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紙の本

なじみの店

紙の本なじみの店

2001/05/31 18:18

人生には「遊び」が必要。わき道にそれたり途中下車したりの余裕がもたらす日々の哲学

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投稿者:井上真希 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 物事には裏と表、ないしは複数の側面があるものだ。それが、ひとつの世界に長年どっぷり浸かっていると、知らず知らずのうちに視野は狭まり、心にもこわばりが生じてくる。ある角度(しかも、往々にして自分にとって都合のよい角度だったりする)からだけ物事を眺め、習慣化された自らの所業をとりたてて省みることもなく、他者からの忠告にも耳を貸さずに突き進んだ結果だ。

 『なじみの店』は、日々を自由気ままな心持ちで生きる著者の人生哲学がつまったエッセイ集である。といって、定年退職後か何かで悠悠自適の生活を送る趣味人の著者ではない。60歳を過ぎた今も、研究や翻訳に従事する現役の、それもわが国きってのドイツ文学者だ。大学教授の職を50代半ばでさらりと辞したと聞いている。
 日常の行動範囲は、住んで20年になる東京郊外の自宅周辺である。ふた昔前の商店街の古びた家並が続く通りを経て、もより駅までは徒歩15分、自転車をとばせば5分あまり。早朝から自宅で仕事をし、庭にしつらえた花ゴザの一畳間の小亭で本を読み、珈琲を飲んで、夕方になると、自転車に乗って銭湯へ一番風呂を浴びに行く。その帰りに縄のれん、ソバ屋、焼き鳥屋などのなじみの店に寄り道をして、ひとり酒を嗜む。絵も描けば、将棋もさす。旅好きで、各地の温泉や山に出かけて泊まることには身銭を惜しまないが、時にはテントで野宿もする。講演旅行の帰りには、途中下車をして山里の鄙びた宿を訪ねる——。
 収録された25篇のエッセイからは、そんな「遊び」のある暮らしぶりが浮かび上がってくるのだが、同時に、そこには従容として生きる著者の目に映った世の中の歪みもまた、ありありと描き出されている。つまり、地方の有名旅館の休業・倒産が増えているのは、料理・飲み物・寝具・清掃など基本的なサービスを手前勝手な都合で行って、客をないがしろにしているにもかかわらず、高い料金設定をしてきた報い(「宿とカンコ鳥」)であり、身にあまる地位についた人は、日頃の自分に縁のない姿、自分に遠い資質を求められて心の平安を失い、異様な顔つきをしている(「人の顔」)し、地元の商店会に客が集まらないのは、主人が品揃えの努力もせず、店番といってスポーツ新聞を読みふけったり、ただ仁王立ちに突っ立ったりしていることの帰結(「商いの不思議」)であって、医師が大人の患者に対しても幼児を相手にするかのような言葉遣いをするのは、インフォームド・コンセントとは対極のわが国の近代医学の原則:病人に対して知らせず、教えず、見せず、応答せず、がいまだに浸透しているからである(「医者と幼児語」)、等々。
 手厳しいわけでも、辛辣なわけでもなく、冷静に観察した結果である。どれもごく当たり前のことなのに、渦中の人間には理解が及ばぬものらしい。

 目的を達成することに血道をあげず、わき道にそれたり、途中下車したりする余裕がほしい。自らを客観視することほど難しいことはないが、著者のように、世の中をさまざまな目で見渡し、ふとした小さな出来事にも折々に感応する柔軟性を保っていれば、冷静に物事を判断できるだけの余地を失わずにいられることだろう。人生には「遊び」が必要なのだ。 (bk1ブックナビゲーター:井上真希/翻訳・評論 2001.06.01)

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