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電子書籍

広田弘毅 「悲劇の宰相」の実像 みんなのレビュー

  • 服部龍二 (著)
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みんなのレビュー2件

みんなの評価4.5

評価内訳

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紙の本

広田弘毅 「悲劇の宰相」の実像

すでにして古典。曲学阿世の徒=城山三郎が垂れ流した間違った広田弘毅像を完膚なきまでに打ちのめした快著登場!

21人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る

まだ何も知らなかった高校生だった頃、城山三郎が書いた今では悪名高き迷著『落日燃ゆ』を読んだ私は大いに感動した。広田弘毅って、なんて素晴らしい政治家だったんだろう、その広田を死刑に処した極東軍事裁判とは、なんと不公正な欺瞞だったんだろうと思った。その後、大学へ進み、国際政治を専攻すると、敬愛する高坂正尭先生が「近衛文麿と並んで広田弘毅は日本を滅亡の淵へと追い込んだもっとも無責任な政治家である」と悪しざまに非難し始めたのでショックを受け、先生の教えに従い昭和史を研究するにしたがい城山三郎が垂れ流した広田弘毅像が実体とはかけ離れたうそで、実際の広田は現実を直視できないアジア主義者で無責任なダラ幹で、彼の不作為こそが日本の国際的立場を抜き差しならないところまで追い込んでいったことが次第に明らかとなっていったのである。高坂正尭の恩師である猪木正道先生は、この本の中で、広田を「あきれるほど無定見、無責任である」と厳しく断罪し『落日燃ゆ』を「広田への過大評価」と断定しているが、これを読んだ昭和天皇陛下は「わが意を得たり」と思ったのであろう、宮内庁を介してわざわざ時の首相中曽根康弘に「猪木の書いたものは非常に正確である。特に近衛と広田についてはそうだ」と伝えたのだそうだ。これに勝る歴史の証言は、おそらくあるまい。

小説家は何を書いても許されるわけではない。確かに売れるとなれば白いカラスも黒であると書くのが売文業者なる「文学者」のすることである。文学をするものをは人間の屑であると明治の日本人がみなしたのは故のないことではない。しかし、やはり歴史の改竄は厳しく指弾されねばなるまい。城山は「広田弘毅は右翼結社玄洋社の社員ではなかった。あれは連合軍の無知に基づく誤解」などという嘘をぬけぬけと書いているが、本書では広田弘毅が右翼結社の一員であったことが明らかにされている。

本書では、もう一つ、重光葵という極めて独善的な外交官がなした大いなる罪についても明らかにされている。日本を国際的孤立へと導いたターニングポイントが1930年代にはいくつかあるが、その一つ「日本によるアジアモンロー主義宣言」と欧米から非難された「天羽声明」は、実は外務大臣広田の部下たる重光外務次官が勝手に起草し、重光のパシリである天羽英二外務省情報部長に発表させたものだったのである。この声明は重光が広田の頭越しに勝手にやった独走だが、広田は重光の独断をいさめることはせず、これを追認してしまうのである。その背後には、右翼広田が夢想する「アジア人によるアジア支配」という自己中な「アジア主義の妄想」が隠れていた。

日本の経済や外交を担うエリート官僚、エリートビジネスマンのメインストリームは、今も昔もアングロサクソン中心主義の親英米派で占められている。資源のない日本が繁栄を維持するためには貿易を盛んにしなかればならないわけで、日米安保条約を結び軍事的に対米従属をする代償としてアメリカという巨大な市場を手に入れる道を選択した吉田茂が喝破した通り、貿易拡大を旨とする海洋国家英国や米国と親しく結びあうことが日本を繁栄させる近道なのである。だから日本の統治システムの中核にいるエリートたちは基本的に皆親米派である。ところが、ここからはずれたグループの中に、己の挫折、心の傷を中国との提携で癒そうとする「アジア主義」を標榜する一派がいる。最近のアメリカの株式市場の暴落をこれ幸いと「アメリカの時代は終わった」などと小躍りしている連中の少なからぬ一派に、こうした反米親中派がいる。彼らはアメリカをくさし、日中提携を通じた日本の繁栄を夢想する。アメリカのジャンクフードをくさし、中国料理を礼賛したりする。しかし本書の末尾で、広田の挫折は「日中提携の本質的な難しさ」を暗示していると著者の服部氏は非常に鋭い指摘をしている。中国における親日派は日本におけるアジア主義者同様、メインストリームから外れた非主流派であり、彼らの国内的基盤も実は非常にもろいのである。何のことはない。中国の主流派エリートも実は親米派で占められていたのだ。日本のアジア主義者たちが日本のアメリカからの離間を模索すればするほど日本の国際的関係は一方的に不安定になるだけで、それは日中関係の強化によっては決して保管されはしない。日本のアジア主義者たちは密かに「兄たる日本が弟たる中国を善導する」などとうぬぼれていたりするのだが、そもそも中国は日本を兄などと崇めてはいない。ひたすら小日本と蔑んでいるのだ。だから日中提携構想は多くの場合、怒りと失望に終わり、憎しみが憎しみを呼ぶ負の連鎖に陥りやすいのである。服部氏が指摘する「広田の苦悩は日中提携のジレンマでもあった」という指摘は、私の腹にずしんと響く重みをもったものでった。日本の今後を考える上でも、本書は貴重な示唆を与えてくれる。諸君、ゆめゆめ中国との連携に幻想を抱いてはならない。先日あったトヨタの人も「中国に入れ込んだ会社はみんな大怪我している。森ビルさんも大丈夫かなあ」と心配していた。結局、日本はアメリカとの関係を外交の主軸に据えるしか道はないのではないか。私にはそう思えてならないのである。

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紙の本

広田弘毅 「悲劇の宰相」の実像

処刑の前に、腹いっぱい酒を飲ませてあげたかった。

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 日本が欧米主体の連合軍との戦争に負けてから60年余り。A級戦争犯罪人として、それも文官として唯一、絞首刑となった元総理大臣の本など、誰がどんな風に書いているのだろうと興味があって手にした。
 広田弘毅という人物は、城山三郎の『落日燃ゆ』の影響からか、悲劇の宰相という印象を多くの読者に与えている。しかしながら、現職の大学の教員であり、戦後20年以上も経って生まれた著者は悲劇という感情を交えることなく、膨大な資料を読み解き、著者なりの政治的、歴史的解釈を加えているのが本書の特色だろうか。
 そして、城山三郎が『落日燃ゆ』のなかで広田弘毅を政治結社玄洋社の社員ではないと断定しているなかで、著者は広田を玄洋社の社員であり、社風の影響を色濃く受けたものとして論じている点が特徴になっていると思う。

 広田弘毅の功罪については極東軍事裁判における連合国の訴追内容よりも、陸・海軍大臣の現役武官制導入による政策的なミスリードを問う意見が日本人の中に多い。しかしながら、この点は陸軍内部における主導権争いもからんだ2・26事件の直後であり、統帥権という権力の二重構造がもたらしたものと考えれば、広田一人に責任を押し付けるのは酷な話と考える。
 ましてや、長州閥の流れをひく陸軍大臣は機密費という国家予算を使っての国会議員の買収工作で議会運営をお手のものとしていたのだから、政府も議会も似た者同士と言わざるを得ない。

 極東軍事裁判において広田弘毅が絞首刑になった分かれ目は、彼が玄洋社社員であったことにある。残念ながら、この玄洋社もGHQによって解散、その存在すらも抹殺されているためにGHQから国家主義団体というレッテルを貼られたままになっている。孫文の辛亥革命を支援し、インド独立の闘志ビハリ・ボースを庇護下においた玄洋社についての解説が加わっていれば、GHQが玄洋社抹殺の見せしめとして広田を処刑した理由がわかるのではないか。

 本書では取り上げられることはなかったが、玄洋社の影響を受け、朝日新聞から国会議員になった中野正剛は戦争中、朝日新聞の社説で現職総理大臣を糾弾している。その詰められた総理大臣東條英機は憲兵隊を使って中野正剛を弾圧、自決に至らしめている。
 中野正剛の葬儀委員長は後の自由党総裁の緒方竹虎であるが、東條からの供花を断り「貴様、死んで東條に勝ったぞ!」と弔辞を読んだ。
 それを考えると、玄洋社の影響を受けた広田弘毅が無条件に軍事政権を支持していたとは思えないが、かいかぶりすぎだろうか。

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