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商品説明
青春の誇りと痛みの絶唱に満ちた、昭和10年刊行の第一詩集「わがひとに与ふる哀歌」と、昭和15年刊の第二詩集「夏花」を収録。初刊のデザインを模したデザインの詩集。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
わがひとに与ふる哀歌 | 1-78 | |
---|---|---|
夏花 | 79-132 |
著者紹介
伊東 静雄
- 略歴
- 〈伊東静雄〉1906〜53年。長崎県生まれ。京都帝国大学卒業。詩人。「日本浪漫派」「四季」同人。悲壮感に富む技巧的な詩風を確立した。著書に「春のいそぎ」「反響」など。
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紙の本
見えない人、見えてる人
2001/12/12 00:12
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しっぽ - この投稿者のレビュー一覧を見る
伊東静男の「わがひとに与ふる哀歌」昭和10年の発行です。ちょっと古い本なのでとっつきにくかったのも確かだけど、何度か読んでいるうちにだんだんひかれていきました。どこにひかれたのか。この人はきっと「見えてない」人だと思ったから。
詩集のタイトルになっている「わがひとに与ふる哀歌」っていう詩の冒頭。
太陽は美しく輝き
或は 太陽の美しく輝くことを希ひ
この自信のない書き出しはなんなんだろう。そしてこの詩は、「清らかさを信じ」たり、「太陽を希っ」たりしながら「意志の姿勢」でやっと鳥の声を聞いたりしている。
すぐれた芸術家っていうのは、現実の世界とはちがった別の世界の存在を、作品を通じて普通の人にも見せてくれるものだと思う。そして作家本人は、そのちがった秩序で構成されている世界が見えているのだと思う。いませんか、そういう人。独断で言うと、絵描きさんとか音楽家に多いような気がします。見えてる人って。
伊東静男と同世代の詩人で言うと、中原中也なんかは見えてた人っぽいですね。だけど静男には見えてなかった。においや気配は感じてたんだと思う。それもかなりはっきりと。もしかするとすりガラスごしみたいにぼんやりとは見えていたのかも知れない。でも、はっきりは見えなかった。だから、そういう世界の存在を確信しながらも疑っていたような気がする。それとも、はっきりと見つめていながら、どこか現実の世界に近しさを感じていたのかも知れない。
だから、静男の詩はどこか屈折があるような気がする。それもたんに現実に屈折しているのではなく、自分がそこによって立とうとしている「詩」の世界に対して屈折しているような気がする。ぼくはそこにひかれていた。
ぼく自体は、やっぱり見えない人です。そういうものがあるのを信じていますが、見えない人です。だからあんまりはっきり見えると言う人は逆に信じられません。でも、気配は感じています。だから、もう何年も何年もずっと信じ続けています。