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尼将軍を近くで見てきた女性。
2022/09/24 11:39
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
京都で、後白河法皇の寵愛を受けてきた丹後局は法皇亡き後も宮廷への影響力を持ち続けていた。丹後局から源頼朝の娘大姫を後鳥羽天皇に入内させるために、お妃教育の役目を負って周子は鎌倉に下向した。
宮廷での深謀遠慮や駆け引きの通じない坂東。わけてもその象徴たる北条政子は家族を愛するがゆえの支配を微塵も疑っていない。
痛々しいくらい母を恐れて自己主張を隠す大姫を導こうと奮闘するが、周子は政子に勝てるのか。
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大姫入内の悲劇
2022/07/17 11:55
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
鎌倉時代初期に起きた大姫入内に関わる事件は、謎が多く、歴史の様々な視点から語られてきたが、この物語ほど、大姫を巡る人々の心の揺らぎを伝えるものはないと思う。京の六条殿に使える女房・周子を主人公に、女たちの政争、そして北条政子と娘・大姫との葛藤が、描かれた。過ちを認めず、誰かの責任にするから、過たない北条政子の姿は、正に尼将軍である。娘を自分の大切な者として愛しむことが出来ないのも、その尼将軍である。情のままに突き進む列所だからこそ、歴史の奔流に飲み込まれず立ち向かえたのだろう。悲しい母だったか。
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投稿者:kurage - この投稿者のレビュー一覧を見る
都からやってきた教育係の女性目線での北条政子と娘、大姫の話です。
最初はただ感情のない、人形のように手ごたえのない姫にしか見えなかった大姫。
過去に起きた義高の事件を通して大姫がどう変わっていったのか、政子がどのように娘に接してきたのか、周囲からの聞き取りで少しずつ明らかになっていくのが痛ましかったです。
大姫、心穏やかに出家して欲しかったなあ。
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天下を仕上げる女
2022/06/09 19:56
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
頼朝と政子の長女大姫の入内を巡り、朝廷と幕府、政子と大姫の母子、頼朝と政子の在り方、などなど、さまざまな対比が鎌倉時代初期の落ち着かなさとともに勢いよく描かれている。
大姫の死についてはさまざまな憶測があり、この話ではどの説をとるかなぁと前情報なしで読みました。
大姫の複雑な気持ちと、政子の単純な性格の対比が実に面白い。政子があっけらかんと分かりやすくて、ちょっと笑える。
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史上でも、北条政子と大姫の関係性は、本当の母子なのかと思うほどーです。フィクションですが、案外、北条政子は、娘をこう考えていたのかもしれないと……。北条政子って、深層心理、コワイ……
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源頼朝と北条政子の娘である大姫。
彼女の入内を巡って、京都から六条殿に仕える周子は都から鎌倉へ訪れる。
気鬱の病を得て、人形のような大姫と入内さえすれば大姫が健やかに暮らせるようになると確信を抱く政子。
その二人と京と鎌倉の間で揺れ動く周子の心。
大姫は黙して何も語らず、政子は己が思いが姫の思いと確信して彼女の代弁者として鎌倉を支配する者として周子をむかえいれることになる。
母にすべてをゆだねる大姫の本心はどこにあるのか?
そして、すでに中宮や寵姫がいる帝の元へ入内した時に彼女は後宮で生き抜くことが出来るのかと周子は案ずるのだが……。
現在、私も『鎌倉殿の13人』を見ています。
大姫の許嫁という名前の義高は義仲が京で失脚したことで、人質の意味を失い、殺害されることは多くの方がご存じだと思います。
その前に、彼を逃がそうと政子主導で動いたけれども、政治的な判断としては頼朝が正しいと私は思っています。わざわざ遺恨を残すものを残すことなど、自らの経験からできなかったのでしょう。(清盛の甘さが一族が滅んだきっかけの一部なのか確かだと思いますから)
そんなことが当時七歳の大姫にわかるわけもないし、義高を慕う気持ちを捨てることが出来なかったのは当然と思います。それを案じる母である政子。
一見、美しい母の愛情。でも、それが互いに食い違っていたならば、そこにあるのは間違いなく悲劇。
そんな中で成長した大姫に後鳥羽帝へ入内の話が持ち上がり、入内に伴って鎌倉と縁を結ぶための周子が彼女の元へ。
これは戦なのだと、丹後局はいい、一つのところに力があるまらないようにするための策なのだと言い切る(かっこいいなぁ)
ただ、すでに帝には皇女と皇子が生まれている。そこへ投じる一石として選ばれたのが大姫。
周子がこの役目を果たそうとして大姫との目通りと願うのですが、なんやかやと理由をつけられて、彼女に近づくことができない。しかも政子は入内を望みながら、それを後押ししている。
これは……。
周子としては仕事になりませんよね。だって、鎌倉で暮らしていた姫だとしても都や宮中のことはわからないし、わからなければ、中宮や寵愛されている女御に侮られるし、鎌倉は血なまぐさいですが、宮中は別な意味で怖い場所ですし(-"-;A ...アセアセ
そんな中で海野という武士と親しくなった周子。彼女を彼が笑い合っている姿を見たときに人形のようだった大姫が豹変し、怒号をあげて、海野へ殴りかかる。その哀しい理由。
そうした周子にとって辛い日々の中で、ようやく大姫と歌で心を通わせることが出来るようになるのですが、それがまた大姫を追い詰めることになってしまって(´;ω;`)ウッ…
とにかく大姫が切ない! そして、親のいかにも子供のことをわかっているという行動がどれだけ子供を疵づけるのかと胸が痛くなるようでした。
おそらく坂東で生まれ育った政子には宮中がどんなところか理解できていなかったと思いま���し、寵を争う世界は武士の世界とは違った残酷さがあるわけなんですが、それが理解できない、わからない。
あるのは、入内さえすれば大姫は幸せになり、健康も取り戻せるという独りよがりの気持ちなんですよね。(これは受け止め方にもよると思うので私の感想です)
そんな中で、政治そのものが鎌倉と京に分かれてしまい、また宮中でもパワーバランスを取らないといけない状態になってしまっていて、そのための鎌倉の姫の入内が必要になってしまった。
人は作中に出てくる碁石ではないのになとも思いつつ読んでいました。
儚く蜻蛉のような大姫の秘めた思いや周囲に対する気持ちがわかる後半に一気に心の中を流れる感情はなんて哀しくて、愛しい子なのだろうということでした。
そして、のちに尼将軍と呼ばれる政子の最後までぶれない姿もまたあっぱれというべきなのだろうと思ったりもしたのです。
大河ドラマではどのように描かれるのでしょうね。結局、一気読みしてしまいました。
それにしても女子の戦のなんと哀しきものかをこれでもかと思わせてくれる一冊でした。
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大姫を取り巻く女性たちの戦いの話。
進退を決めることなのに本人の意思はまるでなく人ばかりが死んでいく。
それをかいりみる人と顧みない人。
こんなに辛いのか。
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政治の実権を争う女たちと、わかり合えない母と娘の悲劇。後に「鎌倉幕府最大の失策」と呼ばれた謎多き事件、大姫入内とは――?
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大河ドラマで旬な、鎌倉時代の物語。
源頼朝と北条政子の長女、大姫をとりまく壮絶なお話でした。おんな達の生き様がどれも強く逞しい。
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大河ドラマでは一瞬しか登場してない海野幸氏。ググると承久の乱でも出陣してるから、また登場するかなあ。
タイトルからして女の話だからか、頼朝も義時も、まあ影の薄いこと。でも義時のパブリックイメージって、こんな感じよね。小栗旬じゃあ好感度高過ぎ〜。
大河ドラマのせいで、丹後局は「鈴木京香」でしかないけど、大江広元が京に置いてきた娘が丹後局の従者とは、面白い目のつけどころでは。更に、大姫の桎梏が「御台様の物語」、つまり政子に植え付けられたものかも…との看破は鋭い(尤もコレは周子の伯母、利根局の見解だけど)。
でも幸氏とのシーンはラノベみたいで、丹後局や大姫周辺とのやりとりが深いだけにちと残念。2度までも「鎌倉の姫の入内作戦」に失敗しといて、鎌倉にイイ人できたんでーって丹後局からお暇を貰ったのかしらん。
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続けて鎌倉関連本。今回は大姫入内計画について。
先日読んだ『修羅の都』で京での鎌倉派介入策として送り込んだ九条兼実と丹後局との政争がここでは違う形でクローズアップされた。
最初は丹後局、九条兼実、卿局の三グループの関係が分からなかったので自分で相関図を書きながら読んだ。
帝の寵愛を受け、男児を生むか女児を生むかでこれほど運命が変わるとは。
主人公は丹後局の命を受け、大姫入内計画を進めるために鎌倉へ下向した女房名「衛門」こと周子(ちかこ)。
なぜ彼女が選ばれたのかと言えば、大江広元の娘だからだ。これが史実なのかフィクションなのかは分からないが、周子が広元の娘であることはこれまでの人生においても、鎌倉での日々においても良くも悪くも影響を与える。
この作品での大姫は『修羅の都』の大姫とはまるで違う。当初は虚ろな目をして何を考えているか分からない、かと思えば突然子供のように激高する扱いの難しい娘だ。それは義高の死による『気鬱の病』からだろうと言われているが、ここで描かれる大姫と義高の物語は現実味があって興味深かった。たった七歳で義高に愛を捧げる大姫よりはよほど理解できる。
当初はこのミッションを成功させ、大姫入内の際には『一の女房となる』立身出世の欲を抱いていた周子だっただけに、大姫の心許ない様子に最初は戸惑い苛立つ。だがやがて彼女の心中を知ると別の想いが湧いてくる。
周子は父・広元が京を見限り鎌倉へ行ってからは母と二人で生きてきた。学問や様々な知識を武器に己の才智で二十年の人生を『魑魅魍魎が跋扈する』京で生きてきたのだ。
丹後局のような『強さ』こそが憧れだった彼女にとって、大姫との出会いは自分の価値観や人生観をひっくり返すものとなった。
ただ大姫の最期は分かっているだけに、周子がその後どうなるのか、京に戻れるのかどうなのかが気になって読み進めた。
大姫と関わるうちに見えてきたのは、北条家なしには頼朝ですら安泰でいられない鎌倉幕府の姿。頼朝・政子夫婦、政子と大姫を始めとする四人の子供たちの関係、そして鎌倉での勢力争いは実に危なっかしい。
『鎌倉もまた都と同じく魑魅魍魎が跋扈する』場所であったことを知る周子だった。
政子は…ただただ恐ろしい。この政子はこれまで読んできたどの作品とも違う、ダークというのとも違う、別の怖さがある政子だった。
タイトルの『女人入眼』は九条兼実の弟で天台座主の慈円の言葉。
『男たちが戦で彫り上げた国の形に、玉眼を入れるのは女人であろうと私は思うのですよ。言うなれば、女人入眼でございます』
『泰平の世を寿ぐ晴れやかな気持ち』で聞いてから二十数年後、それが全く違う意味になっているとは。
丹後局が都で繰り広げた『女の戦』など愛らしいものに見える。彼女は男の戦を『碁石をまとめて碁盤の上にばらまいてしまう』と表現したが、鎌倉の戦は碁石を蹴鞠で碁盤ごと倒してしまうようなものだった。
大姫の死の真相がどうなのかは分からない。『修羅の都』の大姫の死も驚かされたが、こちらもまた斬新で辛い話だった。周子が鎌倉でやったことは意味がないどころか苦しみを増しただけだったのか。
周子のその後がまた興味深い。あまりにも苦すぎる鎌倉での日々を経て、丹後局とも政子とも違う強さを手に入れたということか。周子が長寿だったら鎌倉の凋落の兆しを見て留飲を下げたかも知れない。
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初めの方は、ただただ出来事を追うだけで、歴史の教科書と変わらないと思った。最後まで読めるか心配になるほど。
でも、ほんの少しずつ、登場人物たちが輪郭をはっきりさせてくる。それこそ、輿に乗ったゆるゆるしたスピードで。気づくと、馬の背に乗っているくらいのスピードになっていた。でも、それ以上の早さでは進まない。
命の扱いが今よりも軽かったであろう時代だけど、相手を思う気持ちが、染み込むように伝わってくる話だった。
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源頼朝と北条政子との長女大姫の入内のために鎌倉に赴いた、京の六条殿に使える女官の周子。
許婚が頼朝の命で殺害されるという過去と母政子の圧力とに挟まれてくる染む大姫。
政子は現代に照らせば毒親だろう。
本書の結末が史実と合っているかは不明だが、書き込まれた背景よって、極めて強い説得力を持つ。
精神的な京の世界が物理的な鎌倉の世界に置き換わっていくさまも、よく見て取れる。
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』のサイドストーリー的物語。大河ドラマを観ている人にはとても読みやすい物語になると思う。
大河ドラマは北条義時目線。
一方こちらは、京の六条殿に仕える女房にして鎌倉幕府の文官の長・大江広元の娘、という立場にある若い女性目線。源頼朝と北条政子の長女・大姫を入内させるという命を受けて鎌倉入りした。
大河ドラマを観ているお陰で物語の背景や人物像も知っているため、物語にもすんなり入れた。
宮中の情勢や鎌倉幕府、北条政子・大姫の母娘関係等、客観的に見れて読み応えもかなりある一冊だった。
両親は当時の武家社会一の権力者。本来ならば日の本一幸せな姫のはずが、とことん悲運な大姫。
大姫の行く末はざっくり把握していたけれど、今回は史実を曲げてもいいから大姫には平穏な幸せを掴み取ってほしい、と願いながら読み進めた。
せめて物語の中だけでも大姫には笑顔で締め括らせてあげたかった。まるでかぐや姫のように一人旅立っていってしまった大姫のことを思うと胸が痛く切ない。
「政に情は要らぬ」と女人たちを碁石に見立てて政を語る丹後局。
対するは、その丹念に並べた碁石の上に蹴鞠をぶち込み京の秩序を乱そうとする北条政子。大姫に対する異常なまでの執着も痛々しい。
そんな野望多き女たちの間で板挟みになるのは、繊細な大姫にとっては荷が重すぎる、としか言いようがなく可愛そう。
直木賞候補作として選んだ今作。
途中からそんなことどうでも良くなる位のめり込んで読めた。
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武士としての男の戦ではなく、策略による女の戦が生々しく描かれていた。いつの時代も情勢を把握し、先を見通せる者しか生き残っていけない厳しい現実は、今も昔も変わらないのだと改めて感じた。
最終的に大姫を救えなかったこと、政子が尼将軍として君臨しているところで物語が終わるところが単純なハッピーエンドではなくてリアルに感じられた。