紙の本
服部まゆみ氏の伝統的ゴシック・ミステリーの復刊です!
2020/05/15 09:08
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、かなり前に単行本として出版された服部まゆみ氏の傑作の復刊本です。内容は、主人公である淳が12歳の時に母と一緒に父の別荘で過ごしました。その別荘に住んでいるのは父の本妻とその息子なのですが、本妻が淳と母を呼んだのだと知ります。そして、淳はその地である少女と出会います。そして月日が流れ、本妻の死後、本妻の息子(太郎)も東京で暮らしますが、すぐに留学してしまい東京を離れます。留学から戻り、太郎と淳、そして太郎の友人である山野とで合同展を行うことになります。しかし、火災で絵の大半が燃えてしまうのです。この火事をきっかけに、淳の周りでは様々な事件が起きていくというストーリーです。一体、淳や仲間たちはどうなるのでしょうか?伝統的なゴシック・ミステリーの復刊です!
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幻想小説
2018/09/18 16:12
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投稿者:ナナカマド - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリー小説ではありますが、
幻想小説として読む方が、
しっくりします。
現代ではなく、
昭和が舞台(書かれた当時は昭和・・・なので時代の雰囲気を狙って書かれた訳ではないですが)なのも、
雰囲気があって素敵だと思いました。
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まさかの復刻!
2018/08/28 03:22
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
旧版の角川文庫、持ってます(表紙は天野喜孝)。
『時のアラベスク』から、高校生の時からファンです。もともと作品が多い方ではないので、私は作者がお亡くなりになっていたことを結構最近まで知りませんでした・・・。
『この闇と光』などが角川文庫で復刻されてきたので、この流れで全作復刻されないかしら、と思っていたところに河出書房新社が参入! 不意を突かれました。できれば『シメール』や『ハムレット狂想曲』なども復刻していただけるとありがたいです。
さて、本書は服部まゆみの第二長編。
ミステリの香りを残しつつ大きく幻想文学に舵を切った、私が思うに最も作者の書きたいことが前面に出た作品ではないかと。それ故に耽美性も文学性も高く、読む者を選ぶ。
完全に理解できていないのかもしれないが、その文体が紡ぎ出す世界に私は幻惑されまくり。もう何度読んだか忘れるくらいですが、そのドキドキ感は今も鮮明に。
<美>というものに惹かれてしまうタイプの人間は、多分読むべき。
自分の中にある美の基準を問い直してくれる書でもあるかも。
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とても面白かったです。
耽美で妖しく、鬱蒼とした夏の森に入り込んでしまったように囚われました。
結局は兄弟の愛憎だったのね…と思いました。兄はやはり血が繋がらないから憎んでいたのかな…と思いましたが、絵の才能ももしかしたら弟の方があったのかなぁ。
鷹原氏のモデルは澁澤龍彦だそう。まだあまり著作を読んだことがないのでますます読みたくなりました。
由里香の感性が凄いことになってそう。でも、テレビゲームに興じるところは服部さんっぽいのか。
洋ちゃんはどうなったのかとか、謎のまま終わっているところもありますが、それもミステリアスで読後も世界に浸れるので素敵です。
夏真っ盛りに読んで良かったです。
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角川文庫版を持っているので再読。
少し前に他の作品が、元々の版元である角川文庫から復刊されていたのだが、ここ暫く復刊の話を聞かなかった。で、こういう時にひょいっと出て来るのが、河出文庫。頼りになるなぁw ここは是非、『シメール』の文庫化も河出で……。
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耽美な思い出を巡る愛憎の物語。
緑深き洋館に漂う世俗と切り離された時間、そこに住まう美しい兄妹…只々夏の幻のような抒情的な別世界と濃密で謎めいた人間関係にクラクラし、魅せられた。多くを語らないラストもまたこの風情に相応しい。狐につままれたまま浸る余韻は極上。
兄の痛み、弟の苦しみ、彷徨う愛の一抹の切なさを残し、夏は去っていく。
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淫靡一歩手前の耽美とでも言うか。ミューズ的な女性・百合を巡ってのストーリーでしたが、子供時代の百合の鮮烈さはなりを潜め、成人後の百合はしとやかな常識人の雰囲気で別人のようでした。由香里のほうが毒々しく危険な香り。なんだかお母さんが一人で真実を見ていたような気がします。精神的なご苦労お気の毒です。
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いつものように、何かないかなぁと入った、乗換駅ナカの本屋さんで平積みになっていて、表紙に惹かれ手に取ると、服部まゆみ!?
あらすじも金額も確認せずに即購入!(笑)
やっぱり同じようにたまたま手にとった「この闇と光」を読んですっかりファンになってしまった服部まゆみ先生。
ところが既にお亡くなりになっていて、新刊は望めない。
過去作を探し、これまた偶然入った地方の本屋さんでみつけた「レオナルドのユダ」を即買い。「一八八八切り裂きジャック」を通販で買い。後は古本やかな・・・と思っていたところだったので、めっちゃ嬉しかった(≧∀≦)
なぜ今新刊?と思ったら復刊というそうだ。河出文庫さん、ありがとうございます☆
“蔦屋敷"に住む兄妹には、誰も知らない秘密があった――12年前に出会った忘れえぬ少女と再会したとき、美しい惨劇の幕があがる。
美しい・・・
この独特な世界観が好き。
そして「罪深き緑の夏」というタイトルが本当にしっくりとする内容だった。
夏に読んでよかった。美しい文章から脳内妄想が無限に広がり別世界に連れて行ってくれる一冊だった。
夏が来るたびに読み返したい・・・。
服部先生の他の本も復刊されないかなぁ。。。
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天野喜孝が表紙の角川文庫が欲しいなーと思っていたところ、河出文庫から。いいね。
広く言えば。屋敷もの。秘密の花園。
おおまかな駆動力としては、肉親の憎しみ。「なんて醜い子なの」が効いてくる。血縁の謎。
昼ドラに堕すかもしれない題材を、劇薬。白昼夢。陰鬱。ラプンツェル。百合。いばら姫。銀竜草。ジャンヌ・ダルク。などなどで耽美に塗り替えていく。
とあるかたのレビューに「淫靡一歩手前の耽美」とあって、確かに!
もう少し視野を限定すれば、やはりモデルとなった澁澤に思いを馳せざるを得ない。
デモーニッシュな品格。
澁澤の言っていた「仮に私に娘ができたなら近親姦してしまうだろう」を、小説的に実現した、という快挙。
実際に彼の妹だった澁澤幸子(『イスタンブール、時はゆるやかに』『澁澤龍彦の少年世界』)を連想するが、
より強く連想力が働くのは、【不滅の少女】矢川澄子(『おにいちゃんー回想の澁澤龍彦』)だ。
史実としては、澁澤サークルの男連中とのあれこれもあり、散文的な嫉妬や独占欲や男女不平等や堕胎や恨みやで満たされているが。
これら散文的興醒めをジンテーゼすれば、ニンフェットの詩的魅力が析出される、のかも、しれない……うーん。
自殺者も出ているくらいだから、軽率に即断できることは、ない、けど、つい連想してしまう。
矢川澄子の自殺についてはどうしてもこだわってしまう。何かしらのコンプレクスがあるのだろう。今後の課題。
ファミコンでドラクエのオーブが云々というちょっとした場面も面白い。
実は服部まゆみはいたって健全なポップカルチャーの享受者だったらしい。
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「この闇と光」が最近よく書店で平積みされているのを見かけて、再プッシュされている嬉しい雰囲気を感じつつのこの作品の復刊、大変有難いことでした。
山奥の蔦屋敷に住まう兄妹と、美しいその妹に魅せられた画家兄弟の数奇な運命を巡るミステリ要素を含んだ本作 。とはいえ謎解き要素よりも、どこか現実とは薄いベールで遮られているかのような幻想味のある世界の住人達が描かれていて、独特の美意識をあちこちの描写から感じ取ることができます。
主人公兄弟の一筋縄ではいかない因縁や愛憎と、そのような生々しさのかけらもない蔦屋敷の兄妹たち。少女たちに翻弄される兄弟がどこか憐れに感じられたのは、「住む世界が違う」ということを自然と描写から認識できていたからなのでしょうか。
幻想小説、とまではいかなくても、手の届かない美しく崇高な世界の片鱗を、端正な文章でじっくりと味わえる、とても素敵な物語でした。
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190719
圧倒的な美に魅せられる愛は狂ってる
謎は謎のままで…それが許されるお話だと言えてしまうのは私もこの物語の沼に惹き込まれたからなのだろうか
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哀しいなあ。容姿や絵の才能、それらは勝っていても、愛に飢えてたんだなあ。
絵の才能が父に認められるようになりつつある弟をみて、とてつもない焦燥にかられたんだろう。とても哀しい。
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主人公の性格があまりにも愚図で、読んでてかなりいらいらする。後半、彼が少し積極的なってからは、割とおもしろかった。如何にもな設定の割にはお話しの雰囲気は明るく、思わせぶりなヒロインもファム・ファタールと言うには、あまりに親切。その兄も妙に人がよい。最後にひっくり返されるのかと思ったら、それもなかったなあ。ちょっと変な話。まあ嫌いじゃない。
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雰囲気が最高
ラストに向けてどんどん妖しくなっていく
美しくて儚い世界……
最後のほうで登場人物たちの本心をある程度知れた
この状態でもう1回最初から読み直したい
何もかもを種明かししてくれてる訳じゃないから想像の幅も広げ放題
舞台設定から絶対好きなやつだって分かってたので期待通りです…!
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表現や絵画の事をあまり知らないので、調べながら読んだため、少し時間がかかった。
脅かし、魅惑的、蠱惑的な女性。
聖女なのか、悪女なのか悩み悶える、彼女の存在。
彼女の存在は、永遠に少女のままでいてもらわなくてはいけないと思う反面、彼女の名を聞けば、あの夏を思いだし、もう一度会いたいと思う。
魅惑的だと思いながらも恐怖も抱いている。
画家たちそれぞれが抱える相手への嫉妬、憧れ、苦悩。実力有る無しにかかわらず抱えるもの。
p93-15~p94-12
p100-18
人間の感情の波、渦
p203-2~11
至福の時間に対する思い
p205-4~10
愛情と恐怖が隣り合わせの感情
p121~p122→p246-14
鷹原自身、犯人についての意見をのべているが、結局は誰かを犯人候補にしていたという現実。
抽象的にしかものを考えられないといいながら…。
登場人物がそれほど嘘について悪びれていない、より良く生きている人間が過ごす、生きるためと言い切るところに、複雑な思いが残った。