紙の本
ある種のスリラー
2023/03/25 23:24
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
沖縄の米軍嘉手納基地。極東最大の空軍基地。小説は沖縄返還直前の時期に基地から北爆に飛び立つB-52の作戦を妨害する4人の足跡を追って展開する。動機はそれぞれだが、愛国心よりも自身の戦争体験から来ていたり、若者の『のり』であったりバラバラだが説得力があり、その『裏切り』の手段もこと細かく語られておもしろい。朝栄のサイパン時代からの半生の物語もよく考えられていていかにもありそうなことで虚実ないまぜになって物語は進む。米軍の内部の実情も丹念に追われていてクライマックスの離陸失敗事故が史実であったことも調べてわかった。反米、平和という常套的なメッセージも包んで意外に大きな視点があるように思った。文体はごくごく軽いのとは対照的。
紙の本
あまりにおいません
2013/02/23 23:00
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投稿者:ソレイケ - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しぶりに池澤を読む。タイトルの「カデナ」は、無論沖縄の嘉手納基地のこと。
時は1968年、ベトナム戦争の最中で、沖縄の米軍基地は重要な役割を担っていた頃である。四人の人物が、「スパイ」として米軍の爆撃目標の情報を北ベトナムに流し、B-52による爆弾攻撃を無力化するために活動するというのが、ストーリーの骨子だが、この四人は職業的なスパイでもなんでもなく、ロックバンドをやっている若者だったり、模型屋の親父だったりする。米空軍の女性秘書官もいるけど、それとて「スパイ」としての訓練を受けているわけでもなんでもなく、いわば素人の集団である。そのうちの三人が代わる代わる語り手となって、その本の一時期だけの「冒険」を回想すると言うスタイルで語られてゆく。なかなかにスリリングな物語で、エンタテインメントとしても面白いが、そこに横たわっている問題は深く重い。「戦争」だとか「正義」だとかについて、読み手は否応なく考えさせられてしまう。例によって池澤的「正しさ」の匂いがないではないが、比較的薄いと思うので、池澤ちょっとなーという方にもお薦めです。
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いつものような強烈なメッセージがあまり感じられませんでした。言いたい事は分かるんです。しかし、スパイ活動や脱走支援のいずれもが盛り上がりに欠け、淡々と展開していくだけです。リアルと云えばリアルですが・・・。
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スパイ小説だけど…
ビリビリした緊張感がある訳でもなくまったりしている。
これが実に心地よい。
でも…戦争の重さを外してはいないの。
だからうまいなーと思ってしまった。
カッコつけずに描かれた作品。
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テーマは重いが、語り口は軽やか。つるつると読める。
しかし、語られる内容は、ベトナム戦争と太平洋戦争であり、沖縄がかかえる様々な状況だ。
佐々木譲の解説が秀逸。
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池澤さんの長編というとじっくり向き合うエネルギーがないとしんどいかなと思ったけど、解説にもあるとおり1968年の沖縄を舞台にした”青春小説”ということで、すんなり入っていけた。沖縄のことは少しはわかるけれど、ベトナム戦争となるとほとんど知らない。テーマは重たいし、悲しいこともあるけれど、湿っぽくなくて、読後感も悪くない。
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これは上手いと思う。戦争末期の殲滅戦を経て(!)米軍基地の過重な負担(!!)をなお強いられている沖縄を舞台にして、サイパンの悲劇を引きづりながら(!!!)、ベトナム戦まっただ中(!!!!)という時代に生きる年齢も性別も違う3人を中心に描かれた、ひと夏の冒険。どうやっても重苦しくなりそうなシチュエーションなのに、突き抜けた明るさと誰にも覚えのある青春、恋愛が違和感なく存在しているのは、作者の通底にある無常観のせいなのか。ちょっと乾いた感じで、読後感も悪くない。夏に読んだのは正解だった。
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帯に「たった4人で100万人の命を救う方法。」と書かれていた割にはちょっとショボかった気がする。でもよかった!
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沖縄の風景を脳内で補完するにあたって、沖縄旅行はやはりよかった。書を捨てよ町へ出ようとはよくいったもんだ。ベトナム戦争時の沖縄、1968年夏。
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ベトナム戦争を題材にした小説で、沖縄は嘉手納を舞台に、帯の謳い文句を参照すれば「たった4人で100万人の命を救う」ために奔走する男女を描いたお話。
裏表紙のあらすじなどから、勝手に二転三転する知略戦や手に汗握るスパイ的な潜入作戦などを想像してしまいました。けれど、実際は一部そのような部分はありましたが、戦争に関わってしまった人たちの、普通の人目線のお話という印象。
戦争の、特にベトナム戦争に関しては兵士の立場で描かれた映画や小説は多いと思いますが、一般人視点の物語は珍しかったので、割と興味を持って読むことが出来ました。ただ、帯の謳い文句にもありますが主要登場人物4人が「救った」というその数字は、過大評価し過ぎじゃないか?と思ってしまったのが正直な気持ち。
状況的に、そうでも思わないとやっていられなかった活動だったのかもしれませんけど。
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沖縄の米軍カデナ基地を中心とした物語。1968年に米空軍Bー52爆撃機(BUFF)が基地に配備され北ベトナムを爆撃する為に定期的に飛び立っていた。沖縄の人達や基地内で働く軍人が情報を盗みスパイ活動をしていく。少しでも北ベトナムの人達の被害を減らしたいと考えるこうした活動は仲間を騙す事の苦痛を伴う。本当にこんな事はあっただろうと思うが、物語にはジメジメしたところは無く酸っぱい思い出という感じになっている。
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沖縄嘉手納 アメリカ軍にとってはカデナ。
アメリカ軍兵士にも苦悩はあった。戦火を潜って生き抜いてきた人の戦への気持ち、今戦火の中に暮らすベトナムの人たちの気持ちが一番わかるのは彼らかもしれない。沖縄に暮らす兵士と市民どちらも人間。フリーダ=ジェインと朝栄さんとタカと安南さん そして彼らの周りの人たち。丹念に語られるそれぞれの生きてきた様がちゃんとそこにある気がする。
また沖縄でアメリカ軍兵士による事件がニュースになっている。基地の無い沖縄、いつまでも夢でしかないのだろうか
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1968年の沖縄米軍カデナ基地が舞台。基地から北ベトナムへ飛ぶ戦略爆撃機、B-52を無力化するために、アメリカとフィリピンのハーフで女性空軍下士官ジェイン。アマチュア無線&模型店を営む嘉手苅朝栄。ロックバンドのドラマー・タカ。一見何のつながりもないし、CIAやKGBとは違う、いわば素人の3人がスパイ活動に関わった回想が交互にそれぞれの視点で描かれていく・・・・・。
ラストちかくのB-52の離陸失敗事故の描写・・・当時実際にあった事件だったんだね!いまニュースを賑わせているオスプレイが、沖縄の普天間基地に配備される問題も改めて考えさせられる。帯には、「たった4人で100万人の命を救う方法。」と銘打っている。物語の根底には決して声高ではないが反戦平和が流れている。また、フリーダ=ジェインとB-52の機長・パトリックの恋いの行方というか、意外な結末も読みどころのひとつかも。
ロケ現場に行く途中、雨のなか、駅前の店に突入。発売直後にかかわらず売り切れで、二軒目に、一冊だけあって、横から手が出て奪われるのではないかと(そんなことが前に何度かあったので)あわてて棚から引き抜き購入。そんな様子が「柔らかな犀の角 山崎努の読書日記」に綴られていた。
俳優である氏がしゃかりきになってまで読む本って、一体何だろうっていう思いから興味をそそられ本書を手にした。ちなみ原作の映像化が、もしもあるとすれば、嘉手苅朝栄役だろうね。
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沖縄がまだアメリカだった頃、泥沼化するベトナム戦争のために爆撃機が行き来するカデナ基地を舞台に、沖縄人の日常、米国軍人の日常、その裏で行われたスパイ活動、反戦活動などを描いた物語。
国籍やアイデンティティが異なる3人の主人公達が、葛藤したり葛藤しなかったりしながらとあるスパイ行為に「できる範囲で」加担するお話なので、メッセージは重いのだろうが、語り口は軽やかで、爽やかですらあったりする。
沖縄の歴史を少し知って、印象がまた変わった。
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ベトナム戦争中に沖縄嘉手納に住んでいた3人の話。スパイ活動でハノイ住民を救うのだがハノイサイドの話が無いのでピンと来なく、会話調のため、一気には読んだもののダラダラと流し読みになってしまった。
戦争は直接的にも間接的にも深い影と暗い記憶しか残らない。