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紙の本
避けて通れないけれどあまり語られることのない、きわめてシリアスな現状
2001/07/19 13:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よしおかあやの - この投稿者のレビュー一覧を見る
「私はタカ(イゲタの「高」)田だ」と主張しても,メールをもらえば宛名は「高田」になっている。内田百ケン(門構えに月)についての論文をWebで公開しようと思ったけれど,百間と表示しないと字が化けてしまう……。
これはインターネットでやりとりできる文字コードで,これらの文字がちょっと形が違うだけで同じものと見なされてしまうために起こる問題である。しかし漢字が違っては本人は納得しないだろうし,内田百間では別人だ。
和文タイプやワープロなら,それぞれが漢字の部首やつくりを貼り合わせ,必要な文字を作る(外字)ことで何とかなっていた。最終目標が紙に正しく打ち出すことだったからである。しかし外字を含んだ文字データを送受信したらどうなるか?単に化けるのならまだいい。もし相手が外字領域に違う文字を入れていれば,予想もしない文字にすり替わり,相手に届く。
もう一つの文字コード問題が「多国語処理」である。もともとインターネットは,英語のテキストのみがやりとりできることを目的としてその仕組みが作られた。漢字のような多バイトコード,しかも日韓中台では微妙に異なる文字をどうするか? アラビア語のように右から左へ流れる上に,語頭,語中,語尾で文字の形が変わる文字をどう処理するか? インターネット上を世界中の言語が行き来するようになった現在,これらの問題は避けて通れないものになってきているのだ。
とはいえ,文字コード問題について今まで語られてくることはあまりなかった。この問題を扱った本は少なく,しかも事情は複雑で分かりにくい。理系と文系の狭間のようなジャンルでもあり,誰にでも分かるよう説明できる人がほとんどいないという現状がある。
本書は,この文字コード問題について極めて分かりやすく,丁寧に説明した本である。現在インターネットの標準文字コードとなっているISO2022や,第2のスタンダードとなりつつあるunicodeとは何か,どのように多国語化を果た(そうと)しているか,お互いがどのような関係にあるのかという疑問は,この一冊を読むことで氷解する。
とくに出色の出来なのが,ISO2022で日本語処理するときに拠り所となるJIS基本漢字改訂のくだりである。JIS基本漢字は5年ごとに見直されるが,これに強い影響を及ぼすのが国語審議会によって制定される当用漢字表と,のちの常用漢字表だ。表に含まれる漢字は次々と制限され,簡略化され,入れ替えられていった。当事者への取材をもとに,筆者は漢字廃止派と伝統派の激しい攻防を生々しく描き出す。
そのような過去を踏まえて,文字コードをめぐるさまざまな取り組みとその現状が語られる。現行のunicodeが世界中の文字を符号化することはできても,多国語を混在させての編集はできないということがここで分かるだろう。
インターネットは,アルファベット圏の人だけのものではない。携帯電話からでも手軽にメールが送れるような現代だからこそ,漢字圏に住む日本人は文字コードにもっと関心を持つべきなのではないか。本書の最後には,古典籍の電子化に漢字圏各国がどのように取り組んでいるかが書かれているが,そこでは日本のお粗末な対応ぶりが指摘されている。このような本が新書として手軽に手に入れられることに感謝。そして,一人でも多くの人がこの本を手に取ってくれますよう。
紙の本
漢字は「悪魔の文字」なのか?コンピューターの世界では、少なくとも魑魅魍魎の類にはたとえられるだろう。
2000/07/13 18:08
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投稿者:mau - この投稿者のレビュー一覧を見る
携帯電話やPCのディスプレイを通じてコミュニケーションするのが当たり前になった世の中。でも待てよ、大学のレポート用にワープロを買って喜んでいたのはせいぜい15年前くらいじゃなかったっけ?
家庭用日本語ワープロが普及するまで、「文章が活字になる」というのは結構大変なことだった。和文タイプもあるにはあったが、かなりの専門知識+経験が必要だった。
これを日本が欧米文明から遅れた一因、と深刻に受け止めた明治以降の日本人の試行錯誤ぶりは『日本語大博物館−悪魔の文字と戦った人々−』(紀田順一郎、1994)に詳しいが、あれから6年、事態は更に劇的に変わりつつある。
本書は「文字コード」という、コンピュータにおける文字登録簿作成の歴史と現状を、丁寧に説明している。日本語の場合、まず問題になるのは漢字について。漢字の定型はどれか、膨大な数をどう処理するか、どれを優先すべきか。更に中国の新字や、韓国に残った昔ながらの形の漢字とはどう折り合いを付けていくか。国語学者にも技術者にも、その答は見えない。
ワープロのように一台で完結せず、ネットワークによって一層の真価が発揮できる現状だからこそ、共通の基盤=共通の文字コードが緊急の課題なのだが、性能向上に後追いする形でその度に基本構想を違えたデータは、ちぐはぐさを隠し切れず「文字化け」となって表面化する。
それにしても、この分野における技術の進歩の凄まじいことときたら。「始めから32ビットを想定していれば」といった問いかけは、あまりにも不毛だ。9万字でも20万字でも漢字を登録するスペースが増えたことを溜息混じりで喜ぶしかない。開発当事者には溜息も出ない苦しみだと思うが。
*著者・加藤弘一氏のHP「ほら貝」に本書のサポートページあり。
紙の本
奇々怪々な文字コードの世界
2001/03/31 03:11
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投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る
文字化けに悩んだことのある人なら、漢字を表す文字コードの世界がややこしく入り組んでいることをご存知だろう。本書は、さまざまなコード系がどのようにして成り立ったのか、なぜそのように作られているのかなどについて、計算機の文字コード系以前の、常用漢字、当用漢字(これらがまた奇々怪々な成り立ちを持っているのだ)にまでさかのぼって解説している。文字コード系の世界を概観するにはよい本である。
文字コード系の国際標準の世界もまたややこしいことになっている。各国の(一部の勢力の)思惑が絡み、また一部では情けないほどの無知と誤解も関係して、もはや泥沼である。
この本は一般向けなので、技術的な詳細には踏み込んでいない。文字コード系に入門するためにまず読んでみる本としてはおすすめできる。
紙の本
日経パソコン2000/5/15
2000/10/26 00:22
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投稿者:土井 千鶴 - この投稿者のレビュー一覧を見る
紙に印刷された文字は誰が見ても同じ文字だ。当たり前のことだが、これがコンピューターの文字となるとそうはいかない。身近なところでは、Windowsの「(1)」がMacでは「(日)」になったり、外国のホームページには文字化けして読めないものがあったりする。これはコンピューターによって使っている文字コードが違うため。つまり、コンピューターの文字はこちらで使っている文字と同じものを相手が見ているとは限らないのだ。
また、パソコンには森外の「」や飾区の「」などのように、作字しないと使えない漢字もある。それなのに「剣」の異字体は「劍」「劔」など5つも入っていたりする。なぜなのだろう。そもそもJISコードとは?シフトJISコードとの違いは? など、毎日のように入力している文字だが、実は分からないことはたくさんある。
本書はそんなコンピューター上の文字にがっぷりと取り組んだ本だ。電子文書が社会に与える影響の検証に始まり、文字コードの歴史や、明治時代に起こった漢字廃止論などが漢字に与えた影響、各所で独自に開発されている文字コードの紹介など、綿密な取材を通して詳細に考察している。
もちろん、これからの世界標準といわれている国際文字コードのUnicodeについても詳しく述べられている。各国のさまざまな思惑が交錯する様子は興味深い。ただし、コンピューター上のことだけに、ビットやバイトなど数字がたくさん登場するため、読みづらいところもある。とはいえ、文字についてじっくりと考える機会を与えてくれる貴重な本だ。
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