ、そして水の音楽とピアニズムの分析へと読者を誘惑する。

 「女が子宮で考える、とよくいわれるのと同じ意味で、ピアニストもまた、指先で考える動物といえばいえよう」(プロローグ)。ピアニスト青柳いづみこの思索は、モーリス・ラヴェルのピアノのための組曲『夜のガスパール』第一曲の「オンディーヌ」とドビュッシーのオペラ『ペレアスとメリザンド』のヒロイン・メリザンドとを結ぶ想像力の源流をたどっていく。

 《水は本来抽象的なものである。水はどんな形でもとることができるが、そのどれでもない。それは、ピアノの音についてもいえる。ピアノは、イマジネーション次第でオーケストラのいかなる楽器にも擬せられるが、実は何でもない。
 水は、ピアノに似ているのである。その証拠に、水をテーマにした歌曲の水の描写の部分は、いつも伴奏のピアノが受けもつではないか。
 メリザンドのようなオンディーヌとは、つまりそういうことなのらしかった。留学生は、何より水を弾きたかったのだ。「出かけていく女」オンディーヌは水の擬人化としての水の精であり、「何もしない女」メリザンドは、擬人化される前の水の象徴だった。メリザンドとオンディーヌは、彼女の中では、水によってつながっていたのである。》(エピローグ)

 随所に織り込まれたギュスターヴ・モローやフェルナン・クノップフやロセッティのモノクロのタブローがイマジナリーな音の世界を沈黙のうちに指し示し、読み終えた時、私は音楽への飢渇感にさいなまれている自分に気づいた。このような読後感は、今泉文子『ロマン主義の誕生』(平凡社)や丹羽隆子『はじめてのギリシア悲劇』(講談社現代新書)以来ことだ。

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