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紙の本
悪魔のいる天国 改版 (新潮文庫)
著者 星 新一 (著)
ふとした気まぐれや思いつきによって、人間を残酷な運命へ突きおとす“悪魔”の存在を、卓抜なアイデアと透明な文体を駆使して描き出すショートショート36編を収録する。人間に代っ...
悪魔のいる天国 改版 (新潮文庫)
悪魔のいる天国
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商品説明
ふとした気まぐれや思いつきによって、人間を残酷な運命へ突きおとす“悪魔”の存在を、卓抜なアイデアと透明な文体を駆使して描き出すショートショート36編を収録する。人間に代って言葉を交わすロボットインコの話『肩の上の秘書』、未来社会で想像力にあふれた人間を待ち受ける恐怖を描く『ピーターパンの島』など、日常社会、SFの世界、夢の空間にくりひろげられるファンタジア。【「BOOK」データベースの商品解説】
ふとした気まぐれや思いつきによって、人間を残酷な運命へ突きおとす“悪魔”の存在を、卓抜なアイデアと透明な文体を駆使して描き出すショートショート36編を収録する。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
合理主義者 | 9−14 | |
---|---|---|
調査 | 15−31 | |
デラックスな金庫 | 32−34 |
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紙の本
天国に潜む悪魔が幸せな人々を残酷に突き落とす36編
2010/02/12 20:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
子供のころ初めて読んだ小説、『ピーターパンの島』が忘れられず、再び手に入れた。
初めて触れた鋭い切れ味のどんでん返しに衝撃を受け、その凄まじい落差に驚き、数十年も心に根を張り続けた作品である。
またアンバランスな光景を想像させる、「悪魔のいる天国」も忘れがたい書題だ。
本書は特に、楽しく嬉しく希望に満ちた状況などから一転、残酷な状況に突き落とされてしまう、落差とどんでん返し的結末が魅力の作品が詰まっている。結末は意外というには平凡すぎるほど。
その中から気に入った作品をピックアップ。
『合理主義者』
金属学者のエフ博士は徹底した合理主義者。
博士は、砂に含まれる微量元素採集でやってきた海岸で、異国的な雰囲気の壺に目を留めた。
徹底した合理主義者と古代アラビアの魔神。対極のような存在の対面はユーモラスだ。
対極の存在が作り出す意外な結末は漫才のようでもある。
『調査』
地球に墜落した、正体不明の出入り口のない銀色の物体からは、断続的な電波が発信されている。
学者が救助信号に違いないと判断し、その物体を調べだすと、銀色の金属らしい表皮がはげ落ちた。
読者の思い込みがジェットコースターを高みへと導き、物体の正体がいっきに急落下へと解放する。
思いがけない結末が魅力の作品。
『宇宙のキツネ』
何にでも化けられるキツネは、操縦士とともに宇宙探検へ出発した。
キツネは、美女に化けて孤独を癒し、家畜に化けていざというときの食料になるのだ。
操縦士が帰還して初めて話した言葉は、読者を驚愕させる。
『お地蔵さまがくれたクマ』
毎夜こわい夢を見る坊やは、悪夢を見ないようにお地蔵さまをお参りした。
それから坊やは、こわい夢を見なくなり、鼻の長いクマと遊ぶ夢を見始めた。
楳図かずおのマンガ、ホラーとも読める童話や昔話などに通ずる作品。
中心に描いている坊やの喜びが、いっそう背筋を寒くさせる。
『ピーターパンの島』
科学によって空想の生物の存在が否定され、その世界すら教えていない社会。
しかし中には、妖精や怪物たちを創造してしまう子どもがいる。
その子どもたちは社会から隔離され、矯正不可能のBクラスに入れられた子どもたちは、夢のような創造の世界で目を輝かせながら生活を始めた。
結末に到るまでの物語が、読者をジェットコースターのように高みへと運び、残酷な結末が奈落へと突き落とす。
まさに「天国にいる悪魔」の書題に相応しい作品だ。
------------
解説に星新一の好きな小話が掲載されている。
このアルベール・カミュの小話は、数行にも関わらず一つの物語になっており、とても印象に残った。
ただ原典ではないと思われるので、実際は数行ではないかもしれない。
『精神科の浴室で、患者が風呂の中に釣り糸を垂れ、じっと見ている。医者がからかい半分に、
「どう?釣れますか」
と聞いたら、患者が答えて、
「釣れるわけないでしょ?ここは風呂場ですよ」』
医者の精神病患者という思い込みを巧みに利用した小話である。
星新一の作品にもこのような思い込みを利用した作品が多く存在し、読者を楽しませてくれる。
紙の本
ユーモアと悲しみ
2019/08/16 16:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ペンギン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ユーモアの背後には深い悲しみがある。作者は、科学の進歩や経済の発展、安楽な生活がもてはやされ、SFをはじめとする小説や文学全体の存在意義が疑問視されていることを悲しんでいるように思う。
捨てがたいのは他にもあるけど、個人的なベスト1は「脱出口」。ワープする装置を作った科学者の先生のセリフ「世の中を見てみろ。だれもかれも、くだらないつまらんことばかりに熱中し、とても正気のさたとは思えない。わしはこの世界に通風口をあけようというわけだ」の部分にすごく魅かれた。世の中に対して情報を発信する人は、多かれ少なかれ上記のように考えているフシがある。作者自身にもあると思うのだが、そんな自分自身さえもこの後のオチのところで、ユーモアの崖から突き落としているように見えて仕方がない。この感覚は、解説の「星さんのそれが恐ろしいほど虚無的な姿勢につらぬかれていることも忘れてはなるまい。」とも一致すると思う。この人は、自分の悲しみに対してとてもドライなのだ。きっと。