時間旅行

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投稿者：みなとかずあき　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

1997年10月に東京・銀座で開かれた「和田誠　時間旅行」という展覧会の、いわばカタログと言える作品集。刊行されたのが2000年になってからなのは、おそらく展覧会が1998年度の毎日デザイン賞の対象になったということで、新たに単行本化されたというところではないかと思う。
和田誠の作品を、絵物語、スケッチ、エディトリアル、漫画、似顔絵、版画、立体作品、ポスター、広告、ジャケットといったカテゴリーに分けて、それぞれを幼年時代から展覧会開催当時までのものへと並べて、それぞれにコメントが加えられている。そして、最後に展覧会当時に行なわれた公開質問とインタビュー、作品年表まで収められているので、これ1冊で和田誠のすべてがわかるといった感じになっている。
それにしても、和田さんの作品がいかに沢山、様々な様式で形作られているかというのを目の当たりにできる本になっていて、改めてすごいなあと思ってしまった。特に高校や大学（これは多摩美だから当然と言えば当然だけど）の頃の作品は、プロの作品と遜色ないだけでなく、ある種の若さが溢れているようにみえて、かえって新鮮だった。
こうして作品群をひとまとめにしてみると、和田誠という人が単なるイラストレーターでなく、グラフィック・デザイナーであり、アート・ディレクターなんだなということがわかるし、多才な人だったんだなあと思う。
そんな和田さんが亡くなってしまったというのは、これから本やポスターやいろいろなところで作品を見ることができなくなってしまうということであり、やはり寂しいことだ。