応用倫理学入門 : 正しい合意形成の仕方 みんなのレビュー
- 加藤尚武 (著)
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2001/06/14 15:17
生命倫理、環境倫理、企業倫理、情報倫理にかかわるガイドラインは、どのように作ったらいいのか。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:挾本佳代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
世の中には、自分1人に決断を迫られることが結構ある。事と次第によっては、たとえ家族といえども相談できない問題も発生することがある。こと人間の生命に直接かかわる問題などにそうした問題がある。たとえば人工妊娠中絶や安楽死。前者は恋人・夫婦と、後者は家族と相談することが多い。けれど、妊娠している事実を誰にも相談できない女性だっている。長らく辛い闘病生活をしていた家族以外に、誰も頼るべき身内がいない人だっている。そんなときは、倫理問題に直接関与する問題を自分1人で決断をしなければならない。
倫理学というと、多少なりとも気後れしてしまう人が多いだろう。「〜すべき」とか「〜しなければならない」と、重圧的に上からものを言われるような気がすると感じている人も多いかもしれない。けれど、現代社会は倫理的に取り上げられるべき問題が多く山積み状態になっている。日々解明され続けているDNA分析の結果は、遺伝子治療を行う医療現場での倫理問題を引き起こす。医者が、患者といえども、すべての遺伝子情報を一手に引き受けていいのか。可燃すれば有害な物質を排出するとわかっている廃棄物が、ごくごく超微量な場合、どのように処理すればいいのか。企業内でセクハラと捉えられるボーダーラインはどこにあるのか。ポルノグラフィをインターネット上で規制しなければならない理由は何か。こうした問題に直面した時、私たちは正しい判断を下せるだろうか。
その「正しい判断」は、自分1人に有効なものであればいいのか。倫理という場合はそうはいかない。社会の中で多くの人に支持され、納得されるような「合意」を経て初めて、その場その場での柔軟な倫理が形成される。
著者は千葉大に所属していた頃から、学生に各自のテーマにもとづいてガイドライン作りを指導してきた。死刑や人工妊娠中絶の是非、その許容条件など、誰もに合意されるようなガイドラインが目指すべきものだ。著者が主張するに、自分である問題にガイドラインを作ろうとすると「xは有害だから禁止すべきである」という形に陥りやすい。そんな時はまず「他人に危害を及ぼす」のか、「自己に危害を及ぼす」のかを明確にすることが重要であるという。
本書は、倫理問題についてのガイドラインの作り方を平易に解説すると同時に、倫理問題が自分に降りかかった場合の身の振り方を決める判断基準を、読者自身が最終的にもてるよう主張されている。そのために必要なのが、ガイドライン作りなのだ。
当然、さまざまな倫理問題についてのガイドラインは、ただ好き勝手に作ればいいのものではない。自分にとっても、他人にとっても、納得できるものでなければならない。社会は自分だけのものではないし、自分だけが操作することができないものだからだ。本書で、著者が何より主張していることが、ガイドライン作りには最も有効なのだろう。それは、「自分で考えたガイドラインで友だちを説得できるかどうかを考えてもらいたい」ということ。当たり前のようでいて、これが一番難しい。けれど、この関門を通過しなければ、倫理問題のガイドラインとしては通用しない。 (bk1ブックナビゲーター:挾本佳代/法政大学兼任講師 2001.06.15)
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